「魂も貸し借りできるんだって」。
1998年6月、小学生のリリイと祝祭は数日間を共に過ごし、親友になった。ある日、2人は事件に巻き込まれ、祝祭はリリイの秘密を知ることになる。やがて2人はバラバラの道を歩み始め……。すれ違い続ける2人の数奇な半生を通して描かれる、みえることとみえないことのマジカル平成史———。
どんな作品になるのか。それぞれの「平成」とは何か。出演する亀島一徳、篠崎大悟、大場みなみに話を聞いた。
———今回の脚本を読んだ感想を教えてください。
篠崎大悟(以下、篠崎)「演劇の仕掛けとか面白さが多そうだなと思っています。演劇的な仕掛け———みんなで1回限りの歌を歌うとか、登場人物が最後に光になっちゃうとか、そういうお芝居でしか見ないようなことを昔よくやっていたんですが、今回もそういう仕掛けが多そうだなと。今回はサッカーだったり、幽霊というモチーフが出てきます」
亀島一徳(以下、亀島)「ロロって、ここ数年、割と一幕っぽいものというか、会話劇で具象に近いものが多かったんですけど、今回は本当に久しぶりに、ちょっと詩的なロロの作劇なんです。久しぶりなので、それはぜひ見ていただきたいですね。若い頃やっていた感じなんだけど、これだけ年齢とキャリアを重ねてきているから、今の僕らだからできることもあると思う。それがどういったものに仕上がるのか、ですね」
大場みなみ(以下、大場)「時間や空間を飛び越えていく作品になりそうです。私がロロに初参加したときの作品が割と時空間を飛び越える系だったんですけど、それも10年以上ぶりですから。あの頃のロロが戻ってきて、しかもパワーアップして、大人ロロにアップデートされて……!すごく楽しみです」
———「フルスケール新作」と銘打っていますね。これはどう捉えればいいですか?
亀島「いや、本当にすみません(笑)。僕らが内内だけで言っていたものが外に出ちゃいました。
こういう枕詞や売り文句的な言葉は、劇場の規模感とか作劇の方法とか、いろいろな要素が関係すると思うんですが、それでいうと、例えば、今よりも規模が小さいこまばアゴラ劇場でやっていたことも『フルスケール』と呼んでいるんですね。『あの作品はフルスケールだったよね』と。だから劇場の規模感によるものではなくて。となると、どういうことをフルスケールと呼んでいるのか。多分、僕らの場合は、一幕の会話劇でないバージョンのことを、ちょっとファンタジーとかポエティックな要素が多めで、物語的にも時間的にも意味的にも飛躍があるものを、演劇の力で豪腕で推し進めていく作劇のことを僕らは『フルスケール』と呼んでいるんだろうな」
———なるほど。対義語があるわけではないんですね?
亀島「ないですね。ちゃんと言うと今ぐらいの長い説明が必要になるので、この言葉について、俺らもちゃんと一度考えるべき言葉です……。
調べてみると、ロロ以外の公演で使われていることも少ない言葉で。他で使われる場合、すごく豪華絢爛な意味で使われているんですけど、僕らは割とシンプルな美術を抽象的かつ動かしまくるみたいなことだったりもするので。シャンデリアがあって、実際に馬が出てきて、みたいなことではないんです。……いや、説明の機会をいただけてありがたい限りです(笑)」
大場「ワンシチュエーションではなさそうという意味合いですよね」
篠崎「昔、快快(ファイファイ)など、僕たちが憧れていた、少し上の世代の人たちがやってた『見立て』だったり、『演劇的に面白い』ということだったり。時間・空間を飛ばすのに2時間かかるけど、『はい、もう大晦日です』と言ったら、大晦日になっちゃうみたいな面白さをやっていたんです。だから、そういう原体験みたいなのが、多分、(ロロの主宰の)三浦(直之)くんの中にもあって、僕らの中にもあって。そういう原体験の影響を広げたような作品が、もしかしたらフルスケールなのかなと僕は思います」
亀島「諸説あるよね(笑)。僕らにとっての原初的な、演劇の衝動みたいなことが、上手に収まっていない状態というか、少し荒々しい状態で提示されるものなのかもしれないですね」
———今まで積み上げてきた、原初的なロロらしさがありつつ、でもキャリアも作品も重ねてきたからこそ、元に戻るのとはまた違うと。長年のロロのファンにとっては、懐かしい光景もあるかもしれないし、新しく見た人もロロの核みたいなのもちょっと見られるみたいな感じですかね。
亀島「そうですね。最近の僕らを見始めた人は『思っていたのと違う』と思うと思うんですよ。それがいい意味になればいいな。昔からご覧になっている方は『懐かしい』と思うかもしれないですね。『この感じのロロ、久しぶりだな』って」
———演じられる役についての印象などを教えてください。
篠崎「まだ自分の中で探りながらやっているところが正直あるんですけど、僕はリリーというサッカー少年の役です。多分ですけど、1人でいたくない役だと思うんですよね。世界との繋がり方を考えている役だと思っていて。ただ、サッカーを通してだったら、世界と繋がることができる。
例えば、空に向かってボールをポンと蹴っても返ってくるし、壁に蹴っても跳ね返ってくる。そこを想像で埋めたりして、サッカーをしているような役。例えば、1人でサッカーをしているときに風が吹いたら『ボールをちょっと触ってくれた』みたいな感じで、何かと繋がっている感じを持ちながら、サッカーできる。だけど、人とやると繋がれない感じのキャラクターかな。
このキャラクターが、どういう風に人とか社会とか仲間を獲得したり繋がったりするのか、楽しみにしながらやっています。サッカーチーム作りたいに近いというか、自分のチームメイトをこの世界の中で獲得していく役どころかな。
どのキャラクターも完璧にあるわけじゃなくて。ちょっと吹き抜けるような、なんか寂しそうな穴みたいなのがあるみたいな話らしいんです。だから、それってどういうことなのかを今想像しながらアプローチしています」
———ずっと小学生なんですか?
篠崎「いや、今回、人間の30年間を描く作品になります。10歳ぐらいから始まって40歳ぐらい。俺が今40歳なので、リアルなんですよ。ポケモンやサッカーとか、まさに平成史というか、僕自身もそういう時代の手触りみたいなものを懐かしがりながらやっています」
大場「私の役も同じく今探り状態なんですけど、森にいる幽霊。地縛霊なのかな。なぜかその森から出られないという1つの困難さを抱えているんですけど。2人の少年と出会い、2人を見守りつつ、自分の物語を進めていく、みたいな展開になっていきそうです。多分目指すところは、成仏と言っちゃうと、物悲しくなっちゃうけど、明るくポップに成仏できたらいいなと思っています」
———湿っぽくなく、明るくポップに成仏。
大場「はい。この人の多分生きていた時代も、戦争中の人間っぽいんです。それが今後明かされていくかどうかはよく分からないんですけども。なぜここにこの森に縛られてるのか。この人間なりの強さを感じるんですよね。強い意志を持って残っている可能性もあるじゃないですか。そんな思いに寄り添いながら、キャラクターを捉えていきたいです」
———亀島さんはいかがですか?
亀島「視点人物というか、多分この僕がやっている祝祭というキャラクターの視点で見ていくとは思うんです。三浦くんが現状言っている感じだと、みんなどのキャラクターもある種の喪失を抱えているキャラクターで。僕がやる祝祭でここが面白いかもなと思ったのが、ちょっと遅延しているんですよね。
例えば、悲しいことがあったときに、別にそのときは分からない。でも家に帰って飯を食って、風呂に入っているときに『悲しかった』と気づくことって、あるじゃないですか。物事への認識って、そういうものかもなって。その遅延していく感覚がこのキャラクターにはあるんです。そこを面白がってやれたらと思います」
———祝祭という名前はあだ名なんですか?
亀島「いや、もう祝祭という名前なんです。結構三浦くんが書くキャラクターの名前って、面白くて!」
篠崎「苗字も苺辺(いちごべ)ですからね。可愛い名前なんです」
大場「ショートケーキみたいな感じ!」
篠崎「なんか、誕生日みたいなのあったよね!」
亀島「本当だ! なんか掛かってきそうだね」
———今回の舞台は平成の世の中ですが、皆さんは「平成」をどう捉えていますか?
篠崎「僕はテレビ番組のイメージが強くて。たまたま話していたんですけど、『マジカル頭脳パワー!!』って覚えています? あれの『マジカルバナナ』をやってみたんです。いわゆる連想ゲームなんですけど、結構難しくて」
大場「なんか曖昧なルールだった気がする」
篠崎「そう、曖昧すぎて。例えば『雪と言ったら銀色』と言った人に、『雪って白じゃね?』みたいな話になって……そういう難しさがありました。番組に誰が出てたっけみたいなこととかも、実は曖昧になってきていて。板東英二とか所ジョージは出ていたと思うけど、逸見政孝は出ていなかったよな……とか。『THE夜もヒッパレ』も謎に好きだったんですよ。本物の歌手が歌わずに、カラオケだったじゃないですか」
大場「うん、カラオケだったね(笑)」
篠崎「なのに、俺、こんなに楽しかったんだと思って(笑)」
亀島「割り込んでくるグッチ裕三が好きだったな(笑)」
篠崎「そうそう!と、こんな感じでテレビ番組の印象があります。アニメもドラマもゲームも、放送日や発売日を待つワクワクがあったんですよね、平成って」
———平成に1日だけ戻れるとしたら何をしたいですか?
大場「うーん!1日くらいだったら戻りたいかも!
私は平成生まれ平成育ちだから、もう平成に人格形成されたと言っても過言ではないので、『どんな時代か』と聞かれたら、もうそのものという感じです。でも、毎日毎日、目にするものが新しかったような気がする。それが子どもだったからなのか、分からないけど。
よく昭和の名曲を振り返る番組があるじゃないですか。あそこで流れる70年〜80年代の映像って、すごく古く感じるんですけど、今、この令和8年に、平成のヒットソングの番組を見たら、『ついこの前じゃん』と思う。あの頃からここまでが地続きに感じるのが不思議です。それは鮮明な映像で全部が残っているから、自分の親が感じていた懐かしさとは違う、時間の捉え方をしているような気がして。懐かしいとかではなくて、もうそんなに経ったんだ、みたいな。そういう驚きの方が強いですね。
1970年から90年の20年に比べて、1990年から2010年への20年って、すごく一瞬だったような感じがする。まぁ、平成って短いですよね。昭和に比べたら、半分の長さですもんね。一瞬で過ぎ去りますよね。
平成に戻れるなら———。小学6年生のときの林間学校のキャンプファイヤーを囲みながら『慎吾ママのおはロック』をみんなで踊ったときに戻りたい!みんなの前で見本を踊る人だったんですけど、本当に楽しかったから……!」
亀島「僕も物心ついたらもう平成で、平成を生きてきて、39歳ですけど、やっぱり振り返るとなんか恥ずかしい気持ちがどこかにあって。最近いろいろなものがリバイバルされていますけど、多分まだ僕にとっては、本当に恥ずかしい青春の思い出すぎて。
特定の何かを指しているわけではないんですけど『あれ、変なことだったのかな?』とか『あれって、時代のノリだったのかな?』とか思うことは結構あるんです。令和に入ってもう8年経ちますけど、僕にとって平成とは何か、それこそ今回の作品も含めて、これからも、どんどん平成についての作品が出てきて、相対化されていくと思うんです。そういう経験も経ながら、あの時代ってなんだったんだろうと考えていくことになるんだろうなと思っています」
———平成に戻りたいですか。
亀島「未だに大好きだなと思うことはあるんですよ。例えば僕、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTとかナンバーガールとか生で見たことないんですけど、あれは平成ですよね。ちゃんと生で見たかったな。それこそJリーグの開幕の頃の熱気のスタジアムにも行ってみたい! あの頃のスター選手を見てみたいとは思います」
———最後に観客の皆さんにメッセージをお願いします。
篠崎「最近のロロは会話劇が多いという話があったと思うんですけど、ロロってもともと演劇的なすごい面白さに溢れている団体だなと思っているし、そこが自分の好きな1つの部分だなと思うので、そういった喜びとか楽しさみたいなものをいっぱい味わってもらえる舞台になっていると思います。だから、映画とは違う演劇の面白さを味わえるんじゃないかな。ぜひ、今まで来たことのある人も、これからの人も面白い演劇を見せるので、ぜひ来てほしいです」
大場「舞台芸術として、光とか音とかお芝居も含め、全力できらめいていきます、きっと。本当に『これぞ、ロロ!』というものを見に来てほしいと思います。稽古、頑張ります」
亀島「言葉にできないものをやれてたらいいなと思いますね。今、何でも言語化じゃないですか。でも、やっぱ演劇での体験は、もちろんそれを言葉に落とし込んでいただくことはとてもありがたいんですけど、ものすごい表現を見たときって、『いや、もう正直なんだか分からないけど、めっちゃすごかった』みたいなことって、あると思うんですよ。
それを僕は演劇で味わってきたし、僕らはそのまま演劇で返すから、演劇としてそのまま受け取ってほしい。それが叶う作品にできたらなと思いますね」
(取材・文&撮影:五月女菜穂)
プロフィール
亀島一徳(かめしま・かずのり)
1986年生まれ。東京都出身。旗揚げよりロロに参加。近年の外部出演としては、木下歌舞伎『勧進帳』、南極『バード・バーダー・バーデスト』、ほろびてRe:シリーズ『音埜淳の凄まじく ボンヤリした人生』、パルコ・プロデュース 2024 『最高の家出』、KAAT×東京デスロック×第12言語演劇スタジオ『外地の 三人姉妹』、ヨーロッパ企画第41回公演 『あんなに優しかったゴーレム』などがある。
篠崎大悟(しのざき・だいご)
日本大学芸術学部演劇学科卒業。劇団ロロの立ち上げから参加し、好青年から汚職警官、殺し屋、葛藤を抱えた女性や同性愛者の役まで幅広く演じる。人間のほころびや個性を多面的に立ち上げる演技を得意とする。舞台『終点まさゆめ』、NHK 夜ドラ『未来の私にブッかまされる!?』、CMやナレーションなど映像分野でも幅広く活動中。
大場みなみ(おおば・みなみ)
大学卒業後、舞台にて俳優活動をスタート。近年はインディーズを中心に注目度の高い映像作品への出演も続いている。主な出演作に映画『椰子の高さ』(ドゥ・ジエ監督)、『ピクニック』(平田雄己監督)、『くまをまつ』(滝野弘仁監督)、『あるいは、ユートピア』(金允洙監督)、『すべての夜を思いだす』(清原惟監督)。舞台 贅沢貧乏『わかろうとはおもっているけど』(山田由梨演出)、くによし組『ケレン・ヘラー』(國吉咲貴演出)など。
公演情報
ロロ新作本公演 『ウルトラソウルメイト』
日:2026年5⽉15⽇(⾦)〜24⽇(⽇)
場:東京芸術劇場 シアターイースト
料:応援チケット10,000円 ⼀般4,500円
ペア[2枚1組]8,500円
U-29[29歳以下]3,500円
※他、各種割引あり。詳細は下記HPにて
(全席自由・整理番号付・税込)
HP:https://lolowebsite.sub.jp/usm/
問:ロロ制作部
mail:llo88oll.yoyaku@gmail.com