山本周五郎の傑作小説『赤ひげ診療譚』の舞台が再演決定 役者人生に大きな喜びをもたらしてくれた『赤ひげ』

 2023年に初演された舞台『赤ひげ』が今冬、待望の再演。初演に引き続き、主演を務めるのは船越英一郎だ。

 「初めて赤ひげ、新出去定を演じたのは2017年、NHKの連続ドラマです。長くやらせていただく中で赤ひげは自分の分身のようになりました。代表作と言える作品と巡り会えた喜びはとても大きく、舞台の初演では初日から楽日までスタンディングオベーションという奇跡、熱い反応をいただきました。皆様からの想いに応えなければという思いが結集しての再演です」

 江戸・小石川養生所の医長である新出去定、通称・赤ひげは名医だが無骨な変わり者。赤ひげと、若き医師や貧しい市井の人々との交流を描く。

 「山本周五郎さんの原作『赤ひげ診療譚』は8つの短編から成りますが、新出去定についての描写は多くありません。NHKの連ドラは、8編をドラマ化。シーズン2・3は山本さんのさまざまな作品からエッセンスをいただき赤ひげの世界に組み込み、シーズン4は赤ひげの人生に踏み込みました。その後に舞台でしたから、全ての準備が整っている状態。皆で長い時間をかけて作り上げた新出去定の歴史を、自分の中に落とし込んで演じることができたのです。こんな巡り合わせは滅多にないこと。役者冥利に尽きます」

 初演が人生初舞台だったという船越に、その感想を尋ねた。

 「一番戸惑ったのがセリフの覚え方です。映像では撮影に必要なセリフを覚えては忘れ、新しいセリフを入れるのがルーティンですが、舞台は全部覚えていないとダメ。ところが初日を終えて翌日、起きたらセリフが断片的にしか出てこなくて焦りました。それで毎日、誰よりも早く劇場に入り、1人で、また共演者に付き合ってもらい頭から通す稽古を大千秋楽まで続けたんです。舞台は大変だなと痛感しました」

 船越は25歳で劇団『MAGAZINE』を旗揚げし、脚本・演出を担当。15年間、年2回公演を打ち、小劇場から中劇場まで積み上げてきた“演劇人”でもある。「忘れられない演劇体験」は?

 「僕が演劇に興味をもったのは、長谷川一夫がきっかけ。母の叔父で演劇の師でもあり、彼の舞台はよく観に行きました。地元の公会堂に新劇が公演に来ると、手伝いをする代わりにタダで見せてもらったり……。17歳のとき『東京キッドブラザース』の舞台を観て、俳優たちが客の至近距離で歌って踊るのに衝撃を受けました。『ミスタースリムカンパニー』も好きで、『情熱があれば演劇はできる!』と高校を卒業した春に演劇を志しました。大学4年で俳優となり、紆余曲折あって商業演劇に背を向けた時期もありましたが、やはり憧れがありましたし、今、素晴らしい縁をいただけていることに感謝です」

(取材・文:木下千寿 撮影:間野真由美)

プロフィール

船越英一郎(ふなこし・えいいちろう)
1960年7月21日生まれ、神奈川県出身。日本大学芸術学部 映画学科在学中の1982年、TBS日曜劇場『父の恋人』で俳優デビューを果たす。以降、数多くの2時間サスペンスドラマに出演・主演し、“2時間ドラマの帝王” の肩書を持つ。また、テレビ朝日系『その男、副署長』、テレビ東京系『刑事吉永誠一』、NHK『赤ひげ』などの連続ドラマでも主演を務めるほか、情報番組の司会・バラエティ番組など多方面で活躍。近年、『名探偵・明智小五郎』シリーズ、『弁護士 六角心平 京都殺人事件簿』などの新作2時間ドラマに多く主演している。2023年、舞台『赤ひげ』で、初めて舞台に挑戦した。

公演情報

『赤ひげ』

日:2026年12月6日(日)~22日(火) 
場:明治座
料:【土日・千穐楽】S席[1・2階席正面]15,000円 A席[2階席左右]9,000円
  【平日】S席[1・2階席正面]14,000円 A席[2階席左右]8,000円
  ※他、B席[3階席]あり。詳細は下記HPにて(全席指定・税込)
HP:https://www.meijiza.co.jp/info/2026/2026_12_01/
問:明治座チケットセンター tel.03-3666-6666(10:00~17:00)

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