
2026年6月10日(水)、11日(木)、豊洲シビックセンターホールにて、舞台『喝采〜「イヴの総て」より〜』が上演される。実在の女優をモデルにしたメアリー・オアの短編小説を原作に「イヴの総て」というタイトルで映画化、1951年アカデミー賞で作品賞など6部門受賞し、1970年にブロードウェイミュージカル「アプローズ(喝采)」として上演され、トニー賞で最優秀作品賞など5部門に輝いた。日本でもミュージカル版が名優たちで上演を重ね、愛され続けている名作だ。

今作は、大女優マーゴの視点で描かれるミュージカル「アプローズ」のストレートプレイ版として上演する。
大女優マーゴ役を演じるのは池畑慎之介(ピーター)、野心に燃える若き女性イヴ役には芳本美代子。舞台『ジンジャーブレッド・レディ』での阿吽の呼吸で話題となったレジェンドコンビが再び共演することでも注目を集めている。

物語は、華やかな演劇界を舞台に、野心に燃える若き女性イヴ(芳本)が、憧れの大女優マーゴ(池畑)の生活に入り込み、巧みな嘘と策略でその座を奪っていく、人間の欲望と愛を描いていく。
本番直前となった稽古の模様をレポートする。
稽古場に到着するとすぐに物語の最初から稽古が始まった。部分稽古(物語の途中)を取材することが多いが、この日は最初から始まり幸運だ。

最初のシーンはトニー賞の授賞式。主演女優賞が、新進女優イヴ・ハリントン(芳本)に決まり拍手喝采されている。大女優マーゴ(池畑)から記念のトロフィーを送られイヴは幸せの絶頂だ。ふたりはにこやかにその場を迎えているが、マーゴの心中は穏やかではない。
自分を踏み台にしたイヴにブリブリ怒っている池畑マーゴの表と裏の姿に思わずニヤケてしまった。この導入部分だけでもワクワクさせてくれる。


そこからすぐに物語は1年前にさかのぼる。全ての発端、マーゴとイヴの出会いとなる重要なシーンが始まった。ある初日が終わり、楽屋は関係者でごった返している。
その慌ただしい楽屋シーンをいかに自然に会話と動きを交差させるか、演出の鈴木孝宏氏は念入りに動線を試し、出演者たちはそれに応えてシミュレーションを重ねる。池畑氏自ら積極的にセリフと動きを試す姿が印象的だった。
鈴木氏は「みんなマーゴのために動いて(働いて)いる。小さい芝居がたくさんあるといい」と、会話劇の複雑な動きをみるみる立ち上げていった。


そしてイヴが登場。楽屋に招かれたイヴはおどおどしながらも、あわれな自分の身の上を語る。芳本氏は大女優を前に緊張する田舎娘を夢見がちに表現。これは皆だまされるよね、と観客はその後の未来を知っているからこそ、芳本氏の一挙手一投足に注目してしまう。イヴがマーゴの自宅に入り込み、かかってきた電話に出てしまうシーンでも検討が入る。
芳本は「初めて来た他人の家の電話を取れない」と、ワザと出たのか、思わず出てしまったのか、いかに自然に取るか意見が交わされていた。
最初は従順そうなイヴがどうしたたかさを出していくのか、劇場で確認しよう。

そんな中でマーゴと恋人ビルのシーンはドキドキする。
ビルを演じる森山栄治は、熱血系の役や兄貴、憎めないお調子者など、コメディセンス抜群の印象があるが、今回はダンディな売れっ子演出家という役どころ。
「歩き方がヤ●ザになってるよ~」と声がかかり稽古場は爆笑に包まれたが、持ち前の身体能力を生かせる役どころに期待がふくらむ。
対するマーゴは恋人の前では乙女になり、さりげないスキンシップ、ちょっとすねてみたり、歳を気にするベテラン女優、池畑流マーゴのギャップが微笑ましい。

映画ともミュージカルとも違う魅力にあふれ、唯一無二、新たなハマり役になるに違いない。イヴに何もかも奪われたようなマーゴが最後にたどり着く場所とは?
さらに演劇界を描く作品として、クルクル変化する豪華な衣裳にもご注目。
すでにチケットも残りわずか。年月を経て円熟味を増したふたりが演劇界のライバルとして対峙する姿を期待して待ちたい。


稽古の合間に話を聞くことができたので紹介しよう。
――このキャスティングでの稽古の手応えや感想をお聞かせください。
池畑「芳本さんとはもう(舞台は)5本目なんで気心知れてるし、今回初めて敵役というか、お互い蹴落とさなきゃいけない役ですが、彼女とは若い頃からずっと付き合ってきて、色んな人生経験を経て大人になった芳本美代子さんという女優さんと一緒にやれることがすごく楽しみでした」
芳本「共演は約10年ぶり。親子や兄妹役も経験させていただいたり、人生の節目節目でピーさんと舞台で共演していまして家族みたいな感じなんです」
池畑「だからこそ役としてぶつけ合ってもわかりあえる」
――お互いの魅力を教えてください。
池畑「みっちょんはね、本を読む読解力がすごくあって、今大学で演劇のことを教えているし、アイドルだった方とは思えないぐらい深い読みをしてくれるんで、私も逆にアドバイスをもらったり、それはとてもありがたいですね。とても信頼できる相手役だなと思っています。
イヴは追い抜くために裏で男を手玉にとって女性という武器を使っていくけど、みっちょん自体はそういうイメージがないから逆にお客さまが『うわ!すごい女をやるんだ』と思うはず。
この可愛らしい笑顔のまんまマーゴを裏切っていきますが、でもそれだけじゃない切ない話もちゃんと魅せられると思います」

芳本「マーゴさんはすごくパワフルな女性。何に対しても必死で一生懸命になっていて、かつチャーミングで、誰よりもむき出しで、子供って言えば子供だけど、ピーさんにほんとぴったり!
ちょっとした仕草が可哀想だったり、おかしかったり、ドロドロにもなるし表情がコロコロ変わって、たくさんの魅力がお話の中に散りばめられています。
私はしたたかで、あの笑顔の裏に隠れている部分がいっぱいある中で、マーゴのむき出しの人間味あふれるところが魅力。その人間力に最終的にはかなわないんだなって」
池畑「大女優にありがちな、わがままなんだけど可愛げがどこかにある感じが理想。
洋物の役をやる時は、まして男が演じるわけだから、そこはもう少しオーバーにやった方がいいのかなとか、女の人がこれをやるとちょっと嫌だなと思うことは、女方だからできるっていうのはあるのかな。こういう役は難しいよね。
過去には元宝塚歌劇団の方が演じていたけど、素晴らしい作品で今回はみっちょんと共演だし、このお話をいただいた時に是非やりたいって思いました」

――注目してほしいポイントは?
池畑「最初可愛がっていたイヴが、私の知らないところでいろんなものを奪い取って私に投げつけてきます。後半にはふたりが怒鳴り合うシーンもあり、追い抜く者、抜かれる者の悲しさとか寂しさみたいなものが最後にうまく出ればいいかな」
芳本「そして芸能界ブロードウェイのお話なので衣裳も華やかで、早替えもいっぱいあります!」
池畑「衣裳はね、いっぱい協力してます(笑)かけておくだけのものも豪華な本物をかけたいじゃないですか。たまたま私は衣装持ちだったから良かったね(笑)」
芳本「目でも楽しんでいただけます。私もああいう感じのドレスを着て舞台に出るのは初めてです!普通舞台はある1日だったり、あまり日が変わることがないですが、今作ではステージに出る度に場面も日にちも変わるので、華やかなたくさんの衣裳も見どころです。
3公演なのですごく寂しいけれど、完全燃焼して皆さんに楽しんでいただけるよう一丸となって作り上げていきます。ぜひいらしてください」
池畑「公演は3回しかありません!私のお客さまも大阪、名古屋から駆けつけてくれます。この先、全国公演ができるように、ヒットしますように。お待ちしております」
(取材:谷中理音・一部画像:武重到)
公演概要
舞台『喝采~「イヴの総て」より~』
日程:2026年6月10日 (水)~6月11日 (木)
場所:豊洲シビックセンターホール
出演:
池畑慎之介
芳本美代子
森山栄治
石田博英
沢田冬樹
中村陽子
森 隆二
吉良達也
門田 学
坂上麻優
大澤としみつ(MiTEY)
山村まゆ
チケット:12,000円(全席指定)
【概要】
女優に憧れる若い女性が、ベテラン女優を踏み台にのし上がっていく姿から、ブロードウェイの内幕を描き出す、追うものと追われる者のドラマ。
大女優マーゴの視点で、舞台女優の栄光と苦悩を辛辣に描くとともに、大女優マーゴが悟る「もっと大切なもの」「周囲を利用して手にした栄光の価値」について問いかける。