30-DELUXの代表作、佐藤アツヒロを主演に迎え12年ぶりに待望の再演！　新たな風を入れてさらに深化する『デスティニー』の世界へ

　30-DELUXが『デスティニー』-アドラメレクの鏡-をひっさげ、全国5カ所で公演を行う。主宰の清水順二に、3度目の上演を決めた経緯を尋ねた。

清水「『デスティニー』はハリウッド映画のような世界観に殺陣をふんだんに入れ、“戦い”で物語を紡いでいく、劇団初期の集大成的作品です。沢山の観客を動員し劇団の転機となった代表作を、コロナ禍を経て30周年を目指すに向けて再びやりたいと思いました」

　初演・再演に続き主演を務める佐藤アツヒロにとっても、思い出深い作品だ。

佐藤「殺陣を主軸に、主人公が物語を突っ走ります。初演・再演で限界まで殺陣を盛り込んだので、今回のお話をいただいたときは『体力が崩壊するな』と思いました（笑）。とはいえ、この機会をとても喜んでいる自分がいます。成熟した殺陣芝居をお見せしたいですね」

　今回、初参戦となる鈴木達央は、大きな驚きをもってオファーを受け止めたという。

鈴木「僕のような声の芝居の人間に、白羽の矢を立てていただけるとは……。驚きと共に嬉しい気持ち、そして舞台に精通していない故の不安が一気にきました。とてもファンタジックな作品という印象で、未知の世界への興奮が高まっています」

　佐藤が演じるのは、生と死の淵で悪魔と契約を交わし、英雄へと上りつめていく男・ジン。

佐藤「普段から運動していますが、殺陣芝居の稽古初日は必ず筋肉痛になります。30-DELUXの稽古場は部活のようで、自然と連帯感が生まれます。そういった空気を味わえるのも楽しみ！」

清水「名古屋・大阪で僕が一緒にやってきた選りすぐりの役者たちを座組に加えています。彼らもアツヒロくんと共演できるということで士気が高いですよ」

鈴木「僕は悪役を演じるとお聞きしています。いかに他者を誘惑し、翻弄し、意地悪く振る舞ってやろうかと、今からイメージを膨らませています」

　林明寛が脚色・演出を務める点も、大きな変化だ。

清水「イキのいい世代に演出を委ねて、新しい風を入れたいなと。明寛くんは劇団公演に出てもらったり、実は僕の教え子でもあったりという縁があります。アツヒロさんとも共演していて、変な遠慮をせず演出できるだろうというところからの抜擢です」

佐藤「（林が参加するという）話を聞いて、素直に『いいじゃん！』と思いました。『デスティニー』を今の時代に合ったものにしてくれるだろうと期待しています」

鈴木「周りから『丁寧で、グッと突っ込んだ面白い演出をする方』とお聞きしました。その演出によって僕の芝居や殺陣がどのように変化していくか、楽しみと怖さが両方あります」

　30-DELUXの真骨頂、心が熱く震えるファンタジーをぜひ、その目で見届けてほしい。

（取材・文：木下千寿　撮影：小島マサヒロ）

鈴木達央さん
「僕は自分に喝を入れる為に、自分の中に入れる意志を込めて芯のある音で少し低く強めに『よろしくお願いします』と声を出します。
　そうする事で、自分にアフレコの本番という発破をかけつつ、自己暗示にも近い本番への集中と緊張を作る意味でやっているのですが、いつの頃からか、始めるようになりましたね」

清水順二さん
「舞台だと本番前に、『一人通し稽古』をやります。舞台で役者が動ける時間に、自分の台詞と動きをすべて1人で演じます。家で行ってから出かけるときもありますし、入り時間が遅れるときは車の中でやることもあります。体の中のDNAに染み込ませる感じです。
　ちなみに30-DELUXだと、笑い部分の日替わりネタや前説などがあるので、本番直前は、その日のネタを延々と練習するのもルーティンとなってしまいました（笑）」

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