1996年の初演以来、世界40カ国以上で上演され、東宝製作版として8回目の上演となるミュージカル『RENT』。20世紀末、ニューヨークのイースト・ヴィレッジを舞台に、貧困、エイズ、ドラッグなどの過酷な問題に翻弄されながらも、愛や友情を信じて夢に向かって懸命に生きる、若きアーティストやミュージシャンたちの群像劇。「No day but today(今日という日)」の歌詞にもある「過去もない、未来もない。今日という日を精一杯愛し、生きていく」というメッセージは、現在も世界中で共感を呼ぶと共に歌い継がれている。
全キャストがオーディションで選ばれ、これまで森山未來・福士誠治・賀来賢人・村井良大・花村想太(Da-iCE)・平間壮一が演じてきた、映像作家のマーク役に挑むのは鈴木福。日本版の初演でマークを演じた山本耕史の存在が大きかったと言う。
「耕史さんとはずっと仲良くさせていただいて、『役者人生の中で本当に大事な作品で、人生が変わるような出会いだったんだよ』とマークを演じられた際の思いを以前から聞いていました。今回、オーディションの話をいただいて『これは何かの縁なのかな』と思い、合格して報告の電話をした時、耕史さんに『何、彼女でもできたのか?』と第一声で言われましたが(笑)、『違います! RENT受かりました!』と伝えたら、まるで自分のことのように喜んでくれました」
オーディションに向けて、自宅で歌唱練習をしていたとのこと。
「弟妹たちは僕が家で練習しているのをずっと聞いているので、半分くらいは歌詞を覚えちゃっています(笑)。特に一番下の妹は、ミミが歌う曲を自宅でも歌っていたりして、家族みんな、僕がこのステージに立つのをすごく楽しみにしてくれています」
個性豊かなキャラクターが揃う本作で、最も共感できるのは自身が演じるマークだと言う。
「決して現状に対して満足はしていないけれど、それでも『自分はできるんだ』と思い込みながら、やりたいことに向かって一生懸命生きていて、もどかしさを抱えながらも、どこかでその状況を楽しんでいるようなキャラクターだと思っています。マークは映像作家志望で、カメラを通して周りを見つつ、自分も周りに影響を与えていきますが、僕自身も芸能界に身を置いて、夢を追いかけたり、素晴らしい人たちに囲まれて刺激を受けたりする場所にいて、環境の違いはあれど、マークが目指しているものには近いものを感じています」
今年で22歳となる鈴木は、“RENTの世界観”を次のように語った。
「エイズや貧困など、死が身近にある当時の環境は今とは違います。でも周りの友人が就活をしていたり、将来への不安を抱えながら“これからどう生きていくか”を模索している姿は、マークたちの葛藤と重なる部分があります。僕自身、この半年から1年の間、嬉しいことも、辛いこともいろいろな経験をしました。それらすべてを“マークを演じるための材料”として注ぎ込んで、今の自分にしかできない表現を見つけていきたいと思っています」
取材時点(8月)では、単独での歌稽古中とのこと。
「めちゃくちゃ難しいです。いわゆる“曲”らしい曲は練習してきたんですけど、最近取り組んでいるのは、セリフの中にメロディがあるような語りに近い部分で、言葉を立てなきゃいけないし、でもメロディはとても複雑で、“切り替えないで切り替える”みたいな技術が求められるなと感じています。キャラクターとしての声と、歌としての声が気持ちよく繋がる場所をこれからの稽古で見つけていきたいです」
名曲が揃う『RENT』のナンバーでお気に入り曲を聞いてみた。
鈴木「改めて『Seasons of Love』はいい曲だなと思いますし、『What You Own』『La Vie Bohème』『Halloween』も思い入れがあって特別に感じています。あと『Rent』も歌った後の気持ちよさがあって好きですね」
マークのルームメイト・ロジャーを演じる、Wキャストの木原瑠生とRIKU(THE RAMPAGE)とは今回初共演となる。
「木原さんはスーパー戦隊(魔進戦隊キラメイジャー)出身、僕は仮面ライダー(仮面ライダーギーツ)出身ということで、“東映ヒーローズ”だねって、盛り上がりました(笑)。“イースト・ヴィレッジに住む者”と“東映”をかけて『東(イースト)に住む者として仲良くしよう』なんて冗談も言ったりしました。RIKUさんとは共通の友人がいて、『今度3人で会えたらいいね』と話したので、きっと仲良くなれるんじゃないかなと思いますし、2人とも仲良くなり過ぎて、僕を取り合って欲しいです(笑)。今回共演経験がある方は石井一彰さんぐらいで、初めましての方が多いですけど、稽古場はすごく賑やかになりそうです。それに歴代の先輩方も稽古場に遊びに来るという噂を聞いているので、それも楽しみですね」
また衣裳について、歴代共演者にまつわるエピソードを披露した。
「ビジュアル撮影で着た衣裳は、前回公演でマークを演じた花村さんと平間さんの衣裳を一部受け継いでいて、実際にタグの名前のところに『花村』『平間』と書いてあるんですよ。それを見て『あ、本当に受け継いでるんだ』と身が引き締まる思いになりましたし、次に誰かがマークを演じる時に『あ、いたいた、鈴木』と思ってもらえるように、歴史を繋いでいきたいです。それと、舞台上でメガネをかけて動くことは今まであまりなかったので、どういう風に慣れていけるか、これから稽古の中で探っていきたいですね」
最後に、初めて観劇される方と長年作品を愛し続ける“レントヘッズ”と呼ばれるファンの方に向けての見どころと本作への意気込みを語った。
「初めて観劇する方は、作品の音楽、ストーリー、メッセージの良さに触れていただいて、今日という日や明日へ向かうこの時間といった日々に対して、改めて考えるきっかけになったり、僕らを通して『RENT』の良さを知っていただけたら嬉しいです。長年愛していらっしゃる方は、きっと『RENT』に対する思いや本質的な良さというところは変わらないと思うので、そこは決して崩さないように。でも僕たちが演じれば、もちろん変わるものがあって、そこで受け取ってもらうものが、また違う形であってくれたら嬉しいなと思います。まずは楽しく、精一杯エネルギーを持って、僕が今まで蓄積してきたものをここにすべて注ぎ込んで、燃やし尽くしたいと思っています。新しく生まれ変わる『RENT』を、ぜひ劇場に観に来ていただけたら嬉しいです」
(取材・文:冨岡弘行 撮影:間野真由美)
プロフィール
鈴木 福(すずき・ふく)
2004年6月17日生まれ、東京都出身。1歳の時に芸能界デビューし、2011年、ドラマ『マルモのおきて』で一躍注目を集める。以降、映画・ドラマ・舞台・CM・情報番組・ゴルフ番組など幅広く活躍。近年の主な出演作に、映画『ヒグマ!!』、ドラマ『惡の華』、『コンビニ兄弟 テンダネス門司港こがね村店』、TTFC『フォルティクス配信! 推しを継ぐもの』など。舞台は、2024年の地球ゴージャス三十周年記念公演『儚き光のラプソディ』以来の出演となる。
公演情報
ミュージカル『RENT』
日:2026年10月15日(木)~11月13日(金) ※他、地方公演あり
場:日比谷 シアタークリエ
料:土日祝日・千穐楽13,500円 平日12,500円
※他、エンジェルシートあり。詳細は下記HPにて(全席指定・税込)
HP:https://www.tohostage.com/rent2026/
問:東宝テレザーブ tel.0570-00-7777
30名限定!土日祝日・千穐楽13,500円/平日12,500円+カンフェティポイント付き!