キャストを一新。変化する社会に合わせリノベーションした作品で挑む―― かつての学び舎に集う同級生達を巡る様々な物語

キャストを一新。変化する社会に合わせリノベーションした作品で挑む―― かつての学び舎に集う同級生達を巡る様々な物語

 映像の世界で活躍する傍らで、脚本・演出家として舞台を創り続ける塩田泰造。主宰する劇団大人の麦茶が、ホームグラウンドである下北沢ザ・スズナリで『おしり筋肉痛リノベーテッド』を上演する。再々演ということになるが、今回はキャストを一新し、脚本にも手を入れるという。

 タイトル通り“リノベ物件”ともいえる本作について、脚本・演出の塩田、俳優陣から宮原奨伍、音楽を担当する石澤瑤祠、そして客演として、大人の麦茶には初めて参加する野村宏伸に話を聞いた。

−−−今回は再々演ということですね。

塩田「うちの劇団はほとんど再演をしないのですが、前回は丁度僕が入院してしまって動けないもので仕方が無くという事情がありました。だからその時はほとんど書き換えていません。今まで当然のごとく新作を発表してきましたが、新たなメンバーでリノベーションしてみようかなと思い立ちまして。
 これは廃校になった小学校で開かれるちょっと変わった同窓会の物語なんです。宿泊施設に生まれかわった学校の卒業生でもある、宮原君演じる主人公がそこに泊まりに来るところから物語は始まります。施設の経営者も同級生の女性で、その他それぞれに事情がある人々による群像劇です」

−−−キャスト一新、ということは今回、主役の宮原さんも新たな役なんですね。

宮原「そうです。以前演じた役も含めてそれぞれ個性や見せ場のある群像劇の中で生きるのを楽しみにしています。前回は先輩が演じていた役でしたから、彼が何を想ってやっていたのかを追う体験ができるかなと思っています」

−−−そして野村さんは初参加だそうですね。塩田さんとはどんな接点があったのでしょう。

野村「これが不思議な縁で。塩田さんを僕の飲み友だちが紹介してくれたんです。最初は飲んでいるだけでした。その友人は大人の麦茶の作品を観ていて、僕が劇団に合っているんじゃないかというんです。それで映像などを見せて貰って、なるほど、出てみたいなと(笑)」

塩田「どんな“なるほど”だったんですか(笑)」

野村「主役を中心にと言うより、周りも含めて人物のキャラクターが立っているんですね。そういったところが興味深くて。今回の作品も映像は見ています。再演だから台本を変えないのかと思ったら、手を入れられるそうで」

塩田「台本を読まれて早速ご質問を頂いたんです。凄く誠実な方だなあ、と思いました。せっかくご一緒するのだから少し手を加えていこうと思っています。それに初演からまだ4年だとはいえ、だいぶ世の中は変わったと思います。こんなに変化が大きい時代もないでしょう。いずれにしても野村さんが参加してくれるのは嬉しいです。活躍は知っているし、僕も映画青年で森田(芳光)監督も大好きでしたから。ぜひ参加してよかったと思ってもらえる作品にしたいですね。劇団員も全員、静かに燃えていることと思います」

宮原「僕にとっても野村さんは子どもの頃から観ていた“テレビの中の人”でした。塩田さんから話を聞いたときはビックリでした」

−−−−−そして音楽が石澤瑤祠さんの生演奏だそうですね。

石澤「昔、何本か出ちゃったこともあるんですが、演技は大変なので、役者としては出ていません(笑)。基本的に生演奏ですが、この作品の初演は録音で音を重ねたりもしていたので、今回はどう演ろうかと考えてます。曲は変わっちゃうでしょうね。そもそも僕は忘れちゃうタイプだし、ミュージカルじゃないからあまりガッチリ決めちゃうとお芝居とシンクロしなくなる。大きな枠だけ決めておいて、現場で合わせる感じですね」

塩田「石澤さんが演じている俳優の呼吸を感じて演奏することで、芝居全体が呼吸しているようになるんです。まるで生き物のように。それがザ・スズナリのサイズにとても合っていて一体化するんですよ。だから石澤さんが指揮者みたいに見えることもあるんです」

石澤「歌の伴奏を弾くのとは違いますからね」

野村「役者って結構毎日違うから、芝居によって変わる?」

石澤「そうなりますね。まあ上手くはまるときとそうでないときとありますが(笑)」

宮原「合わせてくれるだけではなくて、僕は引っ張って貰っている感覚もありますね」

塩田「(生演奏は)ウチの特色でしょうね。でも瑤祠さんは2時間出っぱなしの、一番大変な出演者ですよ(笑)。あとついてくれている音響の木下さんが凄く優秀なんですね。石澤さんと二人で話しているのを聞いていても自分には理解ができない(笑)」

石澤「お芝居の音楽の作り方は、歴代の音響さんに育てて貰ったといってもいいですね」

−−−ところで、ずいぶん前に野村さんは舞台を避けていたと話されていますが。

野村「ええ。30歳を過ぎてから始めたから20年とやっていますが、本数は少ないですよ。それに劇団公演の中に参加するのは初めてなんです」

−−−アウェイ、ということですかね。

塩田「毎回結構客演の方がいらっしゃいますけれど、アウェイ感が強かったといわれたことは無かったですね。逆にまた参加したいと言っていただくことが多いです」

−−−では皆さんからファンに向けてのメッセージを頂きましょう。

宮原「ここ数年で劇団自体が少しずつ変化していると僕は思っています。そんな中でも、塩田さんが以前『この年が変化の年だったね』といえる公演にしたいとおっしゃっていたのですが、そうなるように頑張りたいです。また大人の麦茶の公演は、客演の俳優さんが多いので、今回も座組を良くすることを、心がけていきたいと思っています。最高の座組、その一同でお客様をお迎えします」

石澤「前回は主宰が居ないなかで、ある意味劇団の危機というイメージがあったのですが、今回は前向きに挑める中でどうするかを考えています。それにキャストも一新して俳優の年齢層もだいぶ変わりましたから、そういった部分の変化も見て貰いたいですね」

野村「初参加としても緊張感もありますが、自分がどう変化するかの楽しみもあります。(コロナ禍の)この状況はしばらく続くでしょうから、我々もマイナスに考えずに、プラスに考えるべきだとおもっています。ザ・スズナリの舞台に立つのも初めてですしね。下北沢でやるのはひとつの大きな興味でしたから。そんなわけでいろいろと楽しみです」

塩田「まだ大人の麦茶を観たことがない人は、一度でいいから公演を観て欲しいです。その結果、合わなかったらもう絶対観に来なくていいですから一度観てください。そしてもうオトムギをご存知の方ですが、実は昨年の公演でコロナ禍の厳しい状況の中をテーマにお送りして、賛否両論あったんです。今回は楽しい作品ですから、ぜひ肩の力を抜いて楽しみにしておいで頂きたいです」

(取材・文&撮影:渡部晋也)

プロフィール

塩田泰造(しおだ・たいぞう)
1994年 早稲田大学法学部卒業。以後、TV-CMやテーマパーク、広告イベントの企画・演出を手掛ける。代表作に愛・地球博ガスパビリオン『炎のマジックシアター』(2005年)、肥前さが幕末維新博覧会(2018年)など。広告・映像分野での活躍で、ACC賞(2001年)、映文連アワード2017審査員特別賞(2017年)、函館港イルミナシオン映画祭シナリオ大賞(2021年)など受賞歴多数。2002年から劇団『大人の麦茶』を主宰し、脚本・演出を担当。

宮原奨伍(みやはら・しょうご)
東京都出身。舞台俳優として数々の舞台に立ち、2009年から大人の麦茶の作品に出演。2011年からは正式加入する。外部への客演参加も多く、朝劇下北沢・オハヨウ劇場など、朝の演劇活動もしている。佐藤佐吉賞 最優秀主演男優賞を2016年・2017年と連続して受賞。
 また最近だと、新宿梁山泊にて唐十郎作品の主演を務めるほか、大河ドラマ『麒麟がくる』の三好長逸役など、テレビや映画などの映像作品にも多数出演している。

石澤瑤祠(いしざわ・ようじ)
ミュージシャン・作曲家・ギタリスト。音楽担当として大人の麦茶に参加。基本的に生演奏で作品を彩っている。さらに写真家としても活躍する。

野村宏伸(のむら・ひろのぶ)
東京都出身。1984年に映画『メイン・テーマ』のオーディションで優勝。俳優デビューとなる。続く『キャバレー』では初主演に抜擢。その後、テレビドラマ『教師ビンビン物語』への出演で大きな人気を得た。その後の苦難を越えて2000年前後からは舞台にも進出。実力派俳優として多方面で活躍している。

公演情報

大人の麦茶 第29杯目公演 『おしり筋肉痛 リノベーテッド』

日:2022年4月6日(水)~17日(日) 場:下北沢 ザ・スズナリ
料:4,500円
  U-25[25歳以下・各回5席限定]2,500円 ※劇団のみ取扱
 (全席指定・税込)
HP:https://otomugi.amebaownd.com/ 
問:大人の麦茶 mail:otomugi@gmail.com

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