【公演レポート】演劇の新しい形を 舞台『テイラー・バートン』

【公演レポート】演劇の新しい形を 舞台『テイラー・バートン』

西野亮廣の作・演出、宮迫博之主演による注目の舞台『テイラー・バートン』が、幕を開けた。

豪華な出演者、作り込まれた舞台美術、圧倒的な音響・照明にも関わらず、この公演は7月29日(土)・30日(日)の2日間しか上演されない。

西野亮廣は、「またコロナのような感染症が蔓延する可能性がゼロではないから」「キャストの高齢化が進んでいるから」の2つの理由で公演日数を2日間にしたという。

コロナによって公演中止のリスクや製作費用が高まった現在、チケット代の高騰や舞台美術の簡素化など、日本の演劇シーンは様々な問題を抱えている。

今公演は、「クラウドファンディング」や「VIP席販売」「舞台の衣装や小道具の販売」「制作過程をYouTubeで発信」など、様々なアプローチで演劇の新しい雛形を作ることを目指して上演される。

【STORY】

怪盗13号の手によってシカゴ美術館から盗み出されたお宝「テイラー・バートン」は、おとぎ町3丁目を根城に暗躍するマフィアの地下アジトにあった。

情報をききつけたFBIが総力を上げて「テイラー・バートン」の奪回を試みるも、ボスの愛犬・サリーのせいで事態は泥試合へ。

マフィアとFBIと超能力者と掃除のオッサンとバカ犬による史上最悪の宝石争奪戦!最後に笑うのは誰だ?

真っ赤なアジトとブルーダイヤモンド

劇場は東京キネマ倶楽部。

かつてのグランドキャバレーを改装して作られた東京キネマ倶楽部は今回の『テイラー・バートン』にうってつけで、佐藤央一の細部まで作り込まれた舞台美術、劇場に一歩入ったときから真っ赤に染まる圧倒的な空間を生み出す井實博昭・澤邊将志の照明、作品を彩り盛り上げる小林祐介の音響により、東京キネマ倶楽部に、おとぎ町3丁目を根城に暗躍するマフィアの地下アジトが作り出される。

真っ赤にライトアップされたステージの上には、マフィアのボス(ホイコーロー)が描かれた肖像画や、大きなケージに囲まれた可愛らしい犬が鎮座している。

物語は、マフィアの地下アジトで始まり、完結するワンシチュエーションコメディ。

一輪の真っ赤な薔薇だけを残して去っていく“怪盗13号”により、シカゴ美術館から盗まれたとされるブルーダイヤモンド「テイラー・バートン」。

実はこの「テイラー・バートン」を盗み出したのは、“怪盗13号” を犯人と見せかけた、マフィアの一味である西野宮迫の仕業であった。

そう、西野も宮迫も、この後に出てくる木下隆行と阿部よしつぐも、戸田恵子以外はほぼ“本人役”として出演している。

宮迫と西野の2人によるスピーディーな展開と、軽快な会話が繰り広げる序盤は「一体どこまでが脚本でどこまでがアドリブなんだろう」という気持ちになるかもしれない。

宮迫は、コミカルなシーンでは客席を盛り上げたと思いきや、一瞬で移り変わるシリアスなシーンで客席を惹きつけるなど、舞台上で輝き、その空間を掌握する。
客席を前にしたときに発揮するエンターテイナー宮迫博之の真骨頂を見たかもしれない。

宮迫と共に行動する西野は、宮迫のアドリブとも思えるようなセリフに瞬時に返し、舞台のテンポを作りつつ、状況説明や次の展開を生み出すことで、舞台を客席を繋ぎ、この世界へ会場の誰も置いていかない。

20代からエンタメの最前線で活躍し、現在でも劇場や講演会で客前に立ち続ける西野亮廣。
宮迫と西野の共演だけでも、この作品の成功が約束されていたのかもしれない。

そんな中、散らかった部屋を片付けるため掃除屋の木下がやってくる。
西野と宮迫は、自分のペースで話をすすめていく彼にいつしかペースを持っていかれる。
そうこうしているうちに、なんと木下がボスの愛犬を逃がしてしまうのだ。

愛犬を逃がすなんて、このままではボスに殺される――
焦る西野と宮迫に木下は提案する。

「“怪盗13号”の仕業にしませんか?」

いやいやそんなわけにはいかないだろうということで、超能力者の阿部よしつぐを呼び出してみたり、情報を拡散してもらうために人気歌手・子門まさ子(演・戸田恵子)を誘拐する計画を企てたり……!?

なんか周りと合わない・会話が嚙み合わない、とぼけた顔をする木下は、緊張した地下のアジトの空間に緩和をもたらし、これが芸人かと再認識するほど会場を笑いに包み込む。

阿部よしつぐは、この並々ならぬ出演者に囲まれながらも、前説から客席を盛り上げ、物語を引き締め、そしてみんなの期待を裏切る、ストーリー中でも重要な価値を担い、強く印象に残った。

そして、なんといっても戸田恵子は、フォロワー50万人を抱える人気歌手・子門まさ子に抜群の説得力をもたせ、舞台上を煌びやかにしつつも、軽微な行動へも目を引きつけ、観客の想像を膨らませる。

子門まさ子が登場してからのラスト30分は、騙し合い・裏切り合いの怒涛のストーリー。
誰が最後にこのブルーダイヤモンド「テイラー・バートン」を手に入れるのか……….

これまでも上演されている舞台『テイラー・バートン』のストーリーが面白いことは確約済みだが、ここまで脚本が輝くことに、出演者はもちろん、演出家・西野亮廣も発揮されていた。

会場チケットは完売しているが、通常公演とは別途撮影日を設け、カメラ12台で撮影したというこだわり抜いた配信で、この舞台『テイラー・バートン』の世界を余すことなく楽しんでほしい。

(文:カンフェティ、取材・撮影:通崎千穂)

舞台「テイラー・バートン」

撮影・映像編集にこだわった配信でしかみられない映像をお届けします。

宮迫博之・木下隆行・西野亮廣が3人で繰り広げるぶっちゃけトーク動画(特典映像)と共にお楽しみください。

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【配信期間】
08/01 (火) 13:00 – 09/30 (土) 23:59

【登場人物】
宮迫博之
木下隆行
戸田恵子
阿部よしつぐ
西野亮廣

【スタッフ】
脚本・演出    西野亮廣
演出助手     MOEKO
照明演出     井實博昭
照明       澤邊将志
舞台美術     佐藤央一
音響       小林祐介
衣装       株式会社tatanca
小道具      篠川理湖
大道具      俳優座劇場
配信撮影     上田雄太・田村ぴーまん
舞台監督     吉川亮
メインビジュアル かんかん
HP制作      株式会社Saveebo
制作       横田裕久、うりうたまこ
プロデューサー  笠井あかね

主催・製作   Chimney Town USA, Inc.

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