連続対談企画㉗『“演劇”のある生活』[7月放送分](BS松竹東急プロデューサー・湯浅敦士×カンフェティ編集長・吉田祥二)

第27回 無料放送局『BS松竹東急』 7月の演劇・音楽ラインナップをご紹介!

 BS松竹東急は、映画・歌舞伎・一般演劇などのエンターテインメントを通じて人々に感動を届けてきた松竹グループと、渋谷をはじめとした街づくりによって、人々の豊かな暮らしの基盤を構築してきた東急グループがコラボレーションして、2022年3月26日に開局した放送局。編成コンセプトに、『誰もが楽しめて親しみやすい歌舞伎や劇場文化』を掲げている。
 また演劇以外にも、映画・オリジナルドラマなど、あらゆるジャンルの番組を編成し放送する無料総合編成チャンネルとして、上質感やワクワク感をお届けするという……、なんとも謎に包まれた放送局である。
 この企画では、かねてより親交のあったBS松竹東急の湯浅プロデューサーを迎え、カンフェティ編集長の吉田とともにBS松竹東急のラインナップを紹介しながら、ざっくばらんと各々が思う演劇について月いちペースで語っていく、そういう対談企画である。

※過去回はリンク先にて公開中!

(第1回~第26回)

(第1回)2022年4月のラインナップ
(第2回)2022年5月のラインナップ
(第3回)2022年6月のラインナップ
(第4回)2022年7月のラインナップ
(第5回)2022年8月のラインナップ
(第6回)2022年9月のラインナップ
(第7回)2022年10月のラインナップ
(第8回)2022年11月のラインナップ
(第9回)2022年12月のラインナップ
(第10回)2023年1月のラインナップ
(第11回)2023年2月のラインナップ
(第12回)2023年3月のラインナップ
(第13回)2023年4月のラインナップ
(第14回)2023年5月のラインナップ
(第15回)2023年6月のラインナップ
(第16回)2023年7月のラインナップ
(第17回)2023年8月のラインナップ
(第18回)2023年9月のラインナップ
(第19回)2023年10月のラインナップ
(第20回)2023年11月のラインナップ
(第21回)2023年12月のラインナップ
(第22回)2024年1月のラインナップ
(第23回)2024年1月後半~2月前半のラインナップ
(第24回)2024年2月後半~3月のラインナップ
(第25回)2024年4月のラインナップ
(第26回)2024年6月のラインナップ

7月のラインナップはこちら!

日曜ゴールデンシアター
7月14日(日) 夜7時~
熱海五郎一座『男と女と浮わついた遺伝子』

7月21日(日) 夜7時~
歌舞伎『棒しばり』(令和2年8月・歌舞伎座)
   『野田版 愛陀姫』(平成20年8月・歌舞伎座)

7月28日(日) 夜7時~
クイーン2作品一挙放送!
 『オン・ファイアー/クイーン1982』
 クイーン+アダム・ランバート・ストーリー『ショウ・マスト・ゴー・オン』

湯浅「さて、7月のラインナップ紹介となりました」

吉田「話は変わりますが、湘南国際マラソン参加の意思表明、大変嬉しかったです」

湯浅「適度に毎朝、走っています」

吉田「毎朝はすごいですね。大会までまだ半年あるので、今から準備していれば、必ず完走間違いなしですよ!
 湘南国際マラソンの難関ポイントは、後半30km以降で、海沿いの西湘バイパスを走るのですが、そこは防砂林となる松林がなく、海風が直でおそってくるので、要注意です。私は去年、その地点で向かい風の強風にやられ、走っていても全く進んでいない感覚でしたね」

湯浅「実際、6時間近く走るんですよね? そもそもそのくらい走り続けたことがないので未知の領域です。ちなみに途中歩く人もいるんですかね?」

吉田「います。前半で歩いている人は、だいたい完走を諦めちゃっている人ですね。後半の35km付近にある最後の関門を突破すれば、その後は歩いても完走できるはずです。最後だけです、歩いていいのは」

湯浅「過酷……。とりあえず、何事もやってみてからですね」

吉田「ただ本当にその決意が素晴らしいです」

湯浅「何も考えてないだけかもしれませんが……。
 あとは海外旅行計画も適宜進めています。前回、ウズベキスタンだとか、タイだとか言っていましたが、知り合いがイベントでインドに行くそうで、それに便乗してやろうかと思い始めました。

吉田「最近、南インド料理のミールスやビリヤニにはまりつつあるので、インドはそそられますね。本場の味を味わってみたいです」

湯浅「タイミング合いましたらぜひご一緒に! 今年は本当にじっとしているとモヤモヤしてくるので、あまりよくないかもですが絶えず動き回ることで日々を流してやろうかと思ってます」

吉田「去年マラソンを始めるまでは、休日はいかにゆっくり過ごすかしか頭になかったですが、マラソンを初めてからは、今週末は駒沢公園走ろうとか、皇居走ろうとか、立川の昭和記念公園を走ろうとか、休日は休む日ではなく動く日に知らないうちになっていますね。皇居とか本当にいいですよ!」

湯浅「家まで汗まみれで帰るんですか?」

吉田「ランニングステーションというシャワー付きの更衣室があるのでそれを利用します」

湯浅「初耳です」

吉田「皇居のまわりには10ヶ所くらいありますよ」

湯浅「銀座から近いので、会社に行く前とかいいかもでね。勉強になります!」

吉田「皇居まわりは設備が整っているので本当におすすめです!」

湯浅「そんななか、7月のラインナップでして、14日は熱海五郎一座の舞台です」

吉田「“伊東ならぬ熱海”、“四朗ならぬ五郎”で“熱海五郎一座”。というわけで、一度限りの予定で2004年に旗揚げした伊東四朗一座の“東京の喜劇”、“東京の笑い”を継承すべく、三宅裕司さんを中心に旗揚げされた一座です」

湯浅「そんな熱海五郎一座の作品のなかで『男と女と浮わついた遺伝子』という作品をお送りします」

7月14日(日) 夜7時~
熱海五郎一座
『男と女と浮わついた遺伝子』

吉田「毎公演、センス抜群のチラシビジュアルですが、今回はベストと言っても過言ではないですね。観るかどうか迷っている方は、まずチラシだけでもチェックしてみてください。そしたら必ず観たくなります」

湯浅「チラシって本当に大切ですよね。ちなみに……小劇場あるあるのネタですが、関東では“折込”といいますが、関西では“挟み込み”というらしいですよ」

吉田「確かに折り込む方式も、関東と関西では違いますよね。関東では自分で持って行ったチラシを現場で折り込んでいく。関西は10劇団なら、10劇団みんなでみんなのチラシを挟み込んでいく」

湯浅「現場の制作からすると一括で折込対応が終わるので、関西のほうがいいんですかね?」

吉田「効率面でいえば、そんなに変わらないのかなと正直思いますが……関西のほうが単純にみんなで折り込むので交流の場を兼ねる感じもしますね」

湯浅「関西の演劇人同士って本当に仲良いですよね。関東は偏見かもですが……お客さん含めてクールな感じがします(笑)」

7月21日(日) 夜7時~
歌舞伎『棒しばり』(令和2年8月・歌舞伎座)
『野田版 愛陀姫』(平成20年8月・歌舞伎座)

湯浅「そして21日は歌舞伎です。『棒しばり』(令和2年8月・歌舞伎座)は、酒好きの次郎冠者と太郎冠者は、盗み酒をしないよう主人に両手を縛られるのですが、協力して酒蔵の酒を呑みかわすと、ほろ酔い気分で踊り始めるという、軽やかで可笑しみ溢れる人気舞踊です。
 また、本公演はコロナ禍以降初めて幕が開いた舞台となりまして、感染対策のために少し演出がいつもとは違っています。写真にも写っていますが、後方の長唄など演奏家の方々は黒マスクをしていたりと……ある意味で貴重な映像にもなっています。
 そして『野田版 愛陀姫』は、オペラの名作『アイーダ』を野田秀樹さんが歌舞伎に翻案した斬新な舞台です」

吉田「野田秀樹さんと言えば、東京大学在学中に劇団 夢の遊眠社を結成して人気を博し、1992年の劇団解散後、ロンドンに留学。帰国後の1993年に「NODA・MAP」を設立。劇作家・演出家・役者として、現代演劇の枠を超えた多彩な創作活動を行っています。
 また海外の演劇人とも精力的に創作を行い、これまで日本を含む12カ国18都市で上演。現在、東京芸術劇場の芸術監督も務められていますね」

湯浅「野田秀樹さんの作品を初めて生で観たのは『キル』だったと思います。妻夫木聡さんと広末涼子さんの演技もさることながら、やっぱり野田さんの演技もうまい」

吉田「野田作品の大きな特徴は“言葉遊び”と“リメイク”ですよね。使い古された言葉、古典と呼ばれる作品に新しい命を吹き込み、独創的でスペクタクルな舞台を創造する。演劇のもつ可能性を大きく広げて、社会現象的人気まで上り詰めた方だと思います。
 最新作の『正三角関係』も演劇ファンから注目が集まっていますね! すでにチケット入手困難公演です」

湯浅「岸田戯曲賞の選評だったか何か忘れましたが、台詞を評価するときにその台詞が肉体を通じて発せられる台詞なのか、演劇的なのか、という感想を書かれていたことがあり、確かに野田秀樹さんの場合は、身体ありきの台詞もたくさんあるなあと思ったことがあります」

吉田「確かに戯曲は演劇作品のために書かれたものなので、野田さんのおっしゃることはごもっともだし、まさにそれを役者としても自分でも体現されているので説得力があります」

湯浅「個人的に1番好きな野田作品は、松たか子さんが出演された『桜の森の満開の下』ですね。最後の松さんの台詞が今も記憶に残っています」

吉田「“野田版歌舞伎”は、そんな現代の演劇界を代表する奇才の野田秀樹さんと、稀代の名優である中村勘三郎さんがタッグを組んで生まれた傑作歌舞伎です。勘三郎さん自身が“歌舞伎とはこういうもの”という固定概念を壊し、“今を生きる演劇”にするべく、一般演劇のクリエイター達と積極的に手を組み、若者の街・渋谷のシアターコクーンで上演した『コクーン歌舞伎』や、江戸時代の芝居小屋を模した仮設劇場で歌舞伎を行う『平成中村座』の上演などを経て、大成功を収めました。そんな中、野田秀樹さんと出会って生まれたのが、“野田版歌舞伎”です」

湯浅「是非とも、“野田版歌舞伎”をお楽しみいただけたらと思います」

7月28日(日) 夜7時~
クイーン2作品一挙放送!
『オン・ファイアー/クイーン1982』
クイーン+アダム・ランバート・ストーリー『ショウ・マスト・ゴー・オン』

湯浅「28日はクイーンですね」

吉田「クイーンは、イギリス・ロンドン出身のロックバンドで、1970年代前半のハードロック・ブームの最中にデビュー。その後も時代によってスタイルを変化させ、世界中で2億5000万枚から3億枚の音楽作品を売り上げ、数々の音楽的記録を打ち立て、『世界中で最も成功したバンド』の1つと言われていますね」

湯浅「昨年の紅白歌合戦でも出演して話題になっていましたね。今回はフレディ時代のライブ映像、そしてアダム・ランパート誕生を扱ったドキュメンタリーを2作品一挙に放送します」

吉田「クイーンを語る上で欠かせないのは、やっぱり圧倒的なカリスマ性ですよね。何と言ってもボーカルのフレディ・マーキュリーのカリスマ性は群を抜いていて、彼の歌声、ファッション、性格、どれをとってもスターの才能を兼備えていますよね」

湯浅「若い方のなかには当時のライブ映像を見たことはない、という方もいると思います。クイーンの楽曲はどの世代にも通じる魅力があると思いますので、これを機会にぜひご覧いただけたらと思います!」

湯浅「さて! 以下、フリートークです。
 相変わらず“推し活”がいろんなところで叫ばれていますが、JRが実施した強気イベントが気になっていまして」

吉田「どんなイベントなんですか?」

湯浅「5秒のイベントを3万円で販売したんです」

吉田「え?」

湯浅「“デゴイチ”の愛称で親しまれる蒸気機関車『D51』というのがあるそうなのですが、先日、JR東日本の車両工場で撮影会が開かれ、その参加費が3万円なんです。3万円と高額な理由は『吹き込み作業』という検査の時にしか行われない特別な様子の撮影が組み込まれているからなんだそうです。その作業時間が実に5秒。それでもすぐに完売したそうです」

吉田「ふーん」

湯浅「興味ないですか?(笑)」

吉田「興味はむちゃくちゃありますし、すぐ完売したというのも理解できるんですけど、職業病で演劇だったらどうできるかな、というのを反射的に考えてしまって、の『ふーん』です」

湯浅「演劇だったらよくあるのは、ゲネプロやバックステージツアー。あと稽古場も見学できるなどもありますよね。ほかには差し入れ系のサービスになるんですかね?」

吉田「そうですね。でも、今回のJRの車両工場にあたる撮影会が『バックステージ』にあたるのだとしたらその中で、さらに特別な瞬間の5秒ってことですよね。……何かありそうな気がします」

湯浅「コンサートとかだと指揮者体験とかもいいですよね。演劇だと……うーん」

吉田「演出家体験は……なかなかですもんね。……うーん。芝居の最後の紙吹雪を浴びる体験? それでも3万は高いですよね」

湯浅「でも従来とは違う観客の在り方は絶対にこれから考えていかなきゃいけなくて、そういう意味でイマーシブとかが流行りつつあったりすると思うんですよね」

吉田「劇場ではこれまでなかった新たな体験が、観劇の概念を変えるかもしれないですね。観劇したうえでの別の体験が、企画として今後出てくると面白い盛り上がりになりそうです」

プロフィール

湯浅敦士(ゆあさ・あつし)
日本大学芸術学部演劇学科卒。他局を経て、2021年にBS松竹東急に入社。BS松竹東急の演劇や音楽の編成、お酢偏愛番組『お酢きびと』などのプロデューサーを担当。プライベートでも舞台の脚本を手掛けるなど、演劇を愛する気持ちに満ちている。

吉田祥二(よしだ・しょうじ)
シアター情報誌[カンフェティ]編集長。早稲田大学第一文学部卒。在学中に劇団を旗揚げし、以来約10年に渡って同劇団の主宰・脚本家・演出家を務める。2004年に「エンタテインメントを、もっと身近なものに。」を理念に掲げ、ロングランプランニング株式会社を起業。趣味は登山(縦走)。

【放送局】 BS松竹東急(BS260ch/総合編成無料放送)
【局公式Twitter】 @BS260_official

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