劇団員3人のトークから浮かび上がる“ホチキスらしさ” 代表作・学校シリーズの第3弾、今度の舞台は給食室!

劇団員3人のトークから浮かび上がる“ホチキスらしさ” 代表作・学校シリーズの第3弾、今度の舞台は給食室!

 主宰の米山和仁(脚本・演出)を中心に大衆性の強いエンターテインメントを発信し続ける劇団ホチキスが、第53回公演『クッキングクラス』を上演する。本作は、『PTA』(2008年/第21回公演、2017年/第37回公演)、『スクールバス』(2024年/第50回公演)と続いてきた、学校や教育をテーマとするワンシチュエーション舞台の第3弾で、東京のレストランを解雇された元シェフの主人公が、故郷の小学校の給食室再建計画に巻き込まれる物語。AIを駆使した効率重視の給食システムに対抗する主人公たちと給食室スタッフ、その行方はいかに……?

 劇団員を代表して、小玉久仁子、山﨑雅志、齋藤陽介の3人がインタビューに答えてくれた。“我々なりの言語が出来上がっている”という3人の話をたっぷり楽しんでほしい。

限られた空間の中で物語が展開する面白さ

―――今回はホチキスの在籍歴が異なる3人の皆さんに集まっていただきました。新作は給食室のお話だと聞いて、どういうことを考えましたか。

小玉「PTA、スクールバスときて、次が給食室というのはモチーフとして一番面白そうだなと思いました。最初に聞いたときは、“みんなの小学校の給食室ってどんな感じだった?”みたいな話でひと盛り上がりしましたね」

山﨑「学校の中って、子供が入っていいのかどうかわからない不思議なエリアがありますよね。給食室もそういう場所だと思うんですけど、そこで何が行われているかはブラックボックスというか、想像の範囲でしかないので、それを改めて描くことは意味があるなと思いました」

齋藤「米山さんは料理が好きなんですよ。劇団員みんなで家に行くと、すごく凝った料理を作ってくれたりして。だから本領発揮なのかなって思いました。具体的なメニューの描写とか、お客さんが“おいしそうだな”って感じるものを書いてくれるんじゃないかなって期待しています」

―――劇団の代表作と言える“学校シリーズ”ですが、学校というモチーフが共通しているからこその面白さはありますか。

小玉「私は、こういう“縛り”って結構好きなんです。ザッキー(山﨑)も言ったように、学校って魅力的な空間が多いですよね。私たちが通っていた頃と今では全然違ったりもするんでしょうけど、人が物心ついたばかりの頃に必ず通う施設ということで、不思議がいっぱいありそうな場所だと思うんです。だから、学校というテーマはこの先まだまだ続いていくと面白いかもしれません。あと、このシリーズを上演するのが必ず東京芸術劇場だというのも、また1つの縛りとして面白いなと思っています」

山﨑「小学生の頃、授業参観で学校に親が来ると、普段家で会っているのにすごく違和感がありましたよね。家とは隔離された、先生という一部の大人たちだけがいる小学校って、子供にとってはすごく特殊な状況なんだと思うんです。そんな小学校の主役はもちろんそこにいる子供たちですけど、今回の登場人物は全員大人なので、子供の存在をどういうふうに想像させながらドラマを進めていくか、そこに我々は彩りとしてどう関わっていくか、それをお客さんも外側から見るような、不思議な感覚になるんじゃないかなと思います」

齋藤「『スクールバス』のとき、米山さんのお子さんがスクールバスのある学校に通っているという話を聞いて、作品がお子さんの成長を反映しているんだなと感じました。たぶん今後何年かは、お子さんの成長と紐づけながら、時代と共に変わっていく学校像と、僕らが知ってる“学校ってこういうものだよね”みたいなものを混ぜ合わせた作品が続いていくんじゃないかなと思うので、個人的に楽しみです」

―――では、ワンシチュエーションものならではの面白さや難しさは何でしょうか。

小玉「私は三谷幸喜さんの『王様のレストラン』が大好きで、あれをワンシチュエーションと言えるかどうかわかりませんが、食事という1つの流れの中に厨房やホールといったいろんな空間があって、そこでたくさんの人が働いたり事件が起こったりするのがすごく楽しいんですね。今回は給食室ですけど、メインとなる登場人物が高級レストランで働いていた経歴を持っていたりするので、『王様のレストラン』的な面白さやカッコ良さみたいなものも出てきたらいいなと楽しみにしています」

山﨑「舞台上の外側をどう想像させるかというのが、ワンシチュエーション……我々の場合はワンシチュエーションコメディですが、その最大の面白さかなと思います。外側で大きな問題が起きていて、それを解決しなきゃいけないっていう圧力を感じながら、舞台上のメンツが困ったり喜んだりしながら、必死に何かをやっている。そこでは役者の個性も独特な光り方をすると思うし、登場人物が頑張ることで外の世界が変わっていく面白さも見せられたらいいなと思います」

齋藤「舞台表現なので、やっぱり身体が大事だと思うんです。『スクールバス』もバスの中だけで完結していて、役者の身体の動きでバスが大きく揺れるのを表現したんですね。今回はどうなるかわかりませんが、AIとの対決もあるようなので、そこで役者がどう動いて、どう見せていくかみたいなところがたぶん難しいし大変だろうけど、めちゃくちゃ楽しいことだろうなと。ワンシチュエーションに限った話ではないかもしれませんが、限られた空間の中でどう表現するかみたいなのが僕は好きなので、今回も楽しみですね」

コメディだからこそ、芝居ができる人を中心に

―――『クッキングクラス』では、主演の鎌苅健太さんをはじめ、沖矢悠さん、佐藤日向さんの3人を客演に迎えます。どんなことを期待しますか。

山﨑「鎌苅健太さんは、ミュージカル『憂国のモリアーティ』の初演(2019年)でご一緒させていただいたんですけど、あんなカッコいい彼がホチキスの作品に出てくれて、コメディ全振りでいってくれるのを僕はすごく期待してますし、それができる人なので楽しみです。少数精鋭の座組全員で、ホチキスが最も前面に出して表現したい面白さを作れたらいいなと思っています」

齋藤「僕は今41歳で、ここ数年、主演に据える方は自然と年下の人ばかりなんです。だから“しっかりしなきゃ”みたいなのがあったんですけど、鎌苅さんは僕の1つ上なので、今回は甘えさせていただいて、鎌苅さんには主演としてバーンと立ってもらう。そういう遊び方ができたらなって、個人的には思っています」

小玉「沖矢さんと佐藤さんは、ビジュアル撮影でお会いして、良い意味で見た目のイメージと違いました。佐藤さんは可愛らしい声なのかなと思ったらちょっとカッコ良い感じの声でしたし、沖矢さんはクールな感じかと思ったらふざけるのも好きみたいで、お二人ともホチキスのコメディでいろんな能力を発揮してくれるんじゃないかと期待しています」

―――ゲストの方についてお話しいただいたので、今度は劇団員としてそれぞれ他のお二人をどう見ているかをお聞きしたいです。

小玉「いつも稽古場で一番楽しみにしている2人です。この2人の“特攻隊長”が面白い芝居をしてくれると、“おっ、これはいける”ってなったり、“ここをもっと膨らませようか”って、作品に厚みがつき始めたり。この人たちの芝居が下手だったらホチキスはとっくに廃れていただろうなと、自信を持って言えます。演技力という言葉を使うのはちょっと恥ずかしいですが、コメディだからこそ演技力がないと見れたものじゃないと私は思っているので、その中心にはお芝居ができる人たちを置きたいですね」

山﨑「本当に信頼しているというか、一緒に過ごしてきた年月を考えたら、そんな軽い言葉では言えないくらいです。みんなそれぞれ外の作品にも出ていますが、ホチキスの作品じゃないと出せない芝居というのが僕らの中にはあって、それをまず最初にこの座組で提示するみたいな構図ですね。さらに、それに関して三者三様で発想が違うのも強みだと思います。そこで全員が同じアプローチだと複雑さが出ないというか、料理で言うとコクが生まれなくなっちゃう。それぞれの方向性だけが違うのが良いんですね。そこで2人が違うアプローチをしてきても信頼できるし、これをベースに作るんだという強い気持ちがあります」

齋藤「良い意味でも悪い意味でも家族みたいな感じですね。小玉さんは俳優としてだけでなく、米山さんが企画を立ち上げるときに一番近い相談相手みたいな感じでもありますし、総合アートディレクターっていう肩書きもあって、デザイン方面にも活躍してくれています。そういういろんなところを見て、家族目線で言うと“こだわりの強いオタクのお姉ちゃん”っていう感じですね」

小玉「(笑)」

齋藤「この言葉には、本当にいろんな感情が込もっています。そして、これからも一緒にやっていきたい人だなと思います」

山﨑「俺も褒めて!」

齋藤「これから言いますよ(笑)。やっぱり稽古場を回してくれる人ですね。若い劇団員たちを引っ張って、現場の空気を作ってくれる人だなと。そしてお芝居になると、小玉さんの話にもあったように特攻隊長みたいなところがあって、それを本番に入っても続けるような人なので、僕からすると“悪ふざけするお兄ちゃん”っていう感じですね」

―――山﨑さん、納得されましたか。

山﨑「納得しました(笑)。やっぱりホチキスのこの2人としかできない会話というのがあるんです。“これって面白いよね”っていう共通項がある。そういう我々なりの言語が出来上がってるなというのは感じています」

少人数かつ新しい立ち位置で、今までにない“美味しさ”を

―――これまでホチキスの舞台では、山﨑さんと齋藤さんは割と立ち位置が遠い役柄を演じてきたそうですが、今回はキービジュアルにもあるように、主演の鎌苅さんを含めた3人で並び立つキャラクターになっています。ホチキスのファンの皆さんには新鮮に映るでしょうし、演じるおふたりも、これまでとは違った関係性を感じられるのではないでしょうか。

山﨑「非常に楽しみです」

齋藤「非常に楽しみです」

―――早くもバディ感が出ていますね(笑)。

齋藤「稽古でいろいろ試しながら、面白いことを生み出せていけるんじゃないかなと思ってて、それがすごく楽しみです」

山﨑「確かに、普段は齋藤とひとつのシーンをやることってあまりないですからね。絡みがあるとしても、セリフがないオフのところで何かやっていたりするくらいで、あまりキャッチボールしなかったから」

齋藤「裏でボソボソ好き勝手なことを言ったり、それこそ悪ふざけばかりしてることが多いですね。ガッツリ一緒にお芝居というのは少ない」

山﨑「ただ、そうやってボソボソやるのも相手を選ぶんですよ。誰でも彼でもやってたら崩壊しますから。やっぱり上手な人にしかやれないんですよね。でも今回は新しいポジショニングというか、ホチキスとして発展性があるような配置だなと思っています」

―――来年でホチキスは結成30周年を迎えます。それぞれ違う時期から劇団に関わっている3人から見て、ホチキスらしさとは何だと思いますか。

小玉「うーん。米山さんなんじゃないですかね」

―――もう少し言葉を足すと?

小玉「なんだろう……難しいことは好きじゃない。楽しいことが好き。お祭りみたいなお芝居を作りたいっていう。お客さんの感想を30年間聞いていると、もちろん変わってきている部分もあるんですけど、まあまあ同じことを言ってるような気がするんです。そうやって同じように楽しんでくれているところを見ると、やっぱりそこなんじゃないかなと思います。もっとわかりやすく言うとしたら……」

山﨑「最近提唱している、劇団の活動理念があるじゃないですか」

齋藤「“演劇的冒険を駆使し、観客に圧倒的多幸感を提供するシアターカンパニー”」

山﨑「それに、30年かけて辿り着いたっていうことだと思うんです」

小玉「そう、辿り着こうとしてる。頭空っぽにして楽しんで劇場を出たときに、なんか良いもの観たとか、すごい斬新なもの観たとかじゃなく、大したことは何も起こってないけど、なんか楽しくて、元気が出て、明日頑張ろうみたいな気分にさせる作品作りをしている団体かな。米山さん自身も説教臭いのは好きじゃないので、伝えたいこともいつの間にかほんわりと頭の隅に残るように伝えている、そんな感じなんだと思います」

山﨑「僕がホチキスに加わった20代中盤くらいの頃って、さっきの活動理念みたいなものが明確化されてなかったんですね。それで、自分の劇団を他の人にどう紹介したらいいのか、どういう団体なのかって聞かれたときに何て言ったらいいのかずっとわからなくて。 それこそ米山さんや周りのメンバーにも聞いたりしてたんですけど、劇団として年月を重ねてきた今、ようやく活動理念をちゃんと言えるようになったということだと思うんです。ホチキスらしさといったら、もう活動理念の一言に尽きると僕は思います」

齋藤「うーん……“バカすげえ”かな。お客さんから見て“バカだなあ”と思う部分と、“なんかすげえことやってるな”っていうところが同居している。 作ってる側がこれを言うのは野暮かもしれないけど、そういうご感想をいただいてるんです。バカですげえ、バカすげえ団体。それがホチキスらしさかなと僕は思います」

―――では最後に、『クッキングクラス』を楽しみにされているお客様に向けて、この作品だからこそ味わえる“美味しいところ”を一言ずつお願いします。

小玉「たまにこうやって座組の人数が少ない、世界観もファンタジーとかじゃなく、空間もギュッと狭めた濃密な舞台をやるので、暑い時期の公演ですけど、より暑苦しいホチキス汁がたくさん出る芝居になると思います。その濃密さを楽しんでいただけると嬉しいです」

山﨑「そういうホチキスらしさはもちろん、この人数での座組ですから、それぞれのキャストの他では出せない良さとか、ここでしか出ない輝きだったりとかを見ていただけたらなと思います」

齋藤「おじさんの可愛さ、だと思います。メインの3人が全員40代ということで、そういうおじさんの可愛さというのは、たぶん今までのホチキスにはなかった美味しさかなと、僕は思います。ぜひご来場ください」

(取材・文:西本 勲)

プラス
お弁当に入ってたら嬉しいものはなんですか?

小玉久仁子さん
「シュウマイ。好きなおかずは最後に楽しむ派の私にとって、“肉料理”、“一口サイズ”、“終盤まで残しておいても見栄えがいい”という点で嬉しいお弁当のおかずですね。ただし、1個だけがいい。2個以上は何故かありがたみが半減してしまう」

山﨑雅志さん
「青唐辛子味噌。牛タンを食べる時に個人的にはかかせないやつ。牛タン合わせで寄せて来ているかと思いきや、結構何でも合う万能さ。青唐の程よい爽やかさと辛味を味噌がまろやかにしているのでご飯がすすむ。そう、白飯にも合う。牛タン問わずあったら嬉しいやつ。それが青唐辛子味噌」

齋藤陽介さん
「磯辺揚げです。ぎっしり敷き詰められたのり弁に焼き鮭が乗って、つけあわせにほうれん草のおひたし・だし巻き卵・筍の煮たやつなんかが添えられてるだけで十分幸せですが、その上にさらにでっかい磯辺揚げが鎮座してたら、そりゃあもう、大切に味わいます。“お~いお茶”のちっちゃい缶が横にあったら最高ですね」

プロフィール

小玉久仁子(こだま・くにこ)
岐阜県出身。愛知県立芸術大学在学中、劇団ホチキスの旗揚げに参加。外部作品への出演も多く、2026年の出演作に、劇団ドガドガプラス『吉原ロミオとジュリエッタ』、劇団ラパン雑貨ゝ『Bad error or True error』、あすまい『死にかけのマリ☆アージュ』など。

山﨑雅志( やまざき・まさし)
東京都出身。2002年、第9回公演『ドライブユニコーン』から劇団ホチキスに参加。外部公演は、舞台『ジョーカー・ゲーム』、ミュージカル『ブルーサンタクロース』など多数出演。演劇ユニットdope Ⓐ dope でも活動中。

齋藤陽介(さいとう・ようすけ)
岐阜県出身。明治大学文学部文学科で演劇を専攻。2011年、劇団ホチキス第27回公演『砂利塚アンリミテッド』への参加を経て、2013年から劇団員に。ナレーションの仕事も行う一方、“ 夏葉亭空豆”として高座に上がることもある。

公演情報

劇団ホチキス 第53回公演『クッキングクラス』

日:2026年8月26日(水)~30日(日)
場:東京芸術劇場 シアターイースト
料:スーパープレミアム席[最前含む前方席・特典付]11,000円 一般7,500円(全席指定・税込)
HP:https://hotchkiss.jp/cooking/
問:劇団ホチキス tel.03-6805-2699(平日10:00〜17:00)

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