YOASOBI×直木賞作家のコラボ小説を基にした朗読劇 “はじめての○○”から広がる世界観を、言葉の演技で伝える

YOASOBI×直木賞作家のコラボ小説を基にした朗読劇 “はじめての○○”から広がる世界観を、言葉の演技で伝える

 J-POPシーンを席巻し海外でも人気の音楽ユニットYOASOBIが、直木賞作家4名とコラボレーションした書き下ろし小説楽曲化プロジェクト「はじめての」。今年1月にはその朗読劇版の〈前編〉として、島本理生と森絵都の作品が上演され、好評を博した。
 そして来年1月の〈後編〉では、辻村深月『ユーレイ』と宮部みゆき『色違いのトランプ』を朗読劇化。3日間の公演に入れ替わりで出演する男女6人のキャストから、ドラマ・映画・舞台と出演作が続いている崎山つばさが、作品に向けての思いをメールインタビューで答えてくれた。

―――まず、今回の出演が決まったときの気持ちを聞かせてください。

 「純粋に嬉しく思いました。朗読劇をYOASOBIさんの楽曲と共に体感できることも、自分にとって新たな刺激になること間違いないと思います」

―――朗読劇は2019年の『百合と薔薇』や2020年の『ラヴ‏・レターズ』、そして今年の『アドレナリンの夜』などを経験していらっしゃいますが、演者として朗読劇ならではの面白さ、楽しさはどういうところにあると感じますか?

 「作品によりますが、基本的には朗読劇はあまり稽古をしないことが多いので、本番で生まれるものの鮮度が高いところが怖さでもあり、面白さでもあると思います。そして、読み手によって無数の世界観が感じられることも朗読劇ならではだと思います」

―――観る側としてはどんな面白さがありますか?

 「同じ作品でも、人によって表現の仕方や台詞を読むスピードやニュアンスも全くバラバラなので、自分とは違う部分でとても勉強になります」

―――逆に、演者としての難しさは感じますか?

 「台本を手に持ち、台詞を読むということ前提でお客様に観てもらうので、自分の言葉として届けることは演劇よりも難しいと感じます」

―――『はじめての』は、10月〜11月に崎山さんが出演した舞台『赤ひげ』の演出家・石丸さち子さんが上演台本と演出を手掛けます。『赤ひげ』での石丸さんの演出はいかがでしたか?

 「石丸さんはとてもパワフルでした。それでいて繊細さもあって、何より演劇というものが大好きで、それが溢れ出ています。分け隔てなく誰にでも親身に向き合い導いてくださる演出家さんだと感じました。役者のちょっとした変化や躓きにも気づいて下さって、石丸さんには嘘をつかずに全力でぶつかりたいと思わされる鋭さと、何でも受け入れてくれる温かさもあって、甘えてしまいたくなる優しさもある方でした」

―――『はじめての』について、石丸さんとはどんな話をしましたか?

 「『赤ひげ』の稽古で叩き込まれたことを、次はどう活かせるかなどのお話をしました。自分の癖や、劇においてのノウハウを教えていただいたので、それを惜しみなく発揮できたらなと思っています」

―――今回の2つの演目には、それぞれの小説版を原作としたYOASOBIの楽曲「海のまにまに」、「セブンティーン」があります。それらは聴きましたか?

 「『海のまにまに』は、歌詞や少女の境遇とは裏腹に優しいメロディとテンポがその後に起きる優しい出来事に寄り添っている気がしました。ハモリやコーラスがまるでユーレイと2人で歌っているようにも聞こえました。
 『セブンティーン』は、物語の中心が“私”になった世界で、同じ小説のスピンオフ作品を読んでいるかのような気持ちになりました。歌詞の中にある“私が希望になるの”で涙腺が崩壊しました」

―――辻村深月さんの小説版『ユーレイ』は読みましたか? 読んでいたら感想も教えてください。

 「情景が思い浮かぶ描写が多く、温度や湿度も感じられる文章で、2人の会話も最初はユーレイの会話だと思うと冷たく、そうではなく朝になるととても温かくてその温感が心地よく伝わる作品だと思いました」

―――宮部みゆきさんの『色違いのトランプ』は?

 「壮大なファンタジーのようで、実はこんな世界があるのかもと思ってしまう程にリアルな部分もあって、家庭をもつ人には尚刺さる作品であろうと思いました。初めて容疑者になった時ですが、その隠し事も家族の絆に繋がると思うととても感動しました」

―――今回の上演台本を読んで、小説版との違いをどう感じましたか?

 「語りの部分が多いだけに、この作品をお客様に届ける難しさを危惧しています。目で読むのとは違って、言葉で、音で伝えて、内容を理解してもらうには相当な話術が必要ではないかと思って、今から恐怖でビクビクしています」

―――崎山さんが演じる役に関して、どんなふうに取り組もうと考えていますか?

 「『色違いのトランプ』の方は言葉数も多く、会話も少なめなのでいかにわかりやすく読むかが大事なのではと思っています。強調するところ、伝えたいところを丁寧に組み立てていきたいと思います。
 『ユーレイ』は隙間隙間に語り手として入ったり、過去の声や通りすがりの人物などを担当するので女性2人に寄り添って邪魔をせず、それでいて俯瞰的な第三者としていられたらと思います」

―――今回ご一緒される豊原江理佳さん・平野綾さんとは初めての共演だと思いますが、期待すること、楽しみにしていることなどありましたら教えてください。

 「勉強させていただくことがとても多いと思って楽しみにしています。よく観察して、学んで、手にして、自分の成長に繋がるよう頑張りたいと思います」

―――崎山さんの役はトリプルキャストで、津田健次郎さん、浪川大輔さんが演じます。これまでに出演された朗読劇もマルチキャストでしたが、他に演じる人のことは意識するものですか?

 「全く意識しないといえば嘘になりますが、自分がやることの意味を追求する方に時間を使いたいと思っています。影響されるところは柔軟に、芯はしっかり持って演じられたらと思います」

(取材・文:西本 勲)

プロフィール

崎山つばさ(さきやま・つばさ)
1989年生まれ、千葉県出身。2014年に俳優デビュー。2015年よりミュージカル『刀剣乱舞』シリーズの石切丸役で注目を集め、舞台、映画、ドラマなど幅広いジャンルで活躍している。近年の主な出演作品に、【舞台】舞台『怖い絵』(作・演出:鈴木おさむ)、プロペラ犬 第8回公演『僕だけが正常な世界』(作・演出:水野美紀)、『サンソン -ルイ16世の首を刎ねた男-』(演出:白井晃・脚本:中島かずき(劇団☆新感線))、【映画】『仮面ライダーギーツ 4人のエースと黒狐』、【ドラマ】『科捜研の女』(テレビ朝日)、『遺留捜査』(テレビ朝日)、『仮面ライダーギーツ』(テレビ朝日)、「歴史探偵」家康VS.秀吉 どうする家康コラボスペシャル(NHK)などがある。

公演情報

朗読劇 「はじめての」 〈後編〉

日:2024年1月6日(土)~8日(月・祝)
場:シアター1010
料:S席12,000円 A席9,800円
  (全席指定・税込)
HP:https://twitter.com/hajimeteno2023
問:㈱room NB
  mail:info.hajimeteno@gmail.com

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