能の秘曲の最高位『関寺小町』に金春流の重鎮・本田光洋が挑む 100歳の老女となった小野小町。老いの刹那と苦しみ、救いを舞う能の秘曲の最高位『関寺小町』に金春流の重鎮・本田光洋が挑む

能の秘曲の最高位『関寺小町』に金春流の重鎮・本田光洋が挑む 100歳の老女となった小野小町。老いの刹那と苦しみ、救いを舞う能の秘曲の最高位『関寺小町』に金春流の重鎮・本田光洋が挑む

 能楽五流派の中でも最古の歴史を持つ金春流が、能楽最奥の秘曲『関寺小町』を10年ぶりに上演。「老女物」と呼ばれる演目の中でも上演の稀な難曲であり、今回は宗家の許可を特別に得ての披露となった。

 「もともと『関寺小町』は一子相伝で宗家のみが舞いを許されてきた作品でした。だがそれでは伝承されていかない、しかるべき人に舞ってほしいということでお話をいただきました」というのはシテを務める本田光洋。自身がかつて子役として本作に出演した経験を持ち、当時をこう振り返る。

 「白髪の鬘(かつら)をつけたシテ、七十八世金春八条宗家が鏡の前に座っているのを見て、私の父が“舞わずともそのままで100歳の関寺小町ですな”と言ったんです。当時シテは70歳でしたが、確かにそのように見えたのを覚えています」

 関寺小町とは100歳の老女となった小野小町。老残の身を恥じつつ、七夕の夜に昔を懐かしみ舞を舞う。

 「老いは長寿社会の今も楽ではないが、当時の100歳はそれ以上。七夕は男女が出会う子孫繁栄の象徴の日で、小町は子供の邪気のない心に触れてまた舞おうと杖を持ち舞う。何故その心境に至ったか、老いの苦しみをどう救いにもっていくか。苦しみの中にもどこか希望を表現したい」

 老いて美貌を失った小町の刹那を演じ抜く。品格と繊細な表現が要される役であり、確かな経験値を重ねたからこそ体現できるものがある。

 「若さには華があり、容姿も声も動きもハリがある。一方で稽古を重ねることの華もある。能というのは老いを表現するところに非常に特徴があって、40代では足りず、60代、70代と積み重ねていく。ただ経験を積むだけではだめで、常に芸の華やかさとは何だろうと考え稽古を重ねてきました。老婆の容姿を真似したら小町が表現できるというものではない。小町は大変な美女だった人で、年老いてなお、若い頃とは違う色気が出ればと考えています」

 5 歳で初舞台を踏み、芸歴は75年。金春流の重鎮といわれる今、一つの集大成としてこの大舞台に臨む。

 「能というのは写実ではないけれど、内面の写実というのはあって、それをとらえたい。どんな弱い女性でもどこかに芯がある。それを探っている最中で、どこかに100歳の小町を見ていただけたらと思っています」

(取材・文:小野寺悦子 撮影:間野真由美)

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本田光洋さん
「未来という贈り物」

プロフィール

本田光洋(ほんだ・みつひろ)
1942年東京生まれ。本田秀男の長男。父及び79 世金春信高に師事。早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。重要無形文化財総合指定保持者。昭和51年文化庁芸術祭優秀賞受賞、平成25年旭日双光章受賞。5 歳で初舞台。デンマーク、スウェーデン、クロアチア、ドイツで演技指導を行うなど、内外で能楽の普及につとめる。(公社)能楽協会専務理事、(一社)日本能楽会会員、(公社)金春円満井会理事長。

公演情報

日本全国能楽キャラバン! 金春円満井会横浜公演

日:2022年1月29日(土)14:00開演(13:00開場) 場:横浜能楽堂
料:S席12,000円 A席10,000円 B席7,000円
  B席[25歳以下優待券]4,000円(全席指定・税込)
HP:https://www.nohgaku.or.jp/
問:公益社団法人金春円満井会 tel.03-6913-6714

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