つかこうへいが生み出した作品の匂いや魅力を、次の世代に継承したい 何度演じても新たな発見があるのがつか作品の面白さ

つかこうへいが生み出した作品の匂いや魅力を、次の世代に継承したい 何度演じても新たな発見があるのがつか作品の面白さ

 劇作家・つかこうへいの代表作である『飛龍伝』と『幕末純情伝』を二本立てで上演する『つかこうへい革命ミュージカル ダブルス』。近年のつか作品に欠かせない存在となっている高橋龍輝と荒井敦史に、公演に対する意気込みや、つか作品への思いを語ってもらった。

荒井「『幕末純情伝』は既にミュージカルをやっていたので想像がつきましたが、『飛龍伝』はどう変えていくんだろうと思いました。今までたくさんの方々が演じてきた作品に新たなバージョンが生まれるのかなと」

高橋「大変だよね。ただでさえ台詞がたくさんあるのに、踊りも歌もさらに増えますって言われたら」

荒井「(飛龍伝で)龍輝さんが演じる山崎一平は、直近だと石田明さんや味方良介さんが演じていました。僕も観に行きましたが、石田さんが『あるシーンから息継ぎができない』と言っていて。そこに歌と踊りが加わるとなると」

高橋「やばいね。でも楽しみだね」

 高橋は2014年につかこうへいダブルスを経験している。

高橋「1日に『幕末純情伝』と『広島に原爆を落とす日』2作品の稽古があるので切り替えが大変だったのを覚えています。それが初めてのつか作品だったので、とにかくガムシャラに挑みました」

 『飛龍伝』では高橋が第四機動隊隊長・山崎一平、荒井が全共闘作戦参謀本部長・桂木純一郎。『幕末純情伝』では高橋が桂小五郎、荒井が勝海舟を演じる。

高橋「『幕末純情伝』は20代の頃に一度やったことがある役なので、当時よりパワーアップしたものを見せたいです。『飛龍伝』は、まず頑張って台詞を覚える。あと、筧(利夫)さんが演じていた公演を研究しています。まずは観て、いいところを取り入れつつ自分にしかできないことを追求していきたいです」

荒井「僕も龍輝さんと同じで『幕末純情伝』はやったことがあるので、パワーアップさせなければと思っています。本来なら、勝はもっと先輩が演じた方が締まるのかもしれないんですが、僕が20代で演じて、その後先輩たちが演じてまた僕が演じる。少し空気が変わるようなものができたらと思っています。初めてのつか作品が『幕末純情伝』で、あとは全部『熱海殺人事件』だったので、『飛龍伝』はチャレンジです。筧さんたちの時代の公演と戦わないとあまり意味がないと思いますし、もちろん近年、石田さんや味方さんが演じた公演の良さもある。どうしても比べられると思いますが、たくさんの人が継承してきた良さを受け継ぎながら新たなものを作っていきたいですね」

 近年のつか作品常連となっている2人。繰り返し演じる中での変化や成長はどう感じているのだろう。

荒井「成長はあまり感じていなくて、難しいなぁと思っています。今回は『熱海』を初めてやった時くらい緊張するというか、怖さがありますね。年齢を重ねて自然に出てくるもの、身についてしまった小技みたいなものがつかさんの作品をやる上で邪魔になることもあるので、今回は自分を見つめ直す機会になると思います」

高橋「初めて脚本を読んだ時は全くわからなかったし覚えるのも大変だったんですが、経験を重ねるうちに体に染み込んできた感じがあります。あと、今までは先輩たちに食らいついていく姿勢でしたが、最近は年下の子も増えてきたので、いい背中を見せて引っ張っていかないと、と感じています」

荒井「龍輝さん、去年くらいから引っ張ってくれていますよね。今回も期待してます!」

高橋「今回初めての『飛龍伝』だから余裕がないかもしれない。今から台詞をちゃんと覚えようと思ってる」

荒井「今日、それで意見が一致したもん。なんていうか、つかさんの作品って、勇気を出さないと言えないこととかを、いろいろな言葉を使って言っている気がします。この感覚をうまく言葉にすることができないんですが、『なんかかっこいいな』とか『すごい優しいな』とか、ハッとさせられる瞬間がすごく多い」

高橋「それ、『熱海』をやる度に思う。面白いよね」

荒井「演出を受けたその場ではわからなくて、しばらくしてから『そういうことか!』ってわかったりする。僕らはどうしてもつかさん本人にお会いしていないから、当時を知っている方が伝えてくれているものを感覚的に掴めない部分もあると思う。常に発見があるし、つかさんってすげぇと思います」

高橋「終わらないよね。台詞を覚えるのが大変だけど、そこを頑張ったらあとは好きなことができる感覚。自分の芝居が合ってるかもしれないと思えた時は演じていてすごく楽しいし嬉しくなります」

荒井「覚えるのは本当に大変だけど、台本から離れて、みんなで話し合って、本番は何があっても舞台上で完結させるぞと思いを1つにしている感じが楽しい。その空気が本編にもちゃんと流れています。あとは、つかさんの作品をもっと若い世代にも広めていきたい。当時を知っている方々から色々教わるのは僕らの世代がギリギリだと思うので、つかさんの作品や匂いを伝えられるように頑張りたいです」

 10代の頃からお互いを知っている2人。お互いの印象についても聞いた。

荒井「大きく括ると、喋る人(荒井)と喋らない人(高橋)だと思います(笑)」

高橋「僕からしたらありがたいですよ、雰囲気を作ってくれるから。そこに乗っかっていける。あっちゃんはすごく頼りになります」

荒井「近年の『熱海』は龍輝さんがいなきゃ僕の伝兵衛はできてなかったと思う。10代の頃は演じていた役のイメージで天才だと思っていて、今もそのままのイメージですね。あと、去年くらいから“ズルい大人”な先輩をやってる(笑)。アドバイスするタイミングが絶妙だし一言に重みがあるので、後輩はみんなグッと来るんだと思います。僕はずっと喋ってるから、後輩もどれを拾っていいかわからないわけ」

高橋「そんなことないよ(笑)」

荒井「今回は先輩たちの胸を借りつつ、村山・岡田を引っ張って走り抜けたいよね。それくらいの気概がないと、僕らの役割みたいなものは果たせない気がする」

高橋「僕も頼りにしています。最近の『熱海』ではバディみたいな感じになっていて、あっちゃんがいるだけで心強い。『熱海』以外で一緒にやるのは初めてなので、どう絡んでいくか楽しみですし、楽しみにしてほしいです」

 最後に、楽しみにしている皆さん、まだつか作品に触れたことがない方へのメッセージを寄せてもらった。

荒井「俳優をやっている方、僕より若い世代の方、観たことがない方は、一度観ておいて損はない作品です。僕らもそうだったし、僕らはそこに憧れて入ってきているので。近年は、社会で生きるために感情や言葉を抑えることがあると思います。それをまっすぐ伝える美しさや泥臭さ、優しさを感じられるのがつかさんの作品だと僕は感じます。それに『飛龍伝』と『幕末純情伝』を同時期に見られるなんて本当に贅沢で素晴らしい企画。3週間ほど公演をしているのでぜひ観にきてください」

高橋「この舞台を通して伝えたいのは、一生懸命何かをすることの美しさ。AIなどでなんでも手軽にできる時代になってきていますが、稽古という過程を経て作り上げるのが舞台です。つかさんの作品は感情がむき出しになっていく舞台なので、普通に観ていても『一生懸命やってるな』と思うはず。『自分も一生懸命何か頑張ってみよう』と思ってもらえるように僕らも一生懸命稽古して、いいものを見せられるように頑張っていきたいです」

(取材・文:吉田沙奈 撮影:NORI)

プロフィール

高橋龍輝(たかはし・りゅうき)
1993年3月28日生まれ、宮城県出身。ミュージカル『テニスの王子様』で俳優デビュー。主な出演作に、『仮面ライダーフォーゼ』、映画『魔法少女を忘れない』、朗読劇『銀河鉄道の夜』、舞台『美しきもの』、『熱海殺人事件』ラストメッセージ、『オレンジノート』など。

荒井敦史(あらい・あつし)
1993年5月23日生まれ、埼玉県出身。第21 回JUNON スーパーボーイコンテスト ビデオジェニック賞を受賞。主な出演作に、映画『メサイア』、『リアル鬼ごっこ』シリーズ、『HiGH&THE WORST』シリーズ、ドラマ『水戸黄門』、『サ道』シリーズ、舞台『ルール〜「十五少年漂流記」より〜』、『極めてやわらかい道』、『熱海殺人事件』ラストメッセージなど。

公演情報

つかこうへい革命ミュージカル ダブルス
『飛龍伝 / 幕末純情伝』

日:2026年11月5日(木)~22日(日)
場:紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA
料:9,500円(全席指定・税込)
HP:http://www.rup.co.jp
問:Mitt tel.03-6265-3201(平日12:00~17:00)

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