岸田國士戯曲賞受賞した佃典彦による脚本 「掘り出しモノ」と大好評だった痛快作の続編をヨコハマで上演!

岸田國士戯曲賞受賞した佃典彦による脚本 「掘り出しモノ」と大好評だった痛快作の続編をヨコハマで上演!

 「横浜からの発信」をコンセプトに作品を作り続ける、主宰の中山朋文と、俳優の今井勝法による演劇ユニット「theater 045 syndicate(シアター・ゼロヨンゴ・シンジケート)」。今回は初演で「掘り出しモノ!」と大好評だった、世紀末人情活劇『ヨコハマ・ヤタロウ』の続編を上演する。2018年は横浜の古びた雑居ビルで、翌2019年は下北沢 小劇場B1で上演され、今回は横浜の“演劇のメッカ”、KAAT 神奈川芸術劇場〈大スタジオ〉での上演だ。
 どんな作品になるのか、主宰の中山、出演する今井、寺十吾に話を聞いた。


―――改めて『ヨコハマ・ヤタロウ 〜望郷篇〜』は、どんなストーリーなのかを教えてください。

中山「核戦争後の荒廃した世界で、殺された妻の復讐の旅を続けている主人公のヤタロウという男が、旅を経て故郷である横浜についに戻ろうとするお話です。ヤタロウは、敵を倒す度に、その相手が人生でやり残したことを引き受けます。例えば、ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』を最後まで読み終える、とか、倒した相手の娘を兄弟と引き合わせるとか。
 今回のサブタイトルは『望郷篇』です。そんな当て所ない旅を終え、故郷への道中、様々な敵がヤタロウの前に立ちはだかる。果たして無事に故郷に帰れるのか……というお話です」

―――横浜の雑居ビルから下北沢へ進出して、今回はまた横浜で上演されます。横浜での公演ということには思い入れがあるのでは?

中山「そうですね。僕が横浜生まれ・横浜育ちで、2007年に横浜に拠点を戻したんです。そこで寺十さんや今井に出会ったんですが。それまでは都内の小劇場や映像の仕事をしていたんですけど、横浜でもっと面白い芝居が観たいなと思っていて。だったら作ってしまえと思い、始めました。やはり地元での上演は、安心感と緊張感が同時にあります」

―――今回の公演にあたって、今井さんはどんなお気持ちですか。

今井「作品がシリーズ化したことが本当にありがたいです。自分の劇団でなければあまり主役をやることもないので(笑)、こういう場があるのが嬉しいです。この作品は、まず佃さんの本があって、1作目を上演して、すごく手応えを感じた作品です。その続編ができるなんて。こういうご時世ですけども、やれる場を提供してもらえた以上、ちゃんとそれに応えないといけないなと思います。僕自身も楽しみですし、良い作品にしたいなと思います」

―――手応えは、どの段階で感じられたのですか。

今井「2018年に横浜の雑居ビルの中にあるアトリエで1回上演したんです。そこでご好評いただいて、翌2019年には下北沢で上演した。その時もまた変わらぬ評判をいただいた。あぁ、間違っていなかったなと思いましたね。
 1作目の本も続きを予感させるような終わり方をしていて、どんどん話が膨らむストーリーなんです。今回は、ヤタロウが横浜に帰ってきたらどうなるのかを描いたら面白そうだねということで、スタートしています」

中山「もともとこの作品でモチーフにしているのが、長谷川伸先生の『関の弥太ッペ』という本なんです。長谷川先生は横浜出身の方で、地元の大先輩に対する一つのオマージュでもあるわけです」

―――なるほど。寺十さんは出演にあたって、どんなことを今思われていますか?

寺十「このコロナ禍で、佃さんが一度書けなくなったという話を聞いて、作家さんは世情から何かを感じ取りながら『ヨコハマ・ヤタロウ』を書かれているんだなと思ったんです。そして、出来上がったものを見たら、やはり今の時代を暗示するような内容がありました。
 砂嵐に街全体が飲み込まれ、市民たちが困惑してる中、新しい市長が登場する。実はその新市長には、ある企みがあって――みたいな。だから続編とは言いながらも、かなり予定変更して書いてるんじゃないかな。今この時期に、そういった類の演劇をやるというのは、演劇としては真っ当なことだと思うし、そこに期待もあります。
 長谷川先生の『関の弥太ッペ』を原作として、『柔道部物語』で知られる小林まこと先生が漫画にしているんですね。そこに出てくる弥太ッペも、小林先生の味付けもあって、非常に面白く、魅力的なもの。本作は、そこにアメリカ映画の『マッドマックス』と『ストリート・オブ・ファイヤー』のテイストを入れ込むよう、中山さんが佃さんにオーダーしているわけですよ(笑)」

中山「股旅物に、そういう映画の要素を入れ込んだら面白いかなと(笑)」

寺十「超ナンセンスでしょう?(笑)」

―――アクションもすごいと評判です。

中山「アクションもありますが、割とね、もうだいぶ歳を重ねて……(笑)」

今井「1年1年が本当にでかい(笑)」

中山「いわゆる大立ち回りというよりは、佃さんの一流の遊びが入ったナンセンスさと、映画やマンガ好きにはたまらない要素が詰まったアクションなので、楽しみにしていてください」

寺十「ガン(銃)に関して、中山さんがすごくマニアックなんです。扱いから、構え方から。すごくこだわりがあって、やらなくてはいけないことがたくさんあるのに、そこの直しばかり(笑)」

中山「日本の社会において銃を持つことが、あまりリアリティがないじゃないですか。その嘘を本当にするために、そういう細かいところはちゃんとしたいなと思いまして。」

―――今回、KAAT 神奈川芸術劇場で上演することについてはいかがですか。

中山「KAATで上演することは、一つの大きな目標でもありました。今、神奈川県が演劇を含め、様々な文化事業を盛り上げようとして、マグカルという神奈川文化プログラムを行っています。横浜を拠点に活動する我々にとってはとても喜ばしいことですし、ありがたいことです。私たちは地元の演劇シーンを盛り上げようと、神奈川の仲間たちと共に様々な活動をしてきました。多摩川を超えても面白い演劇がたくさん観られる、ということを知っていただけるような作品にしたいです。
 KAATは、中華街や山下公園といった横浜らしさのど真ん中にある劇場。本当だったら、コロナ禍でなければ、芝居を観て、ぜひ中華街でご飯を食べて帰ってくださいと声を大にしていいたいところです」

寺十「この作品は、雑居ビルのアトリエ、下北沢の小劇場と上演してきて、お客さんからは『このスペースでこれだけのスケールのアクションのシーンをやれるんだ』という驚きの声が聞かれるんです。だから『掘り出しモノみたい』とも言っていただけて。
 今回はKAATの大スタジオで、スペースが随分広くなる。その規模の劇場で、どうこの作品を見せていくかはこれからなんですけど、スケールの大きさというよりは“意外性”を見つけられるといいなと思います。KAATは、横浜の演劇のメッカではあるんだけども、そこでも掘り出しモノと呼ばれたいですよね」

今井「徐々に劇場の規模が大きくなることに、多少の緊張があるのですが、でもこうやってチャンスをいただけるのであれば、ぜひやりたいなと思います。タイトルに『ヨコハマ』と入っている作品なので、一番ふさわしい場所ではあるなと思いますね。楽しみです」

―――最後にお客様へのメッセージと、横浜のおすすめを教えてください!

中山「コロナ禍で、県をまたいで移動することが躊躇われるのですが、この芝居は横浜でしか観られないです。我々もできる限りの感染対策をとって進めていますので、できれば横浜で観てほしいです。
 横浜のおすすめは、中華街ですね。KAATの半券を持ってくと、サービスを受けられるお店がたくさんあるんですよ。個人的には『同發(どうはつ)』という中華街の老舗が好きですね。3店舗あるうちの新館は、昔、映画館だったんですよ。そこで芝居を作らせてもらったりしたので、思い入れがあります」

寺十「時代に即した話を、大胆に、ナンセンスに、熱く作っていきたいと思います。横浜の話を横浜でやることに意義がある。だからこそ、全部終わって、一歩出た時に横浜の街がどう見えるか、楽しみにしていてください。
 横浜は、古い街並みが結構残っているので、飲んだり食べたりしない楽しみ方をするには良い機会かもしれないですね。散歩はとても良いと思います」

今井「KAATは遠いイメージがあるかもしれないですけど、渋谷から30分前後で着きますので、そこまで遠くないと思います。こちらも本当に安全に気を配って公演に臨みますので、ぜひ安心してお越しいただけたらなと思います」

(取材・文&撮影:五月女菜穂)

プロフィール

中山朋文(なかやま・ともふみ)
1974年生まれ、神奈川県横浜市出身。
俳優・演出家・劇作家・プロデューサー。大学卒業後、CM制作会社勤務を経て演劇の道へ進む。2001年サンシャイン劇場『カッコーの巣の上を』にて俳優デビュー。その後、都内での演劇や映画・TV作品で活動していたが、2007年より地元からの発信を目指すため、活動拠点を地元横浜に戻し、横浜未来演劇人シアターに参加。佃典彦氏、寺十吾氏、そしてメンバーの今井勝法と出会い、数々の横浜を題材にした作品を発表。2010年の解散まですべての作品に出演。解散後、自身の演劇ユニット「theater 045 syndicate」を設立。横浜から全国、そして世界への文化発信を目指している。作家・演出家として、短編演劇コンテスト「劇王神奈川」において2度の優勝。また、2017年には「劇王関東大会」においても優勝を果たす。

今井勝法(いまい・かつのり)
1977年生まれ、長野県出身。
寺十吾を指導演出家とする演劇人人材育成プロジェクト「横浜未来演劇人シアター」に2007年の発足から解散する2010年まで参加。現在は「theatre 045 syndicate」の構成員として活動。近年の舞台出演作に『続・まるは食堂』(2021)、『その男、ピッグテイル』(2020)、『ブラックアウト』(2020)、『シンベリン』(2020)、『シゲル』(2019)など。

寺十 吾(じつなし・さとる)
京都府出身。
演出家・俳優。1992年、劇団「tsumazuki no ishi」を旗揚げ。主宰として、作・演出・出演の三役をこなし、外部舞台作品の演出も数多く手掛ける。俳優としても、舞台・映画・TVドラマなど多方面で活躍中。主な舞台出演に『お勢登場』(2017)、『ライン(国境)の向こう』(2015)、『真夜中の弥次さん喜多さん』(2002)など。近作としては『喜劇 お染与太郎珍道中』(2021)、『その男、ビッグテイル』(2020)、『あなたの目』(2020)など。

公演情報

theater 045 syndicate 第3回劇場本公演『ヨコハマ・ヤタロウ ~望郷篇~

日:2021年9月30日(木)~10月3日(日) 
場:KAAT 神奈川芸術劇場〈大スタジオ〉
料:一般5,000円
  高校生以下3,800円 ※要学生証提示
 (全席指定・税込)
HP:https://www.045syndicate.yokohama/
問:theater 045 syndicate 制作担当 
  tel.080-5940-0007

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