ゲキバカ、公演中止を経て待望の新作公演を上演 スティーヴ・ライヒの名曲から着想した、大戦下のヨーロッパを描いた物語

ゲキバカ、公演中止を経て待望の新作公演を上演 スティーヴ・ライヒの名曲から着想した、大戦下のヨーロッパを描いた物語

 1998年に、日本大学芸術学部演劇学科の学生を中心に立ち上げ、分かりやすいのに奥深い、王道エンタメ芝居を追求し続けてきた「ゲキバカ」。2021年3月公演『ローヤの休日』以来となる本公演『ララ・バイ』が、5月に上演される。
 同作は、2022年8月に上演予定だった作品だが、新型コロナウイルスの影響により、全公演中止に。今回、待望の上演となる。『銀河鉄道の夜』、『アンネの日記』をモチーフに、蒸気機関車をテーマとし、第二次世界大戦下のヨーロッパを描いた本作。作・演出の柿ノ木タケヲと団員の豆鞘俊平に公演への想いを聞いた。

―――8月の全公演中止というのは、かなり辛い決断だったのではないですか?

柿ノ木「そうですね。ただ、それまでにも何度か劇団でも劇団以外でも公演中止を経験していたので、悪い意味で慣れてしまっているところがありましたし、公演が始まってからではなかったのがまだマシだったのかなとは思います。もちろん残念でしたし、こうして改めて上演するといっても同じキャストが集まれるわけではないので、大変なことも多いのですが……」

豆鞘「あの時は稽古がスタートして、作品が形になっていくのではないかという段階で中止となったので、稽古ができていた分、次へのモチベーションを持てたのだと思います。絶対にこの作品をお客さまに届けないといけないという思いで今までやってこれたので、上演できることが楽しみです」

―――まさに満を辞しての上演ですね。改めて、本作はどんな内容でしょうか?

柿ノ木「第二次大戦下のイタリアの元劇場を舞台に、そこに住み着いた人々が、年に一度の催しのために、みんなで劇を作っていくというストーリーです。今回、蒸気機関車をテーマにしているということもあって、公演の“チケット”ではなく、“切符”としているんですよ。劇場の座席ではありますが、列車の座席のように感じていただき、一緒に旅ができればいいなという思いがあります」

―――そうした物語は、どんな発想から生まれたものなのですか?

柿ノ木「10年以上前に聞いた、スティーヴ・ライヒという方が作曲した『ディファレント・トレインズ』という曲がきっかけです。その曲は、電車の音をそのまま流していたり、当時生きていた人たちの肉声を流しながら弦楽器が演奏をするというものでした。その曲の中に、汽笛が効果的に使われていて、それを舞台で場面転換するときの音に使ってみたいと思っていたので、この曲をモチーフにして何か作品ができないかと。
 それから僕は、高校演劇をやっていたのですが、最初に役者として出演した作品が『銀河鉄道の夜』だったんですよ。それがきっかけで演劇や芝居をやっていこうと思ったという、僕にとっては大事な作品だったので、鉄道や機関車に思い入れがすごくあるんです」

豆鞘「僕たちは、最初にその曲を聞かせていただきましたが、絶対にすごい新作が生まれるなと感じました。カッキーさん(柿ノ木)が経験したコロナ禍での負の感情や世間に対して感じていることが募っていたからこそ生まれた、今しか書けないものなんだと思います。負の感情から生まれる芸術は絶対にあると思いますし、そうした作品も僕たちならできると思っていたので、台本が楽しみでした」

―――豆鞘さんの今回の役どころは?

豆鞘「ある兄弟の兄役です。あまり物事を考えずに突っ走る性格で、少年といったイメージの男の子です。みんなが落ち込んでいてもいつも通りに過ごしていて、いい意味でバカなところがあって、みんなに笑顔を作ることができる役だと思います。
 弟役を劇団の同期の山咲和也が演じるんですよ。実は、中止になった公演では僕も違う役を演じる予定だったので、上演が伸びたからこその配役なんです。同期と兄弟役を演じるということで、ゲキバカのファンの方にも楽しんでいただけると思いますし、同期だからこそできるものにしたいと思っています」

―――あらすじには「夢と希望をのせた黒鉄の機関車が駆け抜ける」とありますが、この作品を通して、夢や希望をお届けたいしたいという思いがあるのでしょうか?

柿ノ木「それはあります。“生きよう”というのが劇団のテーマでもあるので。なので、夢や希望は、どの作品においても大切にしているところですし、今回もそうした作品になると思います」

豆鞘「観る方の心を動かす芝居をしたいんです。それは笑いでも涙でも感動でもいいのですが、芝居から何か心を動かすものを感じ取っていただけたら、生で観ることにより意味が出ると思います。少しでもお客さんの心が動くような作品を作りたいと思っています」

(取材・文&撮影:嶋田真己)

プロフィール

柿ノ木タケヲ(かきのき・たけを
1975年11月21日生まれ、愛知県出身。ゲキバカ主宰。演出家・劇作家。小さな劇場から有明アリーナをはじめとするイベント施設での舞台演出、アイドルのライブ演出等、様々な舞台で活動。代表作として『ごんべい』、『0号』、『ローヤの休日』など。

豆鞘俊平(まめさや・しゅんぺい)
1990年9月25日生まれ、兵庫県出身。24歳で上京し小劇場で初舞台に立ち芸能活動スタート。2018年に劇団ゲキバカに所属。2019年に映像制作チーム「VALORI」を友人俳優と立上げ、監督・脚本・編集を担当し短編映画を製作、YouTubeに配信。2020年よりドラマ・CM等に活動の場を広げる。趣味が高じてサッカー、TVゲームのプレイヤーとしても活動中。近作に、ゲキバカ『ローヤの休日』、心霊ドキュメンタリー「呪いの黙示録 第三章」など。

公演情報

ゲキバカ『ララ・バイ』

日:2023年5月10日(水)~14日(日)
場:中野 ザ・ポケット
料:一般乗車きっぷ6,000円
  見切れるかも?!乗車きっぷ[見切れ席・枚数限定]5,000円
  思春期18乗車きっぷ[18歳以下・枚数限定]1,000円 ※要身分証明書提示
  (全席指定・税込)
HP:https://gekibakaweb.wixsite.com/gekibaka
問:ゲキバカ mail:gekibaka.ticket@gmail.com

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