【稽古場レポート】振り付けなどを一新 音楽座ミュージカル『リトルプリンス』

【稽古場レポート】振り付けなどを一新 音楽座ミュージカル『リトルプリンス』

1993年にアントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの『星の王子さま』を原作としたオリジナルミュージカルを創作し、世界で唯一の独占ミュージカル化権を取得して上演し続けてきた音楽座ミュージカル『リトルプリンス』
2025年、原作のフランス語版出版から80年を記念し、「リトルプリンスイヤー」として、全国で本作を上演する。
初演から2017年までに11回の再演を行い、2022年は東宝にライセンスを貸与して上演された本作。本家・音楽座ミュージカルとして8年ぶりとなる今回は、振り付けや装置を一新し、セリフなども改訂を加えたリニューアル公演となっている。
公演まで約1ヶ月のタイミングで、王子を山西菜音、キツネを小林啓也が演じる稽古場の取材を行った。


まず目を引くのは、稽古場に設置された大掛かりなセットと、すでに衣装をつけている一部キャストの華やかさ。衣装は舞台上での見え方を確認するための段階で完成系ではないが、ダンスの力強さやしなやかさが衣装によってさらにわかりやすくなり、作品の世界観が広がっている。本番仕様の衣装は、よりファンタジックでイキイキとしたキャラクター達を見せてくれることだろう。
そして、いざ物語が始まると、シンプルないでたちの王子や飛行士の姿が鮮やかに浮き上がってくる。

どこか物憂げな雰囲気を漂わせている飛行士と、天真爛漫で好奇心に満ちた王子。王子が旅の中で多くの人や動植物と出会い、さまざまな考え方や価値観に触れて大きく成長していく様子が眩しい。山西の溌剌とした笑顔、素直であどけない雰囲気のある表情や声に、見ているこちらも自然と笑顔になってしまう。

また、おとなにとっての“普通”が通用しない王子に振り回されながらも交流を深め、「たいせつなこと」を思い出していく飛行士の姿も胸を打つ。安中はおとならしさと面倒見の良い兄のようなあたたかさを両立させ、物語と観る者の橋渡しをしてくれる。

王子が星に残してきた「花」は、品のある言動と歌声が原作のイメージにぴったり。褒められた時、王子を困らせている時など、ちょっとした表情の変化から言葉の裏にある本心が伝わってくる。だからこそ、ちょっぴり鈍い王子とのすれ違いが切なく、花のわがままがいじらしく見えて愛おしい。


そして、王子が地球で出会うキツネは、動きも表情も非常にチャーミング。星に残してきたのは世界で自分だけが持っている特別な「花」ではなかったと悲しむ王子がキツネと知り合い、一緒に過ごす中で友達になり、「たくさんの中の一人」が「かけがえのない特別な一人」になっていく様子は、ユーモアに満ちていて楽しいと同時にグッとくるシーンとなっている。

他にも、王子が星に帰る手伝いを申し出るヘビ、王子の旅を助けてくれる渡り鳥たち、旅の中で出会う王様、呑み助、実業屋、点灯夫、地理学者、成長の早いバオバブの木や砂漠に咲く花など、個性的なキャラクターたちが次々と登場する。

全員が歌って踊る作品の中でも一際しなやかな動きで怪しく妖艶な魅力を放つヘビ、衣装も相まって空気の流れや空を飛ぶ心地よさを感じさせる渡り鳥たち、荒々しい迫力を見せるバオバブや砂、いい香りが漂ってきそうなカラフルな花たちなど、多彩なダンスも大きな見どころだ。

中央の装置がぐるぐると回転し、大地になったり王座や飛行機になったりと、シーンごとに全く違う表情を見せてくれるのも楽しい。衣装や照明が加わったらどれだけ幻想的な光景になるのだろうかと想像力を刺激された。

そして、忘れてはいけないのが魅力的な楽曲たち。原作の印象的な言葉・シーンがどこかノスタルジックで美しい音楽に乗り、音楽座ミュージカルらしい厚みのあるハーモニーで奏でられる。
サン=テグジュペリが紡いだ言葉を伸びやかな声で届ける王子、凛とした中に繊細さを感じさせる花、飛行士の柔らかくも力強い歌声、おちゃめであたたかい歌を聴かせるキツネなど、それぞれのナンバーが印象深く耳に残る。王子が旅の中で出会う人たちが歌う楽曲など、ユニークなナンバーもいいアクセントとなっていた。

キャストの好演やユーモラスな芝居には笑い声も上がり、いい雰囲気で進んでいたこの日の稽古。現段階で非常に見応えがあったが、休憩中にはキャスト・スタッフが意見を出し合い、より良いものを作り上げようと模索している様子が印象的だった。初めて観る方はもちろん、これまで本作を愛してきた方も楽しめる公演になることだろう。本番までの稽古で新たな『リトルプリンス』がどこまで深まっていくのかワクワクが止まらない。

<公演概要>

原作:アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ『星の王子さま』
脚本・演出:相川タロー・ワームホールプロジェクト
音楽:高田 浩・金子浩介・山口琇也
振付:KAORIalive

美術:久保田悠人
衣裳:朝倉 摂・原 まさみ
ヘアメイク:川村和枝
照明:渡邉雄太
音楽監督:高田 浩
音響:小幡亨
歌唱指導:桑原英明
 
メインビジュアル:ニコラ・ド・クレシー
ロゴデザイン:高橋信雅

文化芸術パートナー:町田市

協力:一般財団法人草月会・草月文化事業株式会社(東京公演)

製作著作・主催:ヒューマンデザイン

オリジナルプロダクション
総指揮:相川レイ子
脚本・演出:ワームホールプロジェクト
音楽:高田 浩・金子浩介・山口琇也

■ホームタウン公演 町田市民ホール
2025年5月24日(土)13:30 (完売)

■東京公演 草月ホール
2025年6月
6日(金)
19:00 音楽座メイトプライム限定イベント
7日(土)
12:00 (完売) 吹奏楽コンサート
16:30 サタデーナイトフィーバー
8日(日)
11:00 吹奏楽コンサート
16:00 スペシャルカーテンコール
9日(月)14:00 (完売)〈高校生の団体有〉
10日(火) 休演
11日(水)
10:00〈中学生の団体有〉
14:00〈中学生の団体有〉
12日(木)13:00〈中学生の団体有〉
13日(金)
11:00 (完売) 配信用舞台映像収録見学会
19:00 バックステージツアー
14日(土)
12:00 配信用舞台映像収録・劇場版メイトイベント
16:30 スペシャルカーテンコール
15日(日)貸切
SS席 13,200円(6月9日(月)・6月11日(水)・6月12日(木)のみ 12,100円)

<音楽座メイトプライム会員限定価格 9,900円 >
S席 12,100円 (6月9日(月)・6月11日(水)・6月12日(木)のみ 11,000円)
A席 7,700円 U-25席 1,100円
※U-25席:ご観劇当日25歳以下の方に限ります。
舞台の一部が見えづらい可能性があり、場面によってはご覧になりにくい場合もございます。会場にて身分証の確認をさせていただく場合がございます。

■大阪公演
梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
2025年
7月20日(日) 13:00 (完売) 吹奏楽コンサート
7月21日(月・祝) 貸切

SS席 11,000円<音楽座メイトプライム会員限定価格 8,800円 >
S席 9,900円 A席 6,600円
※全公演とも、全席指定・税込。 ※5歳未満のお子様の入場はご遠慮ください。
※開場時間は開演の40分前を予定しています。
※車椅子での観劇、介助犬を伴っての観劇など対応しております。チケットご購入前に公式サイトお問合せフォームよりご連絡ください。

■名古屋公演
日時:2025年10月3日(金)開演時間未定 
会場:Niterra日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール

■広島公演
日時:2025年11月29日(土)
11:00開演/16:00開演
会場:はつかいち文化ホール ウッドワンさくらぴあ 大ホール

共催:
東京町田ライオンズクラブ(ホームタウン公演)
(公財)廿日市市芸術文化振興事業団(広島公演)
後援:
町田市教育委員会 株式会社タウンニュース社 武相新聞社
(ホームタウン公演)
廿日市市・廿日市市教育委員会・廿日市商工会議所(広島公演)

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