
フランス北部・カレーに実在した難民キャンプを舞台に、異なる国籍や宗教、文化を持つ人々の分断と連帯と葛藤を描く『ジャングル』。KAAT神奈川芸術劇場と劇団・阿佐ヶ谷スパイダースがタッグを組み、公募で集まった神奈川県民と共に、長塚圭史の演出でこの作品に挑む。
「KAATの芸術監督として劇場の年間プログラムを考える中で、“なぜ人は線を引くのか”ということが自分の中で芽生えていました。この作品は国境を越える話であり、難民の話であり、異なる環境や宗教、文化を持つ人達が登場します。当初は、アジアのメンバーだけでやることに想像があまりつかなかったのですが、でも今こそやる意味があると思ったんです」
創作に参加する県民は、学生から会社経営者、主婦までさまざま。戯曲を読み解き、難民支援に携わる人や研究者の話を聞く勉強会を重ね、大道具づくりにも参加してきた。
「例えば劇団員もどうしても“劇団”という線を引いてしまう。でも県民の皆さんが入ってくることで、その枠組みが少し消えていく面白さもあるんです」
その試みは舞台と客席の境界にも及ぶ。囲み舞台のような会場では、客席で飲食しながら観劇できる趣向も予定されている。
「ただ眺めるというより、同じ一つの空間の中にいるような感覚になると思います。何かを口にしながら観ることで、自分達もキャンプの中にいるような感覚を少しでも想像できたら」
作品の題材となった出来事から約10年だが、長塚は「これは現在の問題です」と語る。作品と向き合ううち、難民問題をある意味超えた、より根源的な問いに行き着いたそう。
「移民・難民達は命がけで、生きる場所を求めて新たな土地を目指しています。でも、そもそも僕達は国に属するのか、地域に属するのか。何によって立っているんだろう。この作品は、そんな問いを僕達に与えてくれるんです」
決して軽い題材ではない。それでも、この戯曲に長塚が惹かれた理由の一つは、その根底に人間への希望があるからだ。
「暗いだけじゃないんです。厳しい環境でも人間が集まっているから明るさがある。強さがある。連帯がある。作家達は人間に期待しているんです。そこが本当に素晴らしい。空間も勿論ですが、戯曲の良さを最大限に見せたいですね」
劇団と県民、舞台と客席、国と国。さまざまな“線”を揺さぶりながら立ち上がる『ジャングル』。その空間に身を置いたとき、私達が無意識に引いている“線”も見えてくるのかもしれない。
(取材・文:五月女菜穂 撮影:FUMI)
プロフィール

長塚圭史(ながつか・けいし)
劇作家・演出家・俳優。1975年5月9日生まれ。東京都出身。1996年、早稲田大学在学中に演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。2017年に劇団化。2011年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、2017年には、福田転球・大堀こういち・山内圭哉と新ユニット「新ロイヤル大衆舎」を結成。2021年4月、KAAT神奈川芸術劇場芸術監督に就任。近年の主な作品に、KAAT×新ロイヤル大衆舎Vol.2『花と龍』(演出・出演)、阿佐ヶ谷スパイダース『さらば黄昏』(作・演出・出演)、彩の国シェイクスピア・シリーズ 2nd Vol.3『リア王』(演出)など。
公演情報

KAAT×阿佐ヶ谷スパイダース『ジャングル』
日:2026年10月10日(土)~11月1日(日)
場:KAAT 神奈川芸術劇場 〈大スタジオ〉
料:一般6,500円 U24チケット[24歳以下]3,200円 高校生以下1,000円 ※他、各種割引あり。詳細は下記HPにて(入場順整理番号つき自由席・税込)
HP:https://www.kaat.jp/d/jungle2026
問:チケットかながわ tel.0570-015-415(10:00~18:00)
32名限定!一般6,500円 → カンフェティ特別価格(チケットサイトにてご確認下さい)+ カンフェティポイント付き!
