10月29日より上演の、劇団スタジオライフ本公演『マリラとマシュウと、アンの日々』は、倉田淳脚本・演出の新作で、世界的名作『赤毛のアン』のアンを家に迎え入れて育てた、老兄妹 マリラとマシュウの視点で再構築。お喋りで空想好きなアンとの出会いにより人生に彩りが芽生えてゆく大人たちの物語となっている。
マリラ役(Wキャスト)の笠原浩夫・曽世海司をはじめ、緒方和也・大沼亮吉・鈴木翔音・前木健太郎のスタジオライフ劇団員に加え、花組芝居より桂憲一・永澤洋、文学座より清水明彦が出演する。
曽世海司・桂憲一・清水明彦の3名に異なる3つの劇団が揃うことへの期待や、演じる役についての印象などを伺った。
―――まずは、曽世さんにお聞きしたいと思います。今回の本公演が『赤毛のアン』を大人たちの視点で描くコンセプトと聞いた時、どのような感想を持たれましたか。
曽世「うちの劇団の演出家である倉田淳が、昔から『赤毛のアン』が大好きな作品と公言していて。ある時、舞台にしようと思うのという言葉を聞いて、遂にやるんだと思いました。小説の舞台化という意味でスタジオライフは、これまで不可能と言われていた東野圭吾さんの『白夜行』や、皆川博子さんの『死の泉』、さらには萩尾望都さんの『トーマの心臓』という作品で、話題にしていただきました。
あとから、アンを取り巻く大人たちがとにかく愛おしくて仕方がないので、そちらから描いてみたいと思ったと聞いて、面白そうだなと思ったのが、いち劇団員としての感想ですね」
―――あえて『赤毛のアン』のストーリーのまま描くのではなく、マリラとマシュウという老兄妹の視点から描くというアイデアは私も面白そうだと思いました。
曽世「倉田は、2人とも独身で、プリンスエドワード島で、非常に静かに暮らしていたことを想像するだけでもドラマが広がって仕方がないと言っていて、劇作家らしい視点だなと思いました」
―――続いて、桂さんと清水さんにも伺いたいと思います。出演のオファーが来た時どのような思いでしたか。
桂「ちょうど旅公演をしている途中のホテルで、曽世くんから連絡をいただきました。昔から付き合いはあるんですけど、仕事現場というより、飲み屋で会うことの方が多くて。その時も飲みに関係する内容かと思っていたら、出演のことが書いてあって、どういうこと?とちょっと驚きはあったんですけど、僕のことを覚えていてくれたのが嬉しかったというのが率直な感想でした」
清水「スタジオライフさんは、7月の『マクロプロスの処方箋』に続いての出演になります。その時に共演した曽世くんが素晴らしくて、大ファンになってしまいました。いずれ近いうちにスタジオライフさんの作品に出演したいなと思っていたら、突然連絡が来まして。まさかこんなに早くお話が来るとは思わなくて、慌てて事務所にスケジュール確認したところ、大丈夫とのことだったので、すぐによろしくお願いします!と返事をしました」
―――スタジオライフ・花組芝居・文学座という異なる劇団が揃うことへの期待感はあるかと思います。
曽世「まずうちの劇団のお客さまで言えば、清水さんが続投することに対して、嬉しい! 面白い!と思ってくださる方がたくさんいらっしゃると思いますし、今回ありがたいことに、舞台美術を文学座さんの乘峯雅道さんにお願いしていまして、清水さんと乘峯さんという、お二方の大きなお名前を文学座さんからお借り出来ることは、スタジオライフにとっては、1つの宝物になっちゃうぞという期待感がありますね。
花組芝居さんはスタジオライフとほぼ同期の劇団であるとともに、我々と同じ男優集団ということで、”和の花組芝居”、”洋のスタジオライフ”とも呼ばれていました。そんな花組芝居さんから桂さんと永澤洋さんが初めてスタジオライフに登場してくださるという、化学変化なのか融和なのかわからないですけど、本当に楽しみでしょうがないですね」
桂「基本的に僕自身が俳優として主張するということはあまりないんです。どんな劇団にしろ、呼ばれたところに染まりたいという意識がすごく強くて。俳優としては、クリエイターというよりも職人ぐらいだと思っていて、オファーされたことに応えるタイプの人間だと思っているんです。
スタジオライフさんの公演は初めてですが、いろいろな人と新しいことをやることは、すごく刺激的だし楽しいなと思っています」
清水「スタジオライフさんの舞台に、”ネオかぶき”の花組芝居さんと”新劇”の文学座が組み合わさってどう面白くなるか、私自身も楽しみです。とはいえ私自身、文学座に所属していますが、劇団を背負ってという意識は全くないので(笑)」
―――桂さんはスタジオライフ公演初出演となりますが、スタジオライフに対してどのようなイメージを持たれていますか。
桂「昔はキラキラしたイメージがあって、クリオネさんの『SLEEPLESS』で海司くんと共演した時、終演後に劇場を出ようとしたら、海司くんがお客さんに取り囲まれちゃって。僕らはそんな楽屋から出て人に取り囲まれるというのは、よく分かってないから、何だこの現象は?みたいな驚きはありました。
それからスタジオライフさんの『パサジェルカ』を観劇して、海司くんはナチス収容所の女看守を演じていたと思うんですけど、わりとヘビーな話で、こういう重い話もやっているんだと思って。そこには昔のキラキラ感はなくて、スタジオライフさんはキャパシティがある集団だなという印象は持っていました」
―――清水さんは『マクロプロスの処方箋』で初めてスタジオライフ公演に出演して、驚いたことはありましたか。
清水「稽古の時も本番の楽屋でも感じましたが、女性の役を演じるのは大変なことなんだと思いました。メイクや衣装の準備がものすごいし、楽屋の中では、本当に下着姿で走り回ってますもんね。女性のインナーをつけてるから、ドキッとしていいのか、しちゃいけないのかが分からなかったです(笑)」
―――役についてお聞きしたいと思います。曽世さんは老兄妹の妹 マリラを演じます。これまでも多くの女性役を演じられましたが、過去の女性役と比較して、マリラ特有の難しさはありますか?
曽世「これまで演じてきた女性は比較的感情的で、炎に例えると赤い炎が燃える人を演じたことが多かったです。今回演じるマリラは、きっと心の中に赤い炎があるはずなのに、見せないどころか自身も認めていないで生きてきた人というイメージがあるんですね。心の中では炎が燃えているという注文で演じるとなると、役者としては、どうしたものかなと。その難しさは今回あるとは思うんです。今まで演じてきた女性役とはまた若干タイプは違うとは思っているんですけれども、きっと自分の中にヒントなり答えに近い道なりというのはあるんだろうなと思っています」
―――清水さんはマリラとはご近所で一番仲が良いレイチェル・リンド夫人を演じます。初めての女性役になりますね。
清水「『マクロプロスの処方箋』の公演最中に、今度スタジオライフに出させてもらえるんだったら、女性役もやりたいなとポロッと言っちゃったんですけど、ちょうど倉田さんがすぐそばにいらして(笑)」
曽世「倉田は僕に『次に機会があったら女性役をやりたいと清水さんが言っていたの! お誘いしてもいいものかしらね』とすっごい嬉しそうに言っていて(笑)。かなり早くにオファーかけてましたね」
清水「初めての女性役なので、どういう風に取り組んだらいいものかなというのはありますね」
曽世「清水さんはスカートを穿くのは初めてですか?」
清水「そりゃ初めてですよ。スカートにも慣れなきゃいけないから、役作りのために自宅で穿かなきゃいけないかなとか(笑)」
曽世「劇団には一応稽古用のスカートがあるので、お貸しすることはできます」
清水「自宅で自分がスカートを穿く姿をうちの母ちゃんが見たら、お前はどうしたんだと言われそうで」
(一同笑)
清水「リンド夫人は『赤毛のアン』の世界の中でも非常に特徴的なキャラクターなので、演じるのがすごく楽しみですし、うちの近くにリンドのようなおばちゃんがいるなと思って、こまめに観察しようと思っています」
―――桂さんは老兄妹の兄 マシュウを演じます。
桂「実は出演が決まるまで、『赤毛のアン』をちゃんと読んだことがなくて……。劇団の後輩でダイアナ・バーリー役で出演する永澤洋が原作を読んでいて、先日会ったときにいろいろと話を伺っていろいろと参考にはなりました。あまり多くを語らないマシュウなので、背中で何か語るシーンは多くなるだろうなと思いましたし、セリフの少ない役は大好物です」
―――ちなみに桂さんは花組芝居に入団してから男役として活躍されていますが、女役をやってみようと思ったことはありますか。
桂「全くないですし、僕から女役をやりたいと言ったことは一度もないです」
―――清水さんが公演中に、女性役もやりたいなとポロッと言っちゃうようなことはないということですね。
桂「むしろ女性役の方が素晴らしい演技をなさったら、すごいな。僕にはできないなという回路になりますね」
清水「僕、倉田さんに言っておきます。桂さんやりたいって言ってましたって」
桂「嘘はダメですよ!!」
(一同笑)
―――相当意思は固そうですね(笑)。取材時点ではまだ稽古前の段階ではありますが、本作の注目ポイントを教えてください。
桂「花組芝居のお客さんとスタジオライフさんのお客さんは割と被っていると言うとちょっと変な言い方になるんですけど、両方とも観に行っているお客さんはすごく多いので、今回の公演はとても喜ぶと思うんですよね。だからその方たちにも楽しんでもらえればいいなと思いますし、花組芝居しか見たことない方、スタジオライフさんしか観たことがない方や、それに原作のファンの方にも来ていただいて、僕らのことをちょっとでも知ってもらえたら嬉しいです」
清水「僕も原作を読んだことがなくて、今読み始めているところですけど、その時に感じた思いを大事にしたいと思っていまして、お芝居をする時に自分が感じたことがお客さまにスッとわかってもらえたら嬉しいですね。
物語自体は、決して殺人事件が起こるわけでもないし、大きなことが起こるわけでもないし、本当に何でもない日常が描かれているけど、アンがやって来るとか、ちょっとしたことで2人で大喧嘩するとか、この世界観の中で大事件なわけであって、きっと観に来てくださるお客さまも、我々と近い大人の目線で見てくださると思うので、演じる大人たちのどうしよう、明日から生きていけないとか、もう顔見せできないといった感覚が共有できたら、すごく面白いだろうなと思っています」
曽世「きっと会話はたくさん飛び交うとは思うんですけど、アン・シャーリーという非常に面白い女の子に接した時の大人たちの『え、何を感じているんだろう?』というのを楽しんでいただくお芝居になっていくと思うんですね。で、そこは言葉で表現できる部分もあれば、言葉じゃない何かの表現に繋がることがいっぱい出てくると思いますし、そこが今回の勝負どころになるんじゃないかなと予想しています。アン・シャーリーと出会って、大人たちの人生が若干変わるんですよ。その微細なところを倉田も非常にデリケートに描こうとしているはずなので、『ああ、なんかわかる』とたくさん思ってもらえるように演劇作品として楽しんでいただきたいですね」
―――では最後に公演を楽しみにされている方に向けてメッセージをお願いします。
清水「今回女役に初挑戦します! 文学座の清水とはまた違う一面を……、でもリンド夫人は近所のうるさいおばちゃんなので、意外と僕の中にあるおばちゃん成分を出していければなと思っています(笑)。楽しみにしていてください」
桂「スタジオライフさんと、ちゃんとお芝居としてお付き合いするというか、ガッツリやるというのは本当に初めてなので、ドキドキはもちろん当然あるんだけども、期待もすごくあって。それがいいような化学反応をすれば、とても面白いものになるんじゃないかと、そこをご期待いただければという風に思います。ま、とにかく頑張りますよ。楽しませてもらいます!みたいな感じですね」
曽世「『赤毛のアン』という不朽の名作を、この素晴らしいおふたり、そして若手のアン役たちと一緒に、スタジオライフならではの濃密な人間ドラマとしてお届けします。大人になってから読むアンの物語は、本当に胸に刺さります。ぜひ、劇場でお会いしましょう」
(取材・文&撮影:冨岡弘行)
プロフィール
曽世海司(そぜ・かいじ)
10月18日生まれ、宮城県出身。スタジオライフ劇団員。1996年に劇団スタジオライフ2期生として入団し、『トーマの心臓』、『アドルフに告ぐ』、『死の泉』など劇団を代表する作品に多数出演。また声優として、『新テニスの王子様』、『ULTRAMAN』などにも出演するほか、落語の会を定期的に開催するなど、役者業以外の分野でも幅広く活動する。
桂 憲一(かつら・けんいち)
1967年1月14日生まれ、愛媛県出身。花組芝居所属。1989年、花組芝居に参加。入座以来、男役センターポジションとして座長・加納幸和の相手役を多く務める。また映画『黒い家』、『模倣犯』、『日本のいちばん長い日』、『42-50火光(かぎろい)』、ショートフィルム『トゥモロー』、舞台『和宮様御留』など、外部作品にも多数出演。
清水明彦(しみず・あきひこ)
1962年1月30日生まれ、千葉県出身。1986年、文学座附属演劇研究所を経て、1991年、文学座に入団。舞台を中心に、ドラマ・映画・吹替・ラジオドラマなど、幅広く活躍。近年の出演作に、音楽劇『わが町』、『燃える花嫁』、『野良豚 Wild Boar』、『マクロプロスの処方箋』、『RATS ~猫も食わないから騒ぎ~』など。
公演情報
Studio Life本公演『マリラとマシュウと、アンの日々』
日:2026年10月29日(木)~11月8日(日)
場:ウエストエンドスタジオ
料:一般6,500円 U-22[22歳以下]3,000円 ※要身分証明書提示 ※他、各種割引あり。詳細は下記HPにて(全席自由・整理番号付・税込)
HP:https://studio-life.com/stage/anne2026/
問:Studio Life tel.03-5942-5067(平日11:00~16:30)
22名限定! 一般6,500 円→5,200円+カンフェティポイント付き!