
俳優のためのライブ配信エージェンシー「Un企画」が6~7月に行ったイベント「Actor and Liver event」で見事優勝し、弊誌インタビュー権を獲得した舞台俳優の本宮真緒。劇団チャリT企画に所属し、2年前からライブ配信活動を開始。TikTok LIVEでは「まおまお」として、舞台の本番期間以外はほぼ毎日配信しているという。「劇団チャリT企画」主宰の楢原拓、本宮の次回出演作『AKVSF -絶望の映画-』で脚本・演出を手掛ける「テッピン」主宰の吉田テツタにも登場いただき、ライブ配信や今回のイベントに対する思い、これまでの俳優活動を振り返りつつ、次回出演作への意気込みなどを語った。
―――まずは「Actor and Liver event」優勝おめでとうございます。俳優活動と並行して、ライブ配信を始めようと思ったきっかけを教えていただけますか。
本宮「きっかけは大きく2つあります。1つは、生活面も含めて俳優活動に悩んでいた時に、ファンを増やし活動の幅を広げながら自立して生活していけるライブ配信に出会ったこと。もう1つは、新たに出会う人に活動を知ってもらえることです。元々SNSがとても苦手で、ライブ配信に対しては嫌悪感まであったくらいなんです。ただ今までは舞台に出演する際はどうしても、私が届けられる範囲に限界がありました。私のことを知らない人たちに出会いながら情報を届けていかないと、今後活動する中で行き詰まってしまうなという悩みがあったので、実際に活躍しているUn企画の俳優ライバーを見て『これはチャンスだ』と思って配信を始めました。もちろん今は、ライブ配信に対する嫌悪感は全くないです(笑)」
―――嫌悪感を持っていたライブ配信の世界に飛び込むのは、相当な覚悟や思いがあったのかと思いますが。
本宮「苦手意識があっただけでなく、私自身色々なコンプレックスを抱えていたので、相当勇気が要りましたね。⾃分を表現すること⾃体は抵抗があるけどお芝居はしたい、広めていきたい!という謎の⽭盾を抱えていました。ライブ配信で自分をコンテンツとして表現し始めてから、自分の愛おしいと思える部分をいっぱい見つけられましたし、私のことを知らなかった方々に私の出演する舞台、目標や頑張りを届けられる面白さに気づくことが出来て。今では配信が大好きです!」

―――ライブ配信活動を始めて、俳優活動と共通している部分はありますか。
本宮「あると思います。俳優は⾃分のいろいろな部分をいっぱい使うんですよ。頭、⼼、体はもちろん、今までの経験や価値観も全部使いますが、ライブ配信も結構共通していると思うところがあって。当然ライブ配信をする上ではルールというものは存在しますが、ぶっちゃけ何でもやれる場所なんです。何でも表現していい場所だからこそ、私らしさが活かされるというか、“こういうことをしたい”、 “⼈にこういうものを⾒せたい”というものが形になる。そういう⾯⽩い点は似ていますね」
―――舞台の本番期間以外はほぼ毎日配信されているということで、ネタがなくて困ったことはなかったのでしょうか。
本宮「めちゃめちゃあります(笑)。最近は話したいことが特になくなったなと思ったら、突然歌い出したりします。私がやりたい、やりたくないは別にして、とにかく見ている人がツッコミを入れられるようなことをやって、そこから『あ、これ喋りたかった』みたいなものが見つかったりするので、とにかく何かしらをやるというのは意識しています」
―――ライブ配信では、話すこと以外にどんなことをされていますか。
本宮「キッチンに移動してご飯を作りながら配信したり、カラオケ配信もやります。それと舞台の稽古期間中なら、ネタバレにならない程度にセリフの一部を披露して興味を持ってもらうといったこともやりました。珍しいところだと、舞台チケットをひたすら売りさばく配信をしたこともありました。例えば『あと1時間でチケット10枚売ります!』と宣言して、視聴者さんに舞台に興味を持ってもらって、チケットを購入していただいた視聴者さんに向けて、ひたすらパフォーマンスしたりもやりました。きっと俳優をやっている私ならではと思いますし、とにかく自分に飽きないように心がけています」
―――そんな本宮さんが、「Actor and Liver event」にエントリーしようと思ったきっかけは何でしょうか?
本宮「優勝してカンフェティに載りたかったんです!! イベントが始まる直前に『1位しか狙わない!』と言ったことがプレッシャーになってしまったんですけど、優勝は気にせずとにかく楽しもうという気持ちに切り替えて、イベントに臨みました」
―――イベント期間中はリアルタイムで順位が表示されていたということで、結果的にスタートから1位の座を明け渡すことなく、2位に大きく差をつけた形となりましたが、1位を守らなきゃいけないというプレッシャーは常にありましたか。
本宮「イベントが始まってからはプレッシャーはあまりなくて、プラスな感情の方が多かったです。毎月様々なイベントが配信内で開催されているんですけど、今回は舞台俳優という表現者として結果を残したいと思えるイベントでした。イベント期間中はずっと気合いを入れていてハイになっていましたね」
―――とはいえ、最終日に逆転されるかもという不安はありましたか。
本宮「実は一番落ち着いていたのが最終日でして、絶対に一度も抜かされずに終わってやるという、まるでスーパーマリオのスターをゲットしたみたいな感じになっていましたし、何よりも視聴者のことを信じていました」
―――改めて応援してくれた視聴者さんに伝えたいことはありますか。
本宮「『誰かを応援する時には、時間もお金もかかれば、たくさん感情も使います。そういう皆さんの大切なものが込もった応援を絶対に未来へ繋げる。この人を応援して良かったと思えるような役者でいます』ということを、イベント中ずっと言っていました。その気持ちは今もこれからも変わらないです。視聴者の方々がいたからこそ、今こうしてインタビューを受けることができています。私という、配信活動もしている舞台俳優を見つけて、私の夢や目標、活動に興味を持ち、色々な大きさや形で応援してくださり本当に本当に感謝しています。応援してくれて私や舞台と出会った方々が、楽しく幸せでありますように。俳優として活動している時も配信をする時も、皆さんが私を応援したことをずっと誇れるようなそんな舞台俳優でありたいと、いつも思っています」

―――ありがとうございます。俳優としてのパーソナルな部分もお聞きしたいと思いますが、お芝居を始めたきっかけを教えていただけますか。
本宮「10歳の時に観た宝塚歌劇団がきっかけです。母親が『男役似合いそうだね』と言ってきて、『男役って何?』と。そこから宝塚のことを教えてもらい、家族全員で大劇場へ観に行きました。一瞬で大好きになりましたね。入団したいと思い一時期その世界を目指したりしたのですが、いざ触れてみるとめちゃめちゃ距離を感じて……。自分が一員になるのではなく、客席からひたすらこの世界を浴びたいんだと気づきました。それから舞台芸術を勉強できる大阪の⼤学に⼊学して、演劇の歴史を学んだり、現役で活躍されている演出家の授業を受けたりもしました。私にとっての転換期は、 実際に学内で公演を打つ授業の時でした。その時主演を務めたんですが、とてもいい公演を打つことができたんです。カーテンコールの時に初めて客席からの拍⼿を嬉しく思いました。『いいお芝居をしたり、座組のみんなでいい公演を打つと、こんな拍⼿がもらえるんだ。私、これをずっとやっていたい!』と。卒業したらすぐ上京しようと決めました」
―――上京して、2022年秋に「劇団チャリT企画」に入団しますが、その前に第34回公演『絶対に怒ってはいけない⁉』に外部として出演されていますね。
楢原「『絶対に怒ってはいけない⁉』では、オーディションを経て出てもらったんですよ。それで千秋楽の打ち上げの時に、急に私の前に正座して『何事か?』と思ったら『入れてください!!』と言って。見ての通り、小劇場系の貧乏俳優的な要素は全然ないですし、この作品は劇団内のパワハラとウクライナ戦争を引っかけた作品で、こんなところに入ってくるような子じゃないでしょ!と(笑)。まさに青天の霹靂で、いきなり来たからちょっとびっくりしました」

―――本宮さんにとって『絶対に怒ってはいけない⁉』に出演したことはターニングポイントだったのでしょうか。
本宮「はい! まず劇団で扱う題材や描き方が本当に面白いなと思って、素直に『こういうお芝居をもっとしたい』と思ったので入団を決意しました」
楢原「劇団を立ち上げた当初は女性の劇団員もいましたが、育児とかでお休みしていて、女性の劇団員が1人もいなくなっちゃったんです。僕らの世代の演劇は、稽古中に平気で怒鳴ったり、物は投げたりと、いわゆる昭和の演劇でしたが、ハラスメント対策で風通しが良くなったいいタイミングに入ってきたんですよ」
―――入団して今年で4年経ちますが、主宰として本宮さんが成長している部分を挙げていただけますか。
楢原「入団当時は中身も見た目もお上品な感じでしたが、いろんな汚い役もやれるようになって、幅が広がったなと思いました。ライブ配信にもチャレンジして、20代前半ではなかなか出来ない、エネルギーに満ちあふれている雰囲気がありますよね。俳優業以外にも、劇団の物販といった裏方作業も積極的に頑張ってくれたり、若いエネルギーというのが劇団にとってもすごい大きな力になっているとは感じますよね」
―――楢原さん的に、今後本宮さんにはどういう俳優になって欲しいと思っていますか。
楢原「本公演で“個性的なおばちゃん”を出すのが好きで、少しでも早く近づいてくれるといいなと思っていますし、劇団のコメディエンヌとして開花すると、すごく幅が広がってきて、俳優として息の長い感じになってくるんじゃないのかなと思います。年を重ねていくと、いろいろなものを捨てていかなきゃなんないだろうから、そうなった時が楽しみです。彼女がいつまで在籍するかちょっと分かりませんけど(笑)」
―――ちなみに楢原さんは、本宮さんが今回のイベントに参加されていたことはご存じでしたか。
楢原「いやいや、全然知りませんでした(苦笑)。時期的に本公演『ブン/ダン』が今年5月に行われて、配信イベントが6月からだったので、事後報告でした」
本宮「1位になったことを報告しても、『へー』みたいな、まるで他人事のようでした(笑)」
―――さて本宮さんの次回出演作は、11月上演の『AKVSF -絶望の映画-』になります。楢原さんと吉田さんの繋がりがあったのが、本宮さん出演のきっかけだそうですね。
吉田「チャリT企画の公演は何度か拝見していますし、それこそ『絶対に怒ってはいけない⁉』も観劇しました。いずれも面白かったんですけど、中でも昨年の本公演『パトリオット』でエレベーターガール役として出演していた本宮さんが本当におかしくて、『この人はユーモアを分かっている人じゃないかな』と思いました。で、今年の本公演『ブン/ダン』を観た時も、作り手の意図がすごく分かっている人ではないかと思って。ちょうど『AKVSF』に出演してくれる若い俳優さんを探していたところで、“本宮さんなら”と楢原さんにダメ元で言ったら、すぐに連絡をいただいて、トントン拍子でやってもらうこととなりました」

―――本宮さんは今回のオファーをいただいた時、どのような心境でしたか。
本宮「純粋に嬉しいなと思いました。オファーをいただけるというのは本当に本当にありがたいことですし、期待やドキドキワクワクを抱いてくださっているというのもすごい嬉しいです。あと企画書を読ませていただいて、『あ、この舞台やりたい!』という気持ちになれた内容だったので、私自身即決でしたね」
―――『AKVSF』のあらすじと見どころを教えていただけますか。
吉田「1960年代後半の映画の撮影現場で起こった話になります。群像劇ということで、いろいろな立場から観られるような感じの芝居にはなっていますが、“これはダメだ”とか“納得いかない”という見方をする人もいるだろうし、賛否両論な感じの芝居になるんじゃないかなっていう感じがありますね。副題が『絶望の映画』となっているので、映画好きな方にもぜひ観に来てもらいたいです」
―――本宮さんはどんな役を演じられますか。
吉田「怒っている人ですね。まあ皆さん怒るんですけど。本宮さんには結構怒っていただきます(笑)。2024年の『ネズミ狩り』で、本宮さんがすごい怒っているシーンがとても印象的だったんです」
楢原「クライマックスの怒鳴り合うシーンね」
吉田「はい。今回のキャストで唯一の若手で、映画現場のスタッフを演じていただきますが、若さゆえの純粋でへこたれず、恋愛に関しても真っ直ぐで、どんなにパワハラを受けても、最終的にはしたたかに生きるような役になる予定です」
―――取材時点ではまだ稽古前の段階ですが、稽古開始までに役作りするプランはありますか。
本宮「私は1960 年代後半を⽣きてはいないので、当時の⼥性の⽣き⽅、世間体、価値観を知りません。その時代の⽇本や映画界がどうだったかというのをまず調べました。当時若い⼥性が映画の撮影現場で働くことがレアなことなのであれば、きっと相当のやる気と覚悟を持ってる⼥性だと思います。⾔葉の端々に強気の部分が出てくるだろうなとか、そういうのをいろいろ勉強してから稽古に⼊ろうと思っています」
―――本宮さんは『テッピン』の作品に出演することも、吉田さんの演出も受けるのも今回が初めてということで、楢原さんから吉田さんに本宮さんの「トリセツ」をしていただけますか。

楢原「決して取り扱い困難という俳優ではありません(笑)。私もテッピンの作品を何回も観劇していますが、非常に面白いんですよ。もう感動ですね。抽象的な言い方しかできないんですけど、『すごいなー‼』といつも思わされています。基本的には吉田さんにお任せしていただいて、ベテランの役者さんの中で揉まれて、スキルアップして帰ってきてくれたら嬉しいなと思っています」
吉田「ありがとうございます!」
―――では最後に、吉田さんから『AKVSF -絶望の映画-』への意気込みを、楢原さんから本宮さんへのエールを、本宮さんからこのインタビューをご覧になられている方に向けてメッセージをそれぞれお願いします。
吉田「例えばNetflixでやっているような、有名人の闇の部分を切り込んだドラマが流行っているじゃないですか。あぁいう感じで、今回ある人の闇を切り込みますが、尊敬の念を持ってリスペクトとして描きます。それが誰なのかは観に来て初めてわかるようになっていて、劇場を入ってきたところから、もしかしたらロビーに入ってきたところから分かるような雰囲気を作りたいと思っています。きっと『AKVSF』という訳のわからない題名も観終わったら『だからこういうタイトルなんだ』と思っていただけますし、いろいろな面で楽しんでもらえればという感じですね」

楢原「『AKVSF -絶望の映画-』面白そうですね。楽しみですよ。うちの劇団では現在や近未来での世界観でやることが多いので、60年ぐらい前の世界の役を演じるということは本人にとってもいい経験になると思うので、ガッツリ執着して、何かを得て帰ってきてもらいたいなと思います。期待しています!」
本宮「生きたことのない時代の人を演じる機会は今までなかなかなかったので、本当にすごく楽しみです。劇場に⼊ってきた時から何かを感じられるというのは舞台ならではだなと思います。劇場に来て作品を楽しむからこそ感じられるものや⾯⽩さを、しっかりと伝えられるように頑張りたいと思います。またライブ配信視聴者の中には、舞台をまだ⼀度も観劇されていない⽅もいらっしゃるかと思います。“舞台”と⼀⾔に⾔っても、本当にいろいろな舞台がある。劇場によって、演出家さんによって、役者によって、お客さんがそこで得られるものは全然違う。本当に“⼀期⼀会”だと思うんです。私という俳優に出会ったのであれば、絶対に楽しませるので! 私が出演する舞台をぜひ体感してください。全⾝でたくさん楽しんで舞台ならではの面白さを吸収していただけたらとても嬉しいなと思います」
(取材・文:冨岡弘行 撮影:間野真由美)

プロフィール

本宮真緒(ほんみや・まお)
広島県出身。「劇団チャリT 企画」所属。主な出演作に、舞台『絶対に怒ってはいけない!?』、『その頬、熱線に焼かれ』、『Wの非劇』、『ごんべい』、『オサエロ』、『パトリオット』、『ブン/ダン』など。またTikTok LIVE では「まおまお」としてライブ配信をおこなっている。

楢原 拓(ならはら・たく)
埼玉県出身。「劇団チャリT 企画」主宰。劇作家・演出家・俳優。1998 年、早大劇研を母体にチャリT 企画を旗揚げ。代表作に、『ネズミ狩り』(佐藤佐吉賞最 優秀脚本賞)、『それは秘密です。』『絶対に怒ってはいけない!?』(共に、テアトロ新⼈戯曲賞最終候補)、『キョーボーですよ!』など。

吉田テツタ(よしだ・てつた)
大阪府出身。自身が作・演出を手がける個人企画「テッピン」を立ち上げ、『シバイハ戦ウ』、『八人の悪逆』、『ゼツボーのエンゲキ』などで脚本・演出を務める。また俳優として、映画『拝啓、永田町』、舞台『ざくろのような』、『治天ノ君』などに出演。
公演情報

テッピン vol.7(ラッキーセブン!)『AKVSF ー絶望の映画ー』
日:2026年11月6日(金)~10日(火)
場:サンモールスタジオ
料:財力者様っ助けて! チケット[特典付]7,000円 一般4,700円 ラッキーセブン‼割[2枚1組・11/7 19:00]7,700円 有料ゲネプロ[11/6 15:00]3,700円 学割2,700円 ※要学生証提示(全席自由・税込)
HP:https://sites.google.com/view/akvsfteppin
問:テッピン mail:info.tppin@gmail.com
先着限定! 一般4,700円→3,700円
