実際にあった事件を元に、思春期の頭の中を綴った物語 現役中高生による劇団うぱぱらが“今の私たち”を描き出す

 メンバー全員が現役中高生という「劇団うぱぱら」の第5回公演『魚、カナ』が12月18日から上演される。2024年5月に旗揚げ公演『評決』を上演して以降、コンスタントに作品を発表。『評決』以外は、主宰の椛柚希によるオリジナル作品で、椛自身が脚本・演出を担ってきた。現在、高校2年生の椛。劇団を立ち上げた経緯や劇団への想い、さらには第5回公演『魚、カナ』の見どころを聞いた。

―――どんな思いから、劇団うぱぱらをスタートしたのですか?

 「私の母が、『一般社団法人ほしかぜ』というものを作り、地域活動として、子どもたちがパフォーマンスをするなど、表現活動に触れる場を作っていました。ほしかぜでは、小学校1年生から6年生が集まって、1つの作品を作るという活動をしていたのですが、そのほしかぜに最初にいたメンバーが、『劇団うぱぱら』のメンバーです。
 みんな学校もバラバラでしたが、ほしかぜで仲良くなって。ただ、ほしかぜは小学6年生までなので、小学校を卒業したら一緒に活動ができなくなってしまうんですよ。私はどうしてもお芝居を続けたいと思っていたので、事務所にも所属してみたのですが、それも合わなかった。
 自分のやりたいことを強く持っていたので、どうにかできないかと母に相談したら『自分で作ってみたら?』と言ってもらい、メンバーを集めようと思って、ほしかぜで一緒だったみんなに声をかけました。それで出来たのが劇団うぱぱらです。なので、劇団員はみんな幼馴染のような関係なんです。みんなが芝居をやりたいわけではないですし、興味もなかった人たちで、ただの中高生が集まって劇団をやっているというのもまた新鮮なのかなと思います。すごくアットホームな劇団です」

―――そういった経緯だったのですね。高校演劇ではなく、劇団であることに驚きましたが、成り立ちを聞くと納得ですね。

 「私以外のメンバーは、お芝居が特別好きなわけではないと思います。観劇するわけでもないですし、芝居を習っているわけでもないので。小学校のときにほしかぜの活動に加わっていたのも、親が勧めたからだったり、なんとなく楽しそうだからという理由が多かったと思います。そうしたところもまた、高校演劇とは違うのかな、と。演劇が好きで、みんなでやりたいと思って参加しているというよりは、メンバーに私がやりたいことに付き合ってもらっているという感じです(笑)」

―――椛さんがやりたいことというのは、具体的にはどんなことなんですか?

 「私は、演劇がめちゃくちゃ大好きなので、いろいろなジャンルの作品を観ていますが、中高生にしかできないことが何かあるのではないかと考えています。高校演劇とはまた違って、大人の手を全く加えずに、作品を作りたい。私は、いつも本番まで大人の人に作品を見せないということを大切にしているんです。
 作品を観てもらって、アドバイスをもらったり、何か影響を受けてしまうと、大人の力がその作品に入ってしまうんですよ。それがすごく嫌で。たとえ、ちょっと痛々しいものになったり、未完成であってもいいから、中高生だけの、今、このときにしかできないものを作りたい。そうした想いで、うぱぱらを続けています」

―――椛さんはいつ頃から演劇を観劇していたのですか?

 「祖父が大人計画の舞台監督をしていて、母もアングラ演劇のダンサーをやっていたんです。なので、生まれたときから、ずっと松尾スズキさんの作品を観ていました(笑)。母のアングラ演劇の稽古場に連れて行かれて、そこで過ごしてきたので、『オギャア』と言っていたときから観ています。自分自身が好きなものを見つけたのは、中学2年生くらいからです。私、アングラが好きなんだと目覚めたんです(笑)。椿組で目覚めて、そこからはずっと演劇で生きてきました」

―――そうすると、まさに椛さんにとって、演劇はなくてはならないものなんですね。

 「演劇がない人生は想像できないです。私は、舞台の上で生きているんだといつも思うんです。私が息できる場所は、舞台の上だけ。普段、めちゃくちゃコミュ障だし、学校にも行けていなくて、もう生きていけないと思ったときに、舞台がありました。舞台の上では息ができるし、ここでしか生きられないと思いました」

―――今後も自分の思うものを作り続けたいというのが、今の一番の目標ですか?

 「そうですね。自分がやりたいこと、表現したい場所に居続けられたらと思っています」

―――第5回公演『魚、カナ』についても聞かせてください。本作はどんな想いで書かれた作品なんですか?

 「本当にあった事件を元にした物語になっています。そもそも、前回と前々回の公演が、キャバクラとOLの物語だったので、大人たちから『学生なんだから、もっと学生らしいものを観たい』と言っていただいて。確かにそうだなと思ったので、今回は学生の物語にしました。
 元になった事件は、埼玉で起きたもので、プールに400匹の金魚を放ってしまったというものです。それだけ聞いたら、なんてバカな事件なんだろうと思うと思いますが、動機がただ『綺麗だと思ったから』だと。こんなにも平和な事件があるんだなと感じたことがきっかけでした。どうして金魚を放ったのかなとか、裏で何があったのかなというのを私の妄想で書いた物語になっています」

―――どんなところに注目して観てもらいたいですか?

 「うぱぱらでは、劇中に心の叫びを入れるシーンが必ずあります。それは、私がそのときに思っていることだったり、生きていく上で不満に思っていることだったりを、綺麗に並べるのではなく、そのまま話すというシーンです。今だからこそ出る叫びを大人にも聞いてほしい、受け止めてほしいという想いで作っています」

―――そうした叫びのシーンは、特定のキャラクターが叫ぶのですか? それとも、どのキャラクターにもそうしたシーンがあるのですか?

 「今回はこのキャラクターに言ってもらうと毎回決めています。そうした想いを今の等身大の中高生が叫ぶからこそ意味があるのではないかなと思って、いつも叫ばせています(笑)」

―――劇団員のみなさんの役どころを教えてください。

 「主演のあみかを務めてくれるのは、私の実の妹のみえいです。超可愛いんですよ! 大人からも大人気で、『一味違うよね』と言われています。街を歩いたら、スカウトされたり、ナンパされたりするので、中3なのに、何こいつ!といつも思っています(笑)。そんなみんなに好かれているみえいなので、今回、どうにかみえいを輝かせられないかと思って、主演にしました。
 みえいは、お芝居ができないんですよ。踊りも踊れなくて歌も歌えない。でも、ただただ可愛い。なので、いつもあまり話さない役や、逆におちょけている役をお願いしていたのですが、今回はみんなが憧れる、無口な少女というみえいにしかできない役を演じてもらいます。彼女を輝かせる舞台にしたいです。
 それから、今回の物語では、もう1人、かなという女の子も重要人物になっています。かなちゃんを演じるのは、うぱぱらで一番表現が上手くて、歌も上手い、ことこです。ちょっと小賢しいところがあるんですが(笑)、媚びる演技も上手で、大人に好かれる表現もできるので、いつもは媚びる役やイジリをする役をお願いしていたのですが、今回はおとなしいお嬢様の役を演じてくれます。これまでと反対のキャラクターなので、それをどう演じてくれるのか楽しみです。歌がすごく上手くて、毎回歌ってもらっているので、今回も歌ってもらいます」

―――作品の中に歌やダンスなどもたくさん入ってくるんですね。

 「入っています! 私はショーパブなども大好きで、とにかく華やかにしたいんです。お客さんが沈まないように、退屈にならないように、歌と踊りを入れて、エンタメ性のある作品になるように作ろうと思っています。劇団には、歌えるメンバーが2人いるので、それもいいなと思っていて。毎回、2人に歌ってもらっています。もう1人の歌えるメンバーは、うちの歌姫のはなちゃん。はなちゃんは、歌だけでなく、チラシやパンフレットを作成してくれる、すごく多彩な子で、うぱぱらにたくさん貢献してくれています。一番王道的な演技ができるので、いつも王道的な役を演じてもらっています。今回も王道で、いい役だと思います。
 それから、うぱぱらのギャルのユノは、劇団唯一の陽キャです。メンバーは、みんな陰キャが多いのですが、いつも明るくて、雰囲気も作ってくれる、なくてはならない存在です。いつもギャルの役を演じてくれるのですが、今回はぶりっ子の役を演じてくれます。
 唯一の男子メンバーの善は、さとるという役を演じます。私と小1の頃から同じ学校、同じクラスで一緒に過ごしてきて、私にいつもついてきてくれる貴重な男子メンバーです。私がやりたいことを一緒にやってくれます。以上が、うぱぱらのメンバーです!」

―――今回は、加えてゲストの方も出演されますね。

 「うぱぱらだけでは締まりが悪いので、きちんとした大人の方をゲストに1人迎えています。今回は、シンクロ少女の中田麦平さんが初出演してくださいます。中田さんは『頭頂部が禿げていて大丈夫ですか?』とおっしゃっていましたが、中学生の役を演じてくださいます」

―――Xで公開された動画にも出演していましたね。

 「はい、そうなんです。私、大人の方に意外な役を演じてもらいたくて。せっかく真剣にお芝居をしに来てくださるのに、ちょっとふざけた役を演じてもらって、愛くるしいところが出せたらいいなと思っています。
 それから、今回、もう1人ゲストで依織ちゃんが出てくれます。彼女は、私の従姉妹で、今、中学2年生なんですが、エアリアル(空中演技)がとても上手なんです。お金を取れるくらいのパフォーマンスができるので、それならやろうよと誘って、その子のためだけに書いた役が金魚です」

―――劇団の公演でエアリアルが見られるというのはとても豪華です!

 「そうですよね。そもそも(今回、上演する)シアター711でできるのか問い合わせをしたら、できますと言われて、そうなんだと思って。私たちにとっても初めてのエアリアルなので、見どころかなと思います」

―――椛さんご自身はどんな役柄を演じるのですか?

 「私は、思春期の気持ち悪さを固めたような役です。みんなの役はきちんとできる範囲を考えて作っていますが、自分自身には何をしてもいいと思っているので(笑)、毎回、無理やりの役を演じていますが、今回が一番気持ち悪い役になるのかなと思います」

―――どんなキャラクターになっているのか楽しみです。現時点でのお稽古の状況は?

 「今は、読み合わせの段階です。毎回、不安になるくらい稽古がグダグダなのですが(苦笑)、でも、みんな本番の1週間前から本気を出すんですよ。中高生なので、気まぐれで、プロ意識が薄いところがあって。でも、お金をいただく以上は、私はビシバシ鍛えますし、モチベも私が上げて、頑張るよと言って稽古を進めていきます。ギリギリになるとみんなしっかりやってくれるので、信用していますし、最後にはできるので、今回も絶対にうまくいくと思っています」

―――演出面で今回、考えていることはありますか?

 「これまで私もパンクしてしまって、1つのことしかできなかったので、作品をあまり広げられなかったんですが、今回は、こっちではこういうことが起きて、こっちではこういうことが起きているというように、それぞれの物語が何個かあって、それがぎゅっとまとまった構成になっています。エアリアルもそうですが、うぱぱらならではの工夫も入ってくるかなと思います。大人の手が加わっていない、純粋なものになっていると思うので、そうしたところを観ていただけたらと思っています」

―――最後に、改めて読者にメッセージをお願いします。

 「まだまだ私たちは子どもですし、環境がいいからこそできた劇団でもあるので、周りのスタッフさん、母や父といった大人の方たちに感謝しています。そうした中で劇団が続けてこられているので、たくさんの方に見つけてもらえたら嬉しいです。演劇が好きな方や大人の方に観ていただけたらと思っています。うぱぱらのお芝居を観ることで、昔を思い出したり、純粋な気持ちに戻ったり、思春期のことを思ったりするきっかけになるのかなと思うので、ぜひたくさんの方に足を運んでいただけたらと思います。今後ともうぱぱらをよろしくお願いします!」

(取材・文&撮影:嶋田真己)

プロフィール

椛 柚希(もみじ・ゆずき)
高校2年生、16歳。11歳でテアトルアカデミーに入所。14歳で舞台『オノマトペイント~ソラノアカリ~』に出演後、退所。その後「劇団うぱぱら」を立ち上げる。不登校をきっかけに、2024年夏から椿組のテント芝居を手伝いはじめ、花園に通いながら多くのワークショップで演劇を学ぶ。同年夏に『喜劇の国のアリス』に出演、秋には『セーラー服が着れなくなる前に』で初めて脚本に挑戦し、演出・出演も務めた。2026年5月、劇団うぱぱら 番外ミニ公演『うまれかわる』脚本・演出。2025年度ENBUゼミナール卒業生。現在は通信制高校に在籍しながら、新宿梁山泊のテント芝居を手伝うなど、さまざまなことに挑戦している。

公演情報

劇団うぱぱら 第5回公演『魚、カナ』

日:2026年12月18日(金)~20日(日)
場:下北沢 シアター711
料:大人3,800円 U18[18歳以下]2,000円(全席自由・税込)
HP:https://studio-kui.my.canva.site/upapara-5th
問:杭 mail:studio.kui.works@gmail.com

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