不器用で愛おしい人生の走馬灯を見届ける おぶちゃStage『おとこたち』ゲネプロレポート

不器用で愛おしい人生の走馬灯を見届ける おぶちゃStage『おとこたち』ゲネプロレポート

2017年に大部恭平の個人企画として始動した演劇ユニット“おぶちゃ”。演劇を中心に音楽、映像作品、イベントなど多種多様なエンターテイメントを仕掛けており、2025年には西野亮廣が脚本を手掛けた『魔法使いのパレード』を横浜赤レンガ倉庫で上演し、話題となった。そんなおぶちゃの最新作は、岩井秀人主宰の演劇団体・ハイバイが2023年にPARCO STAGEで上演した代表作の1つ、『おとこたち』。【個人の自意識の渦】、【家族】、【集団と個人】などをテーマに作品を創り続ける岩井による、呆れてしまうような、でもどこか愛おしく思えるような、そんな“おとこたち”の生涯を描いた作品だ。

【イントロダクション(公式サイトより引用)】
仕事も生き方もバラバラな男4人。
24歳から82歳の人生の中で、
彼らはどのような人生を歩むのだろうか。

結婚し、家庭を築く者。
スターの座から転落する者。
不倫に溺れる者。
挫折を経験し、心の病と向き合う者。

笑えて、苦くて、やたらと他人事じゃない人生の断片。
2023年、PARCO STAGEで上演された
「ハイバイ流の大河ドラマ」と称される名作を、
おぶちゃ流の会話劇として満を持して上演。

前説担当として、舞台上に現れた男・山田(演:上田堪大)はまず劇場にいる観客たちにスマートフォンの電源を切ってほしいだとか、カサカサ音を立てて飴を食べないでほしいだとか、観劇マナーについての注意事項を述べ始める。……かと思いきや、そのまま、流れるように物語は始まった。山田がいるのは、とある老人ホーム。気づいたらラップに乗せて老人ホームの哀愁が歌われていた。彼はここでバイトとして働いている青年なのか、と観客が認識し始めたあたりで、お昼ご飯をまだ食べていないと訴え始める山田。雲行きが怪しい。まさか……と思ったが、そう、山田は82歳。自分自身が哀愁漂う老人だった。ここから、山田の回想のような形で、彼と、彼の記憶に刻まれた3人の“おとこたち”の人生という名の舞台を振り返ることになる。

フィーチャーされる男は4人。山田のほかに、鈴木、森田、津川。津川が少しだけ珍しい気もするが、身近にもいそうな人物名である。それぞれがストーリーテラーの役割も務めながら、お互いの人生を振り返っていく。
24歳の彼らはミラーボールの光の下、ヘルスに行っただの熟女専門店が良かっただの、20代の若者らしい話で盛り上がりながら、酒を飲み、カラオケで盛り上がる。全員が独身なのかと思いきや、4人中2人は既婚者。年齢的にも妙にリアリティがある。

大学卒業後、アルバイト生活を続けつつ、のらりくらりと生活している森田(演:大部恭平)は、意外にも既婚者側だ。遠距離恋愛を経て結婚した妻の良子(演:稲村梓)は控えめながらも芯の強そうな女性で、不甲斐ない森田のプロポーズにも快くOKをしてくれた。それにもかかわらず、結婚から2年後に2人は別居。森田はバイト先の若い女子・純子(演:小田えりな)と不倫を始めてしまうのだった。
妻の良子に対して、嫉妬心がおさえられない純子。そんなことは知らず、まるでピエロのように2人に愛を嘯(うそぶ)く森田。この三角関係の行く末も本作の見どころの1つだ。

もう1人の既婚者、鈴木(演:石渡真修)は、4人の“おとこたち”の中で1番優秀な、いわゆるエリート。製薬会社に勤め、日々新薬の営業に励んでいる。一見、順風満帆な鈴木だが、家庭内で苦悩を抱える。特に子育てに関する価値観は、鈴木自身の親の影響もかなり大きく、人生とは地続きなのだなと感じさせられた。まさかこうなってしまうとは……という結末を迎えることになるのだが、世の中にいそうなリアルな男だった。“ありふれた日常”の中を波乱万丈に生きる姿に注目してほしい。

そんな“ありふれた日常”とは真逆にいるのが、津川(演:富田翔)。彼は子供の頃からタレント活動をしており、高校生の時に戦隊もののテレビ番組に出たことで人気が爆発した俳優だ。演じている富田も実際にスーパー戦隊シリーズで活躍していたので、そういう意味でも説得力のあるキャスティングである。しかし、演じる富田自身とは正反対に、津川は焼き芋と酒が大好きな飲兵衛で、たびたび飲酒関係でトラブルを引き起こしてしまう。大事な現場に限ってやらかしまくった津川は、芸能界を追放され……!? 4人の“おとこたち”の中で唯一、女難の相はなかった津川だったが、これまた典型的な危うい男だ。そんな彼の人生もまた、驚きの顛末を迎える。ぜひその答え合わせは劇場でしてほしい。

最後に、初めにストーリーテラーとして登場した山田。大学卒業後、すぐに就職をするも、無理がたたって目の病気になってしまう。長時間パソコンに向き合うのが厳しくなった彼はコールセンターに転職。流れで正社員になってしまい、電話口でクレームを浴びせられる日々を送ることになってしまうが、意外な適性を発揮し、そのまま教育係にまで昇進していくのだった。おっとりとして流されやすく、お人好しな印象を受ける山田。しかしどこか脆く、危うさを感じる場面もある。一見穏やかなようにみえても、彼の人生にもまた紆余曲折があったのである。

舞台は起承転結で描かれることが多いが、今作は2時間10分という上演時間の中で、何度も起承転結があったように思う。4人分の人生を振り返ったのだから、それはそうだろう。24歳から82歳まで、山田を中心に4人の“おとこたち”の走馬灯を見せてもらったような気持ちになった。半世紀以上にもわたる男たちの生き様を、生々しく、そして愛おしく体現し続ける役者たちの熱量は圧巻の一言。さらに、“いろんな役”としてキャスティングされている藤代海、岡部直弥をはじめ、その他のキャストたちも含めた兼ね役の多さと、彼らの芸達者ぶりにも驚いた。
劇場を出た後、きっと誰もが自分の人生という名の舞台について、ふと思いを馳せてしまうのではないだろうか。笑いと痛みが入り混じるこの濃密な人生劇場を、ぜひ見届けてほしい。

執筆:通崎千穂(SrotaStage)

公演概要

おぶちゃStage『おとこたち』

公演期間:2026年4月30日(木)〜2026年5月10日(日)
会場:新宿シアタートップス(東京都新宿区新宿3-20-8 WaMall TOPS HOUSEビル4階)

■出演者
上田堪大
富田翔
石渡真修
大部恭平
小田えりな
稲村梓
藤代海
岡部直弥

■スタッフ
脚本:岩井秀人(ハイバイ)
演出:大部恭平(おぶちゃ)
企画・製作:おぶちゃ

■公演スケジュール
4月30日(木)18:30
5月1日(金)18:30★
5月2日(土)13:30
5月3日(日・祝)18:30★
5月4日(月・祝)13:30★
5月5日(火・祝)13:30
5月5日(火・祝)18:30
5月6日(水・祝)13:30
5月8日(金)18:30 ★
5月9日(土)13:30
5月10日(日)13:30
※受付は開演の60分前・開場は開演の30分前です。
★=終演後、アフタートークを実施いたします。

登壇キャスト等の詳細は公演公式HPをご確認ください。

■チケット料金
S席(前方3列):11,000円
A席:8,800円
(全席指定・税込)

U-22割:2,500円
※要身分証提示(税込)

【指定席引換券】
※当日、開演の45分前より受付にて指定席券と引換いたします。
連席をご用意できない場合がございます。予めご了承ください。

※当日券は各種+500円

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