新たな10年に向けて飛翔する『VOICARION』10 th Anniversary『龍馬のくつ』上演中!

新たな10年に向けて飛翔する『VOICARION』10 th Anniversary『龍馬のくつ』上演中!

超豪華キャスト×生演奏と、独創的なSTORYによる贅沢な音楽朗読劇として愛され続けている藤沢文翁原作・脚本・演出による『VOICARION(ヴォイサリオン)』シリーズが、2016年の初演から10周年迎えたことを記念して、2026年2月から過去に上演された9作品のうち、7作品の一挙連続上演が全国各地で続いている。その祝祭の時のなか、現在『VOICARION』のホームグラウンドである日比谷のシアタークリエでは、幕末維新の英傑として讃えられる坂本龍馬の巷間語られてきた姿を、新たな視点で照射した『龍馬のくつ』が上演中だ(22日まで)。

『龍馬のくつ』は、坂本龍馬とその妻お龍、そして幕末の志士としていまもその名を轟かせている西郷隆盛、土方歳三など、それぞれの信じるところに従った人々の意外な素顔を描くという、藤沢朗読劇の醍醐味が詰まった作品。そもそも『VOICARION』シリーズがスタートした2016年の二作品連続上演の1本で、再演を重ねている『Mr.Prisoner』を演じる不動のトリオである上川隆也林原めぐみ山寺宏一による、10周年Anniversaryに相応しい舞台が展開されている。

【STORY】
知っていますか?
明治の末期まで
坂本龍馬はほとんど無名の志士だったことを?
坂本龍馬の名前が世に出た時
妻であったお龍は、すでに老齢にあった。
英雄となり、話に尾ひれがついた坂本龍馬の物語の中には
彼女が大好きだった龍馬の姿はなかった。
アタシの知っている龍馬がいなくなっちゃう・・・
龍馬の死後、たったひとりぼっちで生きてきた坂本お龍
天真爛漫で破天荒だったお龍の魅力を愛せたのは龍馬ただ一人
お龍は語り始める。
彼女しか知らない、坂本龍馬の物語を・・・

それは、生まれる時代が早すぎた二人の物語だった。

「プレミア音楽朗読劇 VOICARION」と名付けられたこのシリーズは、音楽と物語が絶妙に絡み合ったオリジナル音楽朗読劇創作の第一人者である藤沢文翁が原作・脚本・演出を手掛け、東宝とタッグを組んでの創作が続けられてきた。「朗読劇」が広義に捉えられるいま、役柄と演者ひとり一人に合わせて新調されるという、こだわりの衣装に身を包んだキャストがマイクの前に立ち、台本を持って演じる『VOICARION』シリーズのスタイルは、むしろ古典の風格を漂わせている。そこにはキャストの声の力を信じた演劇的想像力の膨らみ。音楽監督・作曲の小杉紗代を中心に、作品の世界観に合わせて登場する村中俊之WASABIによる多種多彩なオリジナル楽曲を、キャストと同等の出演者という位置づけの生演奏で奏でるミュージシャンたち。作品の世界観を伝えるシンプルでありながら豪華なセット。多彩な照明効果など、聴覚と視覚に訴える、ここにしかない「藤沢朗読劇」の深い興趣があり、10年の時を重ねて愛され続けてきた。

特にこの10年間には全ての劇場の灯が消えるという、想像もできなかった現実が押し寄せたコロナ禍もあったが、その荒波のただなかにあっても『VOICARION』は、観客のメッセージが一席、一席に貼られたシアタークリエの無人の客席に想いを寄せる、全ての人々に届けられた『女王がいた客室』の無観客上演。完全リモートで生み出され、音声データ配信として世に出た『ル・レーヴ~ジュール・ヴェルヌの愛した少女~』。そして、『VOICARION』の創造空間は、大劇場をも埋め尽くすことができると証明してみせた「声歌舞伎『信長の犬』」の帝国劇場での上演実現など、全ての逆境を新たな可能性を拓く力に変える、見事な広がりを見せてきた。それは『VOICARION』という命名が、声=VOICEと、ギリシャ神話に登場する天馬ARION(アレイオーン)を組み合わせた造語で、そこには声によって聴く者の想像力の翼がどこまでも高く羽ばたいていくように、との藤沢の願いが込められているという事実が、まるでこの10年を予見していたかのように感じられるほどの軌跡だった。

そんななかで、7作品一挙上演後半戦のスパートを担って登場した『龍馬のくつ』は、まさにこの10周年Anniversaryの祝祭を象徴している。というのも、2020年に初演されて以来の再演となるこの作品には、前述した通り『VOICARION』を語る上で欠かせない作品である『Mr.Prisoner』を担い続けてきた上川隆也、林原めぐみ、山寺宏一を擁しての上演という、初めは耳を疑ったほどのキャスティングが実現したからだ。万に一つも誤解のないように敬意を込めて書くが、これは初演で坂本龍馬を演じた宮野真守の素晴らしさを否定するものでは微塵もない。あの舞台は紛れもなくこの上ない美しい記憶として残り続けている。ただ、その初演の輝かしい思い出とは全く別の次元で、『VOICARION』シリーズとしては『Mr.Prisoner』に特化されたトリオだとどこかで思い込んでいた上川、林原、山寺のタッグが、別作品でも展開されること。つまり前述のコロナ禍を跳ね除けたのと同じように、10周年を迎えた『VOICARION』が、ただここまでの軌跡を回顧し祝うだけではなく、次の10年に向けての攻めに出ていることが、ハッキリと示されていたからだ。

実際、新たに展開された『龍馬のくつ』に登場する、妻のお龍の目を通して語られる坂本龍馬の姿、誰もが安心して暮らせる世の中のかたちを見据える目を持っていたものの、決して勇ましい豪傑ではない「人間・坂本龍馬」の、有名エピソードを巧みに取り入れながら尚、普通の人だと思わせる上川隆也の演じぶりの素朴さには、なんとも温かいものがあった。それは日中合作ドラマ「大地の子」で主演に抜擢されて以来、今日まで数限りない映像、舞台作品で中心となる人物を演じ続けている上川の根っこにある、小劇場で躍動する俳優としての顔が、ふわっと浮かび上がるのを感じさせる、観て、聞いていて、胸が熱くなる姿だった。そこには、ひとりの小説家が生み出したイメージが歴史上の人物像を強烈に固定している例としてしばしばあげられる、司馬遼太郎が描いた坂本龍馬像、司馬史観のなかに生きる「竜馬(司馬の小説「竜馬がゆく」では竜の字が用いられている)」とは異なる、藤沢文翁の描く龍馬であり、上川の演じる龍馬がいた。これは思う以上に貴重なもので、藤沢の作劇の確かさと共に、上川の持ち味と演技力に脱帽させられる。

その妻・お龍の林原めぐみは、自身にとっての真実の龍馬を語る老境のお龍と、龍馬が生きた時代を共に生きる若き日のお龍を、鮮やかに切り替えながら舞台を生きていく。そこに現れたのは、衣装もメイクも変わっていないことが逆に信じられないほど、声色はもちろん立ち姿、表情だけで年月の経過がわかるお龍その人だった。眉目秀麗で、思ったことをハッキリと言い、進歩的な考えを持っている。つまり当時の女性の美徳とされていたものとは真反対に位置する存在であるお龍を、キリリとした美貌で具現している林原自身の美しさもあいまって、自分をたった一人理解してくれている龍馬の存在が、お龍にとって如何にかけがえのない者だったのかが心にしみる。だからこそ「ひとりぼっち」の真実を語る台詞には涙を禁じ得なかった。

そして、お龍に世間の求める坂本龍馬の武勇伝を聞きに来る、この物語をそもそも動かす存在である陸奥廣吉をはじめ、その他の登場人物を演じ分ける山寺宏一が「七色の声を持つ男」の異名を存分に発揮して、舞台を運んでいく様が鮮やか。特に西郷隆盛と土方歳三という、幕末の志士のなかでも超のつく有名人同士を、同じ山寺が1本のマイクの前で演じているのを、LIVEとして目にできる『VOICARION』の醍醐味を双肩に担っての演じぶりには感嘆するしかない。そのなかでも、土方歳三の印象的な登場の仕方と、新選組を組織した「鬼副長」としての、つまりこちらも司馬史観がリードする土方像とは趣を異にした、人間味あふれる姿に新鮮さとシンパシーが共にあり、『龍馬のくつ』という作品自体の魅力をも大いに高めてくれた。

こうした歴史上の人物たちに新たな命を吹き込むのは藤沢朗読劇の、『VOICARION』シリーズの真骨頂でもあり、日本を舞台にした作品を共に担う作曲・演奏の新・純邦楽ユニットWASABIの、音楽監督・津軽三味線の吉田良一郎(吉田兄弟)、尺八の元永 拓、箏の市川 慎、太鼓・鳴り物の美鵬直三朗が奏でる楽曲の数々、その和楽器ならではの音色がいまも脳内で再生され続けているし、龍馬の遺した手紙、張りつめ弦のようにも、また人々の心の琴線のようにも映る野村真紀の美術、陰影鮮やかな久保良明の照明、この作品に於いてはシンプルさがシンボリックにつながる衣裳の大戸美貴らのスタッフワークが生み出す、クライマックスの美しさは息を飲むばかり。運の良い人が持ち帰れるあるものも、届かない席から見る光景が更に美しいというマジックも生んで、シアタークリエの空間を彩る様が圧巻だった。

何よりここで語られる「誰もが安心して生きられる世の中」を、いまほど切実に願う日々はないこの社会情勢が『龍馬のくつ』を求めたとしか思えないこのタイミングでの上演から、その世の中を創ろうとしたのが、怖さも弱さも知っている普通の人たちだったという、作品の希望が胸に響き、このメッセージを多くの人に受け取って欲しいと願う。

更に、10周年Anniversary公演はまだまだ続き、同じシアタークリエで4月24日~28日、名探偵シャーロック・ホームズの作者であるコナン・ドイルと、天才奇術師として勇名をはせたハリー・フーディーニの二人が、19世紀末期のロンドンでゴースト・ストーリーの嘘を暴いて回るという、痛快なバディものの『GHOST CLUB』が。

『VOICARION』シリーズ初お目見えとなる愛知・COMTEC PORTBASEで、5月2日~3日、京の都で昼行燈と呼ばれながら、偉大すぎるご先祖が会得していたという忍術などいっさい知らぬまま生きていた十二代目服部半蔵’正義’が、あの服部半蔵の子孫がいると聞きつけた人物から弟子入りを志願されて……という発端からはじまる幕末動乱のドラマ『拾弐人目の服部半蔵』が。

そして、5月8日~10日大阪・サンケイホールブリーゼでは、料理の帝王アントナン・カレームを中心に、天才外交官モーリス・ド・タレーラン、そして皇帝ナポレオン・ボナパルトらの半生を通して、一滴の血も流すことなく料理の力でフランスを守る姿が描かれた『VOICARION』シリーズを代表する傑作『スプーンの盾』の上演が控えている。

キャストも日替わり、回替わりの豪華な10周年Anniversaryのフィナーレまでの日々は一層輝かしいものになるだろう。その勇姿を是非体感したいし、この10周年を機に「プレミア音楽朗読劇」の表記をはずし、朗読劇の枠にとどまらない『VOICARION』というひとつのジャンルであると高らかに宣言した、現代のシェイクスピア藤沢文翁が紡ぎ続けるシリーズの新しい船出にも期待している。

(取材・文/橘涼香 写真提供/東宝演劇部)

公演情報

『VOICARION』10 th Anniversary
『龍馬のくつ』
原作・脚本・演出◇藤沢文翁
作曲◇WASABI
音楽監督◇吉田良一郎(吉田兄弟)
出演◇上川隆也 林原めぐみ 山寺宏一
MUSICIAN◇新・純邦楽ユニットWASABI 
吉田良一郎/津軽三味線 元永 拓/尺八 市川 慎/箏 美鵬直三朗/太鼓・鳴り物
●4月15日~22日◎東京・シアタークリエ

今後の上演スケジュール

『GHOST CLUB』4月24日~28日◎東京・シアタークリエ
『拾弐人目の服部半蔵』5月2日~3日◎愛知・COMTEC PORTBASE
『スプーンの盾』5月8日~10日◎大阪・サンケイホールブリーゼ

詳細

『VOICARION』公式X
https://x.com/voicarion
@voicarion

『VOICARION』公式Instagram
https://www.instagram.com/voicarion/
@voicarion

『VOICARION』公式LINE
https://line.me/R/ti/p/@344xezwu
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『VOICARION』公式TikTok
https://www.tiktok.com/@voicarion
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