第19回 無料放送局『BS松竹東急』 10月の演劇ラインナップをご紹介!
BS松竹東急は、映画・歌舞伎・一般演劇などのエンターテインメントを通じて人々に感動を届けてきた松竹グループと、渋谷をはじめとした街づくりによって、人々の豊かな暮らしの基盤を構築してきた東急グループがコラボレーションして、昨年3月26日に開局した放送局。編成コンセプトに、『誰もが楽しめて親しみやすい歌舞伎や劇場文化』を掲げている。
また演劇以外にも、映画・オリジナルドラマなど、あらゆるジャンルの番組を編成し放送する無料総合編成チャンネルとして、上質感やワクワク感をお届けするという……、なんとも謎に包まれた放送局である。
この企画では、かねてより親交のあったBS松竹東急の湯浅プロデューサーを迎え、カンフェティ編集長の吉田とともにBS松竹東急のラインナップを紹介しながら、ざっくばらんと各々が思う演劇について月いちペースで語っていく、そういう対談企画である。
※過去回は下記リンク先にて公開中!
(第1回)4月のラインナップ
(第2回)5月のラインナップ
(第3回)6月のラインナップ
(第4回)7月のラインナップ
(第5回)8月のラインナップ
(第6回)9月のラインナップ
(第7回)10月のラインナップ
(第8回)11月のラインナップ
(第9回)12月のラインナップ
(第10回)1月のラインナップ
(第11回)2月のラインナップ
(第12回)3月のラインナップ
(第13回)4月のラインナップ
(第14回)5月のラインナップ
(第15回)6月のラインナップ
(第16回)7月のラインナップ
(第17回)8月のラインナップ
(第18回)9月のラインナップ
10月のラインナップはこちら!
日曜ゴールデンシアター
10月1日(日) 夜6時30分~ タツノコプロ創立60周年記念特別公演 ~Tatsunoko 60th Legends~
10月8日(日) 夜6時55分~ 『ジャニス・ジョプリン』
10月15日(日) 夜7時~ 歌舞伎『仮名手本忠臣蔵 五段目・六段目』(平成29年11月・歌舞伎座)
10月22日(日) 夜6時30分~ 熱海五郎一座『男と女と浮わついた遺伝子』
10月29日(日) 夜7時~ 『吉幾三 45年間、ありがとう~ファイナルコンサート~』
週末ミライシアター
10月21日(日) 深夜0時30分~ ばってん少女隊『御祭sawagi〜踊れ心騒げ〜』
吉田「先日はイマーシブシアター、お疲れさまでした」
湯浅「来場いただきありがとうございました! ここの対談でも語っていますが、これからイマーシブは、いろんな企業や行政との親和性が高いと思っていて何ができないか模索しているのですが、まあとりあえず一度やってみようと。知り合いのオーナーにスペース借りて、仲良しの俳優陣に声かけて即席で作ってみました。今回は5つの部屋を作ってみて“◯◯してはいけない”をキーワードに、脱出する構成にしました。観客は5つの部屋から1つの部屋を選択して楽しみます。なぜこの部屋に迷い込んだのかの設定を付けて、そこには出演者との意外な関係も……紐解けるような内容で、“なんとか”お送りしました。本当に初めてすぎるので、料金も無料でした! 多くの方に楽しんでいただけたようでよかったです」
吉田「実際、イマーシブシアターをちゃんと観たのは初めてだったので色々新鮮でした! 通常の演劇だと、観客は安全な場所というか、守られた位置からまさに“客”観視する立場ですが、イマーシブシアターの場合は、観客がその作品に関わっていくことでストーリーも展開していくので、そこが根本的に違いますよね。頭で分かってはいても、体験してみて初めて感じたことが多かったです」
吉田「やってみてどうですか?」
湯浅「本当時間も限られていたので、30分の公演を5演目分作ったのですが、俳優もスタッフも、みんな面白いと言ってくれて、『予定調和』ではない、というところが一番かもしれません」
吉田「なるほど」
湯浅「テレビ番組もそうですが、最近、一般人のコメント中心に送る番組が増えていると思うんですが、これはどこかでテレビがお送りしてきた『予定調和』に、視聴者が飽きてきているからなんじゃないかと思います。まあそもそも演劇は、予定調和でないところもありますが、それにもう少し調和感をズラしてきたような……」
吉田「今後の予定はあるんですか?」
湯浅「先ほど言ったように、イマーシブという特性は行政や地方との親和性があるんじゃないかと睨んでいます。プライベートで継続的に演劇公演は続けていきたいと思います。
吉田「楽しみです! お力になれることがあればぜひ! 参加させてください」
湯浅「ありがとうございます! さて、それでは10月のラインナップです! 『タツノコプロ創立60周年記念特別公演~Tatsunoko 60th Legends~』です」
吉田「これはアニソンライブですか!」
湯浅「先月の対談でも言いましたが、音楽ラインナップも今後は編成していく予定でして、そのなかで今回はタツノコプロの作品が生み出した名曲の数々をアニソン界のレジェンドたちが熱唱したライブの模様をテレビ初放送でお送りします」
吉田「タツノコプロと言えば、子供の頃、毎日テレビにかじりついて観ていたヒーローもののアニメは、ほとんどタツノコプロだった気がします。その主題歌の数々をレジェンドたちの生声で聴けるというのは、本当に超特別なイベントですね!」
湯浅「貴重な水木一郎さんの映像もお送りしますので、ぜひお見逃しなく。また番組冒頭には堀江美都子さんから特別コメントもいただきました! こちらもお楽しみに!」
湯浅「続いて、『ジャニス・ジョプリン』ですね。こちらはブロードウェイ・ミュージカルですね」
吉田「アイナ・ジ・エンドさんが日本版を演じたことでも有名な作品ですよね。ジャニス・ジョプリンと言えば、1960年代、唯一無二の歌声でアメリカの音楽史を塗り替えた伝説の女性ロック・スターです。本作は、「亡くなる1週間前の、一夜のコンサート」をコンセプトに、ジャニスの半生を舞台化。ジャニスが自らの物語を語り、それにひもづく数々の名曲を熱唱していくだけでなく、彼女に大きな影響を与えた人々が演者として登場し、共に圧巻のステージを披露。生涯孤独と闘い27歳の若さでなくなりましたが、今もなお、後進のアーティストたちにインスピレーションを与え、若いファンを増やし続ける彼女の生き様と伝説のステージをぜひご覧いただきたいです」
湯浅「数々の名曲にぜひ酔いしれてください!」
10月15日(日) 夜7時~
歌舞伎『仮名手本忠臣蔵 五段目・六段目』
(平成29年11月・歌舞伎座)
湯浅「15日は歌舞伎『仮名手本忠臣蔵 五段目・六段目(平成29年11月・歌舞伎座)』です。片岡仁左衛門さん、片岡孝太郎さん、市川染五郎(現・松本幸四郎)さん、片岡秀太郎さんでおくる名作『仮名手本忠臣蔵』です」
吉田「『仮名手本忠臣蔵』は、浄瑠璃三大名作 のひとつで、江戸期を通じて最多の上演記録を持つ人気演目です。十一段にわたる壮大なストーリーで、時代物あり、世話物あり、恋愛あり、欲あり、数々の名優が演じ、多くの観客が涙した、美しく、面白い歌舞伎の最高傑作と言っても過言ではない演目ですね」
湯浅「様式美と洗練された演出で描く男の悲劇をお見逃しなく!」
湯浅「そして、22日は、毎月1作品をお送りしている伊東四朗一座・熱海五郎一座セレクションより、熱海五郎一座『男と女と浮わついた遺伝子』をお送りします」
吉田「今回もチラシのビジュアルが良いですよね! もう見た瞬間に面白い! 見たい!って思いました。部屋に貼りたいです(笑)。物語は、50歳にして独身の春風昇太郎(春風亭昇太)がひょんなことから出会った水島真紀子(水野真紀)と恋に落ちるラブストーリーと、一方で人類滅亡計画の実行のために着々と準備を進める新興宗教、という突拍子もない、でもどこか現実の世の中とちょっとリンクしているストーリー展開、そこへ“熱海五郎一座”ならではの軽妙なやりとり・絶妙なアドリブがちりばめられて笑いが巻き起こる。一度みたらきっとやみつきになる熱海五郎一座、必見です!」
湯浅「29日は去年デビュー50周年を迎えた吉幾三さんのコンサートをお送りします」
吉田「吉幾三さんといえば、個人的には10代の頃に、はっちゃけたキャラクターで青春ドラマによく出ていた印象と、やっぱり『俺ら東京さ行ぐだ』の大ヒットが今も鮮明に残っていますが、作詞・作曲家として、千昌夫さんの『津軽平野』や、『雪國』、『酒よ』などのヒット曲も世に送り出して、本当に根強い人気を誇る歌手ですよね。コンサートでは爆笑トークとシビれる歌声、両方をたっぷり堪能できるので、ぜひ私も観たいです」
湯浅「最近、バイオハザードの新作で『俺ら東京さ行ぐだ』とコラボしてCMをしていたりしてましたよね。幅広い年齢層に愛されている歌手だと思います」
吉田「僕も吉幾三さん、好きです」
湯浅「10月音楽ライブはアニソンライブと吉幾三さんのコンサートですね。これまでは演劇を中心にお送りしてきましたが、 『ステージ』という概念を広く捉えて演劇に限らないラインナップをお送りしていきます」
吉田「次は……サーカス?でしょうか。カンフェティも演劇中心ではありますが、それ以外にもクラシック・バレエ・ダンス・伝統芸能などを幅広く紹介するメディアとして、これからもいろんなライブカルチャーを発信していきたいです! ライブ・エンターテイメントの可能性は無限ですからね!」
湯浅「ルフィのギアみたいですよね。概念を拡大解釈しつつ進化していければと思ってます! そして、週末ミライシアターは、ばってん少女隊のライブをお送りします!」
10月21日(日) 深夜0時30分~
ばってん少女隊
『御祭sawagi〜踊れ心騒げ〜』
吉田「ばってん少女隊は、九州を拠点に活動する2000年代生まれのメンバー6人によるアイドルグループです。ステージでの激しいダンスパフォーマンスと、九州ののびのびとした環境で育ったメンバーのほんわかとしたキャラクターとのギャップも特徴ですね。最近『あまちゃん』をテレビでよく見ているので、地元アイドルはなぜか親近感があって、自然と応援したくなる気持ちになります(笑)」
湯浅「個人的には『Oisa』と『さがしもの』という曲が好きです。YouTubeにもアップされているのでよかったらぜひチェックしてみてください。12月には東京ドームシティーホールでの公演を予定されていて、今回の放送をご覧になった方で少しでも興味を持った方はぜひライブでも楽しんでみてはいかがでしょうか?(ばってん少女隊 オフィシャルサイト)
それにしても、アイドルまで詳しいなんてさすがですね!」
吉田「今回はたくさん調べました!」
湯浅「以下、フリートークです! 何かありますか?」
吉田「11月に、私が実行委員を勤めている関西演劇祭があってそれが動き出しつつあるので準備を進めています。今年から新たに『関西演劇ネクストジェネレーション』という企画がスタートして、若い人たちとの繋がりを持つというところで、おうさか学生演劇祭とタッグを組んでいて、来年、再来年に向けて関西演劇祭の本選に出場できるような劇団を応援するというもので、アンバサダーに三船美佳さんをお迎えし、旗揚げを志す若者をいろんなかたちでバックアップして劇団の裾野を広げようという試みで、大変いい企画だと思っています」
湯浅「なるほど! ただ、たまに思うんですが、こういう演劇祭で優勝した優れた才能は、どこに向かうんでしょうかね? うまく次が用意されているといいんですが……。例えば、そのまま作家は事務所に入れるとか、どうしてもよっぽど優れたプロデューサーや制作がいないと、なかなか次のステージに上がるというのは難しいように思います。若いがゆえに資本力もなければ、人脈もない。演劇祭自体はとても素晴らしいと思うのですが、そうして見出された才能の、その先をある程度、年食った大人たちは用意してあげる必要性も感じます」
吉田「確かに、出口というかそのあとのフォローアップまで出来ている演劇祭は少ないですが、関西演劇祭は『つながる演劇祭』を標榜しているとおり、そのあたりは手厚くいです。スペシャルサポーターと呼ばれる様々なメディアのプロデューサーが審査員で参加していて、優秀な作家・演出家・俳優にはそのあとチャンスが与えられるような仕組みになっています。演劇祭のあり方としては、しっかり若手を育てていくっていう目的意識をとても感じるので、関西のみならず東京や全国に広がっていくといいと思っています」
湯浅「素敵ですね! タイミング合えば、大阪に遊びに行きますね!」
吉田「はい、11月ぜひ! お待ちしております」
プロフィール
湯浅敦士(ゆあさ・あつし)
日本大学芸術学部演劇学科卒。他局を経て、2021年にBS松竹東急に入社。BS松竹東急の演劇編成、週末ミライシアターなどのプロデューサーを担当。プライベートでも舞台の脚本を手掛けるなど、演劇を愛する気持ちに満ちている。
吉田祥二(よしだしょうじ)
シアター情報誌[カンフェティ]編集長。早稲田大学第一文学部卒。在学中に劇団を旗揚げし、以来約10年に渡って同劇団の主宰・脚本家・演出家を務める。2004年に「エンタテインメントを、もっと身近なものに。」を理念に掲げ、ロングランプランニング株式会社を起業。趣味は登山(縦走)。
【放送局】 BS松竹東急(BS260ch/総合編成無料放送)
【局公式Twitter】 @BS260_official