韓国・日本でヒットした映画を舞台化、あの事件を再び 「同じ分野の人間ではないからこそ、楽しく創作できる」

韓国・日本でヒットした映画を舞台化、あの事件を再び 「同じ分野の人間ではないからこそ、楽しく創作できる」

 連続殺人事件から15年後、時効成立後に「私が犯人です」と名乗る男が現れた……。韓国で大ヒットした映画『殺人の告白』が舞台化される。日本でも2017年に『22年目の告白~私が殺人犯です』のタイトルでリメイクされた人気作だ。
 脚本・演出は、同じ華城連続殺人事件がもとになった『私に会いに来て』(韓国映画『殺陣の追憶』の舞台版)も手掛けたヨリコ ジュン。自ら名乗りをあげた犯人イ・ドゥソク役はユナク、刑事チェ・ヒョング役は堂珍嘉邦がつとめる。演劇、音楽などさまざまな分野で活動する3人に、実在の事件に臨む思いを聞いた。

違うフィールドで活躍する者同士、アイデアを出し合って高めていきたい

──プロットを読んでいかがでしたか?

ユナク「今回、僕がずっと望んでいた”悪い役”を初めてやるんです。それだけで嬉しくて。堂珍さんとどうやって後半にかけての空気を持っていけるかという楽しみ半分、不安感半分という気持ちで読みました」

堂珍「なんだろうなぁ。『殺人の告白』の映画を観た時にエンディングが決して気持ちの良いものではなかったので、舞台では、観た人が腑に落ちるためにどこに主軸を持っていこうかと全力を注ぎたいです。まぁ腑に落ちなくてもいいとも思うんですけれど。
 あと、ヒョング役は、被害者の皆さんの気持ちを背負う重たさがあるなと思ったので、ちゃんと自分の中でプレッシャーが掛かってくるようにしたいです」

──脚本や演出のポイントは?

ヨリコ「この映画も大好きで、同じ事件をオマージュした『殺人の追憶』という舞台も前に演出させてもらいました。フィクションですが、本当の事件です。怖い物ものを見せるようなことではなく、なぜその人達がそうなってしまったかとかを描きたい。もちろん、犯人の気持ちを理解させようとは思っていません。今回は、悲惨な事件を起こした犯人に対する被害者の復讐や恨む気持ちは誰にでも起こりえるということや、家族を守るとはこういうことなんじゃないのとかいうことなどを、重点的に表現していきたいです」

──原作のどんな所に興味が惹かれたんですか?

ヨリコ「実際にあった事件の殺人鬼をヒーローにした映画もあると思うんです。殺人犯を美化して”殺人犯の気持ちもわからなくないよね”とする作品は多い。でもこれまで舞台化した『殺人の追憶』や『殺人の告白』はちゃんと被害者や遺族がどういう気持ちかを丁寧に描いている。そういう着眼点ですね」

──2人の配役に期待してることは?

ヨリコ「堂珍さんもユナクさんも俳優としてだけでない分野でも活躍してるので、ストレート(プレイ)に偏らずに見せられるんじゃないかなという期待は持っています。ユナクさんは自分で演出をされるので、役割の垣根を越えていけそうだと思っています。たとえば、3人が稽古場で『いや、こっちの方がカッコイイよね』と言い合いながら作れそうな気がするんですよ。まったく同じ分野の人間ではないからこそ、モチベーションやプライドがぶつかり合うことがなく楽しくできるんじゃないかな」

──ではお2人はどのようにこの作品に臨みたいですか?

堂珍「今回の舞台は特に、作っていく段階で正解もゴールもないという気がしています。結局、人と人なので、常にフラットに高めあっていければ嬉しいです。他に共演される方からもきっとヒリヒリする刺激を頂けると思いますから」

ユナク「この仕事は、新しい何かを作るクリエイティブなものですし、自分がどこまでできるのかも楽しみです。新しい環境での新しいスタッフさんとの仕事により勉強できる期待感もあるし、日本語での芝居では迷惑をかけないように頑張らなきゃと思っています。僕は昔から舞台俳優が夢だったので、すごく楽しみなんですよ。頑張ります」

互いにミュージカル『RENT』を経て、俳優として……

──実在の事件ということもあり、プライベートと役のバランスはどのようにとられますか?

堂珍「僕は日常にライトに取り入れて楽しんじゃうので、自然に任せていますね」

ユナク「僕は役に集中したいタイプなので、殺人事件やスリラー系の映画をずっと観ています。資料や本も読みます。そうやって自分の頭や身体にメモリーをしていく。前回、堂珍さんと共演した『RENT』でもニューヨークの映画をずっと観ていましたね」

──お互いのどんなところに役者として魅力を感じますか?

ユナク「堂珍さんの芝居は、その日の環境、周りに合わせて毎日違う何かを必ず表現してくれる。すごくLIVE感があるんですよ。”あ、こういう表現できるんだ”とか”ここでこういう芝居ができる”ということは、『RENT』の時にすごいなとずっと思っていたんです」

堂珍「ありがとうございます。ユナクのお芝居は『RENT』しか観たことがなくて、一本気な情熱を感じました。でもアーティストとしてステージの上でパフォーマンスしているユナクから読み取ることと、実は、いろんな役になれるんだなぁと思っています」

──さまざまなジャンルで活動されていますが、ものを作ることにおいて変わらない信念や心持ちはありますか?

堂珍「自分で言うのもアレですけど……向上心かな。少しでも良くしたい。本番が始まってからも」

ユナク「僕は、なぜ舞台が大好きなのかというと、稽古から始まる数ヶ月間は自分がすごくピュアになるな~という気持ちがあるからなんですよ。新しい人生を過ごしている感じ。ユナクじゃなくて、今回ならドゥソクとして生きられるのがすごく良い。そして、ステージや、楽屋や、稽古場にいる自分や、そこでの雰囲気がすごく好きなんです」

──最後に、舞台を楽しみにしている方々にメッセージをお願いします。

ユナク「日本でも韓国でも映画化されて、多くの方に知られている作品の中で、僕が演じるイ・ドゥソクはすごく大きな役割を背負っています。『殺人の告白』という作品を楽しみにして来てくれたお客さんをガッカリさせないように全力で作り上げたい。だから、ぜひ観に来て下さい。1回だけでなく、3回も4回も観たいなと思われる作品にしたいです」

堂珍「タイトルにもあるように『殺人』というキーワードは揺るぎない。舞台の中で本当に起きているように見せたいです。いろんな人のそれぞれの背景があるお話なので、それぞれの目線を意識していただくと楽しいかもしれませんし。感情と感情がすごくぶつかることが想定されると思いますので、エネルギッシュなものを楽しみに来ていただけたらいいかなと思います」

ヨリコ「原作も素晴らしいですし、堂珍さんユナクさんを筆頭に出演者の皆さんにはいろんなジャンルの魅力的な方々が集結してくださったことも見所です。僕は作り手としては毎回120%の力でやっていて、今回もそれに劣らないように、“お金を払って観に来て良かったな”と思ってもらえるものを作りたい。そこは大前提として必ずクリアするように作りたいです」

(取材・文:河野桃子)

プロフィール

ユナク(ゆなく)
1984年12月2日生まれ。韓国・ソウル出身。6人組アイドルグループ超新星のリーダー。ダンス&ボーカルグループ・SUPERNOVAメンバー。2009年に日本メジャーデビュー。舞台出演は『あなたの初恋探します』、ミュージカル『RENT』、『プリシラ』、『花・虞美人』、『インタビュー』、『I LOVE YOU, YOU’RE PERFECT, NOW CHANGE』、『すべての瞬間は君だった』などに出演。ほか、映画『無花果の森』、『この世の果て』、ドラマ『恋するキムチ』、『バウンサー』(主演)などにも出演。

堂珍嘉邦(どうちん・よしくに)
1978年11月17日生まれ。広島県出身。2001年にCHEMISTRYとしてデビュー。2012年より本格的にソロ・アーティストとしてのキャリアをスタート。ライブだけでなく、俳優、ラジオMCなど広く活動。舞台出演はミュージカル『アナスタシア』、『RENT』、『ヴェローナの二紳士』、音楽劇『醒めながら見る夢』など。ほか、映画『空母いぶき』、『劇場版仮面ライダーエグゼイド トゥルー・エンディング』、『醒めながら見る夢』、『真夏のオリオン』に出演。

ヨリコ ジュン(よりこ・じゅん)
1973年1月22日生まれ。東京都出身。演出家・脚本家・映像作家・映画監督。1988年より劇団を創立し演出・脚本・音楽・美術を手掛ける。2011年より『銀河英雄伝説』シリーズの脚本・演出・映像を担当。舞台は、ジョン・キャメロン・ミッチェル主演『HEADWIG AND THE ANGRY INCH「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」SPECIAL SHOW』のほか、『ファウスト~最後の聖戦~』、『BIOHAZARD THE STAGE』、斬劇『戦国BASARA』シリーズ、『私に会いに来て』(韓国映画『殺陣の追憶』の舞台化)などがある。

公演情報

舞台「殺人の告白」

日:2022年6月17日 (金) ~26日 (日)
場:サンシャイン劇場
料:9,900円(全席指定・税込)
HP:http://s-kokuhaku-stage.com/
問:サンライズプロモーション東京 
  tel.0570-00-3337(平日12:00~15:00)

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