「目が足りないノンバーバル演劇」第2弾がついに上演 観客の投票によってストーリーが分岐する体感型の公演に

「目が足りないノンバーバル演劇」第2弾がついに上演 観客の投票によってストーリーが分岐する体感型の公演に

 言葉を使わず、生演奏とビートボックス・殺陣・パルクール・クランプダンスを取り入れ、通路を利用し劇場を360度使う没入型のノンバーバル演劇の第2弾がついに上演される。今回は、観客の投票でストーリーの分岐を設けたり、ロビーでは開演前の1時間、QRコードからノンバーバルの謎解きにチャレンジできる試みも導入される予定で、より体感型の演劇となる。主演を務める木原瑠生と、第1弾から参加している、ビートボックスを担当しながら月読を演じるRUSY、そして音楽を手掛ける三味線奏者の佐藤ミッチェル通芳に話を聞いた。


―――RUSYさんと佐藤さんは第1弾に引き続きのご出演です。第1弾に出演されて、どんなことを感じましたか?

RUSY「そもそも僕は普段ユニットで音楽活動をしているので、舞台は初めての経験でした。ビートボクサーとしてマイク1本で殺陣の音を担当しながら演じるという、何が正解か分からないことばかりで不安もありましたが、良い経験ができたと思っています。またこうして出演できることになり、非常にうれしいです」

佐藤「僕も初めてのことばかりでした。第1弾では、音楽を先に作って、そこにアクションを付けていくという作り方でした。普段は、台本を読みながらその内容に沿って曲を作るのですが、この作品は台本はあっても音楽が先行します。なので、稽古が進んでいくと当然、変更点が出るんですよ。それはいいのですが、家康が登場するシーンで『もうちょっと家康っぽい音にして』という注文が来て(笑)。そう言われても、家康に会ったこともないし、ホラ貝の音のイメージしか出てこない(笑)。どういう音にすれば良いのか苦労や葛藤もありました。そうした中で、なんとか作り上げた、全く新しい舞台になったと思います。ただ公演回数が少なかったので、今回、第2弾として新たなキャストの方が加わり、前回とは内容も少し変わってくるので、すごく楽しみです。今回もまた、『家康っぽい音』というようなオーダーが来るのかなというドキドキはありますが(笑)」

―――台本には、ストーリーが書かれているのですか?

RUSY「ストーリーも書かれていましたし、『こういった感情を入れて』というト書きもありました」

佐藤「セリフも書いてあったよね」

RUSY「そうですね。なので、稽古中はみんなそのセリフを口にしながら殺陣をしていました。実際に舞台上では言葉は発しませんが、台本にはそうした言葉もきちんと書かれていて、演劇に徹している。ノンバーバルならではの経験でした」

―――木原さんは初めての参加になりますね。

木原「ノンバーバルの作品に出演するのも初めてです。お話をいただいて、第1弾の映像を拝見しましたが、キャストや音楽の方たちと秒刻みでタイミングを合わせていかなくてはいけないんだということは映像を観てすぐに分かったので、これは大変だなと。通常の演劇でもそうですが、セリフがない場面の方が『何を考えているんだろう』と思うのではないかと。なので殺陣ももちろんですが、お芝居も頑張らなくてはいけないと思いました」

―――お芝居に殺陣と大変なことも多い舞台ですが、今、一番苦労するのではないかと感じているのはどこですか?

木原「体力的にも殺陣は大変だろうなと思います。それから、やっぱり言葉がないお芝居も、もちろん簡単ではありません。自分が考えているものと演出家さんが表現してほしいと思っているものが、完璧に一致することは難しいと思うので、そのすり合わせをしっかりして、よりこの作品を深掘りしていきたいと思います。コミュニケーションが大事になる作品なのではないかと今は感じています」

―――佐藤さんは音楽も担当されていますが、どんなことを意識して作曲されているのですか?

佐藤「メリハリがはっきりしている作品なので、シーンによって変化をつけ、お客さまの耳を1時間飽きさせないようなイメージで作りました。それから、この人が話しているときにはこの楽器を使うというように、音を変えることも前回は意識しました。ただ、今回は、尺八がいないんですよ。なので、メロディー楽器が三味線だけになってしまうので、また一から考えなくてはいけない。まだはっきりしたことは言えませんが、今はメンバーと音を出しながら、感情を出せるような音楽を作っていこうと考えているところです」

―――RUSYさんは、今回もビートボックスを担当されるんですよね。

RUSY「そうです。むしろ、それがメインの気持ちです。和楽器の皆さんと一緒に、殺陣の音を全て口で出しています。前回は、物語の冒頭からずっとステージに立って、基本的にマイクをずっと持ちながら、役にも徹して……という感じでした。ずっと出ていましたね」

―――作品においてビートボックスの役割は大きいですね。

RUSY「セッションに近い感じでやっています。殺陣の音は、演者さんの動きを見ながらつけていくので、リズムフリーですし、僕次第なところがあって、それが本当に大変でした」

木原「それはすごいですね」

佐藤「しかも演技しながらやっているので、本当にすごいと思います。僕たちのテンポを聴きながら演技して、ボイスも入れて」

RUSY「前回は、結構苦戦しました」

―――木原さんは作・演出のFyZさんやプロデューサーの水野美紀さん、内田滋さんとは何かお話しされましたか?

木原「水野さんとは何度かお会いしましたが、まだ作品のことは深くお話できていないんです。FyZさんともリモートで一度お話をしたくらいなので、これからお話をして、突き詰めていきたいと思います」

―――言葉がない中で物語を表現するというお芝居の楽しさについて、RUSYさん、木原さんは今、どうお感じになっていますか?

RUSY「僕の場合は、演じながら音を出していたので、お芝居をするだけとはまた違いますが、音を出すとお客さんが驚いてくれているのが見えて、それがすごく新鮮でした。この音だけで、舞台を作っているんだとびっくりされたのだと思います。それから、この作品は、脇役がいない“全員主役”の舞台になっていると僕は演じていて感じました。舞台のいろいろなところで、それぞれの演者さんが感情表現を同時にしているんですよ。それが、この作品でお芝居をする楽しさなのかなと思います」

木原「きっと普通の舞台よりも、それぞれの表現をはっきりと伝えないといけないのだと思います。そうしないと、お客さんに『なんで今の動きをしたんだろう』と思われてしまう。僕たち演者同士も、『なんで?』と思うことが出てくると思うので、そこは稽古をしながらすり合わせていければと思います。誰にでも伝わる表現は、普通の舞台でも難しいですが、それができれば、他の舞台でも生かせると思います。表情1つで伝わるような芝居を心掛けていきたいです。ただ、僕の役柄はそれほど感情を表に出す役ではないので、どこまで出せばよいのか悩むところでもありますし、自分にとっても挑戦になると思います」

―――この作品を経験したら、俳優としての経験値も上がりそうですね。

木原「それはあると思います。表現の仕方も変わってくると思います」

―――佐藤さんはステージ上で演奏しながら役者さんたちの動きをご覧になって、どう感じていますか?

佐藤「実は、それほど見えていないんですよ。目線も決められているので、目で合図することもできないし、役者さんを見て合わせるということもしないでほしいと言われています。普段ならば、役者さんに合わせて、例えば剣を振り下ろしたら音楽が終わるというように、タイミングを合わせていたのですが、今回は、音楽に合わせて動いていただいています。でも、初めてのことが多いので、どうしても合わせたくなってしまうんです。特にRUSYは、真逆から舞台に登場するので、どんな動きをしているのかも分からない。それでも、合わせているので、自分たちでも『よく合うな』と思いながらやっていました(笑)」

―――通常のライブ公演とは全く違う環境なんですね。

佐藤「だいぶ違います。本当に新鮮です」

―――今回は尺八の方がいらっしゃらないということですが、楽器編成についても教えてください。

佐藤「今回は、三味線、和太鼓と笙の3人編成です。先ほども話しましたが、メロディー楽器は三味線だけになります。笙は和音を出し続ける楽器なので、メロディー楽器ではないんですよ。今はまだ制作途中ですが、『この楽器ってこういう音が出せるんだ』という場面があると思うので、そうした意外な音も楽しみにしていただけたらと思います」

―――木原さんとRUSYさんは、それぞれ演じる役柄について、今、どのようにとらえていますか?

RUSY「僕の演じる月読は、水野美紀さん演じる伊邪那岐の一部である神様です。伊邪那岐と一緒に歴史を再現し、お客さまに歴史を追体験してもらう役割を担っています。音を通じて演者の皆さんを操るような役でもあります」

木原「戦国武将というと、言葉ではなく態度で『ついてこい』と示して戦うイメージがありますが、僕が演じる大谷吉継はそれとはまた違うと思います。寡黙で、表情があまり読み取れない人物なのかなと。お稽古はこれからですが、殺陣のワークショップには1度参加させていただき、そのときに水野さんと『スッと立っている役なのではないか』というお話をして、そんなイメージを持っています。言葉には発しなくても、背負っているものがたくさんあるのだろうなと感じます。戦国時代を生きた人たちが何を思っていたのかを僕たちが実感するのはなかなか難しいことだと思いますが、キャラクターを深掘りしていったら、きっとすてきな役になるんじゃないかなと思います」

―――出演者の皆さんも、第1弾からは大きく変わっています。木原さんは、佐藤さん、RUSYさんと初めての共演ですよね。

木原「はい、初めましてです」

佐藤「お会いするのは初めてなのですが、木原さんのことは知っていました(笑)。特撮好きなので」

木原「あっ、そうなんですね!」

佐藤「水野さんにキャスティングについて聞いたときに、『佐藤くん、今回興奮するよ』と言われました(笑)。一方的に知っていたので、本当に楽しみです」

木原「うれしいです。実は、出演してから数年はあまり言われることがなかったんですよ。6年くらい経った今になってようやくそう言っていただくことが増えました(笑)。ありがとうございます」

―――佐藤さんとRUSYさんは第1弾での共演が初めてだったそうですが、そのときのお互いの印象は?

RUSY「お互いに舞台での経験がそれほど多くなかったですし、特にこの作品は新しいことばかりなので、『このままだとまずいぞ』と(笑)。そこで、稽古中に親睦が深まって」

佐藤「ご飯に一緒に行ったりしましたね」

RUSY「どうしようかって(笑)」

佐藤「隣に立っているわけではないですし、RUSYは演技もしているので、とにかく合わせるのが大変で。どうしたらやりやすいか、お互いに考えていましたが、きっと覚えるのも相当大変だったんだと思います。必ずしもリズムに合わせてやるということでもなかったので」

RUSY「拍の概念もなかったので、リズムフリーだったんですよ。覚えるという次元ではないところもあったので、自分で音を割って、ガイドを作って、それを音響さんにお願いして流してもらいました。それでミスなくできるようになりましたね」

佐藤「例えば、ブロードウェイでは、クリックを聞くことは絶対にないし、テンポを体に入れていくものなんですよ。でも、この作品は稽古も短期間で、しかも出てくる場所も違う。これはどうしようとなって、テンポだけは共通させてやらせていただきました」

―――大変なご苦労があったんですね。

RUSY「そうですね。初めてだからこそということもあると思いますが、難しいことが多かったですね」

佐藤「禿げるかもしれないと思いながらやっていました(笑)。それくらい、みんなプレッシャーがある舞台でした」

―――さらに今回は、お客さまの投票でストーリーが分岐するという試みがあると聞いています。

RUSY「めちゃくちゃ面白そうですよね」

佐藤「まだ僕たちもどうなるか分からないですが、きっと楽しんでいただけるのではないかなと思います」

木原「お芝居では1度、分岐していく作品に出演したことがありましたが、僕は分岐に関わる役ではなかったので、観ているだけだったんですよ。そのときは、それほど大変そうなイメージはなかったですが……ただ、今回はそういうわけにはいかないだろうなと。いろいろと稽古が始まってみないと分からないことだらけな気がしています」

―――最後に、公演に向けた意気込みと読者にメッセージをお願いします。

佐藤「昨年よりもパワーアップした作品をお届けできると思います。ストーリーの分岐もあり、1度観ただけでは見切れないステージになっていますので、ぜひ2度、3度と言わず、4度劇場に足を運んでいただき、刺激を受けていただければと思います。毎回、同じステージにしたいと思ってもそうはならない作品です。みんなで必死に力を合わせて、素晴らしい作品を作っていきます。そして、この作品を海外でも上演することを目標に今回も臨ませていただきます」

RUSY「きっと人生の中でも特に記憶に残るような、とんでもない劇を観ることができます。その場でしか生まれない、一度きりの劇をぜひ楽しんでいただきたいです。人間の力だけで生み出されるさまざまな感情や仕掛けを楽しんでください。新鮮で、ワクワクする内容になっていると思います」

木原「僕にとっても、お客さまにとっても、新世界と感じる作品になると思います。今回ご一緒するスタッフの皆さんやキャストの皆さん、楽器隊の皆さんとの稽古は、きっと濃密な時間になると思うので、本番までしっかりと稽古をして、一丸となって頑張っていきたいです。全公演違うものになると思うので、いろいろなものを感じていただけたらうれしいです」

(取材・文:嶋田真己 撮影:NORI)

プロフィール

木原瑠生(きはら・るい)
主な出演作として『魔進戦隊キラメイジャー』(射水為朝 / キラメイイエロー役)、ミュージカル『刀剣乱舞』(へし切長谷部役)、『ROCK MUSICAL BLEACH』(黒崎一護役)、ミュージカル「奇跡を呼ぶ男」(アイザイア役)など。今年10月には、ミュージカル『RENT』ロジャー役での出演を控える。俳優活動のほかシンガーとしても活動しており、6・7月には5都市のライブハウスを巡るワンマンライブツアーを行う。

RUSY(るーしー)
名古屋/新時代のミクスチャー・ロックサウンドを生み出す音楽ユニット・SARUKANIのボーカル&ビートボックス。ロックとエレクトロを軸にビートボックスを融合した唯一無二のスタイルで、ジャンルを越境する独自の音楽&ライブスタイルを確立。2023年にビートボックス世界大会「Grand Beatbox Battle」クルー部門で世界1位を獲得している。

佐藤ミッチェル通芳(さとう・みっちぇる・みちよし)
2009年、津軽三味線奏者として活動を開始。2001年「寿 BAND」を結成。音楽制作にも力を入れ、映画『アースクエイクバード』の祭りシーン音楽担当・演奏、『どうしようもない10人』の音楽担当主題歌を担当するなど幅広く活動。NHK Eテレで放送中の『にほんごであそぼ』に「うなりやミッチェル」名義で出演している。

公演情報

礎の響 Ver.2
天下の分け目に立つ者 -Those Who Stand at the Divide-

日:2026年8月5日(水)~16日(日)
場:東京芸術劇場 シアターウエスト
料:10,000円(全席指定・税込)
HP:https://ishizu-hibiki.com
問:「礎の響」制作部 mail:info.stage@aocproject.com

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