連続対談企画⑰『“演劇”のある生活』[8月放送分] (BS松竹東急プロデューサー・湯浅敦士×カンフェティ編集長・吉田祥二)

第17回 無料放送局『BS松竹東急』 8月の演劇ラインナップをご紹介!

BS松竹東急は、映画・歌舞伎・一般演劇などのエンターテインメントを通じて人々に感動を届けてきた松竹グループと、渋谷をはじめとした街づくりによって、人々の豊かな暮らしの基盤を構築してきた東急グループがコラボレーションして、昨年3月26日に開局した放送局。編成コンセプトに、『誰もが楽しめて親しみやすい歌舞伎や劇場文化』を掲げている。
 また演劇以外にも、映画・オリジナルドラマなど、あらゆるジャンルの番組を編成し放送する無料総合編成チャンネルとして、上質感やワクワク感をお届けするという……、なんとも謎に包まれた放送局である。
 この企画では、かねてより親交のあったBS松竹東急の湯浅プロデューサーを迎え、カンフェティ編集長の吉田とともにBS松竹東急のラインナップを紹介しながら、ざっくばらんと各々が思う演劇について月いちペースで語っていく、そういう対談企画である。

※過去回は下記リンク先にて公開中!

(第1回)4月のラインナップ
(第2回)5月のラインナップ
(第3回)6月のラインナップ
(第4回)7月のラインナップ
(第5回)8月のラインナップ
(第6回)9月のラインナップ
(第7回)10月のラインナップ
(第8回)11月のラインナップ
(第9回)12月のラインナップ
(第10回)1月のラインナップ
(第11回)2月のラインナップ
(第12回)3月のラインナップ
(第13回)4月のラインナップ
(第14回)5月のラインナップ
(第15回)6月のラインナップ
(第16回)7月のラインナップ

8月のラインナップはこちら!

日曜ゴールデンシアター
8月 6日(日)夜6時30分~『パリのアメリカ人』
8月13日(日)夜6時55分~『吉田拓郎 2019 -Live 73 years- in NAGOYA』
8月20日(日)夜6時45分~ 歌舞伎『蝶の道行』(平成23年5月・明治座)
                『一谷嫩軍記 熊谷陣屋』(平成26年11月・歌舞伎座)
8月27日(日)夜6時30分~ 伊東四朗一座~帰ってきた座長奮闘公演~『喜劇 俺たちに品格はない』

日曜ゴールデンシアター
8月13日(日)夜10時15分~『キレイ-神様と待ち合わせした女-』(出演:多部未華子 ほか)

週末ミライシアター
8月12日・26日(土)深夜0時30分~ 杉並区区制施行90周年記念事業 東京高円寺阿波おどり演劇公演『高円寺が踊る』

湯浅「とにかく暑いですね」

吉田「はい。夏生まれなので暑いのは平気な方ですが、限界超えてる感がありますね。7月に『ダブルブッキング』という公演が新宿シアタートップスと紀伊國屋ホールでありまして。“2劇場同時上演”という、2劇場を題材にした1つのストーリーをキャストが移動しながら上演するという前代未聞の企画なのですが、この猛暑の中、キャストが外を走って2劇場を行き来するので、本当にきつかったと思います。作品はめちゃくちゃ面白かったですが」

湯浅「これは文字通り、ダブルブッキングされた俳優が両方の劇場の舞台に出演する姿を描いているってことですか?」

吉田「そうです。ダブルブッキングしたというか、自らした、という状況ですね」

湯浅「映画『ミセス・ダウト』を思い出しました。観客は固定なんですか?」

吉田「観客は固定です」

湯浅「劇場費が単純に気になりつつも、すごく演劇的で面白い試みですね……! すごい」

湯浅「ではラインナップの紹介です。6日はブロードウェイミュージカル『パリのアメリカ人』です。8月から3ヶ月連続でブロードウェイの舞台をお届けしようと思っておりまして、その第1弾です」

吉田「3ヶ月連続ですか! 来月、再来月の作品も気になりますね」

湯浅「来月はミュージカルでなくとも、みなさんよく耳にする舞台ですね。そして再来月は日本版でも上演された……あのミュージカルです」

8月6日(日)夜6時30分~
『パリのアメリカ人』

吉田「きっと、『レ・ミゼラブル』ですね」

湯浅「……残念ながら違います。叶うことなら放送したいですけどね。。。そんなブロードウェイミュージカルとはどのようなものなのでしょうか?」

吉田「はい! ブロードウェイは、ニューヨークのタイムズスクエアを中心に広がる劇場街で、ニューヨークを訪れる観光客は必ずと言っていいほど訪れる一大観光地です。これまで、『ライオン・キング』、『オペラ座の怪人』、『ウェスト・サイド・ストーリー』など、数々の人気ミュージカルを生み出してきました。実は弊社が展開しているTKTSというチケットストアは、NYブロードウェイでTKTSを運営するTDFから公認を受けて、2019年8月から日本で運営を開始しました」

湯浅「先日、新宿の東急歌舞伎町タワーに行ったときに、TKTSの車を発見しました。コーラを売っていましたが、あれはどうしてですか?」

吉田「“伊良コーラ”ですね。下落合の町工場で作られているクラフトコーラなんです」

湯浅「なぜ、このコーラを?」

吉田「昨年、新宿アルタ前に出店した際に、新宿発のものでということでコラボしたんです。最近ではナチュラルローソン等でも販売しているメジャー商品です! 絶品ですよ!」

湯浅「今度飲んでみますね……! さて話を戻しまして、『パリのアメリカ人』は、アカデミー賞を受賞した名作映画『巴里のアメリカ人』を舞台化した作品で、終戦後のパリの街並みを背景に、芸術や友情、恋をめぐる官能的かつ現代的なロマンスが展開していきます。なんといっても見ごたえのあるダンスシーンは必見です!」

吉田「日本でも、劇団四季が日本版として上演していますよね。高度なバレエシーンがたくさんあって、本当に見ごたえのあるミュージカルで、また恋愛ミュージカルとしても多くのファンを魅了する名作です」

湯浅「続いて、13日には吉田拓郎さんのライブです」

吉田「10代の頃からフォーク好きだったので、カラオケで吉田拓郎さんの『落陽』ばっかり歌ってました(笑)。テレビで拓郎さんのライブを観られるのは嬉しいです。心にしみる曲がたくさんあって、拓郎さんにしか書けない歌詞やメロディがあって……これは保存版ですね!」

湯浅「BS松竹東急ではこれまで不定期で音楽ライブを放送してきましたが、これからはもう少し頻度を高めに音楽ライブをお送りしていくことになると思います」

8月13日(日)夜6時55分~
『吉田拓郎 2019 -Live 73 years- in NAGOYA』

吉田「中島みゆきさんの『夜会』も放送されていましたよね。次にどんなアーティストの作品が登場するのか楽しみです!」

湯浅「予想はありますか?」

吉田「そうですね、長渕剛さんですね!」

湯浅「現状、予定はありません!(笑)」

吉田「楽しみに待っています!」

湯浅「ご期待ください! そして、20日には歌舞伎です」

8月20日(日)夜6時45分~
歌舞伎『蝶の道行』(平成23年5月・明治座)
『一谷嫩軍記 熊谷陣屋』(平成26年11月・歌舞伎座)

湯浅「『蝶の道行』は儚く世を去った男女が蝶の姿となって舞い踊る、ドラマティックで幻想的な舞踊です。そして、『一谷嫩軍記 熊谷陣屋』は、源平争乱の時代を背景に、大義の前にはわが子の命さえも犠牲にするのが武士の社会。そんな戦の世の無常、人生の儚さが胸を打つ作品です」

吉田「生で観るのはもちろん良いですが、クリアで迫力ある映像で歌舞伎を楽しむのも、テレビ放送ならではの楽しみ方なので、ぜひご覧いただきたいですね」

湯浅「そして毎月お届けしている、伊東四朗一座・熱海五郎一座セレクションです。8月27日は、伊東四朗一座~帰ってきた座長奮闘公演~『喜劇 俺たちに品格はない』をお送りします」

吉田「またしても、タイトルが秀逸ですね。チラシも一目見ただけで観たくなるビジュアルが最高です。2004年、当初は“伊東四朗一座”として旗揚げし、1回限りの公演で解散するはずが大きな反響を呼んで、その後定期的に公演が行われるようになりますが、伊東さんが参加しない場合は三宅裕司さんが座長となり“熱海五郎一座”として上演。この公演は久々に伊東さんが座長として帰ってきた公演で、作品以外のところでも遊び心があって、それをこの大ベテランの方たちがやっているというのがとても素敵です」

8月27日(日)夜6時30分~
伊東四朗一座~帰ってきた座長奮闘公演~
『喜劇 俺たちに品格はない』

湯浅「与党・自主党の政調会長・鈴木弘は次期内閣総理大臣候補の人気議員。しかし、彼には売れない歌手・八千草ルリコとの不倫という秘密があり……。という品格のない面々がおくるドタバタ喜劇です。ちなみに総理大臣の名前は、大泉純三郎です」

吉田「相変わらずのネーミングセンス! 安定ですね」

湯浅「ゲストには戸田恵子さんが出演されていまして、戸田さんは今年9月には生誕66周年公演があります。作・演出が空宙空地の関戸哲也さんで、大阪時代に知り合って愛知を案内いただいたこともあります。彼のFacebookが最近この公演の告知で、本当に気合が入っているんだなぁと今から公演が楽しみです」

吉田「関戸哲也さんは愛知の方なんですか?」

湯浅「そうですね。愛知で活動されていて、うまい居酒屋をいくつか教えていただきました(笑)」

吉田「お酒のことは聞いてないです」

湯浅「はい(笑) そして、ついにこの作品が放送されます……! 個人的には人生のベスト3に入る作品です」

吉田「いやぁ、ついに来たか、と思いました」

湯浅「13日の夜10時15分からは、特別企画として2014年に上演された『キレイ-神様と待ち合わせした女-』を放送します」

吉田「大人計画主宰の松尾スズキさんがシアターコクーン・オンレパートリーとして本格的ミュージカルに初挑戦し、演劇界に大きな衝撃を与えた問題作です。2000年に初演されてから、再演・再々演と上演を繰り返す超人気作品で、ブロードウェイならロングラン上演されるような作品ですよね。私は初演の奥菜恵さんバージョンのチラシのインパクトがカッコ良すぎて今でも心に残っています」

8月13日(日)夜10時15分~
『キレイ-神様と待ち合わせした女-』

湯浅「この作品は、初演は奥菜恵さん。その後、鈴木蘭々さん、多部未華子さん、そして生田絵梨花さん。と再演を重ねている名作で、何度観ても心に響くものがあります。あとなんといっても、あの音楽ですよね! 4月に放送したBunkamuraシアターコクーンの歴史をたどる番組でも、『キレイ』を紹介させていただいて、絶対にあの曲が流れているシーンを使ってほしいとディレクターに強く要望しました」

吉田「本作の楽曲を担当しているのが伊藤ヨタロウさんですが、さらにカミ役として出演されています。演技も素晴らしいのだとこの作品で知りました」

湯浅「個人的には、阿部サダヲさんのダイズ丸がさすが素敵だなぁと思いました」

吉田「本当にこの作品は好きな方、多いですよね」

湯浅「私の大学生時代は、通過儀礼的作品でしたからね。この作品が無料で観られるということは本当になかなかないことだと思いますので、是非注目していただけると嬉しいです!」

吉田「そして、実は湯浅さんの“キレイ愛”にも優るとも劣らないほどの“高円寺愛”の私ですが、8月のミライシアター、大変気になります!」

湯浅「よく高円寺の四文屋でよく飲んでますもんね」

吉田「はい!(笑)」

湯浅「最近、仕事の関係で高円寺によく行くんですが、『大将』の佇まいが気になって飛び込んだところ、大当たりでした……! あとはビールを頼むと餃子無料のお店が気になってます(笑) お酒ばかりの話をしましたが、高円寺といえば“阿波おどり”です!」

吉田「阿波おどりといえば、もちろん徳島県が発祥ですが、今や首都圏でも広く行われるようになった阿波おどりのきっかけは、実は高円寺の阿波おどりなんです。歴史を遡ると、昭和32年、現在の高円寺パル商店街振興組合の青年部により、地元氷川神社の祭礼の日に合わせて商店街の振興を目的としてスタート。隣駅の阿佐ヶ谷で、すでに行われていた『七夕祭り』に対抗して、取り入れられたのが阿波おどりでした。最初の頃は、阿波おどりを誰も知らなかったので『高円寺ばか踊り』として開催され、その後都内にある徳島県人会から指導を受ける形で阿波おどりとして発展しました。今では、高円寺駅・新高円寺駅を一円するように8つの演舞場で、100を超える連、約10,000人の踊り手が参加する、本場『徳島市阿波おどり』に次ぐ規模で、東日本では最大規模の阿波おどりです。また、高円寺の商店街には、阿波踊り用品のお店があります」

湯浅「さすがです! そんなに詳しいとは驚きです。カンフェティの会社がある神楽坂でも阿波おどり、ありますよね?」

吉田「神楽坂は風情がある街なので、すごくマッチしているお祭りだと思います」

湯浅「そんな東京では各地で開催されている阿波おどりですが、豊喜屋さんというお店が高円寺にありまして、このお店では阿波おどりの踊り手の方々が着る着物や鳴り物を販売しています。

実は東日本では唯一、阿波おどり用品を販売していて、東京各地の踊り手さんはこのお店でグッズを買い揃えるそうですよ」

吉田「それはすごいですね」

湯浅「そんな『東京高円寺阿波おどり』ですが、今年4年ぶりに屋外での開催が決定しました。それを祝して、昨年に上演された『高円寺が踊る』という舞台作品を放送します」

吉田「杉並区制施行90周年記念事業として、夏の一大イベント『東京高円寺阿波おどり』の成り立ちから今の時代までを、昭和・平成・令和の3つの時代、親・子・孫の3つの世代の物語として描く高円寺的大河劇です。区民オーディションで選ばれた多世代の出演者が“阿波おどり×演劇”という新たな表現で創作した作品です。こういう形で、一般の方々が演劇に触れるというのも本当に素晴らしい取り組みですよね」

湯浅「吉田さんが『東京高円寺阿波おどり』を紹介してくださいましたが、本作を観れば、もっと詳しく阿波おどりの歴史や高円寺の人々の思いを感じられると思います。そして今年のお祭りにきっと行きたくなるのではないでしょうか!」

8月12日、26日(日)深夜0時30分~
杉並区区制施行90周年記念事業  
東京高円寺阿波おどり演劇公演劇
『高円寺が踊る』

吉田「今年の『東京高円寺阿波おどり』、楽しみです! 家が近いので毎年行っているので、今年も、もちろん行きます!」

湯浅「そして実は今回、BS松竹東急のブースも出店します!」

吉田「なんと!」

湯浅「私もハッピ着て、ブースにいるはずなので是非遊びに来てくださいね」

吉田「行きます! さらに楽しみが増えました」

湯浅「さて、以下フリートークです」

吉田「お祭りはどこかほかのも行きますか?」

湯浅「現状行く予定がないです(笑) 花火を見たいなあと思いつつ、人混みと暑さは避けたい気持ちが勝っています」

吉田「花火大会だと実家の『大磯花火大会』が今年も数年ぶりに開催されるので、花火を見てそのあと讃岐うどん屋で宴会をするという吉田家恒例のイベントができるので嬉しいです」

湯浅「夏ですね! 夏、してますね」

吉田「富山の『おわら風の盆』って知ってます?」

湯浅「知らないです。」

吉田「ちょうど夏に開催されるお祭りで、サイトなどで画像や動画を観ていただくとですが、哀愁漂う音楽と美しく艶やかな踊りが特徴的で、静寂の中で静かに観て、聴くお祭りって感じです。一度体験するとハマりますよ。私の中では、遠出してでも行きたいお祭りベストワンです」

湯浅「今ちょっと動画を観ましたが、風情があっていいですね」

吉田「動と静でいうと、阿波おどりが“動”で、おわら盆が“静”という感じです」

湯浅「ごくごく当たり前だったことをこうして話せることも、だんだんかつての日常に戻りつつあるんだなぁと実感しますね。来月もまたよろしくお願いします」

吉田「よろしくお願いします!」

プロフィール

湯浅敦士(ゆあさ・あつし)
日本大学芸術学部演劇学科卒。他局を経て、2021年にBS松竹東急に入社。BS松竹東急の演劇編成、週末ミライシアターなどのプロデューサーを担当。プライベートでも舞台の脚本を手掛けるなど、演劇を愛する気持ちに満ちている。

吉田祥二(よしだ・しょうじ)
シアター情報誌[カンフェティ]編集長。早稲田大学第一文学部卒。在学中に劇団を旗揚げし、以来約10年に渡って同劇団の主宰・脚本家・演出家を務める。2004年に「エンタテインメントを、もっと身近なものに。」を理念に掲げ、ロングランプランニング株式会社を起業。趣味は登山(縦走)。

【放送局】 BS松竹東急(BS260ch/総合編成無料放送)
【局公式Twitter】 @BS260_official

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