『萌え×暴力』禁断の舞台化!
『ウマ娘 プリティーダービー』で知られるCygamesと『花咲くいろは』『Buddy Daddies』など“お仕事”をフィーチャリングしたアニメに定評があるP.A.WORKSがタッグを組んで制作したオリジナルTVアニメ『アキバ冥途戦争』が舞台化。9月10日まで銀座・博品館劇場にて上演されている。
STORY
1999年、和平なごみは、憧れのメイドになる為に秋葉原にあるメイド喫茶「とんとことん」で働き始めるが、メイドの世界は殺るか殺られるかの世界であった。
メイド同士の抗争にドキドキしながらも、少しずつメイドの仕事に慣れて来たなごみ。
同室の万年嵐子(36才)とも少しずつ打ち解けつつあった。
そんなある日、なごみが福引で大阪団体旅行を当てる。
勝手に秋葉原を出る事が許されない「とんとことん」一同は半ばあきらめかけるが、ルールに納得のいかないなごみは、「とんとことん」に置手紙をし、たこ焼きを求め大阪に。
なごみの大阪行きが取り立て屋にバレた為、大事になる前になごみを連れ戻しに大阪に向かう「とんとことん」一同、
しかし、大阪の日本橋にもメイドの一大勢力があったのである・・・・・。
ペンライトと二丁拳銃を振り回す!?
“メイドカフェ” で繰り広げられる萌え萌えキュンな舞台……かと思いきや、なんとも暴力的なメイド同士の抗争。歌って踊る可憐なメイド風景の傍ら、拳銃を振り回し血飛沫が舞う、異次元な世界が繰り広げられる舞台である。
秋葉原を飛び出したメイドカフェ「とんとことん」一同が、大阪・日本橋のメイドと抗争を繰り広げるお仕事奮闘記、舞台『アキバ冥途戦争』は、おそらく観客の想像を超え、目の前で繰り広げられる世界感とストーリーに度肝を抜かれることだろう。
“可愛いメイドさん”に憧れて秋葉原にやってきた主人公・和平なごみを演じるのは佐藤日向。
元気いっぱいでピュアななごみを全身全霊で演じる姿はとても健気で、秋葉原がどんなに暴力に染まっても、メイドが銃をぶっ放す存在であることが当たり前の世界であっても、純粋に“可愛いメイドさん”に憧れるなごみの存在がこの作品の軸であることを感じさせられた。
一方で、全く表情を崩すことがないクールなベテランメイド・万年嵐子を演じるのは野本ほたる。
嵐子が抱える過去が、よりこの抗争を白熱とさせ、キレのあるアクション・鋭い眼差しで空間を圧倒しすることで、より舞台『アキバ冥途戦争』の世界観を支えている。
そんな彼女らが所属しているメイドカフェ「とんとことん」には他にも個性豊かなメイドがいる。
ぶりっこ実力派メイドのゆめち(演・長澤茉里奈)の萌え萌えな歌に合わせて、ギャルメイドのしぃぽん(演・橋本梨菜)、ロシア出身メイドのゾーヤ(演・護あさな)が踊り、嵐子がなごみを守りながら二丁拳銃をサイリウムのごとく振り回すというオープニングは、「ああ、これが実写で見る『アキバ冥途戦争』か!!!!」という高揚感があり、この舞台の見どころの一つである。
そしてもう1人、……いや1匹?謎のパンダ・御徒町さん(演・森田眞礼)も「とんとことん」のメンバーだ。
舞台が初見の方は何が何だか分からないと思うが、従業員のパンダである(?)。所々で愛らしい動作を見せてくれる御徒町さんはこの舞台の癒しでもあった。
さらに、そんな「とんとことん」のダメ店長を演じるのは鳥居みゆき。
本人の作風としてもお馴染みの激しい顔芸と大きな声を生かし、今作のコメディエンヌとして文字通りの体当たりで作品を盛り上げる。
作中で一体何回土下座をしているか数えておけばよかったかもしれない。彼女の存在なくしては今回の舞台化はありえなかったのではないかというほどの存在感であった。
店長が土下座で謝る先にいるのは「とんとことん」が所属する「ケダモノランドグループ」の取り立て屋(演・反橋宗一郎)。
見た目こそ秋葉原の古き良きオタクスタイルだが、眼光の鋭さと緊迫感も相まって、めちゃくちゃ怖い。だがそんな取り立て屋がコメディパートで活躍するシーンも途中途中で挟み込まれるので、ぜひお見逃しなく。
さらに今作では、アニメでは登場しない大阪のメイドたちが登場する。
福引で大阪旅行を当てたなごみは、皆の反対を押し切って単身大阪へ。道に迷ったなごみを助けてくれたのはメイドカフェ「たこたこはっちゃん」の姉御肌メイド・虎飼キズナ(演・古賀成美)だった。
さらに「たこたこはっちゃん」が所属する「ポセイドングループ」の会長・富美代(演・上西恵)も貫禄たっぷりで登場する。
元NMB48の2人のコテコテの関西弁がなんとも耳心地がよく、素晴らしいキャスティングだと感じた。
偶然か必然か、なごみが出会ったキズナ、そして富美代には、どうやら嵐子と切っても切れぬ縁があるようで……?
舞台「アキバ冥途戦争 ~浪速喰い倒れ狂騒曲~」、アクションシーンや歌パートなど、派手で盛り上がるエンタメ要素が盛りだくさんではあるが、それぞれの登場人物の過去や葛藤など、丁寧に描かれる人物描写が、よりこの作品に現実感をもたせ、本当にこんなメイドの世界があるかも……と思わせる。
途中で挟まれる歌パートでは観客もペンライトを振ってメイドさんたちを応援でき、ロビーでは秋葉原のメイドカフェ『リリアンプリアン』に在籍する、本物のメイドさんが出迎えてくれる。
ぜひ劇場で “萌え×暴力” の中毒性を肌で感じてほしい。
文:通崎千穂(SrotaStage)
舞台『アキバ冥途戦争』~浪速喰い倒れ狂騒曲~
日:2023年9月6日(水)~10日(日)
場:博品館劇場
料:SS席[グッズ付]12,800円
S席9,800円(全席指定・税込)
脚本・演出
川尻恵太(SUGARBOY)
出演
和平なごみ:佐藤日向
万年嵐子:野本ほたる
ゆめち:長澤茉里奈
しぃぽん:橋本梨菜
ゾーヤ:護あさな
富美代:上西恵
虎飼キズナ:古賀成美
取り立て屋:反橋宗一郎
店長 :鳥居みゆき
稽古場写真・取材ページはこちら
©「アキバ冥途戦争」製作委員会
© 舞台「アキバ冥途戦争」