ほんの150年程前、日本が近代国家の建設を始めた頃。そこには様々な知識をもたらした外国人達がいた。明治維新に先駆けて来日した、フィリップ・フランツ・フォン・シーボルト（以下、大シーボルト）とその２人の息子達は、日本人以上に日本を愛した“蒼い目のサムライ”と呼ぶべき存在であった。
そんな彼らの生涯を舞台化したのが本作『シーボルト父子伝〜蒼い目のサムライ〜』だ。再々演となる今回は、鳳が演じる主人公ハインリッヒ（小シーボルト）の父、大シーボルトをベテラン俳優の辰巳琢郎が演じる。
鳳「大シーボルトは、来年初来日から200年の節目なんです。だから長崎でお滝さんと恋をして、結婚する話などが盛り込まれます。もちろん今までと同じく、日本の美しさや日本人の誠実さを伝える作品にしたいです」
辰巳「シーボルトは日本を海外にちゃんと伝えた人として興味があります。また、僕自身がつかこうへいさん世代だから、つかさんの門を叩いた鳳さんが、こうした作品をやっていることにも興味があります。
中小劇場というのは贅沢な空間だし、ライブの良さ、一期一会の時間を共有することに意義を感じます。誤魔化しの効かない中小劇場に出るのは緊張します。寿命が縮むんじゃ無いかと（笑）。しっかり作り込んで熱量が伝わる、良い作品にできるよう頑張ります」
主題歌、挿入歌を含む劇中音楽を提供しているパッパラー河合が俳優として本格出演することも興味深い。
河合「昨年、鳳さんの舞台に出演しましたが、物凄く緊張したんです。台詞も大変で『もうヤダ！』と思ったのが、半年も経つとまたやりたくなってきて（笑）。今年からツイッターのプロフィールに俳優を加えました」
そして、元AKB48の市川美織は、鳳が演じるハインリッヒの妻・岩本はな役で参加。鳳との付き合いは長い。
市川「私は、ハインリッヒの妻を演じますが……凄く照れますね（笑）。だって鳳さんは、私が10歳の時に出た初出演舞台で、私のお母さん役、再共演した舞台『こと～築地寿司物語～』でもお母さん役だったのに……。今回それが旦那さん役ですよ（笑）。
公私共に私にとってお母さんのような、お姉さんのような鳳さんに恋をするのだから、複雑な気分です（笑）」
新たなキャストを迎え、さらに進化した舞台になりそうだ。
鳳「この３年間、演劇界に限らず世界は大きな脅威に襲われてきました。ですが、人は様々な困難に立ち向かい打ち勝ってきたからこそ今の私達がいる。私達も前を向き、笑顔で次の世代にバトンを渡せるようにこの作品で時代を乗り越えます。歴史は証明している！ 日本人は強いです！」
（取材・文＆撮影：渡部晋也）
プロフィール
鳳 恵弥（おおとり・えみ）
東京都出身。02年 準ミス・インターナショナル日本代表に選出。04年 ★☆北区つかこうへい劇団に13期生として入団。公演プロデュース・執筆活動・演技指導などマルチに活躍。芸能20周年の19年 演劇ユニットACTOR’S TRIBE ZIPANGを旗揚げし、演出・脚本を手掛ける。22年 劇場都市TOKYO 演劇祭 最優秀主演俳優賞を受賞。
辰巳琢郎（たつみ・たくろう）
大阪府出身。高校時代につかこうへいの舞台に感銘を受け芝居を始める。大学卒業と同時にNHK 連続テレビ小説『ロマンス』に出演。以後、ドラマ・映画・舞台で活躍。食に造詣が深く、中でもワインは日本ソムリエ協会から名誉ソムリエを贈られるほど。
パッパラー河合（ぱっぱらーかわい）
千葉県出身。爆風スランプのギタリスト。俳優として映画やドラマの出演経験もあったが、22年『ナビゲーション』で本格的な舞台作品に初出演。今回はそれに続く出演となる。『シーボルト父子伝』では初演より主題歌挿入歌を含む劇中音楽を提供。22年、劇場都市TOKYO 演劇祭 音楽賞を受賞。
市川美織（いちかわ・みおり）
埼玉県出身。小学５年生の時にスカウトされ芸能界入り。舞台・映画に出演。10年AKB48第10期研究生オーディションに合格、翌年正規メンバーに昇格、紅白歌合戦などにも出場。俳優としては『こと～築地寿司物語～』など舞台を中心に活躍中。
公演情報
ACTOR’S TRIBE ZIPANGプロデュース『シーボルト父子伝 ～蒼い目のサムライ～2022』
日：2022年8月10日（水）～14日（日）
場：築地本願寺ブディストホール
料：S席8,000円 A席6,000円（全席指定・税込）
HP：https://mobile.twitter.com/siebold_fushi
問：ACTOR’S TRIBE ZIPANG mail：siebold.ticket.2021@gmail.com
