普遍のテーマが詰まった作品をよりリアリティを持って伝えたい! 劇団スタジオライフによる舞台版『アドルフに告ぐ』8年ぶりに上演

普遍のテーマが詰まった作品をよりリアリティを持って伝えたい! 劇団スタジオライフによる舞台版『アドルフに告ぐ』8年ぶりに上演

 手塚治虫原作『アドルフに告ぐ』の舞台版が、3度目の上演を果たす。第二次世界大戦前後の時代、「アドルフ・ヒトラーがユダヤ人の血を引く」という機密文書を巡り、ドイツ人のアドルフ・カウフマンと、ユダヤ人のアドルフ・カミルが時代に翻弄されていく壮大な歴史ドラマだ。初演から出演している曽世海司、松本慎也と、今回初参加の申大樹、三上陽永が作品に臨む思いを語った。

曽世「2007年の初演時は、スタジオライフが漫画原作の舞台化を様々にやってきた中で、遂に手塚先生が普遍性を貫いて描かれた作品をやらせて頂けるという喜びと責任を感じたのを覚えています。それから8年後の再演では、壮大な物語を3つの視点で描いたのですが、今回はギュッと凝縮した1つの作品として上演します。作品の語り部でもある、峠草平をずっと演じていますが、語り部としての役割と劇中の人物として生きるという切り替えが、課題であり楽しさでもあります。今回もそこを追求しつつ、今世界で起きている問題に対して心が摩耗しているように思う日本社会に、エンタメで心を動かしてみませんか?と提示できたら」

松本「再演から演じているカウフマンは、凄く演じがいがあり、喜怒哀楽の表現が詰まっているので演じていて楽しいです。カミルとの芝居がとても大切なので、三上さんのカミルから何を貰えるかも楽しみですね。ウクライナの問題なども起きているこのタイミングで、戦時下で生きている人達のことをお客様に届ける意義はさらに大きくなっていると思います。よりリアリティを持って演じたいです」

申「自分の劇団で独裁者をテーマにした作品をやっていますが、20代の子達と話している時に戦争に対して1つフィルターを通しているというか、肌感覚ではどうしてもわからないんだなと感じるんです。せっかく呼んでいただきましたから、3人のアドルフが辿る道程や政治情勢をよく考えながらカミルを演じていきたいです」

三上「原作はもちろん戦争について描かれていますが、皆が沢山恋をするのがリアルだなと。カウフマンとカミルも同じ人に恋をしますよね? つまり争いの根底には愛があって、愛を掘り下げていくと宗教、さらに掘り下げると戦争に繋がるんじゃないかというテーマは、どの時代の人にも理解できると思います。ダブルキャストで見えるものも変わってくるはずなので、両バージョンを観にいらして下さい!」

(取材・文:橘 涼香 撮影:間野真由美)

プロフィール

曽世海司(そぜ・かいじ)
劇団スタジオライフの中心メンバーとして活躍する中、外部出演も精力的に行う。また、個人としてもカフェ落語とフリートークで構成されるトークライブ『ことのはドリップ』を毎年開催している。


松本慎也(まつもと・しんや)
2004年、劇団スタジオライフ入団当初から作品の中心となる役柄を演じる。主な出演に『トーマの心臓』、『死の泉』、舞台『魔術士オーフェン』シリーズ、『スペーストラベロイド』など、劇団公演、外部公演と多くの作品に出演している。

申 大樹(しん・だいき)
2020年に深海洋燈を設立。脚本・翻案・構成・演出を担当。独特な目線で作品や物事を切り取り、ダイナミック且つ繊細な演出に定評がある。2022年に上演された、つかこうへい2作品では“奇才”と呼ばれ、好評を博した。

三上陽永(みかみ・ようえい)
虚構の劇団 劇団員。同劇団員の渡辺芳博らと演劇ユニット ぽこぽこクラブを立ち上げ、作家・演出家としても活躍。役者として多ジャンルで活躍できることを目指し、常に演技の幅を広げている。

公演情報

スタジオライフ公演『アドルフに告ぐ』

日:2023年10月26日(木)~11月1日(水)
場:東京芸術劇場 シアターウエスト
料:一般8,500円
 イブニングシート[夜公演・枚数限定]5,000円 
 学生3,000円 高校生以下2,500円
 ※学生・高校生以下は要学生証提示
 (全席指定・税込)
HP:https://studio-life.com/stage/adolf2023/
問:スタジオライフ
  tel.03-5942-5067(平日11:00~16:30)

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