連続対談企画⑬『“演劇”のある生活』[4月放送分] (BS松竹東急プロデューサー・湯浅敦士×カンフェティ編集長・吉田祥二)

第13回 無料放送局『BS松竹東急』 4月の演劇ラインナップをご紹介!

BS松竹東急は、映画・歌舞伎・一般演劇などのエンターテインメントを通じて人々に感動を届けてきた松竹グループと、渋谷をはじめとした街づくりによって、人々の豊かな暮らしの基盤を構築してきた東急グループがコラボレーションして、昨年3月26日開局した放送局。編成コンセプトに、『誰もが楽しめて親しみやすい歌舞伎や劇場文化』を掲げている。
 また演劇以外にも、映画、オリジナルドラマなど、あらゆるジャンルの番組を編成し放送する無料総合編成チャンネルとして、上質感やワクワク感をお届けするという……、なんとも謎に包まれた放送局である。
 この企画では、かねてより親交のあったBS松竹東急の湯浅プロデューサーを迎え、カンフェティ編集長の吉田とともにBS松竹東急のラインナップを紹介しながら、ざっくばらんと各々が思う演劇について月いちペースで語っていく、そういう対談企画である。

※過去回は下記リンク先にて公開中!

 (第1回)4月のラインナップ
 (第2回)5月のラインナップ
 (第3回)6月のラインナップ
 (第4回)7月のラインナップ
 (第5回)8月のラインナップ
 (第6回)9月のラインナップ
 (第7回)10月のラインナップ
 (第8回)11月のラインナップ
 (第9回)12月のラインナップ
 (第10回)1月のラインナップ
 (第11回)2月のラインナップ
 (第12回)3月のラインナップ

4月のラインナップはこちら!

土曜ゴールデンシアター
4月1日(土)夜6時30分 『シアターコクーンと申します~33年の歩み 休館、そしてこれから~』

日曜ゴールデンシアター
4月9日(日)夜6時 渋谷・コクーン歌舞伎「佐倉義民傳」
4月16日(日)夜6時30分 『アジアの女』
4月23日(日)夜7時 歌舞伎『仮名手本忠臣蔵 祇園一力茶屋の場』(平成30年2月・歌舞伎座)
4月30日(日)夜6時45分 歌舞伎「江戸絵両国八景 荒川の佐吉」(平成22年9月・新橋演舞場)

週末ミライシアター
4月1日(土)深夜0時30分~ 『あしたのわたしへー私の卒業第3期ー』
4月8日・22日(土)深夜0時30分~ 劇団チョコレートケーキ『一九一一年』
4月15日・29日(土)深夜0時30分~ 悪い芝居『今日もしんでるあいしてる』

湯浅「さて、4月のラインナップです。まずは……!」

吉田「『シアターコクーンと申します~33年の歩み 休館、そしてこれから~』ですね! 最近、湯浅さんはこの話しかしませんよね」

4月1日(土)夜6時30分
『シアターコクーンと申します~33年の歩み 休館、そしてこれから~』

湯浅「すみません! 昨年末頃からBunkamuraシアターコクーンが4月10日から休館に入ることを受けて、何かこれまでのシアターコクーンの歴史や功績を紹介する番組が制作できないか、と思いました」

吉田「出演される方が豪華ですね」

湯浅「Bunkamura様にも大変尽力いただきまして、歴代の芸術監督はもちろん、コクーンにゆかりのある俳優や関係者に出演いただきました」

吉田「年末の特番でも揃わない、本当に名だたる方々が出演されていますね。この貴重な企画だからこそ、賛同して出演されているのがよく分かります」

湯浅「それもきっとやっぱり関係者のみなさんにとって、シアターコクーンという劇場が特別な場所なんだと思います」

吉田「劇場って、公演をやっていない時は空っぽのただの箱ですが、でもその空っぽの空間の中に身を置くと、これまでこの場で上演された全ての作品に携わった俳優・スタッフそして観客の“念”というか“想い”だけはこの場に留まって蓄積されているような不思議な感覚になる時があって。これって映画館にはない感覚だと思うんですよね。湯浅さんも今回この番組の制作にあたって取材でシアターコクーンの中に入られたと聞きましたが、どうでした? もうすぐ休館ということで、また特別な感覚があったと思いますが」

湯浅「休館日にお邪魔したので素舞台でしたが、色々な舞台を思い出しました。あと、あそこの席であの芝居を観たなぁとかすごく鮮明に覚えていたんですよね。ただの観客でしかない僕ですら色々思い出として感じるものがあったくらいですが、舞台に何度も出演されている方や関係者の思いはやはり相当なものだと思います。大竹しのぶさんは、なんと25以上のシアターコクーンでの公演に出演されたそうで、シアターコクーンに行くと、どこか帰ってきたような感覚になる、とおっしゃっていました」

吉田「25公演はすごい……!」

湯浅「確かに配信がこれだけ浸透していて、家にいれば楽しい舞台やエンタメが見られる環境ではあります。だけど、やっぱり、ひとところに集まって同じ体験を共有することの良さは忘れてはいけない気がします」

吉田「同感ですね」

湯浅「初代芸術監督の串田さんが“やわらかい劇場”を目指したとおっしゃっていました。俳優と観客が一体となる空間を目指したそうです」

吉田「垣根のない開かれた自由な劇場っていうことですよね。33年前だと、劇場と言えばもっと堅いイメージが強かったと思うので、当時としては時代を先取りした画期的なコンセプトですよね」

湯浅「御本人の言葉では小劇場の精神をシアターコクーンに持ってきた、ともおっしゃっていました。詳しくは是非番組で御覧ください」

吉田「はい! そしてナレーションが岡田将生さんなんですね」

湯浅「今回、タイトルにも『シアターコクーンと申します』とあるように、シアターコクーンを擬人化したナレーションでお送りします」

吉田「演劇的ですね」

湯浅「それでシアターコクーンを擬人化するならどなたがいいんだろうとBunkamuraの方にも意見を仰いだところ、岡田将生さんが!ということでした。岡田さんは数々の舞台をシアターコクーンで演じられただけなく、実はシアターコクーンが同い年の33歳なんです」    

吉田「岡田将生さんと言えば、映画やテレビドラマでも大人気の俳優さんですが、舞台出演も多く、初舞台が2014年、蜷川さん演出でまさにシアターコクーンの『皆既食 -Total Eclipse-』で主演を務められて、うってつけですよね!」

舞台『プレイタイム』
森山未來・黒木華 出演

湯浅「芸術監督の松尾スズキさんの舞台にも2本、最近では『物語なき、この世界。』に出演されていて、本当にシアターコクーンともゆかりの深い俳優さんなのだと思います。劇場史を中心に描く、演劇愛と感謝の気持ちにあふれた番組にきっとなると思います。また番組内では、コロナ禍で初のライブ配信にも挑戦したことでも話題となった『プレイタイム』を無料初放送でお送りします。こちらもぜひお楽しみに!」

吉田「楽しみです!」

4月9日(日)夜6時
渋谷・コクーン歌舞伎『佐倉義民傳』

湯浅「続いて、4月9日は『渋谷・コクーン歌舞伎「佐倉義民傳」』です」

吉田「あれ、放送の曜日が土曜から日曜に?」

湯浅「4月改編というやつです。土曜から日曜に4月9日より放送枠が変わります。また名前も『日曜ゴールデンシアター』に変わります」

吉田「日曜っていいですよね。勝手な私の意見ですが、土曜はわりと1日外に出ていることが多いですが、日曜は次の日からまた仕事や学校が始まるので、特に夕方以降は家でゆっくり過ごす方が多いのかなと……。少なくとも私はそうなので、観やすくなって嬉しいです」

湯浅「そしてその記念すべき初回は……渋谷・コクーン歌舞伎です!」

吉田「シアターコクーンの特番からの流れも素敵です」

湯浅「本作はまさに『松竹』×『東急』というところの作品なります。コクーン歌舞伎については『シアターコクーンと申します』をご覧いただければとは思いますが、吉田さん、解説を大まかにお願いします!」

吉田「コクーン歌舞伎の特長は、平場席が設置されていて昔ながらの観劇スタイルを維持しつつも、古典の歌舞伎に新たな演出をつけるという手法を取り入れているところですね。若い世代の方でも観劇しやすい作品だと思います」

湯浅「そしてこの『佐倉義民傳』は中村勘三郎さん最後のコクーン歌舞伎出演作でもあります。また劇中にちりばめられている、いとうせいこうさん作詞のラップにも注目です! 昔、串田さんがお話しされていたことには、黒人のラップには社会への反骨精神がある。そんなラップを取り入れたのは、同じく社会に対して反骨する農民を描くにはよいと考えられたそうです」

吉田「なるほど、だからラップなんですね!」

4月16日(日)夜6時30分
『アジアの女』

湯浅「そして翌週16日は『アジアの女』をお送りします。こちらもシアターコクーンの舞台です」

吉田「『アジアの女』は、大災害の起きた東京で半壊した建物に住み続ける兄妹を中心に描かれるお話で、長塚圭史さんが2006年に発表した戯曲を吉田鋼太郎さんが演出した話題作です。長塚圭史さんは、この対談でも何度かお話していますが、劇作家・演出家・俳優、様々な面で、第一線をずっと走り続けていて、またKAAT神奈川芸術劇場の芸術監督も務められています。実は、同じ大学の同期でもありますが、在学中から長塚さんは輝いていました。まさに同世代の星ですね」

湯浅「吉田さんの長塚圭史さんへのリスペクトはいつもですね! また、石原さとみさんの舞台をなかなか観ることはないのでは、と思います! そしてその翌週からは2週続けて歌舞伎を放送します」

4月23日(日)夜7時
歌舞伎『仮名手本忠臣蔵 祇園一力茶屋の場』(平成30年2月・歌舞伎座)
4月30日(日)夜6時45分
歌舞伎『江戸絵両国八景 荒川の佐吉』(平成22年9月・新橋演舞場)

湯浅「4月23日には、『仮名手本忠臣蔵 七段目 祇園一力茶屋の場』です。俗に、七段目とも呼ばれ、あと『茶屋場』とも呼ばれる場で、華やかで人気なこともあり、この場だけが上演されることも多いです」

吉田「『仮名手本忠臣蔵』の名前は皆さんご存知と思いますが、そのなかでも確かのこの場は有名でですね!」

湯浅「松本幸四郎家 高麗屋三代同時襲名の平成30年2月に上演されたこともあり、片岡仁左衛門さん、そして坂東玉三郎さんも出演されている豪華な作品となっています。そして、4月30日には、『江戸絵両国八景 荒川の佐吉』をお送りします」

吉田「この作品は初めて聞きました」

湯浅「おそらく知らない人も多いのではないでしょうか。昭和7年に歌舞伎座で初演された新作歌舞伎です。外題に『江戸絵両国八景』とあるように、隅田川周辺を舞台に繰り広げられる男のドラマで、作家・真山青果らしい心に残る台詞がいたるところに散りばめられています」

吉田「出演者も片岡仁左衛門さんに、中村吉右衛門さん……大変豪華ですね! こちらも楽しみです!」

湯浅「そして、4月の週末ミライシアターでは、劇団チョコレートケーキと悪い芝居が登場します。どちらも昨年に放送した作品にはなりますが、見逃した……!という声も大きく今回は再放送というかたちでお送りします」

4月8日・22日(土)深夜0時30分~
劇団チョコレートケーキ『一九一一年』
4月15日・29日(土)深夜0時30分~
悪い芝居『今日もしんでるあいしてる』

吉田「劇団チョコレートケーキは、2000年に駒澤大学OBを中心として結成された劇団です。古川健さん(劇作家)と日澤雄介さん(演出)による、ある種の極限状態にいる者たちの存在を通して、生々しい人間ドラマを展開していくのが特徴です。昨年夏に上演された『生き残った子孫たちへ 戦争六篇』が今年、第30回読売演劇大賞を受賞し、熱い注目が集まっていますね」

湯浅「今回お送りする『一九一一年』も読売演劇大賞で優秀演出家賞を受賞した作品です」

吉田「すごいですね、実力派の劇団です。もう一つの悪い芝居も今大注目の劇団です。2004年に京都で旗揚げした劇団で、最初は路上パフォーマンスからスタートしたという、面白い劇団です。すべての劇団本公演で脚本・演出を手がける山崎彬さんが作る、文学性とポップカルチャーが絶妙に融合した作品性が魅力ですね。今では東京と大阪で頻繁に公演されていることもあり東京でもファンが急増中です。劇団名の『悪い芝居』は、『悪いけど、芝居させてください。の略』とのことで、このあたりにも素敵なセンスを感じますね」

湯浅「主宰の山崎彬さんは今度舞台『HUNTER×HUNTER』の脚本・演出を務められるなど、幅広い演劇分野で活躍されていますよね。また昨年も言いましたが、本作は本当に設定がまず面白い! ぜひ多くの方に観ていただきたいです。今回は以上となります!」

吉田「やっぱりシアターコクーンの特番が気にかかりました」

湯浅「現在、絶賛『シブヤデマタアイマショウ』を公演していますが、Bunkamraシアターコクーンは、4月10日から休館となります」

吉田「いつまでですか?」

湯浅「2027年度とのことですが……決してBunkamuraが活動をやめるわけではないんです」

吉田「THEATER MILANO-Zaのこけら落としですね、『舞台・エヴァンゲリオン ビヨンド』!」

湯浅「あとその翌月には『パラサイト』の公演があります。確かにシアターコクーンでの公演は残念ながらしばらくないのですがCOCOON PRODUCTION と題して……演劇を発信する、ということは続いていくとのことです」

吉田「それでもやっぱりシアターコクーンの空気が好きなので、あの劇場で観たい気持ちはあります」

湯浅「それは仕方ないことですね」

吉田「ですよね。あと『コクーン アクターズ スタジオ』が開校されますよね」

湯浅「そうですね! 現在の芸術監督・松尾スズキさんが主任となり俳優を4月から募集するようです」

吉田「昔に比べると養成所というのはたくさんありますが、シアターコクーンがこういう養成所を作るというのはある種画期的で、次世代を担う演劇界のスターが生まれる予感がしますし、そうなればいいなと思います」

湯浅「同感です。またBunkamuraのシアターコクーン以外の施設も活動は継続するとのことで、ミニシアター『ル・シネマ』は6月に新たな映画館として『Bunkamura ル・シネマ 渋谷宮下』としてオープン。 『ザ・ミュージアム』も場所を変えて展覧会を開催するそうです。またオーチャードホールは日曜・祝日を中心に営業を行いつつ、他の会場も使用して主催公演を開催していくそうです! さて以下、フリートークですが何かありますか?」

吉田「(収録をしている今は3月9日ですが)3月13日からマスクの着脱が個人の自由に委ねられますよね。劇場の方と話をしていると、マスク自由、いやまだマスクをするべし、と劇場によってまちまちなんです。コロナも明けてもと通りに戻っていくことは喜ばしいことなんですが、劇場も色々苦慮されていることを思うと、手放しで喜べない部分もありますね……。演劇がさらに盛り上がるように繋がればいいなとは思います」

湯浅「まさに来月から色々と生活様式が変わっているんでしょうね。さらに余談ですが、今回の番組制作のなかで、母校の日芸から演劇資料を借りに行きましたが、最近の大学生もほぼコロナのなかでマスクをした学生時代や飲み会も制限されていたようです。本当にここ数年については悲しい時間だったように思います」

吉田「今年は花見ができるといいですね」

湯浅「ぜひ、目黒川で、みんなで花見をしたいです!」

吉田「川沿い歩きながら散策したいです。」

湯浅「今月末くらい、またお願いします!」

プロフィール

湯浅敦士(ゆあさ・あつし)
日本大学芸術学部演劇学科卒。他局を経て、2021年にBS松竹東急に入社。BS松竹東急の演劇編成、週末ミライシアターなどのプロデューサーを担当。プライベートでも舞台の脚本を手掛けるなど、演劇を愛する気持ちに満ちている。

吉田祥二(よしだ・しょうじ)
シアター情報誌[カンフェティ]編集長。早稲田大学第一文学部卒。在学中に劇団を旗揚げし、以来約10年に渡って同劇団の主宰・脚本家・演出家を務める。2004年に「エンタテインメントを、もっと身近なものに。」を理念に掲げ、ロングランプランニング株式会社を起業。趣味は登山(縦走)。

【放送局】 BS松竹東急(BS260ch/総合編成無料放送)
【局公式Twitter】 @BS260_official

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