創立35周年を迎えた花組芝居が挑む、文豪・三島由紀夫の大作 明治期の上流階級が集まる宴に鳴り響く2発の銃声。打ち抜かれたのは何?

創立35周年を迎えた花組芝居が挑む、文豪・三島由紀夫の大作 明治期の上流階級が集まる宴に鳴り響く2発の銃声。打ち抜かれたのは何?

 小劇場に歌舞伎を持ち込み“歌舞伎の復権”を掲げ、独自の世界観を繰り広げる花組芝居が、創立35周年記念として、三島由紀夫の『鹿鳴館』に挑む。

加納「三島由紀夫さんの作品は上演許可が降りるかが心配でした。それでも節目に大きな作品をと思い選びました。女優を女形でやるので心配したのですがスムーズに許諾を頂きました」

 今回はコロッケ組とカツレツ組の2チーム編成。主人公の伯爵夫人・影山朝子を加納幸和と、在籍15年になる谷山知宏が務める。

加納「コロッケ組は谷山をはじめ中堅メンバー。カツレツ組は旗揚げメンバーを含むベテランと最若手の組み合わせです。平均年齢を比べてもあまり変わらないんです」

 谷山は最近の作品でダブルキャストを組む時によく起用される、信頼できる中堅だという。

谷山「20周年記念公演で入座披露しました。入る時から女形志望だったのですが、なかなか役がまわってこなくて。稽古が終わった後に女形の所作を勝手に真似ているのを座長が見て、やらせてくれたようです。僕は歌舞伎というより大衆演劇に影響されたところがありますね」

 では、それぞれこの作品にどんな印象を持っているのだろう。

加納「三島さんは“近代演劇で古典に対抗できるものは何か”と考えた結果が、台詞術だろうと言われていた。そのとおり、『鹿鳴館』はもう純粋な会話劇ですよ。でも僕は以前『サド侯爵夫人』をやっているので、まだ気持ちに余裕がありますが(笑)」

谷山「『鹿鳴館』はハードルが高いイメージです。台本を見ると結構な会話劇ですが、実際に読み合わせをしてみると、普通の会話劇ではないスーパー会話劇ですよ(笑)」

 もちろん加納がこれまで上演されてきたようにこの作品を演出するわけはなく、花組芝居ならではの『鹿鳴館』に仕上げてくるに違いない。

加納「明治の舞踏会はダンスも音楽もおそらく凄くギクシャクしていたはずが、三島は『鹿鳴館』を書くにあたりそういった現実はさておき、演劇的フィクションとして、いかにも華麗で見事だったとして書いている。これまでの上演における演出も、それに忠実に華麗に仕上げていますが、我々はむしろキッチュな方向で挑みたいと思います。
例えば演奏がチンドン屋の編成だったり、衣裳も着物をリメイクしたものだったり。そんな中で人間同士の愛憎を描いてみたいです」

 花組芝居版『鹿鳴館』。さてどんな舞台になるのか、楽しみだ。

(取材・文:渡部晋也 撮影:平賀正明)

あなたが一番、プレゼントをあげたい人やモノはなんですか?

加納幸和さん
「より多くの皆様に、花組芝居の『鹿鳴館』というプレゼントを進呈したいです! そうすれば、皆様の心が豊かになり、私達も嬉しいからであります。11月17日~27日のお渡し場所は、東京・あうるすぽっと。12月3日~4日のお渡し場所は、大阪・ABCホールです」

谷山知宏さん
「プレゼントを普段贈ったりしない私なので、誰にあげるかな~と考えた時、パッと浮かんだのがなぜか、ナイロン100℃の廣川さんだった(笑)。稽古中、あまり呑み歩いたりできない昨今、twitterで見かけた、廣川さんの還暦お誕生日祝い。以前ご近所ということもあり、お正月も実家に帰らない私は、お正月に昼間から廣川さんのお家でお雑煮とお酒をご馳走になったり。そのお家がなんとも東京ではない居心地の良さ(笑)。今はまだなかなか吞みに伺えないですが、も少し落ち着いたら、551の豚まんでも持ってまたお家に呑みに行きたい。と勝手に予定を立てている私!」

プロフィール

加納幸和(かのう・ゆきかず)
兵庫県生まれ、東京育ち。幼い頃から歌舞伎に親しんで育ち、日本大学藝術学部・演劇学科に進む。卒業論文「『櫻姫東文章』の再生と可能性」で芸術学会賞を受賞。1987年に俳優やスタッフを集めて「花組芝居」を旗揚げ。“歌舞伎の復権”を目標にした、男性だけの劇団として活動を開始。小劇場ブームの終焉期に登場した個性派劇団として注目を集める。俳優・演出家・座付き作家として活躍する傍ら、劇団以外の作品にも参加している。

谷山知宏(たにやま・ともひろ)
大阪府出身。2006年『ザ・隅田川』より研修生として参加。2007年『かぶき座の怪人』より正式に入座。2015年、新国立劇場で上演された『東海道四谷怪談』では小仏小平を、また劇団公演『毛皮のマリー』でマリー、『黒蜥蜴』の黒蜥蜴と、タイトルロールも多く演じている。『義経千本桜』では狐忠信で好評を博す。長年続けているジャズダンスの他、日本舞踊も達者で、柔軟な体と独特の感性で男役・女形の両方をこなす。

公演情報

花組芝居 創立35周年記念公演 第二弾『鹿鳴館』

日:2022年11月17日(木)~27日(日) ※他、大阪公演あり
場:あうるすぽっと
料:一般7,000円 U-25割引[25歳以下]4,000円 高校生以下1,000円※U-25・高校生以下は要身分証明書提示(全席指定・税込)
HP:https://hanagumi.ne.jp/
問:花組芝居 mail:office@hanagumi.ne.jp

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