エンターテイメントを愛する映画人達の青春の日々 「想像力が一番の武器!」日本人による“翻訳劇調”のハリウッドストーリー

エンターテイメントを愛する映画人達の青春の日々 「想像力が一番の武器!」日本人による“翻訳劇調”のハリウッドストーリー

 2月に上演を控えた『モンローによろしく』は、1993年に東筑紫学園戯曲賞を受賞したマキノノゾミの作品で、28年ぶりの再演となる。戦争に翻弄されたハリウッドを舞台に、映画作りに関わる人々を描く。マキノは改めて戯曲を読み直し「当時から息の長い作品を作りたかったので、現代でも上演可能だと思います。むしろ今の方が切実な作品なんじゃないかな」と実感したそうだ。
 物語は1941年のハリウッドで、新進気鋭の映画監督ビリーと、親友のスター男優・キースが女優志望のシェリーと出会うところから始まる。

 「実は、つかこうへいさんの『蒲田行進曲』を誰にも気づかれずにリメイクするという発想で書いた作品なんです。舞台となっている京都の太秦をハリウッドに変更し、女ひとりと男ふたりのあれこれを描く。結果的には全然違う話になりましたけど(笑)」

 登場人物はアメリカ人。会話やコミュニケーションの方法も「これは翻訳劇!?」という印象を受ける。そのような世界観にした理由を尋ねると「想像力を喚起したいから」と声に力を込める。

 「翻訳劇ってもとは外国語なのに日本人が楽しめる。その逆ってあるのかなと。小劇場での僕らの武器は想像力だと思っていたので、どうせなら明らかな嘘をついて“これって翻訳劇かな?”という錯覚を起こせたら楽しい。それで観客の心を動かせたらさらに演劇の勝利なんじゃないかなと考えました。僕は今でも時代劇のような現実とは違う世界での人間ドラマを描くことが多いので、僕の作風の原型でもあるんです」

 では、どのように想像力を喚起するのか。

 「昔は、翻訳劇ではつけ鼻をして、鼻を高く見せたりした時代もありました。でもそういうことの逆をやりたい。衣装もセットもシンプルにして、役者の体ひとつで、それこそ息の仕方や声の出し方や表情で、その物語世界を彷彿とさせるものを作りたいです。想像力でどこまで埋められるかにチャレンジしたい。“なるほど、こうきたか!”と思ってもらえたらいいですね」

 今回、新しい俳優と出会うためにオーディションをおこない、様々なタイプの面白い役者たちが集まった。世代は違うが「芝居が好きだという一点で繋がれる気がする。皆さん力も経験もおありだと思うので、この戯曲の持っている愉快なゲームのルールを一緒に遊べるのかなと楽しみにしています」と、共に演劇を作る日々を心待ちにしている。

(取材・文:河野桃子)

プロフィール

マキノノゾミ(まきの・のぞみ)
 静岡県出身。劇作家・脚本家・演出家。同志社大学文学部卒業。劇団M.O.P.主宰(1984年旗揚げ~2010年解散)。主な受賞に2001年に『赤シャツ』(作)、『黒いハンカチーフ』(作・演出)で第36回紀伊國屋演劇賞個人賞、『怒濤』(演出)で第8回読売演劇大賞優秀演出家賞・作品賞、2008年に『殿様と私』(作)で第15回読売演劇大賞作品賞、2011年に『ローマの休日』(脚本・演出)で第36回菊田一夫演劇賞受賞など。
 最近の舞台は、2021年メイシアタープロデュース SHOW劇場vol.14『十二人の怒れる男』(演出)、今後は2022年1月に劇団青年座『横濱短篇ホテル』(作)、2月に『陰陽師 生成り姫』(脚本)を予定。Makino Playはvol.1『東京原子核クラブ』(本多劇場)に続き2回目の公演。

公演情報

Makino Play 第2弾 『モンローによろしく』

日:2022年2月3日(木)~13日(日)
場:座・高円寺1
料:5,000円(全席指定・税込)
HP:http://makino-play.net/monroe/
問:Makino Play mail:info@makino-play.net

Advertisement

インタビューカテゴリの最新記事