永井愛率いる二兎社が、『歌わせたい男たち』を14年ぶりに再演。本作は2005年に初演され、数々の賞に輝いている。そして今秋、キャストを改め3度目の上演を行う。
「この作品の素晴らしさをきちんと世に伝えなければいけない。その責任感で一杯です」と言うのは、主役の仲ミチルを演じるキムラ緑子。物語の舞台はとある都立高校。新任の音楽講師のミチルは初めて迎える卒業式の日、国歌斉唱を巡る教師たちの攻防に巻き込まれていく。
「ミチルは国歌斉唱の意味など何も考えていなかったけれど、卒業式で先生方の苦しみに触れ、初めて色々なことに気づき始める。私も含め、世の中には何も考えず当たり前のように歌っていた人が沢山いると思う。でも実はとても重要な問題で、永井さんは“皆さんどうですか、ここで考えてみませんか?”と覚悟を決めて訴えているんですよね」
自身も少女時代歌手に憧れ、かつて塾講師を務めるなど、役と通じるものは多い。
「塾で教えていたのは3年だけでしたけど、生徒の成績が伸びるのが喜びでした。ヘンに生真面目だからか、未だによく『学校の先生みたいだね』と言われます。でもこの舞台では講師らしく教えるシーンはないので、残念ながら役には活かせないかも(笑)」
役へのアプローチについて「まず台本をしっかり読み込み、理解するところから」とキムラは言う。
「この作品は喜劇と謳われているけれど、私は台本を読んでいてとても苦しかったですね。国歌を歌ってほしいという先生にも、歌いたくないという先生にも、それぞれの背景や想いがあって。永井さんの素晴らしさは、言葉でストレートに説明せずに、台詞の裏にある感情を想起させるところ。想いを押しつけることがない。国歌斉唱の問題にしても、“歌いたくない人”、“歌わせようとする人”、それぞれの言い分を存分に展開させて、観客に判断をゆだねている。本当に上質な台本だなと感じます」
本作で観客に届けたいものとは?
「題材は国歌斉唱の強制問題だけども、それに限ったことではなくて、全てに通じるものです。どんな問題にも色々な考え方があって、良い悪いは簡単には決められない。ただ“あなた自身はどう考えますか?”と問いかけてくれる。“大切なのは自分自身でちゃんと深く考えることですよ”と。これはもう誰もが観ておかなければいけない作品だと思うし、ぜひこの機会に皆さんに観てもらえたらと願っています」
(取材・文:小野寺悦子 撮影:間野真由美 ヘアメイク:笹浦洋子 スタイリスト:松田綾子(office DUE))
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プロフィール
キムラ緑子(きむら・みどりこ)
1961年10月15日生まれ、兵庫県淡路島出身。劇団M.O.P.を経て、舞台・ドラマ・映画と幅広いジャンルで存在感を放つ。近年の主な出演作は、あいまい劇場 其の壱『あくと』、恋ぶみ屋一葉『有頂天作家』、ドラマ『必殺仕事人』シリーズ、『白い濁流』、夜ドラ『あなたのブツが、ここに』、映画『泣くな赤鬼』、『すばらしき世界』、『劇場版 ラジエーションハウス』など。NHK Eテレ「グレーテルのかまど」などナレーションの仕事も多い。
衣装協力:ブラウス・パンツ(DUE deux tel.03-6228-2131) ピアス(アビステ tel.03-3401-7124) リング(ケイテン tel.03-6206-6429)
公演情報
二兎社公演46『歌わせたい男たち』
日:2022年11月18日(金)~12月11日(日) ※他、地方公演あり
場:東京芸術劇場 シアターイースト
料:一般6,000円 25歳以下割引3,000円 高校生以下1,000円※25歳以下・高校生以下チケットは枚数限定/要身分証明書提示(全席指定・税込)
HP:https://nitosha.com/nitosha46/
問:二兎社 tel.03-3991-8872(平日10:00~18:00)