【観劇レポート】『hana-1970、コザが燃えた日-』主演:松山ケンイチ

【観劇レポート】『hana-1970、コザが燃えた日-』主演:松山ケンイチ

約4年ぶりの舞台出演となる松山ケンイチが主演を務める『hana-1970、コザが燃えた日-』が、1月9日に池袋・東京芸術劇場プレイハウスにて開幕した。

演出家・栗山民也が長年見つめてきた沖縄を題材に、こまつ座「母と暮せば」でもタッグを組み信頼を寄せている作家・畑澤聖悟に書き下ろしを託した新作。

映像作品でも役作りにストイックに向き合う姿が度々話題となる松山ケンイチは、舞台出演 4 作目にして今作が初の会話劇。事前に沖縄にて現地の方々の話を聞いて回り、稽古中も物語当時の資料を読み込みながら謙虚に真摯に作品と向き合っている。

開幕に先駆けて観劇した公演レポートをご紹介いたします。


凄まじいものを見せて貰った。ともかくこの一言に尽きる。

舞台は沖縄、基地の街コザ。沖縄戦で家族を失った“おかあ”(余 貴美子)が営む米兵相手のバー兼質屋で物語は進む。家を飛び出してアシバー(ヤクザ者)になった長男を松山ケンイチ。
教員となって今は中で暮らす次男を岡山天音が演じ、沖縄復帰直前の1970年12月に起きたコザ騒動を背景にして話は進んでいく。長男、次男といってもこれは収容所で形を整えた家族だ。

沖縄復帰から50年という節目の年にテレビドラマや映画で大人気の俳優を起用した舞台だから、戦後まもなくの沖縄に実在したであろうシチュエーションの中で「血は繋がって無くとも、愛情でつながっているのだよ」と心温まる物語をたおやかに紡いでいくのかと思っていたら、これが大違い。
沖縄が持ち続けている苦悩や矛盾にもろに斬り込み、大胆にえぐり出している。
演出の栗山は作品を通して沖縄の演劇界とつながり、脚本の畑澤は生粋の東北人だが沖縄を取り上げた作品は4本目だという。それだけに沖縄の歴史や文化には深い蓄積があるとは言え、ヤマトンチュ(本土の人々)が陥りやすい思い込みもなく、(おそらく実に)リアルな“あの頃の沖縄”を再現している。さぞ入念に取材を重ねたのではないだろうか。

そして観客への忖度がほとんど無いのも驚いた。
はじめから終わりまでウチナーグチ(沖縄方言)のオンパレード。単にイントネーションの違いだけでなく、言葉そのものが沖縄出身者(ウチナーグチが少なからず理解できる人という条件付きだが)以外には難解なものを容赦なく盛り込んでいる。さらに“PPM”“艦砲射撃”“火炎瓶”“復帰協”“『戦争を知らない子供達』”“ベトナム戦争”“ピューリッツァー賞”等々、当時の本土と沖縄のキーワードが満載なので、それらに反応できないと理解不能な部分を積み残すことになるが、そういったことへの遠慮は一切無い。

そしてなにより松山や岡山の演技も素晴らしかった。普段の現場とは環境の違う劇場空間だが、それに負けることない熱量を発揮しての好演。松山は会話劇初挑戦だというが全くそうは思えない。初めてと言えばおかあの娘、ナナコを演じる沖縄出身の上原千果もこれがデビュー作だと言うが、透明感を感じる清々しいオーラを纏っての演技には感心させられた。そしてなんと言っても余の圧倒的な存在感にはもはや感動しかない。

まだ年明け間もないが、既に2022年ベストの舞台に挙げたい作品。月末まで上演しているので、是非多くの人に観てもらうことを熱望したい。東京芸術劇場にて30日まで。

(文:ワタベシンヤ)
(撮影:田中亜紀)

公演ダイジェスト動画

◉台本冒頭20ページも公開!
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演出家・出演者からのコメント

 松山ケンイチ(ハルオ役)

本日、 無事に初日を迎えることが出来て一安心です。
ただそれに尽きます。
無事に始まった舞台を無事に終わらせる。
これが全ての望みです。 これしか望んでいません。
このまま、 日々気を付けながら取り組んでいきたいと思います。

■岡山天音(アキオ役)

『hana-1970、 コザが燃えた日-』は非常にビビットでありながら、 素朴なメッセージが込められた作品だと思います。
皆様がこの物語をどう受け止めてくださるのか、 これから公演が進むに連れ、 果たして自分がどこに漂着するのか、 期待が高まります。
今回、 久し振りに舞台に携わり、 舞台の刹那的な在り方と出会いました。
劇場に足を運んで下さる皆様と、 そこにしか芽吹かない「その瞬間」に全身を浸して行きたいです。

■余 貴美子(おかあ役)

まさに今のこのコロナ禍のように、 沖縄・日本・アメリカとの間で揺れ動くテーマの作品ですが、 新しい年の始まりに力づけられる、 勇気づけられるような物語になっていると思います。 沖縄言葉には難儀しましたが、 沖縄の明るさや底力というのはその言葉にもあると思っていて、 私は沖縄の人ではないけれど、 沖縄の言葉を口にすると元気になります。 血のつながらない家族が苦難を乗り越えて再生していくという内容ですので、 台詞を言う度に明るさと底力で乗り切っていこうという気持ちになります。 皆さんにもぜひ、 この”言葉との出会い”を楽しんで、 元気になっていただけたらと思います。

■演出・栗山民也

手を取り合って
『hana』の初日の公演を終え自宅に戻るところなのですが、 クイーンの「手を取り合って」が無性に聴きたくなって、 車の中でかなりの音量で聴いています。
カーテンコールで観客と一緒になって大きく拍手しながら、 「人間の鎖」のことを考えていました。 米軍基地を取り囲んだ沖縄の「人間の鎖」。 小さな力かもしれない一人ひとりの力が、 手を取り合うことで繋がれ、 硬く口を閉ざした巨大な固まりをぐるりと包囲する。
なんだか熱くいろんなことが、 今、 クイーンの音楽とともに頭の中を駆け巡っています。 沖縄のみんなと酒場にいるような、 熱くてとても柔らかな気分。

【公演概要】

『hanaー1970、 コザが燃えた日ー』

<スタッフ>
作:畑澤聖悟
演出:栗山民也

<キャスト>
松山ケンイチ
岡山天音
神尾 佑
櫻井章喜
金子岳憲
玲央バルトナー
上原千果
余 貴美子

<東京公演>
期間:2022年1月9日(日)~1月30日(日)
会場:東京芸術劇場プレイハウス
主催:ホリプロ

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