【開幕記念会見レポート】「みんなで帝劇を愛しつくして、抱きしめつくしてお別れしたい」現帝国劇場ファイナル公演CONCERT『THE BEST New HISTORY COMING』

【開幕記念会見レポート】「みんなで帝劇を愛しつくして、抱きしめつくしてお別れしたい」現帝国劇場ファイナル公演CONCERT『THE BEST New HISTORY COMING』

2025年3月から建替えの為の休館に入る、帝国劇場ファイナル公演CONCERT『THE BEST New HISTORY COMING』が、2月14日開幕した(28日まで)。

1966の開場以来、娯楽の殿堂として君臨し続けた現・帝国劇場で上演された作品は372作品(再演を除く)。その中でも、現帝劇の歴史の後半を大きく彩り続け「日本式ロングラン」とも呼ばれて、再演を重ね続け、熟成を続けた53のミュージカル作品の全てが披露されるこのコンサートは、A ~Gまでのプログラムに帝劇の歴史を彩ったレジェンド級のゲストコーナーを含め、構成・演出を山田和也、音楽監督・指揮を塩田明弘が担当する、まさに現帝劇を送るに相応しい豪華公演となっている。

そんな公演の全日程に出演する井上芳雄、浦井健治、小野田龍之介、甲斐翔真、佐藤隆紀、島田歌穂、三浦宏規、宮野真守が、15日昼公演を控えたやはり現帝劇と共にその役目を終える、帝劇ビル9階稽古場で、開幕記念会見を開き公演への想いを語った。

──初日を開けてのお気持ちをひと言ずつお願いします。

井上「稽古中からすべてのことに『これでいまの帝劇最後だな』という想いでいます。昨日の初日も帝劇の初日としては最後で、本当に考え出すと色々な想いがあるのですが、とにかくお客様に楽しんでいただくことと、お客様と帝劇への想いを分かち合うことができる公演になっているのではないかと。もちろん盛り上がってくださっているのですが、ただワーッと盛り上がるだけではなくて、皆様それぞれ噛みしめながら観てくださっているなという気がしました。あとはとにかく毎回色々なゲストも来てくださいますし、これはもう“祭り”だなと。帝劇最後の祭りを2週間楽しみたいと思います」

浦井「昨日終演後に手締めと言いますか、ご挨拶が上の方からあったのですが、いつも初日の後に感動的なことをおっしゃってくださるのですが、その方が目の前で涙を流しながらご挨拶をされて。『これで帝国劇場は悲しいけれども次に向かう、という気持ちでまた挑んでいきたい』というお言葉をいただきました。そのことも含めてスタッフさんたちの存在が尊くて、人生を賭けているんだなと改めて感じました」

井上「手締めはしなかったよね?」

浦井「あ、手締めはしませんでした(笑)」

井上「びっくりしたいま、電波の前で嘘つくのかなって(爆笑)。手締めはしてません(全員笑)」

宮野「ナンバーの数もすごく多い公演なのですが、それにはやっぱり帝劇の歴史を感じますし、錚々たる皆さんが出演しているなか、僕は比較的新参者と言うか、“帝劇新世代俳優”なので」

井上「世代は僕たちと同じじゃない?(笑)」

宮野「いえ“新世代俳優”です、41歳なんですけど!(笑)その歴史的瞬間に僕もご一緒させていただけたことがすごく光栄でしたし、こんな格式ある場所でコール&レスポンスをやって、伝説を残してしまったかなと(笑)」

井上「今日もやるんですか?」

宮野「演出家の方に怒られると思いましたが『もっとやって下さい』と言われたので」

井上「おぉ~」

宮野「楽しい空気のなか、コンサートを盛り上げていきたいと思っています」

小野田「ただただ胸アツでございます。本当に次の時代に向かったコンサートだなと思うのと同時に、ひとつの大きなミュージカル史の区切りなのかなとも正直感じます。そういったものをしっかりと日々、ゲスト、スタッフ、オーケストラの皆様と噛みしめながら、そしてお客様と分かち合いながら、楽しく、そして次の時代に思いを馳せながら進んでいきたいと思います」

井上「龍之介は(現帝劇の)確か、開場時から出てるものね」

小野田「出てないわ!」

井上「60年前からだよね?(笑)」

小野田「いやいや、だからなんで僕は一生“新世代俳優”と呼ばれないのかと!(全員爆笑)、ずっと中堅俳優って……まだ33歳の若手俳優なのでよろしくお願いします(笑)」

三浦「すべてが豪華過ぎて、出演者の皆様もセットもお衣裳も音楽も。自分も出演しているんですけれども、袖からお客さんとして観ていると、本当に集大成を飾るコンサートなんだなぁと思って、一ファンとしてこのコンサートを楽しんでおります」

井上「一番苦労しているシーンはどうでした?どことは言えないんですけどね、大先輩とのシーンがね」

三浦「大先輩と組んで踊るシーンがあるんです」

井上「それどういう風に?」

三浦「何回も芳雄さんに相談させていただいたのですが、僕の気持ちとしてはとにかく『絶対に衣装の裾を踏まない』(全員拍手や笑い)。これ以上ないくらいすり足でやっています」

甲斐「“新世代俳優”としては……」

三浦「自分で言う?(笑)」

井上「ありがとう、それ言いたかった」

甲斐「(ツッコんでくれて)ありがとう。大先輩方に囲まれてご一緒できるのが本当に光栄で嬉しいことで、このコンサートをしていると歴史をすごく勉強できますし、(作品の)初演キャストの方々もたくさんいらっしゃいますので、これから僕が20年、30年、40年経った時に、そういった存在になれているのかな?と、日々背筋が伸びるような気持ちでやらせていただいています。僕も帝劇が新しくなった時には第一線でやれるように頑張ります」

井上「いい決意だね!」

佐藤「僕のなかでは帝国劇場はミュージカルのイメージがすごく強かったのですが、演出のなかでミュージカル以前のお芝居を感じる瞬間がたくさんあって、本当に歴史ある場所なんだなと改めて感じることがきるコンサートを熱い想いでお届けします。ただ、歌でずっとやってきた僕が、最後の最後でゼロ番(舞台のセンター位置)で踊りを踊っているのが、本当に申し訳ない気持ちなのですが、びっくりするほど練習したので、その姿も楽しんでいただきたいです」

島田「大切な大切なステージにこうして立たせていただけることが本当に夢のようで、全日程キャストのこの素晴らしい男性陣のなか、ちょっと“旧世代”の私が全日程を出させていただくので……」

井上「いやいや、皆さんが待っていらっしゃいます」

島田「とにかく体調に気をつけて頑張りたいと思います。皆さんおっしゃっていましたが、今回このコンサートを通じて、帝劇の知らなかったことをたくさん知ることができたんです。また後半の方で今の帝劇から次の帝劇へという場面があって、私はそこで毎回ウルウルしちゃうんです。感謝と未来への希望を胸に頑張ります!」

井上「歌穂さん恐縮されていますけれども、歌穂さんが歌われる『レ・ミゼラブル』の名曲は、本当に1幕の核と言うものなので」

島田「プレッシャーが…」

井上「これくらいにしますが(笑)、こちらも素晴らしい見どころだと思います」

──幅広い世代のキャストの方々が集結された稽古場の雰囲気はいかがでしたか?

井上「本当に気を遣いまくりながらね(全員爆笑)、僕や浦井くんが中間くらいで、上も知っているし下も知っている“中間管理職”的な気の遣い方をして(笑)。下の世代は……」

三浦「隅っこで消えそうになっていて(笑)四隅で!」

井上「(島田に)で、レジェンド世代は……」

島田「いえ、私にとっても先輩もいらっしゃるので!」

井上「そうですよね」

島田「だから私もわりと大人しくしていましたよ(笑)」

井上「宮野さんはどんな雰囲気でした?」

宮野「僕は比較的『はじめまして』の方が多かったのですが、隣に座ったのが自分のことを『シュガー(佐藤の愛称)って呼んでください』と急に言う変な人で(爆笑)」

浦井「急に(笑)」

宮野「その容貌で年下だったんで…」

三浦「すごく年齢のこと気にしてますね!(笑)」

宮野「結構カルチャーショックだったんですけど(笑)とても仲良くなれました」

島田「ずっと笑ってましたよね」

佐藤「本当に稽古場では二人で仲良くさせていただいたんですけど、それはやっぱり芳雄さんがいらしてくれるから」

浦井「そうね」

佐藤「芳雄さんがおだやかに見守ってくれる稽古場だからこそ、自由に楽しくやれたので」

井上「それぞれ知らなかった人もいたなか、稽古や舞台稽古を通じて絆が生まれてね」

島田「皆さんと出会えたから」

井上「そうそう、だから最後までいい思い出はできるんだなと。気は遣いますけど(笑)すごくハッピーな稽古場でした」

──最後に井上さんからメッセージを。

井上「30分くらいもらっていいですか?(笑)とにかく帝劇への想いは増すばかりと言うか、どの場所も愛おしいですし、昨日もラジオ番組で(堂本)光一くんと(上白石)萌音ちゃんとご一緒しましたが、この稽古場自体ももう使われることはないですし」

浦井「そうですね」

井上「男性更衣室の扉には、ドアノブの代わりにひもなんですが(笑)、それすら愛おしい、全てが愛おしい日々で。でも僕たちは28日まで毎日出させていただくので、帝劇とのお別れはしっかりできる、すごくありがたい立場にたまたま立たせていただいて。その都度ゲストもいらしてくださいますし、今回はいらっしゃれないけれども、帝劇に強い想いを持っている方がたくさんおられると思います。何よりもお客様お一人おひとりに思い出がおありと思いますので、劇場にいらしてくれた皆様とは本当に分かち合いたいですし、そうでなくても配信やライブビューイングや特別番組など色々ございますので、これは本当に日本の演劇界にとっては寂しいけれども、大きな節目でもあるので、最後まで感謝の気持ちを込めながら、みんなで帝劇を愛しつくして、抱きしめつくしてお別れしたいなと思っておりますので、28日までどうぞ同じ気持ちでよろしくお願い致します」

 開演を控えたタイミングでの会見にもかかわらず、全日程キャスト一同は明るく和気藹々。全員が帝国劇場を、そして多くの思い出と汗が染み込んだ9階稽古場を愛おしく感じている想いがひしひしと伝わる。

このメンバーを筆頭に公演に関わる人々、そして帝劇を愛したすべての人々の想いが、壮大な送別会とも言うべきコンサートから、新たな帝劇へと未来に橋をかけていく様が、寂しさのなかからも力強く実感できる時間だった。

(取材・文・撮影:橘涼香)

CONCERT『THE BEST New HISTORY COMING』

公演期間:2025年2月14日(金)〜28日(金)
会場:東京都 帝国劇場

構成・演出:山田和也
音楽監督・指揮:塩田明弘

出演
★レギュラーキャスト(全日程)
井上芳雄 / 浦井健治 / 小野田龍之介 / 甲斐翔真 / 佐藤隆紀(LE VELVETS) / 島田歌穂 / 三浦宏規 / 宮野真守
★レギュラーキャスト(A・B・Cプログラム)
生田絵梨花(A・Bのみ) / 木下晴香(Cのみ) / 昆夏美 / 涼風真世 / 平野綾 / 森公美子
★レギュラーキャスト(D・E・F・Gプログラム)
一路真輝 / 木下晴香 / 瀬奈じゅん / 花總まり / 屋比久知奈

★ゲスト
Aプログラム:鹿賀丈史 / 大地真央 / 松たか子
Bプログラム:石丸幹二 / 加藤和樹 / 平原綾香 / 吉原光夫
Cプログラム:伊礼彼方 / 駒田一 / 保坂知寿 / 松下優也 / 山口祐一郎
Dプログラム:朝夏まなと / 和音美桜 / 中川晃教 / 山崎育三郎
Eプログラム:石川禅 / 城田優 / 堂本光一 / 前田美波里
Fプログラム:石井一孝 / 上白石萌音 / 別所哲也 / 新妻聖子(25日のみ) / 望海風斗(25日のみ) / 有澤樟太郎(26日のみ) / 海宝直人(26日のみ) / 濱田めぐみ(26日のみ) / 愛希れいか(26日のみ)
Gプログラム:市村正親 / 今井清隆 / 鳳蘭 / 笹本玲奈 / 田代万里生

【ライブ配信】
15日、17日、19日、22日、24日、26日18:00開演回、28日13:00開演回(千穐楽)
【ライブビューイング】
28日13:00開演回 全国映画館

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