連続対談企画⑮『“演劇”のある生活』[6月放送分] (BS松竹東急プロデューサー・湯浅敦士×カンフェティ編集長・吉田祥二)

連続対談企画⑮『“演劇”のある生活』[6月放送分] (BS松竹東急プロデューサー・湯浅敦士×カンフェティ編集長・吉田祥二)

第15回 無料放送局『BS松竹東急』 6月の演劇ラインナップをご紹介!

BS松竹東急は、映画・歌舞伎・一般演劇などのエンターテインメントを通じて人々に感動を届けてきた松竹グループと、渋谷をはじめとした街づくりによって、人々の豊かな暮らしの基盤を構築してきた東急グループがコラボレーションして、昨年3月26日開局した放送局。編成コンセプトに、『誰もが楽しめて親しみやすい歌舞伎や劇場文化』を掲げている。
 また演劇以外にも、映画、オリジナルドラマなど、あらゆるジャンルの番組を編成し放送する無料総合編成チャンネルとして、上質感やワクワク感をお届けするという……、なんとも謎に包まれた放送局である。
 この企画では、かねてより親交のあったBS松竹東急の湯浅プロデューサーを迎え、カンフェティ編集長の吉田とともにBS松竹東急のラインナップを紹介しながら、ざっくばらんと各々が思う演劇について月いちペースで語っていく、そういう対談企画である。

※過去回は下記リンク先にて公開中!

(第1回)4月のラインナップ
(第2回)5月のラインナップ
(第3回)6月のラインナップ
(第4回)7月のラインナップ
(第5回)8月のラインナップ
(第6回)9月のラインナップ
(第7回)10月のラインナップ
(第8回)11月のラインナップ
(第9回)12月のラインナップ
(第10回)1月のラインナップ
(第11回)2月のラインナップ
(第12回)3月のラインナップ
(第13回)4月のラインナップ
(第14回)5月のラインナップ

6月のラインナップはこちら!

日曜ゴールデンシアター
6月4日(日)夜6時30分~ 『ライ王のテラス』
6月11日(日)夜6時30分~ 地球ゴージャス『X day』
6月18日(日)夜6時55分~ シネマ歌舞伎『女殺油地獄』
6月25日(日)夜7時~ 二兎社『シングルマザーズ』

週末ミライシアター
6月3日(土)深夜0時30分~ あやめ十八番『しだれ咲き サマーストーム』
6月10日、24日(土)深夜0時30分~ FUKAIPRODUCE羽衣『スモール アニマルキッス キッス』

湯浅「早いもので、6月のラインナップです。今年も半分が終わろうとしているということですね!」

吉田「あっという間ですよね。一番心残りなのは、今年に入ってまだ一度も縦走に行けてないことです。東京で仕事しながら、連なる山々を繋ぐ静かな山道に日々思いを馳せつつ、でも最近は沢登りや都立公園めぐりなどにも興味が湧いて。でもどれも実現していない、ダメな上半期でした(笑)。残りの半年は、もっとアグレッシブに行きます。ライブエンタメ業界も盛り上がってきているので、もちろん観劇にもどんどん行きたいです」

湯浅「確かにあっという間ですよね。僕も縦走に行けていませんし、何か新しく始めた趣味みたいなものもない……負けじと残り半年は色んなことに挑戦していきたいです。それでは、ラインナップを紹介していきますね! まず6月4日には、鈴木亮平さん主演の『ライ王のテラス』を放送します!」

吉田「演出が宮本亜門さんですね! 宮本亜門さんといえば、この対談でも何度かご紹介しましたが、おそらく日本で最も知られている舞台演出家の1人ではないでしょうか? テレビのコメンテーターとしても数多くの番組に出演されていますよね。とはいえ、その演出作品を観たことのある人は少ないと思います。ミュージカル、ストレートプレイからオペラ、歌舞伎まで、ジャンルを越える演出家として国内外でも活躍されている宮本さんの情熱に溢れた作品を、ぜひこの機会に観ていただきたいです」

湯浅「本作は三島由紀夫最後の戯曲で、栄華を極めた偉大な王が己の夢と希望を託し“アンコール・トム”。そして“バイヨン寺院”を造営していく雄大なロマンをアンコール王朝の衰亡を背景に描いた作品です」

吉田「鈴木亮平さんの筋肉が凄いですね!」

6月4日(日)夜6時30分~

湯浅「王の力強さがひしひしと伝わる舞台で、吉沢亮さんも出演されているなど、豪華出演者の演技は必見です!」

吉田「個人的には第一王妃役の中村中さん、実は青山の小さいライブハウスで歌っていた頃からの隠れファンなので(笑)、その存在感や演技にも注目したいです」

湯浅「中村さんの演技力、本当凄いですよね。あの細い身体からよくもあんなにありありとした生命力を解き放つことができるものだ、とつい見入ってしまいます。続いて、11日には地球ゴージャスの『X day』を放送します」

吉田「地球ゴージャスは、1994年に俳優の岸谷五朗さん・寺脇康文さんが旗揚げしたユニットで、1〜2年ごとにプロデュース公演を上演しています。舞台をこよなく愛するお二人だからこその、壮大で豪華なライブエンターテインメント作品を毎回上演され、これまで、城田優さん・大地真央さん・中川晃教さん・柚希礼音さんなど、錚々たる方々がゲスト出演されていて、“本当にチケットが取れない公演”としても有名です」

6月11日(日)夜6時30分~ 地球ゴージャス『X day』

湯浅「本作は男女6人のオムニバスストーリーなんですが、最後に、あぁそういうことだったのか、と、一見、関係のなさそうなストーリーが次第に交わっていく構成は圧巻でした」

吉田「舞台作品はふつう、短くても1時間半、長いと3時間を超えるものもあり、イッキ見するには体力を使いますが、オムニバス形式だと1本1本は短いので、あまり舞台を観慣れていない方にも、観やすくていいですよね。オススメです」

湯浅「そして……続いては大人気の演目ですね。18日には片岡仁左衛門さん版のシネマ歌舞伎『女殺油地獄』を放送します」

吉田「『女殺油地獄』は、近松門左衛門作で1721年に人形浄瑠璃で初演。実際の事件をもとに書かれた世話物作品で、明治時代に入って歌舞伎化され人気を博し、その後は片岡仁左衛門さん、中村勘三郎さん、松本幸四郎さんら多くの俳優が演じて大評判になりました。映画化やテレビドラマ化もされていますよね。このインパクトのあるタイトル、誰でも一度は聞いたことがあるのではないでしょうか」

6月18日(日)夜6時55分~ シネマ歌舞伎『女殺油地獄』

湯浅「本作は仁左衛門さん『一世一代』というサブタイトルを付けて上演された作品でして、これを最後にこの演目は演じることはない、という意味が込められています。そういう意味でも大変貴重な舞台ですね」

吉田「貴重といえば、この公演は、2009年の歌舞伎座建て替え前のさよなら公演として上演されたものですよね。当時のお客さんも特別な想いで観劇していたと思います。その想いや臨場感も画面からも伝わってきそうですね。歌舞伎演目にしては登場人物の関係性がシンプルで、ストーリーも分かりやすいので、歌舞伎初心者の方にはうってつけの作品だと思います」

湯浅「そして二兎社『シングルマザーズ』ですね」

6月25日(日)夜7時~ 二兎社『シングルマザーズ』

吉田「二兎社は、劇作家・演出家の永井愛さんが主宰するプロデュース劇団です。もともとは1981年に、大石静と永井愛のお二人が設立した劇団で、ともに卯年生まれということから、劇団名を二兎社(にとしゃ)と付けたそうです。“言葉”や“習慣”、“ジェンダー”、“家族”、“町”など、身近ではあるけど意識下に潜む問題を題材として、現実の生活に直結した作品が特徴です。個人的には、メディアと権力の関係を描いた『ザ・空気』シリーズが好きですね。あと、すでに発表されていますが、来年1月に上演される公演に生瀬勝久さんが出演されるのですが、私的には激アツです! 私、13歳の時に初めて関西で演劇を観て演劇に目覚めたのですが、その作・演出・主演が生瀬さんだったので。私にとっては神です(笑)。いつか生瀬さんにインタビューしたいですね!」

湯浅「生瀬さんといえば、劇団そとばこまち、ですよね! きっとこういう場で言い続けていれば叶う気がします! 言霊ですね!」

吉田「ありがとうございます(笑)。そして、週末ミライシアターですね」

湯浅「まずは、あやめ十八番さんです」

吉田「あやめ十八番は、2012年に旗揚げされた、俳優・堀越涼の作・演出による舞台を上演する演劇ユニットです。歌舞伎・能・浄瑠璃など古典のエッセンスを取り入れて現代劇の中に昇華させ、しかも現代人の感覚で古典演劇を再構築するという作風が特徴です。今年8月に座・高円寺1にて、無声映画の活動弁士たちの栄枯盛衰を描いた『六英花 朽葉』の公演が予定されていますね。まずはテレビでチェックして、ぜひ劇場でもあやめ十八番の美の世界を堪能してほしいです」

6月3日(土)深夜0時30分~ あやめ十八番『しだれ咲きサマーストーム』

湯浅「堀越さんの演技って本当に物腰がやわらかくて、とても素敵な演技ですよね。昨年、『空蝉』という作品を観劇に伺ったのですが、本当の落語家さんのようで細やかな仕草や発声に、ただただ素敵だなぁと思いました。本物の落語さんも観劇に訪れていましたよ!」

湯浅「続いて、FUKAIPRODUC羽衣さんです」

吉田「2004年、女優・深井順子さんが、唯一無二の“妙ージカル”を上演するための団体として結成。コンセプトアルバムのような音楽シーンの連続で、ありふれた日常をありふれない歌と踊りで表現するパフォーマンスが特徴です。“妙ージカル”とは“妙なミュージカル”の意味なので、その不可思議な世界観は、一度観ればきっと好きになる、というかクセになると思います。

今回放送される『スモール アニマル キッス キッス』のキャッチ文章もいいですよね! 『人間のおぞましい業を、小動物を愛でる心で鎮める新作“妙―ジカル”』。なお次回公演は、今年の夏に吉祥寺シアターにて『女装、男装、冬支度』が決まっています。もうタイトルの時点で好きです(笑)」

6月10日、24日(土)深夜0時30分~ FUKAIPRODUCE羽衣『スモール アニマル キッス キッス』

湯浅「昔、脚本と演出をした舞台の振付を担当してくれた方から先日『ありがとう!』というLINEが来ました。なんでだろうと思ったら、今回放送する作品の振付も担当されているとのことで、あの頃から今もずっと表現者であり続ける彼の姿にはなかなかに思うところがあり、そこにはリスペクトしかありません」

湯浅『唯一無二の“妙―ジカル”という言葉にもあるように、言い得て妙な劇空間を堪能できるので
はないかと思います」

吉田「私も劇団を自分でやっていたときに、劇団員だった俳優が当時、FUKAIPRODUC羽衣さんの舞台に出演したことがあるのですが、普段見せない演技をしていて、深井さんのプロデュース力を感じました」

湯浅「ぜひ、この魅力的な舞台をテレビで楽しんでいただき、これは面白い!と感じるようでしたら、
7月には新作公演もありますのでそちらも観劇に伺ってはいかがでしょうか?」

吉田「さて以下、フリートークですが……何かありますか?」

湯浅「弊社では会議室とかに設置してあった透明のパーテーションがなくなりました」

吉田「コロナ対策のパーテーションですかね?」

湯浅「そうです。僕は開局前の2021年から、今の会社にいるのですが、入社してからずっと当然のように、会議室にはパーテーションがあったので、初めて何もない会議室の机を目の当たりにして、変な新鮮さを感じました。会議のたびに距離が近っ!って思います」

吉田「コロナがもたらした新しい日常だったけれど、それが無くなったらそれはそれで変な違和感や戸惑いが起こるんでしょうね、それだけ長い時間だったということでもあると思います。元通りというと難しいですが、また新たな生活様式に向かっているのかもしれませんね」

湯浅「御社でも何か変化がありましたか?」

吉田「特にこれといった変化はないですが、社内の空気というよりは、公演サポートの会社なのでこ
の時代の変化を敏感に察知して、観劇の楽しみや豊かさをこれまで以上に積極的に発信するにはどうすればいいのかを深く考えるようになりました」

湯浅「日常が元通りに戻るかというと怪しいように、劇場文化も前のように元通りになるかというといくらか厳しいのではと思います。現に知り合いの演劇人と話していてもそんな話を耳にします。だからこそ、御社のように演劇を支える企業がそういう意識で劇団や演劇と向き合ってらっしゃるのはとても大切なことのような気がします。微力ながら演劇を放送する局として弊社も何かそういう演劇文化を支えるお力添えができないか、私なりに模索したいと思います」

吉田「あと、この前、公演のアフタートークに呼ばれまして、私も舞台上に立って役者や演出家の方と熱い話をしてきたんですが、これからどう頑張って団体を大きくしていくか、いかに面白い作品を作っていくか、終始前向きなトークで沢山パワーをもらいました。夢にまっすぐ向かっている団体をこれからも応援していきたいし、観客がより増えるためには、という問いについてもっと根本から考えていきたいと私自身が改めて思いました」

湯浅「そういう意味では、この夏に向けて色々と挑戦してみたい編成がありまして、こちらも楽しみにしていただけると嬉しいです」

吉田「不敵な笑みですね」

湯浅「というところで、今回は終わろうと思います」

吉田「気になります!(笑) では、来月もよろしくお願いします」

湯浅「お願いします!」

プロフィール

湯浅敦士(ゆあさ・あつし)
日本大学芸術学部演劇学科卒。他局を経て、2021年にBS松竹東急に入社。BS松竹東急の演劇編成、週末ミライシアターなどのプロデューサーを担当。プライベートでも舞台の脚本を手掛けるなど、演劇を愛する気持ちに満ちている。

吉田祥二(よしだ・しょうじ)
シアター情報誌[カンフェティ]編集長。早稲田大学第一文学部卒。在学中に劇団を旗揚げし、以来約10年に渡って同劇団の主宰・脚本家・演出家を務める。2004年に「エンタテインメントを、もっと身近なものに。」を理念に掲げ、ロングランプランニング株式会社を起業。趣味は登山(縦走)。

【放送局】 BS松竹東急(BS260ch/総合編成無料放送)
【局公式Twitter】 @BS260_official

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