『クロノス・ビギンズ』『あしたあなたあいたい』2作同時上演 「これまでのシリーズとは毛色の違う、挑戦的な作品」

『クロノス・ビギンズ』『あしたあなたあいたい』2作同時上演 「これまでのシリーズとは毛色の違う、挑戦的な作品」

 演劇集団キャラメルボックスが活動再開後初となる、スプリングツアーをおこなう。『クロノス・フェスティバル2023』と題して、『クロノス・ビギンズ』と『あしたあなたあいたい』の2本を、同期間に同じキャストで上演する。

成井「梶尾先生のクロノスシリーズの最新作『クロノス・ジョウンターの黎明』を読み、これまで同様、本当におもしろかった。これを芝居にしない手はないと、すぐに梶尾先生に舞台化の許可を取りました。それが『クロノス・ビギンズ』です。そして、どうせやるなら“フェス”と銘打って、賑やかに上演した方が良いのではないかと考え、2006年の初演以降、これまで再演をしてこなかった『あしたあなたあいたい』を2時間の作品に改訂してお届けすることにしました」

 新作『クロノス・ビギンズ』は、主人公の1人である仁科克男が、映画のヒロインを演じていた女性に一目惚れし、その女性に“クロノス・ジョウンター”を使って手紙を出すという物語。

阿部「『クロノス・ビギンズ』は僕が演じる青井秋星と、関根翔太が演じる仁科克男の2人が主人公というのが特徴です」

成井「2人の主人公がいる作品は私にとっても初めてで、非常に挑戦しがいがあると感じています。主人公が2人いるということは、語り手が2人いるということ。2つの視点から物語が描かれるという、これまでのシリーズとは構造の違う作品になっています」

阿部「劇中には、映画を撮影するシーンがあり、そこではキャラメルボックスに関連するものを映画化しています。そこに劇団のカラーが出ていると思いますし、青春群像劇のような色艶やかさも感じられるのではないでしょうか」

 『あしたあなたあいたい』は、2022年に上演された『クロノス』にも脇役で登場する“枢月圭”の物語だ。

多田「クロノス・シリーズでは、生死にまつわる理由で過去にタイムトラベルすることが多いですが、『あしたあなたあいたい』で僕が演じる布川輝良だけは“写真が撮りたい”という理由でタイムトラベルします。そこがこれまでのシリーズとは大きく違い、僕が好きなところです」

成井「シリーズでは重い話が多いのに、このストーリーだけは爽やかさがあると思います。“改訂”という枠を超えて大幅に“改変”をしていますので、ほとんど新作と変わりません」

多田「初演を観た方も新たな気持ちでお楽しみいただけると思います」

(取材・文:嶋田真己 撮影:友澤綾乃)

母の日・父の日とありますが、両親問わず、家族に感謝したいことはありますか?

成井 豊さん
「私の両親はともに80代で存命中です。幸い健康で、仲良く埼玉で暮らしています。そのおかげで、私は61歳になった今も、芝居に集中することが出来ています。2人とも足腰が弱っていているため、もう劇場に足を運ぶことはありませんが、私の活動を応援してくれています。同年代には老々介護でご苦労なされている方も多いと思いますが、私は本当に恵まれていると思います。というわけで、健康な両親には深く感謝したいです」

阿部丈二さん
「“気持ちを強くしてくれる事”僕はとても繊細なくせに刺激を追及して生きてしまうややこしい気質なので、これまでの人生で幾度となくストレスを抱えたまま大きな決断や挑戦を迫られる機会がありました。そういう時に、もし失敗しても家族を失う訳ではない、家族が仲良く元気であればそれ以上何を望む、そう思えることで不安が消えて強い気持ちが持てます。生きるって複雑で楽ではないけど、人生をシンプルに見つめ直せる大切な存在。なので、この先もどうぞ仲良く元気に宜しくお願いします」

多田直人さん
「兄妹3人、平等に育ててもらったこと。もしかしたら姉2人からすると、末っ子長男の私がいちばん甘やかされた印象があるかもしれません。が、両親は誕生日や季節ごとのイベント、受験や仕送りなどの期限や設定金額など、きちんとルールを決めて、子供たちに接してくれました。その決められたルールがあるおかげで、あとは自分次第で、何を決断するか。そんなことを考える土台になったと思います」

プロフィール

成井 豊(なるい・ゆたか)
1961年10月8日生まれ、埼玉県出身。早稲田大学第一文学部卒業後、高校教師を経て1985年に演劇集団キャラメルボックスを創立。劇団の脚本・演出を担当。現在は、劇団以外にも外部公演での脚本・演出、テレビドラマの脚本や演劇講師など、多方面で活躍中。

阿部丈二(あべ・じょうじ)
1977年6月8日生まれ、フィリピン出身(帰国子女)。2004年に演劇集団キャラメルボックスに入団。主な出演に、ドラマ『刑事7人』、『警視庁・捜査一課長』、映画『図書館戦争』シリーズ、『アンフェア the end』、『植物図鑑』、彩の国シェイクスピア・シリーズ『ジョン王』、『舞台 増田こうすけ劇場ギャグマンガ日和』シリーズなど。

多田直人(ただ・なおと)
1983年12月17日生まれ、北海道出身。桐朋学園短期大学芸術科演劇専攻を経て、演劇集団キャラメルボックスに2004年入団。同劇団で上演した『無伴奏ソナタ』、『鍵泥棒のメソッド』、『ナミヤ雑貨店の奇蹟』、『アルジャーノンに花束を』で主演を務める。外部への客演も多数。

公演情報

演劇集団キャラメルボックス『クロノス・フェスティバル2023』

日:2023年5月20日(土)~28日(日) ※他、神戸公演あり
場:サンシャイン劇場
料:8,000円(全席指定・税込)
HP:https://napposunited.com/chronosfes/
問:演劇集団キャラメルボックス mail:support@caramelbox.com

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