連続対談企画㉚『“演劇”のある生活』[10月放送分](BS松竹東急プロデューサー・湯浅敦士×カンフェティ編集長・吉田祥二)

第30回 無料放送局『BS松竹東急』 10月の演劇・音楽ラインナップをご紹介!

 BS松竹東急は、映画・歌舞伎・一般演劇などのエンターテインメントを通じて人々に感動を届けてきた松竹グループと、渋谷をはじめとした街づくりによって、人々の豊かな暮らしの基盤を構築してきた東急グループがコラボレーションして、2022年3月26日に開局した放送局。編成コンセプトに、『誰もが楽しめて親しみやすい歌舞伎や劇場文化』を掲げている。
 また演劇以外にも、映画・オリジナルドラマなど、あらゆるジャンルの番組を編成し放送する無料総合編成チャンネルとして、上質感やワクワク感をお届けするという……、なんとも謎に包まれた放送局である。
 この企画では、かねてより親交のあったBS松竹東急の湯浅プロデューサーを迎え、カンフェティ編集長の吉田とともにBS松竹東急のラインナップを紹介しながら、ざっくばらんと各々が思う演劇について月いちペースで語っていく、そういう対談企画である。

※過去回はリンク先にて公開中!

(第1回~第29回)

(第1回)2022年4月のラインナップ
(第2回)2022年5月のラインナップ
(第3回)2022年6月のラインナップ
(第4回)2022年7月のラインナップ
(第5回)2022年8月のラインナップ
(第6回)2022年9月のラインナップ
(第7回)2022年10月のラインナップ
(第8回)2022年11月のラインナップ
(第9回)2022年12月のラインナップ
(第10回)2023年1月のラインナップ
(第11回)2023年2月のラインナップ
(第12回)2023年3月のラインナップ
(第13回)2023年4月のラインナップ
(第14回)2023年5月のラインナップ
(第15回)2023年6月のラインナップ
(第16回)2023年7月のラインナップ
(第17回)2023年8月のラインナップ
(第18回)2023年9月のラインナップ
(第19回)2023年10月のラインナップ
(第20回)2023年11月のラインナップ
(第21回)2023年12月のラインナップ
(第22回)2024年1月のラインナップ
(第23回)2024年1月後半~2月前半のラインナップ
(第24回)2024年2月後半~3月のラインナップ
(第25回)2024年4月のラインナップ
(第26回)2024年6月のラインナップ
(第27回)2024年7月のラインナップ
(第28回)2024年8月のラインナップ
(第29回)2024年9月のラインナップ

10月のラインナップはこちら!

日曜ゴールデンシアター
10月6日(日) 夜7時~
さだまさしコンサート『さだ丼~新自分風土記Ⅲ ~さだまさしコンサートツアー2021』

10月13日(日) 夜7時~
伊東四朗一座・熱海五郎一座合同公演
『喜劇 日本映画頂上決戦~銀幕の掟をぶっとばせ!~』

10月20日(日) 夜7時~
『海援隊50周年コンサート ~故郷 離れて50年~』

10月27日(日) 夜7時~
歌舞伎『研辰の討たれ』(平成28年1月・大阪松竹座)・『羽衣』(平成19年10月・歌舞伎座)

湯浅「10月となります! 今年も残すところ、あと3ヶ月……! そんなことありますか?」

吉田「以前、この対談でもお話ししましたが、実家の讃岐うどん屋へ食べに来ていただきありがとうございました! 8月末で、25年の歴史に幕を下ろしました。
 最終日は、親族で集まって最後のうどんを食べようと思っていたのですが、早々に売り切れてしまったので、代わりに焼肉パーティーをしました(笑)」

湯浅「天ざるをいただきました! 大変おいしかったです。岡山出身なので、コシのあるうどんが好きなのですが、讃岐うどんを名乗ってらっしゃるだけあって、歯ごたえも抜群でした。
 あと、やはり人気店の閉店というところもあってか、並びましたね。店内では、お母さんが子供に『これが最後の讃州のうどんだから味わって食べるんよ!』と何度も言っていたのが記憶に残っています。25年ということもあり、地元にも愛されていた名店なんだと思いました」

吉田「ありがとうございます!」

湯浅「あと、お兄さん! 初めましてでしたが、吉田さんによく似ていました。声もそっくりでした。お店を出る前に少しお話できたのですが、俳優に戻ろうかなあとか、吉田さんが脚本書くなら俺は絶対出演するんだけどなあ、とおっしゃってましたよ」

吉田「そうですね、死ぬまでに一度は一緒に公演ができたらいいなあと思います」

湯浅「吉田兄弟ならすぐさま実現できそうですけどね!
 さて、そんな中10月ですが……6日はさだまさしさんのコンサートです」

吉田「さだまさしさんは、言わずと知れた国民的アーティストですが、長崎市出身でフォークデュオ・グループとしてデビューの後、ソロ・シンガーとして活動。昨年、レコードデビュー50周年を記念して豪華アーティストが参加したトリビュート・アルバム『みんなのさだ』が発売され、話題に。
 現在、50周年ツアー・アンコール公演『2024 さだまさしコンサートツアー “51”』が開催中です。12月まで日本全国津々浦々で公演がありますが、さきほどHPを見たらチケットはほぼすべて完売していました」

湯浅「今回お送りする作品は、さださんの歌唱もさることながら、曲の合間にお届けするさださんのトークも大変面白い内容となっています」

10月6日(日) 夜7時~
さだまさしコンサート『さだ丼~新自分風土記Ⅲ~ さだまさしコンサートツアー2021』

吉田「例えばどういうところですか?」

湯浅「『関白宣言』という歌はみなさんご存知と思うのですが、この曲が今のコンプラに合っているのかなど、自身で語っていらっしゃるとかですね……。本当に何で炎上するのか、コンプラ違反になるか分かりづらい世の中になりました」

吉田「演劇界でも、コンプライアンスやハラスメント防止などのガイドラインが作られつつあり、業界的にも重要な課題となっていますね」

湯浅「知り合いの演出家さんで、稽古風景など録画して公開しているなど、かつては考えられないことが当たり前に、いやむしろ、マストになってきていますよね」

吉田「映像に残すというのは本当すごいですね」

湯浅「近年は打ち上げとか、どうなってるんでしょうね」

吉田「おそらく行きたい人だけで行っているでしょう」

湯浅「ただ一方で、演劇って他の芸術に比べて比較的容易に表現するところが魅力なので、どこかで大衆性への反発などを描くところもあって然るべきと個人的には思ってはいます。どこかでこの時代だからこそのアングラが登場するんじゃないかとも勝手に期待しています」

吉田「この時代だからこそのアングラ、面白いですね! 自分が劇団をやっていた頃は、危うさと魅力を両方兼ね備えたようなギラギラしたキャラの立った舞台人が一定数いて、飲み会で武勇伝を聞かされて感心しつつも、自分に火の粉が降りかからないように距離を取って仲良くしていましたが、今だと完全アウトな方が多いですね(笑)。まぁ、今はもう丸くなっていると思いますが。
 俳優・スタッフ問わず、フリーで活動する方も多い業界なので、そういう方たちが安心して長く活動できる環境作りが直近の大きな課題だと思います」

湯浅「あんまり深く書くとこれまた飛び火しそうですが……吉田さんがいらっしゃった早稲田も、当時はなかなかに激しかったと耳にしたことがあります」

吉田「たとえば、緑人間ですね」

湯浅「なんですか、それは」

吉田「秘密です」

10月13日(日) 夜7時~
伊東四朗一座・熱海五郎一座合同公演
『喜劇 日本映画頂上決戦~銀幕の掟をぶっとばせ!~』

湯浅「続いて、14日は伊東四朗一座・熱海五郎一座合同公演『喜劇 日本映画頂上決戦~銀幕の掟をぶっとばせ!~』です」

吉田「一度限りの予定で2004年に旗揚げした伊東四朗一座。“伊東ならぬ熱海”、“四朗ならぬ五郎”で“熱海五郎一座”。東京の軽演劇の灯を消してはならないという思いで結成された両一座の合同公演は、特別感がありますね!」

湯浅「今の若い世代は喜劇って観ているんですかね?」

吉田「観ている人はもちろん観ていると思うのですが、だんだんと喜劇とコントの境界線がなくなってきていると思います」

湯浅「どういうことでしょうか?」

吉田「喜劇と思って観ていないのでは、ということです」

湯浅「確かに、偉大な方々が書かれたような『喜劇とコントの違い論』はあると思うのですが、そもそもすでに同一ジャンルとして若者たちは観ているところもあるのかもしれませんね」

吉田「普通の若い劇団で面白いことをやっていても、喜劇と謳わないですしね。コメディというフレーズのほうがよく耳にします」

湯浅「なるほどですね。ぜひ若い方もこの作品を観て、喜劇とはかくあるものだ、と実感してほしいですね!」

10月20日(日) 夜7時~
『海援隊50周年コンサート ~故郷 離れて50年~』

湯浅「そして、21日は海援隊のコンサートです」

吉田「海援隊は、1971年に武田鉄矢・中牟田俊男・千葉和臣の3人で結成されたフォークグループで、『母に捧げるバラード』、『思えば遠くへ来たもんだ』など、人間味があってメッセージ性の高い名曲が多いですよね。
 私は『スタートライン』という曲が好きです。早朝にジョギングする時など、気づいたら口ずさんでいます。あと余談ですが、私の母方は学校の先生が多い家系なのですが、みんな武田鉄矢さんの『3年B組金八先生』を観て先生を志したそうです。
 今の時代の金八先生も観てみたいですね。学校で起きている問題も時代とともに変化していると思うので」

湯浅「コンプラの話に戻りますが、腐ったミカンも、今の日本では引っかかりそうですね(笑)」

吉田「そうですね。あと生徒を殴るシーンや、血も流れますしね」

湯浅「いろいろと考えるところがやっぱりありますね」

10月27日(日) 夜7時~
歌舞伎『研辰の討たれ』(平成28年1月・大阪松竹座)・『羽衣』(平成19年10月・歌舞伎座)

湯浅「最後に、28日は歌舞伎です。『研辰の討たれ』は『とぎたつのうたれ』と読みまして、木村錦花原作の歌舞伎作品です。武家社会で美徳とされた敵討ちを近代的な視点で捉え直した斬新な作品でもあり、異色の“敵討ちもの”とも呼ばれる演目です」

吉田「野田秀樹さんがこの作品をもとに脚本を書き、演出した『野田版 研辰の討たれ』が歌舞伎座で上演されたことでも話題になった演目ですよね。古典歌舞伎に比べ、言葉も分かりやすい新歌舞伎なので、かまえずに気軽に観ていただければと思います」

湯浅「そして、『羽衣』です。こちらの作品は、玉三郎さんと愛之助さんによる、幻想的な美しさと幽玄味あふれる舞踊作品となっています」

吉田「三保松原が舞台となった『羽衣伝説』をもとにした舞踊ですよね。ただただ、おふたりの美しい舞をうっとりと堪能してください」

湯浅「そして、以下フリートークです!
 この対談自体は9月にしているので、まだ正直実感はわかないのですが、きっと10月になると、いろいろと今年を振り返ることなのでしょう」

吉田「そういえば、研修でニューヨークへ行ってきました! と言いながら実際行くのは来週ですが。湯浅さんもインドへ行きますよね? 次回、お土産話を楽しみにしています!」

湯浅「ニューヨークで研修というのはどういうものですか?」

吉田「1番の目的は、ブロードウェイのTKTSでの研修です」

湯浅「吉田さんだけ行くんですか?」

吉田「いえ、会社の研修として、全社員を対象に行きます」

湯浅「すごいですね! え、ミュージカルも観るんですか……??」

吉田「はい! 私は『MJ The Musical』と『Hamilton』を観ます」

湯浅「研修でブロードウェイでの観劇なんて、むちゃくちゃ、優良企業ですね」

吉田「これから日本でTKTSをより盛り上げていくために、たくさん吸収してきたいと思います」

湯浅「吉田さんは東へ、湯浅は西へ。それぞれ方向は違えど、何かしら得られるものになるといいですね」

吉田「湯浅さんもインドで、演劇は観るんですか?」

湯浅「恐らく、観ません! 建築物やガンジス川を見たり、友達を作って帰ってくると思います。
 次回の対談は、最初にお互いの訪問した国の言葉であいさつするところから始めましょう」

吉田「了解しました」

プロフィール

湯浅敦士(ゆあさ・あつし)
日本大学芸術学部演劇学科卒。他局を経て、2021年にBS松竹東急に入社。BS松竹東急の演劇や音楽の編成、お酢偏愛番組『お酢きびと』などのプロデューサーを担当。プライベートでも舞台の脚本を手掛けるなど、演劇を愛する気持ちに満ちている。

吉田祥二(よしだ・しょうじ)
シアター情報誌[カンフェティ]編集長。早稲田大学第一文学部卒。在学中に劇団を旗揚げし、以来約10年に渡って同劇団の主宰・脚本家・演出家を務める。2004年に「エンタテインメントを、もっと身近なものに。」を理念に掲げ、ロングランプランニング株式会社を起業。趣味は登山(縦走)。

【放送局】 BS松竹東急(BS260ch/総合編成無料放送)
【局公式Twitter】 @BS260_official

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