劇団6番シード30周年記念公演 第1弾。“伝説の交渉人”が再臨! おばあちゃん交渉人が事件解決に導く、ヒューマンサスペンスドラマ

劇団6番シード30周年記念公演 第1弾。“伝説の交渉人”が再臨! おばあちゃん交渉人が事件解決に導く、ヒューマンサスペンスドラマ

 計算された言葉の掛け合いとパワフルで疾走感溢れるハイスピードコメディを主軸に、数多くのエンタメ性に富んだ作品を輩出してきた劇団6番シードの旗揚げ30周年記念公演第1弾。
 ある地方銀行の支店で発生した人質事件立てこもり事件は発生から6時間が経過し、手詰まりとなった警察が召喚したのは、スーパーの買い物袋を手にした、伝説の“おばあちゃん”交渉人だった!
 劇団の看板女優・宇田川美樹が伝説の交渉人「遠山弥生」に扮し、型破りな交渉術と心に繋がる会話術で解決に導く、ヒューマンサスペンスドラマだ。脚本・演出を手掛ける主宰の松本陽一と共に本作への意気込みを聞いた。

―――旗揚げ30周年おめでとうございます!

松本「ありがとうございます。30年の実感はあまりないですが、僕が演出を初めて20数年なので、そう言われると相当な年月に感じます。この記念公演でお客様の前に立ってようやく実感してくるものなのかと思っています」

宇田川「私もまだピンと来ていません。20代の頃に稽古場でワイワイやっていた日々が、昨日みたいに感じているので、『おめでとうございます』と言われるとああ、そうなんだと感じます」

―――2013年の20周年記念では『Call me Call you』として上演された前作ですね。30周年記念に再び選んだ理由は?

松本「おばあちゃん交渉人が電話1つで犯人と交渉して、謎を解いたり心のトゲを取ったりして、犯人を投降に導くミステリーとヒューマンドラマが物凄く入った作品で、“シーズン2”的なものをいつかやりたいなと思っていました。30周年で比較的広い劇場が取れたので、ここで1つスケールが大きいヒューマンドラマを創りたいと思った時に、この遠山弥生というキャラクターがぴったり合うなと思いました。
 今回も銀行に籠城する犯人と電話だけで交渉していくストーリーですが、今回はもう少し踏み込んでConnect(繋がる)というタイトルにしました。交渉人と犯人だけでなく、刑事や人質も含めた人達が1つの事件を通して繋がっていく意味合いを込めました。外側はサスペンスものですが、1番描きたいのは心が繋がるヒューマンドラマ。人生経験からくる知恵袋的な弥生さんの鋭い推理と考察は必見です」

―――初演で演じた交渉人「遠山弥生」というキャラクターは、宇田川さんにとってどのような人物ですか?

宇田川「当時はまだ若かったので、イメージに合うおばあちゃん像に近づけることが大変でした。一般的な入れ歯を噛んだような話し方や、腰が曲がった歩き方だと老けすぎてしまう。どれぐらいのおばあちゃんを設定するかまで相当時間がかかりました。おばあちゃんの白髪に寄せようとするあまり、ブリーチをやりすぎて仙人みたいになったりして(笑)。実際に知り合いのおばあちゃんの動きを観察したこともありました。
また初演では犯人とは相対せずに電話だけのやり取りだったので、声のトーンや表情、犯人の心に入っていく揺さぶりや、深い語り掛けも含めて、私にとっては難しい作品ですね。
 あとはギャップでしょうか。その抜けた印象から、最初はこのおばあちゃんで本当に大丈夫なの?と思わせておきつつ、次第にその交渉力を発揮して、周囲にこの人すごいぞと思わせる過程が大切なので、おばあちゃんと凄腕交渉人という正反対の要素のバランスをどう取るかをすごく意識しました。
 でも難しいだけでなく、すごく勉強にもなったので、また遠山弥生さんを演じられることが怖くもあり、ワクワクもありという感覚です」

―――新メンバーのオオダイラ隆生さん、高宗歩未さんの加入によって変わる部分はありますか?

松本「キャストの配置や組み合わせなどは、バリエーションが増えたことでより面白くなりますね。今回、オオダイラ君は犯人役をやります。アメリカ犯罪史に残る強盗殺人犯のボニー&クライドに影響を受けたかなり癖が強そうなキャラクターなので、そこは新しい風をふかしてくれるのではと期待しているところです」

―――30周年を契機にした今後の劇団の方向性は?

松本「まだ具体的にこれと言えるものはないのですが、何か勢いをつけて色々やんちゃなことをやりたいねと劇団員で話をしています。視聴環境も含めて、お客さんが面白いと思えるコンテンツは刻々と変化しているので、そこへのアンテナと自分がやりたいことをすり合わせしながら創作していければと思っています。
 これだけ娯楽が多様化している中でも生で観る舞台演劇が生き残っているわけにはそれなりの理由があるわけで、そこに新しいトレンドや習慣をいかに取り入れて変化させていくかの新たな10年、20年にしたいです。

宇田川「自分達が面白いと思わないとお客様を楽しませることはできないので、まずは私達が楽しんで真剣にやることを続けることですね。今までと変わらずステージでどんちゃんできたらいいなと。何か新しいことに挑戦するよりは、今まで通り、丁寧に面白いことを全力でやる。最新作が最高傑作という気持ちで取り組めたらなと思います」

―――最後に本作への意気込みと読者の方へのメッセージをお願いします。

宇田川「言葉は人を鼓舞することもできるし、傷つけることもある。俳優をする上で、言葉の先にあるその人の思いや人生が見えてこないといけないと感じています。
 10年前の初演では、どうしたらおばあちゃんらしく見えるかの方に意識が行ってしまっていましたが、今回は言葉の強さや怖さ、色々なものをお芝居と共に観てもらって、何か1つ持ち帰ってもらえるような言葉を見つけてもらえたら嬉しいです」

松本「今回は冒頭の10分~15分が作家として勝負だと思っていて、松本作品で今までないほどの冒頭に厚みを持たせた作品にしようと思うので、遅刻厳禁でお願いします!
 ダンスやアクションがあるわけでない会話劇なので、これまでの集大成のような気持ちで描きたいなと思っています。是非、劇場で楽しんで頂ければ嬉しいです」

(取材・文&撮影:小笠原大介)

プロフィール

宇田川美樹(うだがわ・みき)
1975年3月4日生まれ、東京都出身。1997年、劇団6番シードに入団。同年、『MUKAIYAMAザ・トラブル増すターズ』でデビュー。年齢性別関係なく、圧倒的存在感で演じる看板女優。舞台出演作品は50作品を超え、自身が代表を務めるBE WOOD LIVE合同会社が主催する演劇ユニット「UDA☆MAP」ではプロデューサーとしても活躍。

松本陽一(まつもと・よういち)
1974年9月18日生まれ、広島県出身。脚本家・演出家・劇作家。劇団6番シード代表。スピード感あふれるノンストップコメディを中心に、これまで50作品以上の脚本・演出を担当。映画『Deep logic』、『夜明けの記憶』、『パニック4ROOMS』などの映像作品の脚本のほか、数多くの演劇ワークショップを開催。舞台『独房のルージュ』では、2011年池袋演劇祭 豊島区長賞を受賞。

劇団6番シード30周年記念公演第一弾
『Call me Connect you〜交渉人遠山弥生〜』

日:2023年4月6日(木)~9日(日)
場:六行会ホール
料:S席[前方3列]8,000円
  A席6,500円
  ※30周年ありがとうグッズ付きは各+3,000円
HP:http://www.6banceed.com/
問:劇団6番シード
  mail:web@6banceed.com

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