松居大悟 渾身の作を、“戦友であり相棒”の川名幸宏が演出　共に演劇を作ってきた間柄だから叶う、豊かな創作

　2011年に初演、2018年公開の映画『君が君で君だ』の原作としても知られる、松居大悟の『極めてやわらかい道』。今回、川名幸宏の潤色・演出により本多劇場での上演が決定した。

川名「DVDでしか観られていませんが、僕の転換点となった大事な作品。演劇はとても面倒でつらい芸能だと思いますが、だからこそ得られる余韻や疲労感がある。そこに正面から取り組まなければと思いました」

松居「心身を削って書いたこともあり、上演後にゴジゲンは活動休止に。そんな作品なので、話を聞いたときは『正気かな？』と思いました（笑）。でも『これをやりたい』と言ってくれた川名くんの気持ちが嬉しかったです」

　松居と川名は、これまで4作品で演出と演出助手として共に作品作りをしてきた関係だ。

川名「松居さんは演劇を作ることに対してすごくピュア。そして周りに『一緒にやりたい』と思わせる魅力があります。一つひとつの作品に心身を懸ける姿に、刺激を受けてきました」

松居「そういう川名くんも、演劇が好きなことに対してピュア。視野が広くとても優しい一方、周りに配慮するあまり自分の衝動が見えづらくなっている気もします。その衝動と改めて向き合うために本作をやるのかなと」

　現在は川名が潤色した脚本に松居が目を通し、気づいたことを伝えるというやりとりを幾度も重ねているという。

川名「一番重きを置いたのは、自分が観たときの空気感を再現すること。あの衝撃の核をしっかり掴み、大まかな設定は変えず、細かなところに手を入れさせてもらっています」

松居「今回、川名くんが潤色した脚本を読んでいるうちに、僕の中の尾崎豊（主人公）が動き出したんです。なので、川名くんが描く尾崎との間にズレを感じる部分については伝えました」

川名「『俺の中の尾崎はこうで……』と濃いノートをいただきました（笑）。松居さんが生み出したキャラクターですから、松居さんの指摘が尾崎像を掴むきっかけになっています。とても有意義な時間です」

　主演に鳥越裕貴を迎え、川名選り抜きのキャストが揃った。

川名「本折最強さとしさんは、ゴジゲンの空気や松居作品を体現できる役者として絶対に入れたいと思っていました。（永島）敬三さんは本折さんとまた違う文脈の読み方をする人。この技巧派2人の並びは新鮮かなと」

松居「どんな演出になるのか、セットをどうするのか、キャスト間の化学反応はどうなるのかなど、いろいろ楽しみです。ただ僕としては、鳥越が尾崎豊というのが納得いっていないんだけど……（笑）」

川名「同じ事務所の後輩じゃないですか（笑）。僕の想いが詰まった、信頼できる役者さんばかりなので、稽古場で豊かな時間が過ごせると思います」

（取材・文：木下千寿　撮影：間野真由美）

松居大悟さん
「加湿清浄機です。寒い日が続くので暖房をつけることも多くなり、部屋が乾燥する中で、こいつが冬場は活躍しています。なんなら彼がいなければ部屋でのゆったり時間は過ごせないことでしょう。その活躍あってか、加湿器タンクの水がなくなって加湿器タンクに水を入れている時間が頻繁に訪れ、これは僕と彼とのコミュニケーションと言っても過言ではないでしょう。加湿器に水を入れるのはもちろんのこと、定期的に加湿器ごと掃除しないと水アカが溜まってしまうので、冬場はコミュニケーションが増えていきます。手がかかるほどかわいい、ということなのかもしれません。彼が必要なんだ！口では言わないんだけど！」

川名幸宏さん
「近所にあるお弁当屋さんのお弁当。ちょっとだけ高いけど、手作り感があっておいしくて、休みの日に買っちゃいます。あと、最近できたパン屋さん。シナモンロールがおいしい。どちらもお家でのんびりと思って買いますけど、アイテムというより食べ物ばかりでごめんなさい！」

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