
KAAT神奈川芸術劇場にて、1951年に発表された木下順二作『蛙昇天』が上演される。蛙の世界で、戦争を経て起きた事件とその顛末を描く。主演を務める中山優馬に、作品の印象や公演に寄せる思いを聞いた。
「戯曲には素晴らしい日本語がたくさん並び、感情や情念が散りばめられていて、読んでいて楽しかったです。人間が抱く本質的な感覚、複雑な感情を言語化していて天才だと思いましたし、細やかな描写が可能な小説ではなく、セリフのみで紡ぐ戯曲で表現しているところに惚れ込みました」
二大政党が争いを繰り広げるアオガエルの国は、隣のアカガエルの国との戦争に負け、多くの仲間が捕虜となる。帰還した捕虜からある告発があり、中山が演じる帰還兵シュレは自らの信念のもと、真実を語ろうとするが、政治闘争にのみこまれていく。戦後の事件をベースにした物語ながら現代の世相と重なる部分も多く、刺さる内容だ。
「設定を“蛙の世界”にすることで、起きる事象をより俯瞰的に見られるなと感じました。シュレは自分の中で譲れない事実と真実を貫き通す強さを持ったキャラクター。哲学者なので言葉を大事にし、言葉の操り方にも賢さがある。だからこそ上手に返せなかったりもして、もう少しうまく生きたらよかったのにと思いますが、彼の感情が分かるところもあります」
膨大なセリフ量と多様な感情を落とし込み、セリフとして発するのは労力のかかる作業だと思われるが、「会話劇は大好きです」と中山は笑顔を見せた。
「与えられた言葉を操りきれるか、その勝負になる気がしています。人間は複数の感情を抱えて生きていますが、芝居で表現するのは難しく、シンプルな感情に頼りがち。それでは作品に太刀打ちできないので、言葉の音や圧など台本の日本語を正確に発することで、渦巻く情念を表せるかなと考えています。演出のウォーリー木下さんとは初めてご一緒しますが、パフォーマンス劇を目指すということでどんな形になるか気になりますし、まずワークショップがあるそうで、嬉しいです(※取材時は稽古開始前)」
本作からどんなメッセージを受け取っているのか。
「シュレが語ろうとした真実を、自分たちに都合のいいものに変えようとする周囲の蛙たちは汚い。でも、自分もそちら側にいるのかもしれないと思います。シュレは、“負けた”、“真実を諦めた”のではなく、死をもって別の世界へ自分の真実を持って行った。だからこそ、この表題なのかなと。本番を迎える頃、自分が作品をどう理解し、どこまで行けているのか楽しみですね」
(取材・文:木下千寿 撮影:立川賢一)
プロフィール

中山優馬(なかやま・ゆうま)
1994年1月13日生まれ、大阪府出身。2006年より芸能活動をスタート。舞台作品の主演や映像作品への出演を重ね、俳優として研鑽を積む。近年の出演作に、舞台『血の婚礼』、『あゝ同期の桜』、『大誘拐』〜四人で大スペクタクル〜、「第三舞台2026」『パレイドリア』などがある。
公演情報

KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『蛙昇天』
日:2026年10月24日(土)~11月8日(日)
場:KAAT神奈川芸術劇場〈ホール〉
料:S席9,800円 A席8,000円 U24チケット[24歳以下]4,900円 ※他、各種割引あり。詳細は下記HPにて(全席指定・税込)
HP:https://www.kaat.jp/d/kaeru2026
問:チケットかながわ tel.0570-015-415(10:00~18:00)
22名限定! S席9,800円→カンフェティ特別価格+カンフェティポイント付き!
