イングランド王の地位をめぐる家族、愛妾、敵国王らの会話劇 「笑えるくらい、お互いをえぐり合う人間の姿に本性が見えてくるはず」

イングランド王の地位をめぐる家族、愛妾、敵国王らの会話劇 「笑えるくらい、お互いをえぐり合う人間の姿に本性が見えてくるはず」

 タイトルの『冬のライオン』とは、佐々木蔵之介が演じるヘンリー二世のことだ。1183年、イングランド初代国王ヘンリーの跡目を誰が継ぐのか、王妃、息子達、敵国の王、愛妾らの思惑が入り乱れていく。
 戯曲を読んだ時に佐々木蔵之介はまず最初のト書きに注目した。

 「『50歳を越えた男というものは、老衰が始まる直前に肉体も精神も活力も急上昇する時期がある。この男は今その時期で、自分が急に高まっている所を楽しんでいる』……というようなことが書かれているんです。
 でも僕は、もう気張らんと譲った方が楽やん、と思うのです。なぜ、親子や兄弟同士でえぐるような言葉をぶつけ合い、試し、裏切り、欺かなければいけないのか」

 互いを突き刺す言葉の応酬について佐々木は「面白いぐらいやり合うな(笑)と呆れながら楽しく観られるのかも」と予想する。

 「上流階級の人達を客観的に見ることで、別世界の中に人間の本性を感じるんでしょうね。そして、彼らが本当に求めているのは領地や地位や金や名誉ではなく、愛したり愛されたりすることなんじゃないかと思える作品です」

 今舞台は演出の森新太郎の「佐々木のヘンリーを見たい」との提案で実現した。

 「森さんは『BENT』(2016年)の時に、苦しい話をちょっとしたユーモアで笑いが生まれるようにすることを、とても大事にしていました。きっと今回も“いい年してなんでそんなに実の息子と張り合うんだ?”とちょっと笑える感じにしようと考えてらっしゃるのかな。僕はもうお任せしますよ」

 『冬のライオン』は1966年に初演され、1968年に映画化。その年に産まれた佐々木は、この戯曲が今の時代の上演に耐えうる強さと、さらに遡り900年も前に生きた人々を演じることの面白さを語る。

 「舞台上ではリアルな芝居を求めなくていいんです。芝居くさい中にリアルなものがあるから。そこに僕たちも、お客様も、一緒に真実を見つけていくのが舞台。先日ひさしぶりに演劇をすると、コロナ禍で客席に隙間を空けながらやることに“熱や思いはどう届くんだろう?”という思いがあったんです。
 でもそんな状況の中で、観客も俳優もお互いがリアリティを求めて、“この貴重な瞬間を共有しよう、楽しもう、ありがとう”という気持ちでいたと思う。お互いに信じてやればいいんだなと再確認させてもらいました」

(取材・文:河野桃子)

プロフィール

佐々木蔵之介(ささき・くらのすけ)
 1968年、京都府出身。神戸大学在学中に劇団「惑星ピスタチオ」の旗揚げに参加。大学卒業後も広告代理店に勤務しながら舞台に立ち続ける。2000年に出演したNHK連続テレビ小説『オードリー』で脚光を浴びる。舞台では第17回読売演劇大賞優秀男優賞(2010年)、映像では映画『空母いぶき』(2020年)で第43回日本アカデミー賞優秀助演男優賞などを受賞。
 近年の映像出演作にNHK大河ドラマ『麒麟がくる』、ドラマ『ミヤコが京都にやって来た!』、ドラマ『IP〜サイバー捜査班』、ドラマ『和田家の男たち』など。最近の舞台公演に、自身がプロデュースする「Team申(さる)」の 『君子無朋』(2021年7月)がある。

公演情報

『冬のライオン』

日:2022年2月26日(土)~3月15日(火)
場:東京芸術劇場 プレイハウス
料:S席9,500円 A席7,500円
  サイドシート5,500円
  ※他、各種割引あり。詳細は団体HPにて
  (全席指定・税込)
HP:https://www.thelioninwinter.jp/
問:東京芸術劇場ボックスオフィス
  tel.0570-010-296(10:00~19:00/休館日を除く)

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