連続対談企画⑫『“演劇”のある生活』[3月放送分] (BS松竹東急プロデューサー・湯浅敦士×カンフェティ編集長・吉田祥二)

連続対談企画⑫『“演劇”のある生活』[3月放送分] (BS松竹東急プロデューサー・湯浅敦士×カンフェティ編集長・吉田祥二)

第12回 無料放送局『BS松竹東急』 3月の演劇ラインナップをご紹介!

BS松竹東急は、映画・歌舞伎・一般演劇などのエンターテインメントを通じて人々に感動を届けてきた松竹グループと、渋谷をはじめとした街づくりによって、人々の豊かな暮らしの基盤を構築してきた東急グループがコラボレーションして、昨年3月26日開局した放送局。編成コンセプトに、『誰もが楽しめて親しみやすい歌舞伎や劇場文化』を掲げている。
 また演劇以外にも、映画、オリジナルドラマなど、あらゆるジャンルの番組を編成し放送する無料総合編成チャンネルとして、上質感やワクワク感をお届けするという……、なんとも謎に包まれた放送局である。
 この企画では、かねてより親交のあったBS松竹東急の湯浅プロデューサーを迎え、カンフェティ編集長の吉田とともにBS松竹東急のラインナップを紹介しながら、ざっくばらんと各々が思う演劇について月いちペースで語っていく、そういう対談企画である。

※過去回は下記リンク先にて公開中!

 (第1回)4月のラインナップ
 (第2回)5月のラインナップ
 (第3回)6月のラインナップ
 (第4回)7月のラインナップ
 (第5回)8月のラインナップ
 (第6回)9月のラインナップ
 (第7回)10月のラインナップ
 (第8回)11月のラインナップ
 (第9回)12月のラインナップ
 (第10回)1月のラインナップ
 (第11回)2月のラインナップ

3月のラインナップはこちら!

土曜ゴールデンシアター
3月 4日(土)『渦が森団地の眠れない子たち』
3月11日(土)METライブビューイング《椿姫》
3月18日(土)歌舞伎『菅原伝授手習鑑 車引』『菅原伝授手習鑑 賀の祝』
3月25日(土)BS松竹東急開局1周年記念特別企画『キンキーブーツ』

週末ミライシアター
3月 4日、18日(土)深夜0時30分~ serial number『すこたん!』
3月11日(土)深夜0時30分~ 『あしたのわたしへー私の卒業第3期ー』


湯浅「昨年、3月26日に弊社は開局したわけですが……こうして今年の3月の放送予定を紹介するということは……?」

吉田「1周年おめでとうございます!」

湯浅「ありがとうございます! 吉田さんとの出会いをはじめ、本当にたくさんの出会い、そして演劇を支える劇団や企業の協力もあり、なんとか毎週演劇をお届けすることができました!」

吉田「改めて、毎週演劇放送ってやっぱりすごいですよね!」

湯浅「最初は続けられるのかと思っていましたが、いや……演劇が好きとはいえ、さすがに全方位的にそもそも観ていたわけではないので、当初は続けられるのか?という不安があったのですが、……結構初期の段階で、その不安はなくなりました。演劇って幅広いし、本当にたくさんの作品があふれている。奥が深いです」

吉田「私もこの対談を通じて、またBS松竹東急の放送を観ることで、演劇の新たな魅力や可能性を発見できるとても良い機会になっています。アフターコロナで、まだまだ活気を取り戻せていないこの舞台業界を活気づけるためにも、この対談もさらに気合を入れて行きたいと、勝手に意気込んでます(笑)」

湯浅「2年目はさらにいろいろな演劇を届けられるように頑張りたいです。そんななか、まずは土曜ゴールデンシアターですね! まず4日は『渦が森団地の眠れない子たち』です。藤原竜也さん、鈴木亮平さんのW主演でも話題になった作品ですが、さらに作・演出が蓬莱竜太さんです!」

吉田「蓬莱竜太さんといえば、日常的なテーマを骨太な群像劇として描くモダンスイマーズの座付き作家ですが、若い頃からその才能を見出されて、例えば『世界の中心で、愛を叫ぶ』やリリー・フランキーさんの『東京タワー 〜オカンとボクと、時々、オトン〜』の舞台版の脚本をおそらく20代後半~30歳くらいの時に務められていて、小劇場界からすごい劇作家が現れたと驚いたことを今でも記憶しています」

湯浅「『まほろば』で岸田戯曲賞を受賞されていますが、当時も若い年齢での受賞だったと記憶しています。そのほかにも、こまつ座さんの『木の上の軍隊』など、井上ひさしさんの遺作に執筆を加える……なんてことからも、脚本力が凄まじい作家さんなんだということがわかりますよね」

吉田「私が一番衝撃だったのは、2008年に萩原聖人さん主演の『夜光ホテル』という作品で下北沢OFF・OFFシアターという座席数約80席の小劇場で、1ヶ月のロングラン公演を行なったことですね。小劇場界でもその年、最も大きな話題でした。最近では、2021年に蓬莱竜太さんが立ち上げた個人ユニットのアンカルも新たな試みとして、今後がとても楽しみです」

湯浅「アンカル! 確かに注目の劇団ですよね。知り合いの俳優がちょうどアンカルに所属?しているそうで、今度出演するのでもちろん観劇に伺う予定です!
 そんな蓬莱竜太さんが手掛けた本作では、藤原竜也さん、鈴木亮平さんが小学生の役で出演。とある団地での子供たちの出会いや別れ、いろいろな事件を巡る成長や後悔の物語ですが……個人的には主演のお二人の熱量ある演技もさることながら、木場さんの深みのある演技に目が離せませんでした!」

吉田「“団地大河ドラマ”と銘打たれている通り、団地という舞台で巻き起こる様々な出来事を子供の視点で描いた群像劇ですが、この思い切った設定と世界観が斬新で面白いですよね。ある意味実験的だけど、ユーモアのあるエンターテイメント作品なので、ぜひいろんな世代の方に観ていただきたいです」

湯浅「そして、11日はメトロポリタン・オペラ『椿姫』です」

吉田「メトロポリタン・オペラというのは、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場に本拠地を置くオペラ・カンパニーです。超一流の歌手・オーケストラ・最先端の演出・装置の豪華さで世界最高峰のオペラハウスと言われています」

湯浅「本作はいわゆる椿姫をイメージしているものとは、少し違う演出かもしれません。シンプルな舞台で、色使いもシンプルです。衣装も現代的である分、非常にスマートに感じられて、歌声が素直に入ってくる作品でもあります。そして、18日は『菅原伝授手習鑑』より、車引と賀の祝の2場をお届けします」

吉田「『菅原伝授手習鑑』は、学問の神様として有名な菅原道真に関する伝説を元に創作された作品です。道真の失脚事件を中心に、道真の周囲の人々の生き方を描く物語です。その中でも『寺子屋』は、数ある歌舞伎演目の中でも名作中の名作として知られていますね」

湯浅「確かに有名な演目ですよね。本作には坂東彌十郎さんと片岡愛之助さんが出演されておりまして、ちょうどその翌週にはお二人が出演の旅番組特番を放送予定ですので、こちらもぜひチェックしてみください!」

吉田「それは見逃せません!」

湯浅「そして、25日には『キンキーブーツ』です」

吉田「ついに……! という感じですね」

湯浅「情報解禁をSNSでしたところ、反響がすごかったです」

吉田「それもそのはずですね。ブロードウェイ・ミュージカルの傑作と言われる本作は、2005年に公開されたイギリス映画がミュージカル化されたもので、経営が傾いた靴工場を建て直そうとするチャーリーと、ドラァグクイーンのローラが、互いを理解し合うことで成長・成功する姿を、シンディ・ローパーの素晴らしい音楽で彩った大ヒット作です。日本版ではチャーリー役を小池徹平さん、ローラ役を三浦春馬さん・城田優さんというキャストでこれまで3度上演されましたが、どの公演も入手困難のプラチナチケットになるほど熱狂的な人気を博しました」

湯浅「演劇を観ないという方でもこのタイトルは知っている人は多いんじゃないかと思います。BS松竹東急開局1周年記念特別企画として放送します! ぜひ一度、この機会にご覧いただけたらと思っています」

吉田「現代劇、オペラ、歌舞伎、そしてミュージカル。このラインナップは開局1周年に本当にふさわしいと思います。1年間放送し続けてきたことの集大成が詰まっている気がしました」

湯浅「そして4月に向けて準備を進めているわけですが……」

吉田「今度はどんなことを?」

湯浅「すごく言いたいのですがまだ解禁が出来ず! 次回のこの対談で発表できればと思います!」

吉田「楽しみです!」

湯浅「そしてミライシアターですね。3月はserial numberの舞台と、私の卒業プロジェクトから昨年上映された映画をお届けします」

吉田「serial numberは、詩森ろばさん(劇作家・演出家)が作り上げる、多彩な題材を綿密な取材に基づいた社会派演劇が特徴ですが、骨太でありながらエンターテインメント性のある作品が魅力ですね。詩森さんは舞台以外でも評価が高く、映画『新聞記者』ではアカデミー賞受賞など、映画脚本家としても大活躍されています。今回放送される『すこたん!』は、“性的マイノリティー”をテーマにした社会派演劇ですが、人と人が寄り添うことの素敵さを描いた心温まる物語になっています」

湯浅「そして『私の卒業』プロジェクトは若手発掘・育成プロジェクトでして、そのなかでも今回が初の映画化となります。このプロジェクトを通じて、大きく羽ばたいている俳優もいて、本当にミライが感じられる作品かと思います!」

吉田「どんな映画なんですか?」

湯浅「舞台は静岡県伊東市です。18歳ならではの悩みや葛藤、そして美しい景観に……何か失ったものを思い出させてくれる作品だと感じました。いつかなくなってしまうもの、あったはずのもの、忘れてしまった……あぁそうか、いずれは全部消えていくんだけど、でもあの時にはそこにあったんだなっていう……」

吉田「どうしたんですか、急に(笑)」

湯浅「なんかそういう“若さ”を感じずにはいられない作品です!」

吉田「わかったような、わからないような(笑)」

湯浅「はい! というわけで以上が今回のラインナップになりまして、以下、フリートークでございます」

吉田「直近のニュースといえば、弊社運営のTKTS新店舗が、新宿に新たに開業する東急歌舞伎町タワー1階エントランス前にオープンします(https://tkts.tokyo/news/100)」

湯浅「先日リリース拝見しました! 東急歌舞伎町タワーといえば、“好きを極める場所”! 劇場のほか、映画館やライブハウス……そのほか魅力的な飲食店がある複合施設ですね!」

吉田「詳しいですね!」

湯浅「松竹“東急”ですからね! とはいえ、やっぱり注目しているのは演劇ですね! ちょうどこの東急歌舞伎町タワーのTHEATER MILANO-Zaこけら落とし『舞台・エヴァンゲリオン ビヨンド』が窪田正孝さんが主演で上演されることでも話題になりました!」

吉田「その次は『パラサイト』! こちらも出演者が豪華でしたね!」

湯浅「はたしてチケットが取れるのか……それが問題です!」

吉田「このタワー自体が外国人のお客さんをターゲットにしたエンタメ施設なので、この開業をきっかけにノンバーバル演劇ブームが起きるんじゃないかと密かに睨んでいます」

湯浅「常に何事も演劇に結びつけるんですね! さすがです(笑)」

吉田「あとはそろそろ暖かくなってくるので……縦走の計画。さらには湯浅さんにこの前、写真を見せた沢登り計画も進めたいですね」

湯浅「沢登りして、焼いた川魚とか食べたいですよね」

吉田「絶対楽しいですよね!」

湯浅「それでは今年も対談のほか、縦走、沢登りとよろしくお願いします!」

吉田「よろしくお願いします!」

プロフィール

湯浅敦士(ゆあさ・あつし)
日本大学芸術学部演劇学科卒。他局を経て、2021年にBS松竹東急に入社。BS松竹東急の演劇編成、週末ミライシアターなどのプロデューサーを担当。プライベートでも舞台の脚本を手掛けるなど、演劇を愛する気持ちに満ちている。

吉田祥二(よしだ・しょうじ)
シアター情報誌[カンフェティ]編集長。早稲田大学第一文学部卒。在学中に劇団を旗揚げし、以来約10年に渡って同劇団の主宰・脚本家・演出家を務める。2004年に「エンタテインメントを、もっと身近なものに。」を理念に掲げ、ロングランプランニング株式会社を起業。趣味は登山(縦走)。

【放送局】 BS松竹東急(BS260ch/総合編成無料放送)
【局公式Twitter】 @BS260_official

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