柴田理恵が「日穏-bion-」作品に初出演 「命」をテーマに、笑いあり涙ありの物語を描く

柴田理恵が「日穏-bion-」作品に初出演 「命」をテーマに、笑いあり涙ありの物語を描く

 社会問題を織り込みながらも、笑って泣けて心が暖かくなる作品を届けるプロデュース劇団・日穏-bion-(びおん)。柴田理恵をゲストに迎えた最新作では、老舗旅館を舞台に3姉弟が織りなす「命」をテーマにした人情物語を描く。作品を代表して、柴田理恵、内浦純一、主宰であり脚本・出演の岩瀬顕子、演出・出演のたんじだいごに話を聞いた。

日本がもっと話し合って変わっていったらいいな

 本作は、主宰の岩瀬顕子が2020年の事件(ALSを発症した女性から依頼され薬物を投与して殺害したとして医師が逮捕された)をきっかけに安楽死に向き合ったことから生まれた作品だ。自殺と安楽死の違いは何なのか? 尊厳死とは? 残される家族の想いは?
 コロナや戦争で「死」がより身近になっている昨今、「死」について語り合い、「生きる」ことの意義を問いかける。
 昨年、立ち稽古をはじめたところでコロナ禍の流れにより公演延期が決まった。1年間熟成された形だが、時を経て「より物語への想いが深まった」と良い効果もあったという。

柴田「昨年台本をいただいて、もっとああしましょう、こうしましょうとディスカッションがいっぱいできたのでとても良い状態です。みんなで積み上げてきたものを、いちから稽古できることは期待できるしいい感じじゃないかなと思います」

―――柴田さんと岩瀬さん、内浦さんは初の姉妹役です。

内浦「柴田さんとは富山の番組でご一緒したり、ご飯を食べに行ったり仲良くしていますが、 舞台での共演はものすごく久しぶりなので楽しみにしていました」

柴田「日穏のお芝居を拝見していまして、たんじさんと(岩瀬)アッコちゃんが作られる世界がすごく好きなんです。ささやかな庶民の話だけれど人間としてすごく深くて、小さなお話だけど実は奥が深いって思える。人に対して優しくて、人の気持ちをちゃんと汲み取っていて心に響く、誰もが心の中でうなずいてしまうお芝居なんです。そういう作品がすごく好きで、一度出演させてくださいと私からお願いして叶いました」

岩瀬「内浦さんや他のみなさまもお声がけしていたので、先にキャスティングが決まって、そこからどんなお話にしょうかと。普段から次の作品は何をテーマにしようかと、記事やニュースを見て考えているのですが、安楽死の事は10年以上前から新聞の切り抜きをしていたんです。
 父が12年ほど前、意識不明のまま亡くなったのですが、その時に延命治療の事など家族が決めなければならない状況というのは厳しいと感じました。それを自分で選択できたらいいなと思って。
 延命治療についての有無はあらかじめ伝えておく事はできても、自分がこうなった時に殺してくださいとは日本では言えないんです。 なので、ちょっとそういう話題を投げかけたいと。これがきっかけになって、日本がもっと話し合って変わっていったらいいな、と思って企画しました」

―――安楽死のテーマについて、たんじさんとまずご相談されたと思いますが、意見的には一致したのですか?

たんじ「テーマ的には僕は最初反対したんですよ。話の展開が難しくなるんじゃないかと。
 問題を投げかけたいけれど、死は軽々しく扱えないし、しかも安楽死について話すことが嫌な人もいる。それがいいとか悪いとかっていう話にはしないっていうところからスタートしましたが、ちょっとドキドキしていましたね。
 ただ岩瀬は本を書く時に書きたいことを書かないと筆が進まないタイプなんです。こっちが面白いからこうしたらと言えば書くけど岩瀬らしくない。やっぱり自分が書きたいものを書くと彼女らしい作品になるんで、最終的には僕も納得して。
 でも考えてみれば、日穏ではテーマは違えど必ず人間の生と死について扱ってるんです。それを今回は正面から描きたかったんだろうと思っています」

岩瀬「人それぞれ選択肢があった方がいいよね、っていう話になっています。例えばLGBTQの話も入っていて、それをみんなで認めていけるような社会になったらいいなと。安楽死が良いとか悪いとかではなく、多様性を認めようっていうことですね。 
 たんじさんが懸念していたように、拒否反応を示す人が多いかなと思って、あらゆる人に聞いてみたんですが、結果ほとんどの人が安楽死について賛成でした。もちろんそうじゃない人もいますが、日本で70%ぐらいの人は賛成らしいんです。だったら議論を重ねて、選べる形にするべきではないかと思うんです」

1年たってちょっと考えが変わってきた

―――台本を受け取ってから1年、あらためて作品について考える時間があったと思いますが、気持ちに変化はありましたか?

柴田「私は役柄的に安楽死については大反対の立場で、私自身も自分で自分の命を絶つみたいなことはよくないと思っているんです。生きることを与えられたら精一杯生きる、どうやって死んでいったかじゃなくて、どう生きていたかイキザマが大事なので、自ら命を絶つことには反対なんです。」

岩瀬「それもよく分かります」

柴田「そういう気持ちもあるので役柄と矛盾はなかったんですけど、1年たってちょっと変わってきたのよね。うちの親も延命治療については常々絶対してくれるなって言ってたんです。数年前、母が要介護4と言われて、(延命治療は)嫌がってたんでしないでくださいと伝えたら、心臓マッサージはどうしますかと聞かれ、骨が折れるんですよねって言ったら、そうですと。では痛いからやめてくださいって、スパッと言っちゃったんですよね。
 その時は全然間違ってないと思ってスパッと言ったんですけど、そんなことをして良かったのかと思ったり。そういうことを思い返しながら自分の選択として、安楽死っていうのはあるのかもしれないなあと……。考えれば考えるほどわからなくなるんですけどね。ただ命が一番大切なものだっていうことは前提ですが」

内浦「僕も最初はやっぱり、生きたくても生きることができない人がたくさんいる中で、自ら命を終えることは無いと思っていたんです。でも岩瀬さんの本を読んで、この状況だったらどうするだろうと。そう思いながら稽古をしていて今でも正直答えは出ていなくて。個人的な話ですが親戚のおじさんが長く透析をしていて、ずっと辛いと言っていて、先日、透析中に亡くなったんです。それは悲しいけれど、ようやく楽になったのかなと思う気持ちもあったり。
 この芝居では、お姉ちゃん2人に挟まれて迷う役なので、色んな感情の中で演じることは間違いではないですよね。岩瀬さんの本と、たんじさんの演出で好きなところは、“観た人の答えはその人それぞれでいい”というところ。だから今回も観た人ひとりひとりが何を思うかは自由です。その世界の一員でいられればいいなと思っています」

―――長男の亮太として何を意識して演じようと?

内浦「岩瀬さんとたんじさんとは、もう何度もご一緒していますが、柴田さんと日穏に出演することは特別ですね。柴田さんと僕にしかできない間柄を肉付けしていけたらと思います。日常って何気ないところで笑っていたりするので、2人にしかできない、そこにアッコさんが入って3人にしかできないものを稽古で作っていきたいです」

―――柴田さんが注目してほしいところは?

柴田「女性の姉妹の仲良し加減と、年の離れた弟と姉の3姉弟って違うと思うんです。喧嘩しても仲良かったり、心の奥底ではわかっているから腹が立ったり、姉弟だからだよね~って思えるようなところや、なんだかんだ言ってもお姉ちゃんが一番とか、その家族ならではの空気感が出ると良いなって思います」

―――これから稽古が始まるということですが、岩瀬さん、たんじさんから見た内浦さんについての印象を教えてください。

たんじ「うっちーは『ギフト』という作品が日穏初出演で、主演のフルオーディションをやったことがあって100人くらいに会ったんですけど、そこにうっちーが来てくれて熱く語ってくれて、とても印象が良かったんです。それが出会いでした。」

岩瀬「彼はいろんな人に好かれるんですよ。何があっても緩衝材になれる人。お姉さんが2人いる弟って、そういう人が多いイメージなので、この役はピッタリだと思っています」

――柴田さんが楽しみにしていることは?

柴田「私は日穏に出てくる全役者さんが好きなんです。例えば話の本筋に関わる人だけじゃなくって、中華屋さんのおじさんとか、八百屋のおじさんとか、そういう人たちがいいんですよ。いろんな人がいろんな所でそれぞれの思いで輝く。出来上がりがすごく楽しみですね。
 もちろんこの大きなテーマの中で起こる家族のドラマも大事ですが、周りの人達の関わり方や、周りで受け止める人たちのドラマもあって、どうやって作っていくのか面白そうだなって思っています」

稽古で号泣!本番が楽しみです

―――タイトルの「月虹(げっこう)」とは?

岩瀬「満月の日に雨が上がった後に見えるもので、特定の条件が無いと見えない虹です。でもこの宿からはそれが見える」

柴田「この月虹も物語に関わってきます」

たんじ「岩瀬はよく色んなものを調べてきて、気象用語とかね『かわたれの空』(かわたれ=明け方)という作品もありましたが、中身より先にタイトルが決まることが結構あるんです。そこからインスピレーションで書くみたいなところもあるんですよね」

岩瀬「月や星、空とか自然を題名にすることが多いですね。今回の月虹もひとつのキーワードになっていますね」

―――柴田さん、内浦さんをどう演出していこうと?

たんじ「うっちーと柴田さんの普段の関係性そのままの姉弟にしていけたら。日穏としては安心感と、笑って泣けて心が温かくなるキャッチフレーズで作品を作っています」

岩瀬「お客様がそれを求めていらっしゃるので、お客さまを裏切らないように。テーマは毎回違いますが、最終的には家族の話や、温かい気持ちになって帰っていただけるような作品作りをしています。
 柴田さんとは初めてですが、稽古ではさすがだなと思う事ばかりで。お一人のセリフのシーンでみんな号泣しちゃって、稽古の段階でそのクオリティなので本番がすごく楽しみです。
 そしてうっちーはお馴染みですが、今回はまたちょっと違ううっちーが観られると思いますので、お楽しみに。
 “命”という生と死がテーマではありますが、笑える部分もいっぱいあります。日穏の舞台は感情のジェットコースターみたいとよく言われます。楽しい作品になっていますので、ぜひ観に来ていただけたらと思います」

内浦「日穏の舞台を観てくださったお客様からは、『明日もまたがんばれる!』という感想をよくいただきます。このようなご時世だからこそ、是非観に来てください。
 明日へのパワーをお届けします!劇場でお待ちしております!」

柴田「自信作です! いろんなことを考えると思いますが、自分が生きてる上での人と人との関わり、その事が実は一つ一つすごく大事なんだとわかるような仕組みになっています。そこを楽しんでいただいて、ご自分にも照らし合わせて観ていただけたら嬉しいです」

(取材・文&撮影:谷中理音)

「祝日が1日もない6月。好きな祝日を作れるとしたら、“何の日”を作りますか?」

岩瀬顕子さん
「とちぎ未来大使としては、6月15日の栃木県民の日! と言いたいところですが、100%他県から反対されるので……(笑)
 6月27日を「無になる日」といたします。梅雨の時期、しとしと降る雨を眺めながら心を無にする日。
 この日は慌ただしい日常から離れて、仕事もプライベートのゴタゴタも全て忘れて、頭と心をリセットしましょう。」

たんじだいごさん
「祝日を作るとしたら6月30日を一年の折り返しの日として「中晦日」にしたらどうかと思います。
 365日の真ん中は多分7月1日(閏年は7月2日)になると思いますが、各月の最後の日を「晦日」と言うそうなので6月の晦日を「中晦日」(なかみそか)。
 半年頑張ってまた新たに大晦日まで頑張る折り返しの日として休日にしたいですね。」

内浦純一さん
「「雨の日」梅雨の季節で雨が多い6月。世間的には晴れてる日が良く、雨の日は残念なイメージがありますが、個人的には雨の日が子供の頃から大好きです。
 日曜など休みの日に、朝起きた時、雨の音が聞こえてくると何故か無性に落ち着く感じがして、窓から雨を見るのが好きな子供でした。変わってますよね(笑)
 でも、今でも寝れないときや仕事で早く寝たい時に、YouTubeなどで雨の音を聞きながら寝る事が良くあります。
 雨は大切な資源ですし、個人的に大好きなので祝日に是非。そんな僕は撮影の時など、根っからの晴れ男です(笑)」

プロフィール

劇団「日穏-bion-(びおん)」

2008年旗揚げ。岩瀬顕子が企画・脚本・出演、たんじだいごが演出を担当するプロデュース劇団。今年で14年目を迎える。戦争や差別、介護問題など社会問題を背景に、笑えて泣けて心が温まる作品を上演している。

岩瀬顕子(いわせ・あきこ
栃木県出身。劇団「日穏-bion-」主宰。脚本・出演も手掛ける。「神奈川かもめ短編演劇祭」で俳優賞、戯曲賞を受賞。日穏公演以外にも人気劇団に客演、近年は国内外の映画やドラマにも出演している。主な出演作品に、映画『MINAMATA』(ジョニー・デップ主演)、映画『アースクエイクバード』(リドリー・スコット製作)。脚本家としては日穏作品の他、テレビ朝日『警視庁捜査一課9係』、『特捜9』、青年座公演『シェアの法則』などがある。

たんじだいご
福島県出身。役者としてテレビ、映画、舞台に出演する傍ら、演出家としても活躍中。俳優の潜在能力を引き出す繊細かつユニークな手法には定評があり、外部演出も多数手がけている。演技指導者としては、NPS(NHKプロモーション・アクターズ・ゼミナール)講師を2001年まで務め、現在はハリウッド映画プロデューサー兼キャスティングディレクター・奈良橋陽子氏主宰の「UPSアカデミー」で講師を務めている。

柴田理恵(しばた・りえ)
富山県出身。「劇団東京ヴォードヴィルショー」で活動後、佐藤正宏や久本雅美らとともに「WAHAHA本舗」を旗揚げし看板女優として舞台に立つ傍ら、映画やテレビドラマ、バラエティ番組などマルチに活躍中。映画『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』でハリウッドデビュー。舞台『淑女のロマンス』で第14回バッカーズ演劇奨励賞を受賞。近作にドラマ『ぬけまいる〜女三人伊勢参り』(NHK)、『ひよっこ』(NHK)などがある。

内浦純一(うちうら・じゅんいち)
富山県出身。仲代達矢主宰の「無名塾」を卒業後、映画、テレビ、CM、舞台、ラジオパーソナリティー、連載執筆など幅広く活躍中。地元富山でも活動している。チューリップテレビ「柴田理恵認定!ゆるゆる富山遺産」、富山テレビ放送「富山いかがdeSHOW」など。近作にセブンイレブンのCM、ドラマ『相棒』、ドラマ『家政夫のミタゾノ』などがある。

公演情報

日穏 -bion- 第15回公演
月虹の宿-げっこうのやど-』

日:2022年8月5日(金)~14日(日)
  ※他、宇都宮・富山公演あり。
場:シアターアルファ東京
料:一般4,800円 U-25[25歳以下]3,500円
  高校生以下2,500円
  ※U-25・高校生以下は前売にて劇団のみ取扱
   要身分証明書提示(全席指定・税込)
HP:http://bion.jp/
問:日穏
  mail:info@bion.jp

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