たくさんの“色” があるからこそ、美しい。井上ひさしが描いた名作を再び 人が前に進もうとする力、その一瞬のきらめきを劇場で

たくさんの“色” があるからこそ、美しい。井上ひさしが描いた名作を再び 人が前に進もうとする力、その一瞬のきらめきを劇場で

 こまつ座第159回公演『マンザナ、わが町』が7月10日から紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYAで幕を開ける。1993年の初演以来、数々の演劇賞に輝き、こまつ座作品の中でも高い人気を誇る本作。初演から演出を担ってきた演出家・鵜山 仁の熱い要望により再演が実現、新たなキャスト陣を迎えて上演する。

 舞台は1942年のアメリカ・マンザナ強制収容所。収容所を美化する朗読劇の上演を命じられた日系人女性たちがそれぞれの夢や葛藤を抱えながら生きる姿を描く。戦争に際して財産や人権、自由を奪われた日系人女性役という難しい役どころに挑む、真飛聖とsaraに話を聞いた。


―――こまつ座作品への出演が、真飛さんは2021年の『雪やこんこん』以来、saraさんは初参加です。それぞれ今のお気持ちをお聞かせいただけますか。

真飛「こまつ座さんとの最初のご縁は、コロナ禍で中止になった、2020年の『雪やこんこん』ですね。初めて台本を読んだ際、井上先生の言葉の美しさや、台詞への深い愛情を感じたことは今も鮮明に覚えています。2021年の公演時でもコロナ禍の影響で様々な制限がありましたが、その分、舞台上での共演者との結束はより強まりましたね。そうした空気は、こまつ座さんがつくり上げてくださった環境と戯曲の力。当時、ご一緒した熊谷真実さんとも、よくそんな話をしているんですよ。井上先生の言葉を自分の中に落とし込むには、相応の練習と作品理解が必要。今回もわからないことは率直に共有しながら、共演者の皆さんとともに作品を作っていきたいです」

sara「オファーをいただけたことが率直にとても嬉しくて。私の中でこまつ座さんと言えば、上京後に観劇した2020年の『私はだれでしょう』。気持ちが高ぶったから歌い出すというような、音楽が芝居に寄り添う在り方が強く印象に残っています。あとは個人的な話になりますが、文学座の本科生時代に、こまつ座公演でチケットのもぎりのアルバイトをしていたことがありまして(笑)」

真飛「えぇ〜!」

sara「ちょうど2019年で、コロナ禍の影響もあって長くは携われなかったのですが、こういうかたちでご縁をいただけたことに、強い巡り合わせを感じています」

―――現時点での作品に対する印象をお聞かせいただけますか。

sara「5人の女性による会話劇と聞くだけで期待感があります。言葉に出してこそ、様々な魔法がさらに倍増していくような感覚や、5人の化学反応が見どころになりそうでしょうか。私が演じるジャーナリストのソフィアは、言葉に敏感で、言葉を信じている人物である一方、本能的でいい意味でアンバランスな側面も併せ持っています。それぞれの登場人物たちの率直さや愛らしさも魅力的で、その関係性の中にきらきらとした瞬間が生まれる気がしています」

真飛「saraさんが仰っているように、5人それぞれがどこか憎めない、人間臭い不器用さは私も感じていました。思うように生きられない時代のなかでも、守るべきものを信じて生きようとする姿に惹かれますし、登場人物はどれも演じてみたいと思うほど魅力的。過去に本作を観劇した際も、決して楽しいだけの話ではないけど、きらきらした女性特有のエネルギーから、物語が明るく見える側面を感じていました。今の時代は“女性”と限定することには慎重さも必要かもしれませんが、本作にはそうした力が確かに息づいていると感じています」

sara「本作とはまた異なる設定ですが、昨年出演させていただいたミュージカル『Once』ではアイルランドに住むチェコ移民を演じました。本来の居場所ではないところでどう生きるかを考えるには、素の自分の感性では全然、追いつかなくて。言葉や感覚が通じない相手に対して、いかに五感を使って演じるかを学んだ作品だったんです。本作でも自分の居場所じゃない場所で生き抜く力は並々ならぬエネルギーが必要だろうなと、登場人物たちを想像しています」

―――演出の鵜山 仁さんは、おふたりとも過去作でご一緒されていますね。

sara「文学座の研修所時代に演出をつけていただいたのが鵜山さんとの出会いで、お芝居を続けるきっかけをくれた方。ちょうどコロナ禍の夏で、今後お芝居を続けていくかを悩んでいた時期だったのですが、鵜山さんの演出がとにかく面白くて。さまざまな言葉を投げかけていただく中で、“演劇って自由で、いろんな場所に飛んでいけて自分が想像してなかったものを生むものなんだ”っていうことに気づかせていただいて。2024年の『オセロー』に続き、今回もご一緒できることを、とても嬉しく思っています」

真飛「私が前回、『雪や〜』で鵜山さんとご一緒した時は、藤井隆さんや熊谷真実さんがいらしたのでとにかくまわりが賑やかでした(笑)。一方で、当時はコロナ禍による制約も多く、こまつ座への初参加という不安もありました。その中で、鵜山さんは非常に丁寧に教えてくださったので“癒し”と言ったら怒られるかもしれないですけど、精神的な支えとなるような存在の方でしたね」

―――最後に観劇される方へメッセージをお願いします。

sara「彼女たちが生きる時代や状況は過酷ですが、それ以上に、異なる背景を持つ5人の女性が衝突しながらもお芝居づくりを通してお互いを理解し合っていく過程がこの作品の魅力。何より5人の掛け合いはコミカルでとっても楽しい。混沌とした状況の中でも、『あなたはあなた、私は私』と認め合えることは、ほんの少しの心がけで変わるのだと気づかせてくれる戯曲です。劇場でお待ちしています」

真飛「楽しいだけの作品ではありませんが、誰もが心の奥に抱えているものをくすぐる作品です。諦めたり、声を抑えたりすることが当たり前になりつつある今だからこそ、この作品を通して、自分自身と向き合うことの大切さを感じていただきたい。人が前へ進もうとする力、その一瞬のきらめきを、ぜひ劇場で目撃してください」

(取材・文:山田浩子 撮影:間野真由美)

プラス
あなたが大切にしている時間はどんな時間ですか?

真飛聖さん
「私が大切にしている時間は愛犬『おもち』との時間です。おもちと家族になって10年が経ちますが、仕事の都合で、一緒に居られない時間もやはり多いので、出来る限りおもちとの時間を持てるようにスケジュールを組み合わせて過ごしています。おもちの好きなカフェに行ったり、ひたすらソファーでくっついて過ごしていたり。おもちの存在があるから『よし!お仕事も頑張るぞー』となれます」

saraさん
「一人旅の時間です。稽古や本番期間は、体調やメンタルを整えながら走り切らなければならないので、集中力が必要です。その分、何もないオフの期間はできるだけ自由に過ごしていたいなと思います。友人や家族と思いっきり遊ぶ時間ももちろん好きですが、リフレッシュといえば私にとっては一人旅です。行き先を当日決めて、電車の中でお弁当を食べて、旅先で古本屋さんを探してその日の気分で古本を一冊買い、思い出として家の本棚に加えるのが好きです!」

プロフィール

真飛 聖(まとぶ・せい)
1976年10月13日生まれ、神奈川県出身。元宝塚歌劇団花組・男役トップスター。2011年に同劇団を退団後は、俳優として映像や舞台などで活躍するほか、持ち前の明るいキャラクターでバラエティ番組にも出演。主な出演作に、映画『ミッドナイトスワン』、『レンタル・ファミリー』、ドラマ『GIFT』など。今年4月には舞台『ガールズ&ボーイズ』で自身初の一人芝居を務め上げた。

sara(さら)
2000年1月13日生まれ、兵庫県出身。小学5年生で英語ミュージカルを上演する劇団に入団。2019年に文学座附属演劇研究所に入所。2021年、ミュージカル『17AGAIN』でデビュー後、2022年に文学座準座員に昇格。主な出演作に、舞台『コーカサスの白墨の輪』、ミュージカル『梨泰院クラス』、『Once』など。2026年、第33回読売演劇大賞 優秀女優賞受賞。


公演情報

こまつ座 第159回公演『マンザナ、わが町

日:2026年7月10日(金)~23日(木)
場:紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA
料:9,500円 U-30[30歳以下]7,000円
  ※他、高校生以下あり。詳細は下記HPにて(全席指定・税込)
HP:https://www.komatsuza.co.jp
問:こまつ座 tel.03-3862-5941

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