
精神を病んだ貧しい兵士・ヴォイツェックが、愛人を殺害するまでを描いた戯曲『ヴォイツェック』を、串田和美が初めて演出。主役を藤原季節・串田十二夜のWキャストにすることで、彼をただの罪人ではなく、私たちのあわせ鏡のような存在として見せていく。
串田「原作は未完成で、物語の順番すら人によって変わってくるけれど、だからこそ魅力的。ヴォイツェックには、観客に『自分に似ている』とか『やっぱりわかんない』と思わせる部分があって、Wキャストにすることで、それがより見えてくる表現ができるのでは?と思いました」
藤原「時代や時勢を越えて、共感や共鳴を呼び起こす何かがある戯曲ですよね。十二夜くんとは同じ役ということで、お互いに『あ、いいな』と思ったものを盗みあい、積み重ねて作っていけると思います」
十二夜「逆に『これ、僕はやらないな』という選択も出ると思うから、それも面白そう。僕はヴォイツェックと(作者の)ビューヒナーの関係性が一番気になっていて、そこから役を探っていこうと思っています」
今回のテーマは“見せ物小屋”。串田は久々に舞台には出演せず、演出と美術に専念する。
串田「今回の美術は自分たちで、その辺に落ちている物を使って作ろうと思ってるから、その時間が必要(笑)。原作の見せ物小屋のシーンは、妙に熱を入れて書かれている感じなので、もしかしたらビューヒナーは見せ物小屋で表現したかったのかもしれないですね」
時代や国を越えた痛みや共感を覚えつつも、楽しんで帰れる舞台になるというメッセージを、読者に送ってくれた。
串田「最近は、貧しいとか虐げられているということが、変にごまかされ、納得させられた世界になっているように見えるんです。極端だけど、本当はヴォイツェックみたいな人が当たり前なのでは……と感じていただけたら、何かいいなと思います」
藤原「自分も含めて、世の中の人は漠然と息苦しさを感じてる気がしますが、串田さんは人生を楽しむ秘密みたいなものを知ってるのでは?と勝手に思っていて。その秘密を、観客の皆様にも一緒に味わっていただきたいです」
十二夜「僕は面白い演劇を観た時『劇場に守られている』と感じます。ヴォイツェックがいろんな運命に導かれる姿を、見せ物小屋という場所とリンクさせる舞台になると思うので“ここだけは守られている見せ物小屋”にできたらと思います」
(取材・文:吉永美和子 撮影:間野真由美)

プロフィール

串田和美(くしだ・かずよし)
1942年生まれ、東京都出身。1966 年、劇団「自由劇場」を結成。音楽劇『上海バンスキング』『もっと泣いてよフラッパー』、コクーン歌舞伎『夏祭浪花鑑』『三人吉三』などを世に送り出す。Bunkamuraシアターコクーン、まつもと市民芸術館の初代館長兼芸術監督を務め、2023年、東京を拠点に新たな創作の場「フライングシアター自由劇場」を立ち上げた。

藤原季節(ふじわら・きせつ)
1993年生まれ、北海道出身。小劇場での活動を経て2013年より本格的に俳優としてのキャリアをスタート。2020年、映画『佐々木、イン、マイマイン』や『his』で注目を集める。近年の主な出演作に、ドラマ『ちるらん新撰組鎮魂歌』、NHK 連続テレビ小説『風、薫る』、舞台『ドードーが落下する』など。主演映画『赤土に眠る』が2027年3月公開予定。

串田十二夜(くしだ・じゅうにや)
1999年生まれ、東京都出身。主演作『西の人気者』で舞台デビュー。以降、『ガード下のオイディプス』『そよ風と魔女たちとマクベスと』ではタイトルロールを演じ、『幸子というんだほんとはね』『Downstate』『海の凹凸』、NHK F Mシアター『父の地下ごもり』などに出演。バーレスク音楽劇『豪華客船タイクツニック号沈没』ではクラリネットを演奏。
公演情報

フライングシアター自由劇場 第8回公演『ヴォイツェック』
日:2026年11月20日(金)〜29日(日)
場:吉祥寺シアター
料:一般7,800円 ペアチケット[2枚1組]15,000円 WZセット券14,500円
※他、各種割引あり。詳細は下記HPにて(全席指定・税込)
HP:https://www.k-jiyugekijo.com
問:フライングシアター自由劇場
mail:flyingtheatre.jg@gmail.com
26名限定! 一般7,800円→6,100円+カンフェティポイント付き!
