
1991年、奥村直義を中心に日本大学藝術学部在学中のメンバーによって結成されたBQMAP。2026年に35周年を迎える。記念すべき本年、1993年と1996年に上演されたBQMAPとしては異色の和製ゴシックホラー『源内人形』が上演される。主宰であり脚本・演出・美術を担当する奥村直義と劇団員の前田剛、そして平賀源内役で客演する西ノ園達大に公演への思いを聞いた。
―――BQMAPが35周年を迎えます。まずは、奥村さんから35周年を迎えることへの思いを聞かせてください。
奥村「35年も続けてこられると思ってもいませんでした。30周年のときは、世の中的に演劇ができない時期だったこともあり、お祝いができなかったですし、この先も何が起こるか分からない。なので、35周年の今、お祝いをしておこうと決意しました。これまでの35年間、いろいろな人が劇団を支えてくれました。劇団の中にも35年、そしてそれに近い期間、ともにやってきてくれたメンバーが何人もいるんです。前田も30年くらいになるんですかね?」
前田「成人してからなんで、人生の半分以上ですよ(笑)」
奥村「ですよね(笑)。もう人生の一部になっていると思うので、これからもどうにか続けていければと思っています」
―――今回上演される『源内人形』は、イベントでの投票によって上演が決まったそうですね。
奥村「そうなんです。昨年、35周年記念公演の演目を決めようと行った『Selectilive』というイベントで決まりました。これまで作り上げた70本くらいの作品の中で、どれを上演すべきか決めきれず、まず、劇団内で投票をして4本を選びました。その後、僕が上演したいと思う作品1本を合わせて、5本をそれぞれのメンバーがプレゼンをして、それをウェブや会場でお客さんにも観ていただいて投票をしてもらいました。その中で選ばれたのが『源内人形』です。一番、選ばれてほしくなかったんですが(笑)」
前田「悔しそうでしたよね」
奥村「一番難しいと思っていた作品だったので」

―――その難しさというのは?
奥村「かなり昔の作品でもあるので、今のBQMAPとは空気感が違う作品なんです。出演者も少ないですし、現代では引っ掛かってしまう表現もあるので、いろいろと直していかないと難しいぞ、と」
―――なるほど。前田さんは『源内人形』を上演すると決まったとき、どのように感じましたか?
前田「僕は再演に出演させていただきましたが、とにかく暗い話だったという記憶で、全く興味がなくて。なんで、こんなに暗い話をやらなくてはいけないんだという気持ちでした(笑)」
奥村「驚くほど笑いがないからね(笑)」
前田「そう、1つもない」
西ノ園「投票した方たちは、この作品のどんなところに惹かれたのですか?」
奥村「『源内人形』は和製ゴシックホラーと謳っていますが、そうした空気感の作品は今はやっていないんです。最近の作品は、笑いも音楽も入れ込んだエンターテインメントを重視しているので、やっていないからこそ興味を持っていただいたのかなと思います」
前田「観ている方たちは、ホラーは楽しいかもしれないですが、やっている側は苦労が多いんですよ(笑)」
奥村「人を驚かせるようなホラーではないからね」
前田「そうそう、キリキリと締め付けられていくような」
西ノ園「それを観たことがない劇団員もいるんですよね? そうするといわゆる興味本位というところもあるんですかね。それに加えて、プレゼンが良かったから?」
前田「そういうことでしょうね。観たことがないというのは大きいと思いますよ。それに、暑い季節ですし(笑)」
奥村「涼しくなろうみたいな(笑)」
―――西ノ園さんは、今回のオファーを受けていかがでしたか。
西ノ園「台本をいただいて読んでいたら『あれ?』と。そのときになって気づいたのですが、僕、33年前に観ていたんですよ。BQMAPが旗揚げしたのは1991年で、僕が日大の藝術学部に通っていた頃でした。そこで3人は一緒だったんです。僕自身も自分が主宰の劇団を立ち上げたばかりで、初めて舞台に立ったのが1991年で同じ年です。なので、僕も初舞台を踏んでから35年です。自分の節目を作ろうと思ったこともなかったですが、今回、『あっ』と思って調べたら、同じく35周年だったので、これはとんでもないご縁だなと。自分で企画していないのに、勝手に僕も一緒にメモリアルを祝っていただけそうだなと思っています(笑)。のちに僕は当時の先輩劇団『TEAM発砲・B・ZIN』に所属することになるんですけど、BQMAPさんとは、学生時代から劇団の人気を分け合うような関係で(笑)」
奥村「いやいや、全然分け合ってない(笑)」
西ノ園「僕がいた『TEAM発砲・B・ZIN』と、もう1つ『1999QUEST』(現在は「X-QUEST(エクスクエスト)」)という劇団もあって」
前田「あと『夏の大三角形』というのもあった」
西ノ園「『夏の大三角形』はもう活動していないんですよね。『X-QUEST』は今も活動されていますが。うちは15年で終わってしまっているので、35年続けられることがどれだけ偉大か身に染みて感じています」
前田「そうか、『TEAM発砲・B・ZIN』の倍以上活動していることになるのか」
西ノ園「だから、もう神の域ですよ、僕たちにとって。どういう手を尽くしたら、35年も続けていけるのか。本当にすごいことです。それで、ぜひ出演させていただきたいと思いました。それから、前田ともね」
前田「付き合いが長い(笑)」
西ノ園「小中大と一緒で」
前田「実家が200メートルくらいしか離れてないんです」
西ノ園「母ちゃん同士も友達で(笑)」
前田「そう。小中は公立でしたが、高校だけ学歴の差が出て、たっちゃん(西ノ園)だけものすごく偏差値の高い高校に行ったんですよ。ただ、最終学歴は一緒だった(笑)」
西ノ園「これ、いろいろなところで(前田が)話しているんですよ(笑)。そんなご縁もあって、ぜひにと。タイミング的にも、心の底からうれしかったです。ほかにも懐かしいメンバーがいるので、皆さんにお会いできることも楽しみです」
奥村「たっちゃんが演じる平賀源内は、前田よりも年齢が少し上の役なんですよ。それで、誰かいないかなと思ったとき、顔が似ているというのもあって、たっちゃんにお声をかけました。それからは源内さんの顔を見るたびにたっちゃんに見えてきて(笑)」
前田「お話はファンタジーだけど、そこはリアリティを気にしたんですね(笑)」

―――前田さんは今回、どの役柄を演じるのですか?
前田「僕は杉田玄白を演じます」
奥村「そして、平賀源内が作った『源内人形』を市川美織さんが演じてくれます。以前、外部の公演でご一緒したことがありまして、今回、出演してくださることになりましたが、とても魅力的な女優さんです」
―――お2人が演じる役柄についても教えてください。
前田「これからまだ台本等も変わっていくと思うので、再演のときの玄白のイメージですが、物語を紐解いて調べていく、探偵的な役どころです。玄白の目線で話が少しずつ明らかになっていくのだと思います」
奥村「そうですね、いわゆるストーリーテラーです」
前田「それから、今、髪型をどうするか迷っています。玄白さんの絵を見ると、どれもこれもツルっとしている絵ばかりなので、どうしようかなと。ツルっとするのか、今、葛藤しています(笑)。まあ演出次第ですね」
西ノ園「まだ人物像についての話はしていないので、あくまでもイメージですが、平賀源内は、破天荒で男色で、歌舞伎などにも興味を持っていた人物なのかなと思います。文化的なことも、科学的なことも、さまざまなジャンルを網羅している。でも、その人物像を紐解いていくと、実は貧乏だったようで。そのためにも、いろいろなことをしなくてはいけなかったのかもしれないと感じました。とにかく手当たり次第、いろいろなものに興味を持って、なおかつそれぞれの分野で大成している。ものすごい人物だなと思います。エネルギッシュで、色恋に関してもものすごくエネルギーを発揮した方なんだろうなと思うので、舞台上ではエネルギッシュでいなくてはいけないと考えています」
奥村「この2人の対比が大事になってくると思います。破天荒な男と超常識人ですが、その破天荒さを玄白が受け入れているのは、常識を超えた優しさを持っているからなのだろうなと。この2人が源内と玄白を演じるのが楽しみで仕方ないです」
―――演出や美術はどのようにブラッシュアップしていく予定ですか?
奥村「演出面では、最近の公演でしているように音楽・歌を入れていこうと思っています。初演と再演ではなかったんですよ。でも、音楽を入れることで、このダークサイドの世界なりのエンターテインメントをもっと見せられるのではないかと思います。それから、単純に会場が大きくなっているので、人数を使った表現も考えています」
―――そもそも、この作品はどんな発想から生まれたものだったのですか?
奥村「まずは、平賀源内というキャラクターに興味がありました。それで、もし、平賀源内が死なないで生きていたら何を作ったのだろう、何をやりたかったんだろうというところから考えていきました。源内は、当時から人形など、愛玩するものに興味があったようです。そして、源内には女の人に対するトラウマもあって男を好んだ。そうした源内が、何かを作り出そうと思ったときに、恐れることなく、愛することのできる人形を作っていくのではないかと想像しました。そこに、ゴシックホラーとして、『ドラキュラ』や『フランケンシュタイン』のような雰囲気を入れ込んだ、和製のゴシックホラーにしたら最高ではないかと考えて作りました。そういえば初演のときは、ちょうど台風にあたってしまって、演者よりも客席にいるお客さんの人数が少ないという状況だったんですよ(笑)」
前田「たっちゃんが観たのも、その台風のときだよね?」
西ノ園「そうだね」
―――それから30年が経ち、作品に込めた思いに変化はありましたか?
奥村「いや、まったく変わらないです。ただ、より多くの人に受け入れられるような作品にしたいとは思っています。そういう意味でも、笑いを入れようかなと今、考えています」
西ノ園「でも、僕はおどろおどろしいところが面白かったのを覚えています。だから、台本を読んだときも、細かな輪郭までは明確に思い出せなくても、『これ知っている』と思ったんだと思います」
奥村「あぁ、なるほどね」
―――おどろおどろしさが面白いというお話もありましたが、西ノ園さんは改めて台本を読まれて、本作のどんなところに魅力を感じましたか?
西ノ園「(奥村は)人や物事、世の中の捉え方が変な人なので(笑)。愛するものと醜いと感じるもの、嫌うものが、一般的な常識ではない視点が描かれていて、そこが面白いなと思いました。それから、女性のキャストさんたちが着物を着て、キツネの面をかぶって登場したシーンも印象的でした。そうした演出は当時、なかなかなくて。とにかく美しかった。これを33年の時を経て上演したら、さらに面白くなるのではないかと思っています。和製ホラーというのも、それほど目にするものではないので、それもまた面白いと思います」
前田「今回、劇場が地下にあるので、それもまた怖いですよね(笑)」
西ノ園「確かに、お化け屋敷みたいになっている(笑)」

―――前田さんはこの作品の魅力や面白さをどのように考えていますか?
前田「BQMAPのラインナップの中に、エンタメではなく、耽美的な直義さんの世界観が入った作品が時々あるんですよ。この作品は、間違いなくそのうちの1つです。耽美な世界観にホラーが合わさって、怖いけれども美しいものになっている。それと同時に、アングラっぽい雰囲気もまとっているイメージです。特に再演のときは、劇中で雪が降っていたので、それがとにかく美しかったんですよ。舞台上が真っ白になって。今回もやるんですか?」
奥村「いや、やらないです(笑)。初演の台本は、公演が夏だったので、夏を舞台にしていたんです。でも、再演は、劇場がとれたのが冬だったので『春雷』というタイトルにして、冬の間はずっと雪が降っているという設定に台本を書き換えたんです」
前田「そうすると、今回は降らない?」
奥村「何かは降ると思います(笑)」
―――BQMAP35周年、そして西ノ園さんも35周年を迎えるということで、この先の劇団や俳優としての目標を教えてください。
奥村「35周年の次は40周年になると思いますが、40周年は飛ばして45周年を頑張ろうと思っています。お祭りをするのに、5年後ではきつい。なので、10年後にもう1回大きいお祭りができるよう、意欲を途切れさせずに頑張っていきたいと思います」
前田「どれだけやっていけるんだろうという思いもありますよね」
奥村「確かにね。ただ、若い子たちも入ってきてくれているので、今、劇団的にはバランスが良いんですよ」
西ノ園「それは重要ですよね。長く続けるには世代交代をしていかないといけない」
奥村「そうなんです。端役で出ていた子たちが今、主役になっているというように、新たな形になっていく。年を取ったらとったで、味が出てくる役者さんたちがいて、より幅の広いお芝居を作っていけるんです。なので、この後も楽しみはいっぱいあります」
前田「劇団を立ち上げた当時は、みんな20代でした。だから、年配の役を演じる人がいなかったんですよ。みんな、なんとなく、それっぽく演じていたけれど、今は、実年齢で演じられるのはとても面白いですよね」
―――西ノ園さんはいかがですか。
西ノ園「こうして、今回、いい節目をいただけそうなので、とてもありがたいです。これまで、『この劇場でできたらいいな』という憧れの思いからやってきて、その憧れの舞台に1つずつ立てるようになってきましたが、今後は、等身大で、いかに自然体でいられるか、なのかなと思います。これから頭も禿げるだろうし、髪も白くなって老いぼれていっても、それはそれでできる役があるだろうから、それも楽しみになってきましたね。昔は年を取るのは嫌だなと思っていましたが、今は老いぼれて死ぬまで舞台に立っていたら本望と思うようになりました」
前田「それはありますよね。舞台に立つことが、ある意味で当たり前になっているので、今はとにかく立ち続けるんだという感覚しかなくて。でも、今、話をしていて感じたのですが、たっちゃんと直義さんは確かに35周年という気分なんでしょうが、僕は32年なんですよ(笑)。だから、そうした気持ちはあと3年後くらいにくるのかもしれないなと思っています(笑)」
―――最後に公演に向けた意気込みと読者にメッセージをお願いします。
西ノ園「BQMAPさんの作品は、どの作品も美しい。それはBQMAPさんの持ち味だと思いますし、その美しさに自分の肉体から近づけるように、しっかりと稽古をしていきたいと思っています。観に来てくださる方たちに、源内の人生を肌で感じてもらい、観てよかったと言っていただけるような作品にしたいと思います。頑張ります」
前田「耽美な作品になると思います。いつも僕が稽古前に『こうなるだろうな』と予想していたものよりも圧倒的にきれいだったり、ぞくっとするものを直義さんは作り上げるので、この作品もきっとそうなるだろうと期待しています。そこに向かってとにかくがっつりと向き合っていきたいなと思っております」
奥村「今、BQMAPができる限りの和製ゴシックホラーってこれだよというものをお届けしたいと思っています。怖いだけでなく、いろいろな面で楽しんでいただけるように努力していきます。この作品は、江戸、そして平賀源内の故郷の讃岐、そして最終的に源内が生きてたどり着く秋田の阿仁鉱山がメインの舞台となっています。なので、香川県出身の方、秋田県出身も観に来てくださると、何か心に残るものがあるのではないかと思っております。ぜひお越しください」
(取材・文&撮影:)

プロフィール

奥村直義(おくむら・なおよし)
1968年生まれ、岐阜県出身。BQMAP主宰。一般社団法人日本演出者協会 会員・日本劇作家協会 会員。日本大学藝術学部 演劇学科 舞台美術コース卒。1991年の旗揚公演以降、BQMAPの本公演の作・演出・美術を担当。「いつの時代でも変わらぬ想い」をテーマにしたオリジナル作品をはじめ、近代文学から着想を得た作品を得意としている。また外部活動として、ミュージカル『エア・ギア』、『BLEACH』の脚本提供や、『ふしぎ遊戯』の脚本・演出、TUFFSTUFFでは、江戸川乱歩の短編作品を上演するRANPO chronicle シリーズや『放課後戦記 Decade of Decadence』(2025年)の潤色・演出も担当。近年では、「NHKコズミックフロント×銀河鉄道の夜朗読ライブ」(脚本・演出)や、京都西本願寺(国宝鴻間)・国立能楽堂で上演された朗読劇「 THE CLASSIC 『平家物語』『犬王の巻』の世界」(脚本・演出)、宝生能楽堂で上演を行っている「夜能『烏帽子折』『石橋』」(朗読脚本)など、古典作品を紐解くような作品でも高い評価を得ている。

前田 剛(まえだ・たけし)
千葉県出身。日本大学藝術学部映画学科卒。1994年よりBQMAPに参加、現在に至る。外部では、自身がプロデュースした『タケシと〇〇』や、他劇団への客演、 TVドラマや映画出演をはじめ、アニメ・吹替・CMや映画予告ナレーションなど、幅広く活動している。主な出演作は、映画『SP』、アニメ『遊戯王GX』丸藤亮役、『ギャグマンガ日和』聖徳太子・曽良・クマ吉役、AppleTV『セヴェランス』マーク役(吹替)、『スパイディとすごい仲間たち』ジェフモラレス役(吹替)など。

西ノ園達大(にしのその・たつひろ)
千葉県出身。俳優・シンガーソングライター・ナレーター。日本大学藝術学部 演劇学科在学中より精力的に演劇活動を行い、2007年に解散した劇団「TEAM発砲・B・ZIN」の看板俳優の1人として、入団以来全作品に出演。劇団在籍中より舞台・TVドラマ・映画・ラジオCMなどのナレーションなど幅広く活躍。シンガーソングライター「西ノ園タツヒロ」としても精力的に活動し、ソロアルバムのリリースや全国的にライブを展開。剣道家でもあり、段位は七段。近年の主な出演作品に、舞台『テンペスト』、『須く、一歩進む』、『あるいは真ん中に座るのが俺2025』、『NUKIDO~外から見るか芯から見るか』、ドラマ『大富豪同心2』、『特捜9』、『ドクター・ホワイト』、『となりのナースエイド』、『人事の人見』など。
公演情報

BQMAP page260955 35周年記念公演『源内人形』
日:2026年9月9日(水)~13日(日)
場:シアターサンモール
料:一般5,500円 ペア[2枚1組]8,500円 U29[29歳以下]4,000円 学生[高校生以下]3,000円(全席指定・税込)
HP:https://bqmap.jimdoweb.com
問:J-Stage Navi tel.03-6672-2421(平日12:00~18:00)
24名限定! 一般5,500円 → 4,500円 +カンフェティポイント付き
