集大成にはしない! 20周年を迎える演劇大好き集団の新たな挑戦 2組のバンドグループが混ざり合う!? 青春と混沌を描く柿喰う客の新境地

集大成にはしない! 20周年を迎える演劇大好き集団の新たな挑戦 2組のバンドグループが混ざり合う!? 青春と混沌を描く柿喰う客の新境地

 躍動感あふれるパフォーマンスを武器に、”圧倒的なフィクション”を標榜したオリジナル作品の創作を続ける劇団・柿喰う客。20周年を迎える2026年には幻の名作から新作まで、4つの公演が上演される。6月12日(金)に本多劇場で初日を迎える新作本公演『真ッ逆様』の話題を中心に、柿喰う客の代表を務め、近年では2.5次元舞台の脚本・演出でも注目を集めている中屋敷法仁に話を聞いた。


———まずは、柿喰う客、20周年おめでとうございます。

 「ありがとうございます」

———20周年記念公演として、新人卒業公演『青春部隊』、20周年記念公演『サバンナの掟』、新作本公演『真ッ逆様』、20周年最終公演『残像だ』と4作品がラインナップされていますが、どのようなお気持ちで上演を決めたのでしょうか。

 「柿喰う客は、学生時代に旗揚げをした劇団です。当時から僕らはとにかく演劇が大好きで、『たくさんの作品をやりたい!!!』という気持ちに溢れていました。ゆえに、旗揚げ当初はとにかく多くの作品を上演していましたね。それから、10周年が過ぎた頃、今度はさまざまなジャンルの作品に手を出していくようになりました。今回、20周年を迎えて……1番『やってはいけないこと』は『20周年の総決算、集大成のようなものを創ること』だと思っています。
 柿喰う客はこれからも続きますし、この段階でそういう作品を創ってしまうのは違うだろうと。自分たちという劇団を、自分たちの演劇を、さらに探求していけるような、楽しんでいけるような作品を創りながら、お客様にいろいろな僕たちを見てほしい。そんな気持ちでこの4作品の上演を決めました」

———多種多様な4公演になっているのですね。

 「そうですね。近年は劇団メンバーもみんな大活躍で、なかなか集まりづらくなっているので、昨年は1作品しか新作の本公演を上演できなかったのです。本当はいくらでも創りたいという気持ちでいます。集大成にはしませんが、20周年なので、過去最高に精力的な活動ができるといいなと思っています」

———中屋敷さんはちょうど10年前に舞台『黒子のバスケ』の演出を手掛けられて以降、近年でも演劇『推しの子』など多くの2.5次元舞台の脚本・演出で活躍されていますよね。加えて、劇団員の皆さんの外部での活躍も目覚ましい限りですが、中屋敷さんや劇団員の皆さんが外部作品ではなく、柿喰う客だからこそ、こだわっていることや大事にしていることはありますか?

 「大先輩の話ですが、先日、福田雄一さんが、主宰を務める劇団の公演に寄せて『(劇団なら)どんだけスベってもへっちゃら!』というコメントをされていたんです。推察ですが、普段、有名な俳優さんたちとすごい規模感の映画を創っていらっしゃると、やっぱり『スベってはいけない、ヒットしなきゃいけない』というプレッシャーがあるのかもしれない。けれど、劇団だと伸び伸び創作活動が出来るんだろうなとしみじみ感じまして……。僕もそれに近いというか、外部でいただいたお仕事、特に原作がある2.5次元舞台だと、いかに面白い台本を書けるか、いかにスマートな演出ができるかを考えるし、そうすることでお客様に幸せになっていただくということが自分のミッションだと思っています。
 けど、劇団で活動している時は、そういうプレッシャーはないんですよね。本当に自分たちがやりたいお芝居や、自分たちが今、すごくこだわりたい部分をどんどんさらけ出していけるのが、劇団の良さだなと思っています。メンバーも、今更中屋敷に褒められても別にどうでもいいと思うので、全然いい子ぶらないですし(笑)。僕に褒められたいから柿喰う客のメンバーになってるわけじゃなくて、『ここでしか味わえない独特の演劇』を求めて柿喰う客に所属しているんじゃないかと。もしくは、柿喰う客を自分たちが今、演劇について抱いている課題について実践する場所、研究をする場所、そして失敗をしていい場所、発見をする場所だと思ってほしい。そういう、芯の太い表現集団になっていくことが理想ですね」

———とても素敵ですね。ここからは6月12日に初日を迎える新作本公演『真ッ逆様』についてお伺いしたいのですが、こちらはどういった物語になっていますか?

 「昨年上演した『超音波』という作品はオーケストラの楽団で繰り広げられる物語でした。柿喰う客はそういう1つのコミュニティを舞台にした物語を描くことが多くて……今回はバンドを取り上げようと思いました。そこからさらに、バンドをメインにした青春ものの作品が世の中にたくさんある中で、『2つのバンドを同時に描いたらどのくらい見づらいんだろう』と思って(笑)。それがある意味で、今作のコンセプトです」

———2つのバンドを同時に!

 「僕の中でガールズバンドの話を書きたいというサービス精神あふれる気持ちと、いや、でもロックバンドも書きたいな……というパンキッシュな気持ちがぶつかり合った結果、『本当にどっちもやりたいんだから、ぶつければいい』と思ったんです。そうしたら、既存の青春ものや、音楽ものの作品から、もう1歩歪んだドラマが生まれそうな気がして。
 男女混合の芝居というよりは、男性陣は男性だけで4人芝居を、女性陣は女性だけで5人芝居をやってもらって、それがぶつかりあって見づらくなっている面白さというか……どうしよう、宣伝のためにインタビューを受けているのに、『見づらくなっている』って、絶対言っちゃダメな言葉ですよね!?(笑)でもなんというか、2つの軸で進む物語が途中から歪めあっていくような感覚。ただ新境地になっています。一見、爽やかなバンドものの作品に見えますが……柿喰う客を長く応援してくださっているファンの方は『本当にただの青春バンドものの物語か?』と疑っているんじゃないかと思います。果たしてどうなのか、ぜひ劇場でお確かめください」

———同じ6月に公演される『サバンナの掟』についても、少しだけお話をお聞かせください。

 「『サバンナの掟』という作品は、実は劇団の旗揚げ前に発表している作品なんです。複雑なんですが、確かに柿喰う客という名前で発表した初めての作品ではあるものの、この作品をきっかけに集まった仲間と、その後正式に柿喰う客の旗揚げをしたので。なので”旗揚げのきっかけになった最初の作品”という位置づけになっています。僕が20歳の時に書いた台本なので、本当に、初期衝動に突き動かされて書いていて……演劇で名を成したい、人から褒められたいという作家の欲望と、でも、このままでいいだろうかみたいな戸惑いが入り混じった、気持ち悪い手触りの作品です。青臭いだけの作品を今の劇団メンバーでリブートしたいと思いました(笑)。20年の経験を積んだ僕には絶対に書けない物語。2日間という限られた日程での上演ですが、ぜひ楽しんでもらいたいです」

———貴重な2日間になりますね。楽しみにしています。では、最後にこちらのインタビューをお読みの皆様にメッセージをいただけますでしょうか。

 「僕は非常に演劇が大好きです。演出家の数だけ、俳優の数だけ、そして客席の数だけ、さまざまな演劇の形があると思います。劇場空間でさまざまな価値観がお客様の中で混ざり合っていくことが、最高の観劇体験になると思っています。僕たち、柿喰う客は『圧倒的なフィクション』というものを標榜して、現実世界の閉塞感を突き抜けていくというコンセプトで活動をしています。『世界で1番面白い演劇が柿喰う客』だとは思っていないですが……柿喰う客を観れば、演劇がますます好きになり、柿喰う客と出会えば世界がますます楽しくなるだろうと、そんな気持ちで活動をしております。皆様の”演劇愛”を、僕たち柿喰う客がさらに増幅できたらと思っておりますので、ぜひ劇場でお会いしたいです。よろしくお願いします」

(取材・文&撮影:通崎千穂)

プロフィール

中屋敷法仁(なかやしき・のりひと)
1984年4月4日生まれ、青森県出身。演出家・脚本家・俳優、劇団「柿喰う客」代表。劇団外部での近年の主な脚本・演出作品に、『女郎蜘蛛』(脚本・演出)、舞台『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』(演出)、『演劇【推しの子】2.5次元舞台編』(脚本・演出)、『ワールドトリガー the Stage』(脚本・演出)、『黒子のバスケ』(演出)、『ダブル』(演出)、演劇集団円『ペリクリーズ』(演出)、など。

公演情報

柿喰う客 新作本公演2026『真ッ逆様』

日:2026年6月12日(金)~23日(火)
場:下北沢 本多劇場
料:【6/12~15】SS席6,500円 S席5,500円
  A席5,000円 Z席4,000円
  【6/17~23】SS席7,000円 S席6,000円
  A席5,500円 Z席4,500円
  ※他、各種割引あり。詳細は下記HPにて
  (全席指定・税込)
HP:https://kaki-kuu-kyaku.com
問:柿喰う客 mail:info@kaki-kuu-kyaku.com

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