MENSOUL PROJECT が九州弁で贈る始動公演 命に向き合い、心を動かしてもらえる最高の舞台を!

MENSOUL PROJECT が九州弁で贈る始動公演 命に向き合い、心を動かしてもらえる最高の舞台を!

 俳優・脚本家・演出家として活躍する杉本凌士による「劇団メンソウル」が、「MENSOUL PROJECT」とその名を新たにして始動。その第1回公演『BUT・AND』(バッテン)が、4月に池袋のあうるすぽっとで上演される。“好きな役者に集まってもらい、心が震える舞台を創りたい”という杉本の思いに応えた崎山つばさ・春海四方・柳ゆり菜が、杉本とともに作品への抱負を語ってくれた。


―――まず今回、MENSOUL PROJECTとして新たに始動されるに至った経緯からお話いただけますか?

杉本「元々『劇団メンソウル』というほぼ九州男児の劇団を20年やってきました。メンバーそれぞれの年齢が40代後半になってきて、プライベートの環境も変わっていき、劇団としての活動が難しくなってきたんです。でも舞台は続けたいという思いはあったので、じゃあ僕が好きな役者さんに集まってもらって、お客様を震えさせるような舞台を創りたいと、このプロジェクトを始動させました。この作品がきっかけになって、今後につながるような舞台にしたいと思っています」

―――その第1回公演に『BUT・AND』(バッテン)を選ばれたのは?

杉本「15年ぐらい前に書いた作品で、再演となります。大きく分けると、マタニティ教室と死刑囚の話が交錯していく物語です。あまり作品のテーマを語るのは好きではないのですが、これは“生と死”の物語です。MENSOUL PROJECTの出発の作品として、良い作品かと思いました。
 本作は35歳ぐらいで書いた話なので、だいぶ書き直したんですが、根本にある人間の本質的な部分の描き方は未だに変わらないと思っていて。舞台上の役者たちが強烈なリアルを持ってお客様の前に何かを差し出すことで、観る方に『生きるってなんだろう、死ぬってなんだろう』と感じていただければいいかなと思っています。
 今回、殺人事件が主題の1つですが、世の中にこういう事件って頻繁に起きている。決して特別なことだと思えないんですよね。何かのタイミングで誰もが当事者になってしまう可能性がある。だからあまりドラマチックにせずリアルに創りたいですし、役者さんにも誠実に演じていただきたいと思っています」

―――そんな舞台へのオファーを受けていかがでしたか?

崎山「新たなプロジェクトとして始動する舞台に、主演でお声がけいただけたことに大きな責任を感じています。僕が演じる山崎の弁護士・中神は、この事件の判決にどうしても納得のいかない部分があるという役柄です。皆さんが九州弁の中で1人、標準語のキャラクターなので、どう表現していくのかをこれから稽古で見つけていけたらいいなと思っています。命の大切さに正面から向き合った作品に真剣に対峙したいです」

春海「僕は杉本さんが書かれる作品はよく存じ上げていて、常に骨太な作品を創られるという絶大なる信頼を置いてますので、二つ返事で是非やらせてくださいと申し上げました。
 僕は、山崎が収監されている拘置所の刑務官を演じます。山崎は死刑囚なので、社会に復帰することはなく、更生することはない。言ってしまえば執行を待つだけの人です。そんな彼と日々対面していれば、人間どうしたって情が移ると思うんです。ですから、僕は山崎に対してどんな距離感が生まれていくのかを、この舞台を通じて学び、感じていきたいです」

柳「私は30代になって、家族や身近な人の“命”について考える経験を何度かして、そのタイミングでこのお話をいただいたんです。生と死が描かれる作品が自分にできるのか?という不安もありましたが、辛い経験もあった今だからこそできる表現の幅にぶつかってみようという気持ちでお受けしました。
 妊婦の綾は、とても刹那的で明日生きているかどうかわからないような子なんです。そんな綾がどう“生”を見つけていくのかが物語のキーポイントでもあると思うので、成長を印象深くお客様に伝えられるように稽古を重ねていきたいです。でも、九州弁がすごく難しくて」

杉本「僕は九州出身で、地元愛がとても強いものですから『劇団メンソウル』の作品は5割方、九州の話だったんです。それに方言で芝居を創ると、1つ立体的になる気がするんですよね。
 方言が話せるって大きな武器にもなりますし、九州の役者が稽古場にたくさんいますから、なんでも訊いて下さい。春海さんが九州弁を話すと更に味が出ると思うし、ゆり菜さんも絶対に可愛いと思うので、僕も楽しみにしています」

柳「私は関西出身で、関西弁もそうなのですが、わりとリズムが大事ですよね。そのリズムがすごく心地よい、乗っていける要素になるので完璧にマスターしたいです」

春海「僕は眉が太いからか、東京出身なのに『熊本の人ですか?』と言われるんですが(笑)、難しいけれど、なんて豊かな言葉だろうと感じています。九州弁で表現できるのもとても楽しみです」

杉本「中神だけは標準語を話すので、その差異も自然に出ると思います。その分専門用語が多いから、また違う負荷がありますよね」

崎山「そうですね、頑張ります」

―――この舞台を通じてチャレンジしたいことはありますか?

崎山「僕は弁護士という役どころには初挑戦なので、生々しさやリアルな部分も乗せてチャレンジしていけたらなと思います。どんな演出にも食らいついていくつもりなので、めちゃくちゃ厳しくしてください」

杉本「いやいや、常に楽しい稽古場になるように心がけています(笑)。でも気持ちのところでお互い妥協しないように、毎回いい瞬間で入れるような舞台にしたいですね」

春海「僕は崎山さんと以前に共演させていただいたのが、稲垣吾郎さん主演の『サンソン─ルイ16世の首を刎ねた男—』という舞台でした。それまで斧で行われていた死刑執行が、ギロチンの開発によって簡単にできるようになってしまって、それがフランス革命や、のちの恐怖政治に関わっていく話だったんです。
 だから、崎山さんとご一緒した時のことを思い出すと、この“死刑”というところにつながっていくので、死刑囚はどういう日常を過ごして、何を考えて、自分の気持ちをどう整理しているのかを、想像でしかないですれども、できるだけリアルに伝えていきたいです」

杉本「作品を書く際に色々取材したんですが、死刑囚の中には毎日、深く懺悔し、死ぬ時には聖人の様になる人もいれば、死ぬまで何も変わらぬ悪魔の様な人間もいると聞きました。だからって善悪について語ることなど出来ないのですが、そのキャラクターを真っ当に演じることで、お客様に何かを考えてもらえるきっかけに出来たらなと」

柳「綾は舞台に立っている時間がすごく長いわけではないので、出るごとにちゃんと存在感を示せないと、物語自体がうまく進まない気もするので、そこは自分としてすごく大きなチャレンジだなと思っています」

杉本「舞台って出番の長さや、役の大きさじゃないと思うんですよ。ゆり菜さんにはすごくインパクトがあるし、チラシ撮影をした時にも女神様みたいだってみんなが言っていました(笑)。期待しています!」

柳「本当ですか? 嬉しいです」

―――ちょうど期待というお話になりましたので、是非崎山さんと春海さんへの期待も。

杉本「崎山さんが弁護士をやったことがないって初めて聞いたんですが、たたずまいもそうですし、セリフの説得力をすごく持っていらっしゃる。芝居に心がある方で、キャスティングで周りに相談した時にも、崎山さんを推す声がとても多かったんです。僕と春海さんとの3人のシーンが多いので、お互いに色々試しながらやれればいいなと思っています」

崎山「そう言っていただけることにはプレッシャーもありますが、何をしても受け止めてくれる懐の深い方なので、甘えるところは甘えて、自分に厳しく、お客様とひとつになって作品を作れたらと思います」

杉本「春海さんとは映像の現場でご一緒させてもらっていて、その後お酒を飲んだり、お芝居のことを語り合ったりしてきたので、今回は胸を借りるという気持ちです。演出をやっていますが、先輩として頼れる方がいるのはとてもありがたいことなので、お芝居についてはお互いに言いたいことは言いましょうねと話しています」

春海「こちらこそありがたい限りですよね。やっぱり今の世の中って昔よりもはるかに生きづらい、先ほどもおっしゃったけれど、加害者にも被害者にも、すぐになり得てしまう時代だと思うんですよ。そんな世の中に生きているから、この本がとても胸に刺さるので、大切に演じていきたいです」

―――演出家として「俳優・杉本凌士に期待するところはどうですか?

杉本「あーそれは、あまりに難しい質問ですが(笑)、皆さん大変ご活躍されてる方たちを相手に、演出としては色々言わせていただくこともあると思いますが、後々僕も役者として入っていきますので、皆様に何かを与えられるキャラクターを作り上げていければと思っています」

―――では最後に代表して崎山さんから、意気込みとメッセージをお願いします。

崎山「AIがこれだけ発達している時代に、舞台って毎日稽古して、創っては壊し、創っては壊しを繰り返していくある意味遠回りなものですよね。でもだからこそ人間が演じ、人間が観ることの温かさが劇場にはあると思っているので、カンパニー一丸となって、心を動かしてもらえる最高の舞台を創っていきます」

(取材・文:橘 涼香 撮影:友澤綾乃)

プロフィール

崎山つばさ(さきやま・つばさ)
千葉県出身。2014年に俳優デビュー。主な出演作に、舞台『サンソン─ルイ16世の首を刎ねた男─』、演劇集団Z-Lion 2024年度公演『a Novel ⽂書く show』、『No.9 -不滅の旋律-』など。

春海四方(はるみ・しほう)
東京都出身。一世風靡セピアとして活動後、舞台・映像で活躍。主な出演作に、舞台『ヴェニスの商人』、『OUT OF OREDER』、『ある馬の物語』、『サンソンールイ16世の首を刎ねた男ー』など。

柳ゆり菜(やなぎ・ゆりな)
大阪府出身。2014年、NHK連続テレビ小説『マッサン』でのポスターモデル役で話題に。主な出演作に、映画『純平、考え直せ』、『無頼』、ドラマ『ゆるキャン△』シリーズ、演劇集団 Z-Lion 2024年度公演『a Novel 文書く show』など。

杉本凌士(すぎもと・りょうじ)
熊本県出身。俳優・脚本家・演出家。主な出演作に、彩の国シェイクスピア・シリーズ『ヘンリー八世』、大人の麦茶 ラストオーダー『ネムレナイト』など。主な脚本・演出作に、舞台『絆 -少年よ大紙を抱け- 』、ファンタジック・オーケストラミュージカル『スサノオと美琴~古事記~』など。

公演情報

MENSOUL PROJECT Vol.1
舞台『BUT・AND(バッテン)』

日:2025年4月2日(水)~13日(日)
場:あうるすぽっと
料:A席8,000円 B席7,000円(全席指定・税込)
HP:https://mensoul-stage.themedia.jp
問:MENSOUL PROJECT
  mail:mensoul_project@yahoo.co.jp

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