「人は誰かを生かし、誰かに生かされる。」紬ぎ合い結んだ出会いの不思議 人の出会いと別れを泣き笑いで描くヒューマンストーリー

「人は誰かを生かし、誰かに生かされる。」紬ぎ合い結んだ出会いの不思議 人の出会いと別れを泣き笑いで描くヒューマンストーリー

 俳優兼舞台制作・星宏美が主宰するViStar PRODUCE『引き結び』。脚本に湯口智行を迎え、人間の喜怒哀楽を情感豊かに表現した会話劇は今回で5作目となる。「舞台に関わる全ての人が楽しめる作品」をテーマに、個性的なキャストを交えた本シリーズはどんな魅力を放つのか? 主宰の星と脚本・出演キャストの湯口に意気込みを聞いた。

―――制作チームと本作について教えてください。

星「元々は劇団所属の役者をしながら制作をしたり、外部公演の手伝いをしたりしていましたが、本格的に自分なりのスタイルを創ってみたいと思うようになって、2017年9月に制作チームViStarを立ち上げました。そして色んな団体さんと携わる中で良いなと思う要素を集めて、自分が主体となって作品を創ることでお客さんにも役者さんにも楽しい時間を提供できればいいなと考え、2019年4月に制作に特化した演劇団体・ViStar PRODUCEを立ち上げました。
 元々『引き結び』という作品は私が所属していた大学の演劇サークル(かつては大泉洋さん率いるTEAM NACSの皆さんも所属されていました)の先輩が手がけたもので、私自身すごく大好きな作品でした。いつか東京で上演出来たらいいなと思っており、ViStar PRODUCE(略してビスプロ)の立ち上げとともに、湯口智行さんに脚色していただき、その夢を叶えました。
 ViStar PRODUCE『引き結び』シリーズは今回で5作品目になります。脚本をお願いした湯口さんとは他団体さんの公演で互いに演者として知り合って以来のお付き合いです。役者としてもさることながら、湯口さんが主宰する『ポンポンペインシアター』の作品が大好きで、私が公演をする時には是非脚本をお願いしようと思っていました」

湯口「最初に星さんからvol.1の脚本の依頼を受けた時に、原作にもう少し加筆をした方がいいと思っていて、2/3ぐらい書き足しました。同年に上演したvol.2を経て、2020年、Vol.3『時間の糸』がコロナ禍で延期となってしまい、2021年の活動再開のタイミングでもう一度仕切り直そうということで、劇団の制作の物語を主体としたVol.0『はじまりの糸』を書きました。そのあと延期となっていたVol.3も上演できましたが、今回のVol.4は2022年1発目となる作品なので、僕の中では一歩目かなという感覚があります。主題は同じでなぜサブタイトルだけを変えるのか?ということについては、簡単に言うと映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』みたいなものです。同じ世界線の中で未来と過去があって、その中で主人公が変わっていく作品で基本的には1話完結です。よくある続編ものでもなく、前作を観ていないから分かりづらいということもありません。
 基本的には身近な人間関係の中での出来事や悩みに笑いや涙のエッセンスを入れながら描く会話劇になっています」

星「人は“引き結ぶ”とでも言いましょうか。子には親がいて、その親にもまた親がいて、という感じで人生は人が繋がることで出来ていると実感しました。自分がここにいることは奇跡に近いんだと。私にとって『引き結び』という言葉は大切なものであり、今後も発表する作品の主題は『引き結び』にして副題で差別化を図っていこうと思っています」

湯口「今回の物語はVol.1で僕が演じた主人公の友人で中古ビデオ屋の息子が中心になります。
 お客さんに想像の余地を残したいので、多くは語りません。1話完結なので最低限の説明はパンフレットで説明していますが、可能な限りお客さんの想像の中で膨らませて欲しいです。監督の視点が生きる映像作品と違い、お客さんのそれぞれの視点で作品を切り取れるのが舞台の良さでもある。僕はお客さんが最後の舞台のピースだと思っているし、その日その日のお客さんと共に作品を創っている感覚です。
 個人的には観終わった後に居酒屋とかでお客さん同士が『あれってこうだよね?』『俺はこう思うな』といった感じで盛り上がってもらえるような作品に出来たらと思います」

―――湯口さんは芸人としても活動されていましたが、笑いの要素は作品に生きていますか?

湯口「もし自分が演者として出ていて、演出家に自分の芝居が何もヒットしなかった時の最後の砦が笑いですね。何もできませんが笑いだけは取れますと(笑)。そういう意味では自分の一番槍だといえます。
 暗い話やシリアスな話を依頼されたらそこは真面目に書きますが、もし好きに書いていいよと言われたら、やはり人間の物語や笑いに行きつくのかなと。昔、お笑いの養成所にいた時に芝居が上手な大先輩がいたのですが、その方に『芝居は日常の再現だから』と言われてなるほどと思いました。
 僕は感動するシーンでボケを入れるのが好きなんですよ。よくお客さんから『湯口さんの作品は泣いていいのか笑っていいのか』と言われます。そんなにお客さんの感情を揺さぶられるのは幸せじゃないですか」

星「私も湯口さんの書く作品に出させてもらっているのですが、舞台上ではお客さんと全く同じ感情ですね。人を幸せにする笑いというか、人を傷つける笑いが全くない。だからお客さんもすっと入りやすいし、私達役者も自然とつられるのだと思いました」

―――注目してもらいたい部分はどこですか?

湯口「本作での主人公は高校生。大切な人の死を通して10代の彼らが、亡くなった人の思い、そして残された側の心境をどのように受け止めるかを見てもらいたいです。遅かれ早かれ、誰もが経験することであり、人は独りでは生きていないということを改めて感じ取ってもらえたら嬉しいです」

―――最後に読者にメッセージをお願いします。

星「私が関わっている全ての人が居心地の良い空間で面白い作品に触れて欲しいのが一番にあります。私が信頼する方々に命を吹き込んでもらっている作品であり、それをお客さんに楽しんでもらっている。自分が目指してきた方向性と現在地は決して間違っていないと実感しています。是非一度、味わってもらいたい居心地よい空間なので、皆様のご来場をお待ちしています」

湯口「コロナ禍でマスク生活が当たり前になって、人の表情が分かりづらい世の中になりました。今もまだ以前のようには戻りませんが、こんな時代だからこそ、劇場という非日常空間でしばし時を忘れて感情を開放してもらい、また明日への活力に変えてもらえたら僕は嬉しいです。劇場でお会いしましょう!」

(取材・文&撮影:小笠原大介)

プロフィール

湯口智行(ゆぐち・ともゆき)
1984年8月11日生まれ、千葉県出身。ワタナベエンターテイメントスクールお笑い総合学科第12期生。同期に「ハナコ」「くまむし」「マリカ」(一時期コンビを組み「花まるチョコレート」として活動)等がいる。自ら出演、そして脚色・脚本・演出も多く手掛ける。様々な職業、そしてバックパッカーを経験した後、ロマンを求めお笑いの世界に飛び込む。お笑いコンビ「ポンポンペイン」として活動。その一環として演劇に触れ、瞬く間に演劇の面白さ、素晴らしさに魅了された。「俳優、芸人肩書きにとらわれず魅力あるエンターテイナーと至高のエンターテイメントを!!」という言葉を掲げ「ポンポンペインシアター」を主宰し、2013年11月ポンポンペインシアター旗揚げ公演『同じ窓からの見え方』で小劇場界に名乗りを上げる。ポンポンペインシアター発足時、脚本・演出は外部に依頼していたが、自ら脚本・演出をする為勉強をし、ポンポンペインシアター第六部隊『悪のヒーロー』で脚本・演出デビュー。舞台制作チームViStar代表、星宏美が主宰する「ViStar PRODUCE」公演で脚色・脚本・演出・出演を担当。お笑い芸人である特性を活かした演出、そしてコメディベースで描かれる心温まる脚本が評価される。いわゆる「笑って泣ける話」というシンプルな脚本と「面白ければいい」という思い切りが良い演出に定評がある。

星 宏美(ほし・ひろみ)
1988年5月6日生まれ、北海道出身。大泉洋らTEAM NACSがかつて所属していた、北海学園大学演劇研究会出身。大学卒業後上京し、数々の舞台や映画などに出演。女優活動以外にも、ロカビリーアイドルグループめろん畑a gogoの赤色担当初代リーダーや全国コミュニティFMラジオのメインパーソナリティー、舞台制作チームViStarの代表も務める。そして制作に特化した団体「ViStar PRODUCE」を2019年4月に立ち上げプロデュース業を手掛ける。ViStar PRODUCEの作品としては、2019年4月上演vol.1『引き結び』、2019年11月上演vol.2『引き結び~紬ぎ結ぶは想いの糸~』、2021年4月上演vol.0『引き結び~紬ぎ結ぶははじまりの糸~』、2021年5月上演vol.3『引き結び~紬ぎ結ぶは時間の糸~』がある。

公演情報

ViStar PRODUCE vol.4
『引き結び~紬ぎ結ぶは約束の糸~』

日:2022年8月24日(水)~28日(日) 
場:シアター・アルファ東京
料:超ViPシート[先行入場・特典付・各回10枚限定]8,500円
  ViPシート[先行入場・特典付・各回10枚限定]6,500円
  前売シート5,500円(全席自由・税込)
HP:https://twitter.com/VistarProduce
問:ViStar PRODUCE
  mail:seisaku.vistar@gmail.com

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