「わからない。でも、わかりたい」。理想の家族とは何かを考える新作舞台『A PERFECT FAMILY』がまもなく開幕へ

「わからない。でも、わかりたい」。理想の家族とは何かを考える新作舞台『A PERFECT FAMILY』がまもなく開幕へ
写真:中尾彩絵

果報プロデュースによる新作舞台『A PERFECT FAMILY』が2026年5月20日(水)から北とぴあペガサスホール(東京都北区)で開幕する。

果報プロデュースとは、演劇集団キャラメルボックスに所属する山本沙羅による個人演劇企画。2019年に『ナイゲン』、2022年に『あゆみ』と作品を発表し、今回は第三弾となる。開幕をおよそ1週間前に控えた5月某日、都内で行われている稽古場を訪れ、衣装付きの通し稽古を見学した。


写真:中尾彩絵

主人公は、東京で働く30歳の中垣内瑠美(演:山本沙羅)。広島にある実家から突然お見合い話が持ち上がることから物語は動き出すーー。そう、そうなのだ。「30歳」という年齢は、29歳から1歳年を重ねただけなのだが、キャリアにおいても、プライベートにおいても、つまり人生において、非常に「壁」というか「締切」というかそういうややこしいものを勝手に感じてしまうし、周囲からのプレッシャーも強くなってくる年頃なのだ。特に令和を生きる同世代の人々は、瑠美や、その友人の鶴間歌織(演:木村玲衣)、仕事仲間の重田結人(演:池岡亮介)の会話に、きっと共感を覚えるだろう。

写真:中尾彩絵

一方で、実家の人間関係も非常にリアリティがある。瑠美の母親・佳菜子(演:小林千里)は、娘の幸せを願いながらも、自身の母親でもう亡くなっている寺迫苑子(演:ザンヨウコ)との関係性に苦しんでいるし、瑠美の父親・晴彦(演:山本佳希)は地元の百貨店に勤務し、定年間近の勤め人でありながら、飄々としている。瑠美の叔父の寺迫宏隆(演:畑中智行)は、これまた家族思いで人懐っこくはあるが、やや押しが強い。

写真:中尾彩絵

その世代その世代の「当たり前」を否定するのではなく、それはそれとして描く。「自分の家族や親戚にこういう人いたよな〜」なんて、ふと家族のことを思い出すほど、俳優陣の芝居も相まって、リアルな造形だった。


この演劇を作った理由を、主宰の山本はこう綴っている。
「セクシュアルマイノリティの方の交流会を見学させていただいた時のことです。私の近くに、年齢は私と同じくらいの女性がいました。彼女は終始、とても緊張しているように見えました。参加者が車座になり、一人ひとりが自分のセクシュアリティを自認したときのことや、いま抱えている悩みを話していきます」。

そして、「やがて、彼女の番が回ってきました。彼女は目に涙をいっぱいに浮かべながら、今朝、この交流会のために長野県から来たことを話しはじめました。そして、ぽつりぽつりと、言葉を噛みしめるように、こう言いました。『私だけだと思っていた。私と同じことを思っている人が、地元から出たらこんなにいることがわかって、嬉しいです』。ーーこの演劇をいつか、日本各地で上演できるように。彼女のような人に届くように。まずは東京での初演、その第一歩を、どうか見届けに来てください」と。

写真:中尾彩絵

こうした思いを真ん中に置いて、丁寧に作られた演劇。家族とは何か。A PERFECT FAMILY(完璧な家族)とはどういうものなのか。コメディらしく笑いもありながら、家族という一番身近で一番厄介で一番大切な関係性を、真面目に考えてみる機会になった。苦しくなる場面もあれど、やはり最後は心温まることと思う。演出的なことを言えば、客席は2方向に設置されているので、また見る位置が変われば、見え方も変わってくるのかもしれないなと思った。

写真:中尾彩絵

上演時間は約100分。公演は5月24日(日)まで。なお、本作はトリガーアラートとして、「アロマンティック・アセクシュアル当事者、年の差結婚、女性に向けた差別/偏見のある表現・台詞が含まれます」とある。観劇前に確認しておこう。

写真:中尾彩絵

(取材:五月女菜穂)

公演概要

果報プロデュースvol.3
『A Perfect Family』
公演期間:2026/5/20(水)~5/24(日)
会場:北とぴあペガサスホール(東京都北区王子1丁目11−1)

出演
小林千里
山本沙羅(演劇集団キャラメルボックス)
山本佳希(MeiMei)
ザンヨウコ
畑中智行(演劇集団キャラメルボックス)
木村玲衣(演劇集団キャラメルボックス)
池岡亮介

脚本 米内山陽子(チタキヨ)
演出 須貝英

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